転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について 作:アイアイホイホイおさるさん
この第2000番船に滞在するに当たり、タクオはイオ・ミレニアの権限により「現地協力者兼現地保護難民」として船の滞在許可と引き換えに、有事の際はエヴァンゲリオンを使って種を守る戦いに参加する事が義務付けられた。彼女の巫女という立場を最大限に活かしてこれであった。
タクオとしてはこれ位の方が、力もあるのに銃後の市民扱いされるよりはずっと気分は楽だった。怪獣との戦いの日々が、タクオを戦士寄りの考えに変えていると言えた。
「エヴァンゲリオン、戦闘終了。着艦します」
そして今日もタクオは金星人の敵部隊から船を守り抜き、帰還する。ミレニアン星雲人の科学力や技術力を持ってすれば、エヴァンゲリオンの運用など余裕の二文字である。エネルギーとなる電力も、各種パーツもすぐに用意してくれた。
「お疲れ様です………タクオさん」
「イオ、君は大丈夫なの?」
そしてイオの元で行動する日々も続いた事から、最初はよそよそしかった二人の関係もタクオがタメ口を聞ける程度には打ち解けていった。
イオもそんなタクオに笑顔で答えてくれた。それを見るたびにタクオも頬が緩み、それなりの見た目の少年に転生できた事を心の底から感謝した。
「ええ………巫女の仕事がありますから………あっ」
「イオ!」
その時、倒れかかったイオの身体を、咄嗟にタクオが受け止めた。その身体は小さく、華奢だった。タクオは自分でも自分が低身長だと自覚しているが、それでも包み込めてしまう程小さいのだ。
そも、ミレニアン星雲人が子供の姿のまま大人になる種族である事を考えると小さいのは当然であるが、それを考慮してもイオは小さいと感じた。
「巫女の仕事が大事なのはわかるけど、イオも休めるときに休まないと………まあ、僕のせいで忙しいのはそうだけどさ」
「はっ、はいっ………あ、ありがとうございます………」
なんとか立ち上がり、船の会議室に向かうイオをタクオは心配そうに見送った。
その表情が、真っ赤に染まった恋する乙女そのものだった事も知らずに。
そして、そんな日々が続いてしばらく、運命の時が訪れようとしていた。
そしてある時、金星人の主要部隊が潜伏している場所………彼らの「本国」という場所を突き止める事に成功。戦争の早期終結のため、金星人本国に対して奇襲を仕掛ける作戦「オペレーション・ヴィーナスダウン」が計画された。
参加するのはミレニアン星雲人の精鋭円盤部隊に加え、シン・ウルトラマンことリピアー。そして………タクオとエヴァンゲリオンだった。
***
作戦決行の直前、イオに呼び出されたタクオは彼女の自室に来ていた。
思えば、この船に来てから彼女には世話になりっぱなしである。実質的な保護者の立場にあるため当然である。見た目はツインテール小学生にしか見えない彼女の世話になるのは、男として情けなくも感じたが。
「………今回の戦いで、あなたの運命が決まります」
「何だって!?」
そんなイオから告げられたのは、このオペレーション・ショウダウンにて、タクオが地球に帰れるか否かが決まるという事。イオも詳しくは見えなかったが、運命の流れが強く動いている様が見えるという。
「………これを持っていってください」
「これは?」
「………ミレニアン星雲に伝わるお守りです。験担ぎぐらいにしかなりませんが」
「ありがとう、十分さ」
イオから渡されたその「お守り」は、おそらくかつて存在したミレニアン星雲にあったであろう鉱石から作られたらしく、金の縁に青い宝石が輝く美しい首飾りであった。
「それと………その」
「んっ?」
作戦に参加すべく部屋を後にしようとしたタクオを、イオが呼び止める。
