転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について 作:アイアイホイホイおさるさん
そして一機、また一機と、いや何百機と、こうしている間にも金星人の戦力は撃破されていった。
「第7艦隊応答せよ!応答せよ!」
「第5艦隊壊滅!」
「防衛ラインが破られました!」
「第3機動大隊、連絡取れません!」
次々と飛んでくる報告を巨大母艦のブリッジで聞きながら、ブルティスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
何故、何もかもこんなにも上手くいかないのか?と。
「………おい」
「何でしょう、閣下」
「指揮を任せる」
「はっ!?か、閣下は何を………」
副官はブルティスの目を見た。怒りと諦めに満ち、何もかもを台無しにしてやろうという………失うものがもう何もなくなった、狂った男の目だった。
「………メカゴジラを出す」
「はっ!?しかしアレは未完成では………」
「そんな事はどうでもいい!!今使わずにいつ使うのだ!?」
副官を突き飛ばし、ブルティスはブリッジを後にする。自動ドアが閉じ、ブルティスは母艦の格納庫へと消えていった。
その場に残され、いきなり全権を任された副官は、次々と飛んでくる自軍の敗戦の様子を聞いているしか出来なかった。
***
エヴァンゲリオンは三機の戦闘円盤を引き連れて、金星人の巨大母艦内部への侵入に成功した。全体を指揮するブリッジは円盤状の艦の内部にあり、そこを潰せば金星人は瓦解する。
幸い内部は80mのエヴァンゲリオンは勿論の事、200mサイズの戦闘円盤でも余裕で通れる広さだった。
「この先が
タクオの狙いは、金星人を打倒して戦争を終わらせる。というのも勿論あるが、真の狙いはその先だ。
そも《聖戦》において地球文明が滅びた原因は、地の文では愚かな人間の科学が
タクオが生まれ変わってから、日本の悪の帝国化の原因になった鏑木剛は死んだし、政治家も対怪獣による日本国民の防衛のみに注力している。なら、後はここで金星人を打倒すれば、少なくともこの世界線が《巨神》の通りのルートを歩む事は無くなる。それが、拓夫の真の目的でもあった。
「もっとも地球に無事に帰れる保証も………うわっ!?」
ブリッジに近づいたその時、通路の真ん中から行く手を阻むように何かがせり上がってくるのが見えた。
それは銀色の機械の塊に見え、エヴァンゲリオンを上回る巨体と横に広がる翼を持ち、何よりその姿はゴジラを機械で作ったかのような姿をしている。
タクオはその巨大な機械のゴジラを知っていた。銀の身体に強烈な兵器を詰めた凄い奴、その名は。
「さあ来い異星の機械人形よ!!貴様の相手をするのはこのブルティス様と、金星の技術の結晶………メカゴジラだ!!」
ピシャアアアーーーッ!!
コックピットに座るブルティスが操るその名は「メカゴジラ」。《聖戦》における金星人の最終兵器であり、本来の物語において皇帝が乗り込み、最後に立ち塞がるラスボス。
………何故か雁夜が開発している"メカゴジラ"と似た外見と同じであるが、これは過去金星人が地球に偵察に来て、ゴジラを目撃したからという設定がある。つまりは収斂進化により地球・金星共に同じ「メカゴジラ」を作っていた事になるが、地球の方が後付けの番外小説の出である事を考えると《聖戦》の杜撰さを改めて思うタクオであった。
地球のそれと区別する為に、この所謂ポスター版と呼ばれるこの機体は「メカゴジラヴィーナス」と呼ぶ事にする。
「出たなこいつ!!」
対峙し、エヴァンゲリオンがミサイルガトリングを放つ。続き、戦闘円盤も波動砲を撃ち、メカゴジラヴィーナスを攻撃した。しかし、集中砲火を受けながらもメカゴジラヴィーナスの装甲には傷一つない。
ピシャアアアーーーッ!!
