青春小麦地平線 ディスティニー・スーパー・ミッション 作:火木金
「富、名声、力・・・大抵そのどれかは持っている『英霊』、カルデアのサーヴァント。
マスターである藤丸立香から放たれた一言は、彼ら/彼女らをかり立てた。
『オレの願いは、好きな人とパン屋を開くことです!』
英霊たちはマスターとのゴールインを目指し、夢を追い続ける。
世はまさに、大海──」
「それ以上はいけない」
「……ここまで言わせたなら最後まで黙って聞くというのがオタクのマナーですぞ、マスター」
「まあ……よりにもよって、くろひーがナレーションに回ると、いろいろ面倒だから……権利とか、解釈とか」
管制室には似つかわしくない、緩い雰囲気のサーヴァントが二騎。
まあ、こういうのもカルデア「らしさ」なんだろう。
「おっきー、おはよう!」
「あ、おはようマーちゃん!それにマシュちゃんも!」
「はい、おはようございます!刑部姫さん」
カルデアのマスター藤丸立香。
そしてカルデアのマスターの盾、マシュ・キリエライト。
緊急の呼び出しにも関わらず、二人とも普段通り落ち着いた様子だ。
そりゃ百戦錬磨のマスターとそのサーヴァントだし、それだけ多くの「異常」を切り捨ててきたんだろう。
「おはよう二人とも、朝早くから悪いね。用件は概ね君たちの想像通りなんだが、今回はちょっと面倒な事情があってね」
「そこから先の説明は私にお任せを。ダ・ヴィンチ」
「シオン、おはよう!」
「おはようございます、シオンさん!」
「はい、お二人とも元気な挨拶をありがとうございます!技術顧問も言っていた通り、今回も白紙化地球上に現れた微小特異点の解決、及び聖杯リソースの回収が主目的となります」
「じゃあ、面倒な事情って?」
シオン・エルトナム・ソカリスは気まずそうに二人から視線を外して、微笑した。そういえば彼女も「吸血種」属性を持っていたような気がする。まあ、アテシと違って「ちゃんと人間してる」ケド。
「う〜ん、何と言ったらいいのやら……トリスメギストスが何故このような演算結果を導いたのか、皆目見当もつかないので下手に何も言うことが出来ないというか、そのまま言うしかないというか……」
「シオンさんがそこまで言葉に詰まってしまうなんて……先輩、今回の特異点は今まで以上に厳しい戦いが待っているかもしれません。不肖、マシュ・キリエライト。先輩……いえ、マスターの安全を守り抜いてみせます!」
「ありがとうマシュ。一緒に頑張ろう!」
盾の娘は爽やかに笑っている。たとえどんな艱難辛苦が待とうとも、その旅の終わりにはそれ以上の希望が待っていると信じて疑わない平和ボケ……はしてないけど、とにかく腹が立つ顔で。まあ関係ないんだけど。
「いえ、あくまで微小特異点ですので、いずれ消滅します。放っておいても人理に与える影響については心配ないでしょう」
「でも、それだけじゃないんでしょ?」
マスターの至極真っ当な質問。
アテシもなんで自分がここに呼び出されたのか、説明が全くされていないどころか、さっきからキリエライトにガン無視決められてイライラが限界って感じだし。
「拙者たちが呼ばれた理由も気になるでございますよ、拙者、普段は悪逆非道の誰もが恐れる大海賊とオタクを兼業しているだけですし……」
「いやいや充分でしょ。姫なんか城か部屋の隅っこでこそこそしているだけの大妖怪だし……」
どっちの自己紹介も中途半端に自尊心が残っちゃってるし。
それにアテシだって、ちょっと炊事洗濯ができるだけの家庭的な夜と嵐の女だし……。
「お二人については、この場に同席させるようにとトリスメギストスからの演算結果が出ているためです。なんでもドウニュウ?に不可欠だとか」
「拙者もおっきー殿も筋金入りのオタク……我々に求められる導入……閃いた!」
「通報する前に一応聞いておくけど……何が?」
「そりゃ……今回の特異点もといイベントはかなりのい──」
「盛り上がっているところ悪いけど、時間は有限だ。シオン、肝心の特異点についての情報を教えてもらえるかな」
「申し訳ありません。ダ・ヴィンチの言う通りですね。私としたことが慣れない状況に多少取り乱していたようです」
レオナルド・ダ・ヴィンチの一言で場の雰囲気が引き締まった。流石カルデアの頭脳、小さくて可愛いだけじゃない。うちのリリンたちにも見習って……っていうのは無茶か。
「では簡潔に一言で」
今度はさっきみたいなバツの悪そうな感じじゃなくて、好奇心旺盛な子供のような微笑。
「──藤丸さん、キミに好きな人はいますか?」