「私………一人っ子で、皆さんから巫女として頼られて………それで、あの………」
その表情は赤く染まり、目を伏せて視線を泳がせてモジモジとしている。恥ずかしさが、彼女に用件を述べさせる事を邪魔しているようだ。して、恥ずかしさに堪えながらもイオが述べた要件は。
「………戦いから無事に帰れたら………あなたを"お兄ちゃん"と呼んでもいいですか………?」
タクオは呆気にとられた。一世一代の大告白のような流れでイオが出したのは、あまりに平凡かつ純粋な「私だって甘えたい」という少なくとも見た目の上では相応の願い。
しかし、タクオはそれを笑う事は無かった。前世にて性別で「男が泣くな」と言われて育ったタクオと、巫女故に皆に頼られる事が当然だったイオ。原因と立場こそ違えど、甘えたいという心を秘めて今まで生きてきた事は同じだった。
そしてタクオは、甘えたいという願いを今世で叶えた。なら、彼女の願いも叶えたいと思った。
「………ああ、帰ってきたら僕はイオのお兄ちゃんだ」
「………はい!」
今まで年上のお姉様達にオギャオギャバブバブばかりだったタクオが、初めて誰かのために頑張りたいと思った瞬間だった。
戦いが終わったらまた会おう。そうその場で約束して、二人は扉の向こうへと別れた。
***
金星人の宇宙船は、円盤状の王道的な「空飛ぶ円盤」と言われるような姿形をしていた。
母船である巨大な円盤を中心に小さいサイズのものがいくつも行き交う、ミレニアン星雲人を遥かに上回る円盤艦隊を編成するそれは、その圧倒的な科学力で宇宙怪獣や他勢力を叩き潰し、近い内に地球に「新皇帝」を迎えに行く手筈であった。
「おかしい、これはどういう事だ?!」
しかし金星人の現最高責任者の男「ブルティス」は苛立っていた。本来は《聖戦》において金星人の新皇帝に仕える副将だった彼であるが、肝心の新皇帝………前皇帝が死に際に残したクローンを未だ回収できず、現時点でも最高責任者として組織を引っ張っている。ミレニアン星雲人に侵略戦争を仕掛けさせたのも彼だ。
「何故我々は追い詰められている?!金星の正当なる後継者である我々が………!」
本来なら自軍に比べて遥かに劣る彼らなど、三日もしない内に根絶やしにできるハズだった。しかし現実は、三日で終わるハズだった戦争は一カ月も長引き、今こうしている間も自身の勢力は徐々に追い込まれているという有様である。
「何が原因だ?光の星が奴らに味方したからか?閣下を見つけられないからか?それとも、あの銀の機械人形が現れたせいか?こんなもの、こんなものあるハズが無い!」
司令室にて頭を抱え、狼狽えるブルティス。そこには最早仕えるはずの新皇帝が自分に従わないと見るや否やさっさと切り捨てた黒幕の姿はない。
自業自得とはいえひどく追い詰められたブルティスだが、そこにトドメとばかりに災難が降りかかった。それは。
「閣下!緊急事態です!」
「何だこんな時に!」
「奇襲です!ミレニアン星雲人の艦隊が奇襲を仕掛けてきました!」
「何だとぉ!?」
駆け込んできた部下の報告を聞き、ブルティスは目を見開いて叫んだ。瞬間、緊急事態を知らせる警報が、彼のいる巨大母艦内に響き渡った。
***
………ぼおっ、ん
金星人艦隊が隠れ家にしていた宙域に閃光が走った。
巨大母艦を囲むように張られていた防衛戦が破られ、円盤艦隊の一部が爆裂すると同時に、ミレニアン星雲人の決死隊が躍り出た。
まずは、ミレニアン星雲人の戦闘円盤。ミレニアンという名前から察しはつくだろうが、それは「ゴジラ2000ミレニアム」に登場した宇宙人・ミレニアンのUFOそのものだ。
これは200mあり、戦闘機の類と見るにはいささか大きすぎる気もするが、宇宙においてはこういうサイズが普通なのだ。
ジェアッ!!