メカゴジラヴィーナスがお返しとばかりに腕を構える。すると砲身となった五本の指先よりビーム弾がマシンガンのように連射される。それはエヴァンゲリオンや攻撃円盤に襲いかかり、三機の攻撃円盤が破壊されてしまった。
「まだ僕がいるぞ!!」
だが、そこに飛び込んだのはエヴァンゲリオン。ミサイルガトリングこそ失ったが、ならば格闘戦だとウェポンラックからマゴロクEソードを引き抜き、勇敢にも斬りかかる。
バキィン!!と、メカゴジラの腕に振動刃が命中し、火花が散った。
「小癪なァ!!」
「ぐわあぁあ!?」
下等な種族がよくも!と怒るブルティスはメカゴジラの次なる武装を発動する。がぱりっと開いた口から青白い稲妻のような放射光線が放出されたのだ。
それはエヴァンゲリオンにバリバリバリ!と襲いかかり、母艦の隔壁ごと粉砕して宇宙空間へと叩き出す。
突如の母艦の一部に起きた爆発に敵味方の視線が集中する中、ついにメカゴジラヴィーナスが宇宙空間へとその姿を現した。
「偉大なる金星文明に楯突く愚か者どもめェ!!金星の科学力の前にひれ伏すがいいわ!!」
ピシャアアアーーーッ!!
指の連装ビーム砲、口の放射光線、そして全身に装備したミサイルが火を噴いた。
メカゴジラヴィーナスのありとあらゆる火力が宇宙の戦場向けて放たれ、それは味方を巻き添えにしてミレニアン星雲人の戦闘円盤を次々と破壊してゆく。
ダァァ!?
ブモォォ!!
ウルトラマンとゼットンさえ、大火力を前に吹き飛ばされ、宇宙を横転するように吹っ飛ぶ。
本来のラスボスだけはあり、メカゴジラヴィーナスの強さは凄まじい。しかし、そんな相手を前にしてもタクオの心は折れない。
「このぉぉ!!」
「まだやるか機械人形め!!」
ピシャアアアーーーッ!!
マゴロクEソードを構えたエヴァンゲリオンが再び突っ込んでくる。だがメカゴジラヴィーナスは再び口から放射光線を放ち、エヴァンゲリオンを捕らえてしまう。
「があぁ!?」
「フハハハハハッ!!強い!!これが金星の科学だァァ!!」
放射光線に捕らわれたエヴァンゲリオンを、強烈なエネルギーの渦が締め上げる。全身のパーツが爆発し、各部の異常を知らせるアラートでコックピットのモニターが染まる。
破壊という名の悲鳴を上げて壊れてゆくエヴァンゲリオン。タクオもエネルギーによるショックを受ける中、極限状態に陥った頭脳に咄嗟に父・雁夜との何気ない会話が過ぎる。
「………ファイヤーミラーシステム?」
「キヒヒ!メカゴジラに搭載予定のシステムだ。ゴジラの熱線を受けるとそれを何倍にも増幅し、打ち返す事ができるのさ!」
「エヴァンゲリオンにはそのプロトタイプが積んである………つまりエヴァンゲリオンもゴジラの熱線を受けられるって事?」
「それは無理だ!あくまでプロトタイプだからな。先にエヴァンゲリオンの方がパンクしちまうぜ!ヒヒヒ!」
………そもそも、そのファイヤーミラーシステムで勝てる保証はない。メカゴジラヴィーナスの放射光線をそれで吸収できるとは限らないし、何より不完全なシステムでどうにかできるとは思えない。
だとしても、今のタクオはその賭けに乗るしか無かった。手元のパネルを操作し、システムのロックを解除し、エンター。
「ファイヤーミラーシステム………起動ッ!!」
システムが作動し、タクオの第一の予想は杞憂に終わる。エヴァンゲリオンを襲うメカゴジラヴィーナスの放射光線が弱まり、エネルギーとして吸収されていった。
「な、何だ!?私の知らない武器が搭載されていると言うのか!?」
突然の出来事に驚愕し、咄嗟に放射光線の放出を止めるブルティスだったが全ては遅すぎた。
放射光線のエネルギーを吸い取ったエヴァンゲリオンは、その各部から余剰エネルギーをオーラのように漏らしつつも、ゆっくりと身体を起こしてメカゴジラヴィーナスを睨みつける。
「覚悟しろよ金星人、お前はまだ何もしちゃいないが………本来の未来でお前達が地球にやった事を、先払いで返してやる!」
そして口を………本家本元本来のエヴァにしかないハズの、純粋なロボット兵器であるこの世界のエヴァンゲリオンには無用の長物のハズの「顎」をがぱぁと開かせる。
そこにあったのはS2機関を取り込むための歯と食道の代わりに隠されていた、簡略化したメーサーのパラボラのような………否、これもれっきとしたメーサー兵器の発射口。
「プロトンビームッ!!発射ぁ!!」
瞬間、閃光が宇宙を割いた。
エヴァンゲリオンの口から放たれた圧縮されたエネルギーの束は「プロトンビーム」となり、呆然とするメカゴジラヴィーナスに直撃。光の奔流はメカゴジラヴィーナスを押し流し、そのまま金星人の巨大母艦へと激突させる。
「あぐあああっ!!きっ、金星に栄光あれぇえ!!」
メカゴジラヴィーナス内部をプロトンビームの光が満たし、ブルティスはうねる光の中で肉体が分解され、消滅する。
そしてメカゴジラヴィーナスも膨大なエネルギーを返された事で溶け、飽和し、渦巻き、そして。
「わ………ッ!?」
やがて、タクオの視界をビッグバンがごとき光が覆った。
***
………その時、戦いは終わった。
メカゴジラの膨大なエネルギーが爆発し、金星人の艦隊は巨大母艦共々、その場にいた大多数が消滅した。その瞬間、戦いの決着はついたと言っても過言ではない。全体の指揮を執る巨大母艦が、陣営の切り札ごと消滅したのだから。
戦闘円盤部隊の損害も大きかったが、かろうじて絶滅は免れた。ゼットンは大破したが、ウルトラマンはなんとか生きて帰ってきた。しかし。
「エヴァンゲリオン、消滅!!」
タクオが、金星人にトドメを刺したタクオとエヴァンゲリオンが消えてしまった。
メカゴジラヴィーナスと巨大母艦が大爆発を起こした後、エヴァンゲリオンのみが跡形もなく消滅してしまったのだ。
当然であるが、ミレニアン星雲人達はエヴァンゲリオンはメカゴジラヴィーナスと巨大母艦の爆発に巻き込まれて消滅したと考えた。
英雄が死んだ。と、ミレニアン星雲人たちが慌ただしく右往左往する中、ただ一人イオ・ミレニアだけは冷静に、遠い
「………消えたのではありません………帰っただけです………いるべき場所へ………」
その手には、タクオに渡した物と同じお守りが握られていた。それはミレニアン星雲の軍人が、故郷に残した恋人に渡すお守りと同じだった。
イオには全てが見えていた。ただ、出撃前の約束が先延ばしになった事だけは寂しかったが。
***
『タクオ君!どうしたの!タクオ君!たっくん!!』
「雪江さん!?」
『たっくん!?ああ、よかった………!』
目が覚めた時聞こえたのは、久しぶりに聞く通信機越しの雪江の声と、眼前に広がる屈斜路湖の水底。遺跡は消滅し、最初から何も無かったかのように静かな水の世界が広がっている。
タクオは直感で理解した。地球に、日本に帰ってきたのだ。
「雪江さん、ちょっと聞いていい?」
『え、ええ、何を?』
「僕は、僕はどれぐらいの間
『反応は一時間ほどロストしていたわ、その間に捜索隊が組まれて、それから………』
聞いて、タクオは愕然とした。少なくとも宇宙に居たのは二ヶ月近くだ。しかし地球においては、タクオが消えてから一時間ほどしか経っていないという。
すると、あの金星人との戦いも、ウルトラマンとの会合も、ミレニアン星雲人の巫女イオと過ごした日々も、全ては湖底で気絶している間に見た夢だったのでは?という考えが過ぎる。
だがその時、タクオの胸元にチャリという小さな鎖の音が聞こえた。
「………夢じゃない」
出撃前に貰ったお守りが、あの二ヶ月の証明のようにキラリと煌めいていた。
「………約束、すっぽかしちゃったな」
そして、遠き星の彼方にて未だお兄ちゃんの帰りを待つ羽目になった
彼女に対する罪悪感は確かにある。が、タクオにもやらねばならない使命がある。金星人は倒したが、全てが終わった訳ではない。タクオの《