続いて、腕と背筋をピンと伸ばし、
………このウルトラマンが属する「光の星」は所謂「光の国」とは違い、宇宙の守護者ではなく裁定者。このウルトラマンのような変わり者もいるが、大半は星系ごと相手を抹殺する事に何の抵抗もない。そしてこれは、その為のアイテムの一つ。
『敵は多い。なら出し惜しみは無しだ、行け!ゼットン!!』
ウルトラマンが装置を投げた。するとそれは宇宙の戦場で瞬く間に巨大に膨れ上がり、両手を広げた人のような形へと変貌した。
ブモォォーー!!
天体制圧用最終兵器「ゼットン」。これはその簡易生産タイプで、300mサイズまでサイズダウンしており、星系を焼き尽くす1兆度の火球こそ放てない代わりに全身の火力と武器を増設している。
宇宙の戦場にて戦士達の壁となり、支援火器となり、その戦いをサポートする目的で作られたこれは、さながら「カプセル禍威獣・ゼットン」とでも言った所だろう。
そして最後に飛び込んできたのは、シルバーの機体を煌めかせたエヴァンゲリオン。コックピットのタクオは慣れた手つきで宇宙を舞う。
………このエヴァンゲリオンは、何度も言うが
内、肩のウェポンラックに内蔵した「反重力推進装置」は、結論から言うと機体を浮かせて空中戦をやるための機能である。重力下ではエネルギーを酷く消費してしまう為あまり使われなかったが、宇宙空間でならエネルギーの消費も最低限で済むため飛び放題である。
先も話したが、雁夜はエヴァンゲリオンを「汎用人型決戦兵器=どこでも戦える」ように作っているのだ。
「金星人共め………このミサイルガトリングで吹き飛ばしてやる!!」
そんなエヴァンゲリオンが握っているのは、自身の身の丈ほどある巨大なミニガンのようなガトリング砲。外見こそ「新劇場版」で有名になったガトリングガンと同一であるが、これを作ったのはミレニアン星雲人。
更に言うと撃ち出されるのも弾丸ではなく、相手を追尾するミサイルである。外見としてはエヴァンゲリオンのガトリングガンであるが、機能で近いのは「ゲッターロボ」の「ミサイルマシンガン」だろう。故に、それを知っているタクオもこれを「ミサイルガトリング」と呼んでいる。
ドガガガガガガ!!
轟音を立てて、ミサイルガトリングが回転を始める。そして次々とばらまかれたミサイル………地球で撃ったなら一撃で高層ビルを破壊可能であろうそれは、弾幕の暴力となって金星人の円盤艦隊に襲いかかる。
ジェアアッ!!
ブモォォーー!!
ウルトラマンとゼットンも、それに続く形で攻撃を仕掛けてきた。
ウルトラマンが十字に組んだ腕から、宇宙の闇を切り裂くスペシウム光線が放たれる。青白く輝くスペシウム133の光が途切れる事のない光の奔流となり、触れた円盤を焼き貫き、破壊する。
ゼットンも両腕から爆裂する火球・ゼットンナパームを放った。一兆度の火球には流石に劣るが、核兵器を上回る破壊力・攻撃範囲を持つ爆煙は、金星人の大部隊を相手にするには十分だ。
『俺達も続くぞ!』
『おう!』
ミレニアン星雲人達も負けてはいない。
戦闘円盤から放たれる波動砲。原典において一撃でゴジラを吹き飛ばす程の威力を持っていたそれは、金星人との戦いでも強力な兵器として作動した。
加えて決死隊のために攻撃力をこれでもかと強化していた事もあり、大部隊から放たれるそれは金星人の円盤艦隊を次々と破壊し、宇宙に破壊の花火を咲かせた。
………まさか、いくら戦況が優勢に働いているからといって、いきなり本丸に攻撃を仕掛けてくるような奴はいないだろう。
そう、金星人が考えていた事もあるのだろう。もしくは、そこまで追い込まれていないという自惚れか。
どちらにせよ、予測していなかった決死隊による奇襲を受けた金星人艦隊は、それに対処できなかった。それまで他の文明にしてきた事が返ってきたかのように一方的に蹂躙される事となったのだ。