転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について   作:アイアイホイホイおさるさん

15 / 17
第13話

 キングシーサーの猛攻を受け意識を失う刹那、タクオは自分が死んだと思った。だが実際はどうか。タクオは頬に落ちる冷たい雫の感触で目を覚ました。

 重い瞼を開くとそこにあったのは、照明に照らされた薄暗い岩肌と………

 

「(………おっぱい?)」

「ヘイ!タクオーーッ!」

 

 ずぼにゅんっ!!と開いた胸元から主張するエベレスト・バストがタクオを飲み込み、衝撃と共に急激に覚醒させた。そして何よりタクオを驚かせたのは、それが知った声であった事。

 

「うぶぶ………り、リンディーさん!?」

「オゥ!ワタシの事解るデース!?イエス!よかった、良かったデース!」

 

 ぎゅむぎゅむとタクオを胸のツインボムに抱き寄せているのは、他ならぬリンディー・ダーレス。メカニコングのパイロットでありタクオとも面識のある………と言うか「寝た」相手であるその人だった。

 今は米軍らしい迷彩柄の軍服に身を包んでいるが、そういうファッションなのか豊満な胸元を開いて谷間を見せつけている。そして音信不通だった恋人と再会したかのように、タクオに抱きつきスリスリと頬ずりをしている。

 

「ていうか………なんでリンディーさんがここに?」

「オゥ!沖縄の米軍基地でサマー・ブート・キャンプの最中デシタ!そこをあのネオ琉球のファッキン共に襲われて、基地が壊滅する中命からがら逃げてきたんデース」

「そんな事が………でも、ここは?どうして僕は助かったんだ?」

 

 乗機を破壊され敵地で孤立するという状況にて、見知った相手であるリンディーと会えた事でタクオは安心した。だが問題は、そんな状態でどうやって助かったかという事。そして、そもそもこの洞穴は何なのか?という事。

 

「おお、どうやら意識を取り戻したようですな」

「貴方は………」

 

 そこに、ひしゃがれた男性の声が飛んできた。見れば、そこに居たのはアロハシャツに身を包み、サングラスをかけた中々にファンキーなご老人………なんとなく、どこぞの武天老師を彷彿とさせるお爺様。

 

「はじめまして、私は安土天願(アヅチ・テンガン)。しがない老人………では通りませんな。まあ、沖縄の裏の守護者のようなものです」

「裏の守護者??」

「ヘーイ、ミスター天願は琉球忍者のヘッドなのデース!ユーを助けたのも、ミスターのニンポーカラテのワザマエデース!」

「琉球忍者ぁ???」

 

 説明されても余計な混乱しか生まないような説明しか受けなかったタクオは、余計な事は聞き流す事にして、とりあえず眼前の天願老人が自分を助けてくれたという部分だけを受け止める事にした。

 

「こんな洞窟(ガマ)で立ち話もなんです、とりあえず我々のベースに来てください」

「ああ、はい………どうも」

 

 天願についていく事にしたタクオは、やっぱりここはガマ………かつての第二次大戦時に避難所代りに使われた天然の洞窟だったのだと思った。ひんやりした空気と暗闇の中、タクオは天願老人の案内で進んでいった。

 

 

 ***

 

 

 そも「琉球忍者」とは何者か?彼らは沖縄が日本に併合されるはるか古代からこの地の平和を守り続けてきた影の集団との事。そんなフリーメイソン的なものが日本に居たのも驚きであるが、一番の驚きはそのリーダーである天願、そして人員が当たり前であるが「ごく普通の一般人」の範疇に収まるような人達だった事だ。

 

「では、引き続き警戒を頼む。奴らが不審な動きに出た場合はすぐに連絡を」

「はい、頭領」

 

 そう言って、ポロシャツ姿の琉球忍者の一人がサッと消えてしまった。まるで漫画のようだが、これを見せられたのならタクオも彼等の話を信じざるを得なかった。

 さて、迷路のようなガマから地下下水道に抜ける彼ら琉球忍者の秘密の地下ルートからたどり着いたここは、そんな彼らのベース基地………と言っても、天願の経営するラーメン屋「ミヤラビ屋」である。

 立地は沖縄離島の一つであり、まだ彼等ネオ琉球の支配下にはなっていない。

 

「さて、どこから話した事ですかな」

 

 ミヤラビ屋の二階生活スペースにて、ちゃぶ台を囲んでタクオとリンディー、そして天願は対峙していた。

 

「まず信じて欲しいのは、我々琉球忍者は君らの味方という事だ。たしかに過去我々と日本の間に因縁があるのは確かだが、それは全て過去の事だ。ネオ琉球のように日本をどうこうしてやろうとは考えてはいない」

「天願さん………」

「そもそも大藤の奴は本土出身。琉球の血など一滴も流れておりません。そんな奴が琉球の正当後継者など笑わせる」

 

 サングラスを外し真剣な面持ちで語る天願を見るに、タクオは彼の言葉は信頼できると思った。

 

「しかし………だったら何故キングシーサーはそんな大藤の味方をするんです」

「問題はそこなのですよ。そも、怪獣をポケモンのように操るなど一体どうやって………」

 

 そして問題はそこだ。仮に伝説の通りだとして、かつて琉球を本土人の侵略から一度は守ったとされるキングシーサーが何故ジョニー大藤という、そもそも琉球の血すら流れていない所か琉球という地に対して侮辱と侵略を行なっている人物に手を貸すのか。

 それにキングシーサーのみならずムートーまで手駒として操っているなど、ただの武装集団にできる芸当ではない。

 

「………ORCA(オルカ)

「えっ?」

「何か知ってるんですか?リンディーさん」

 

 そしてその疑問に答えを出したのは意外にもリンディーだった。

 

「モナークが開発した怪獣をシティから遠ざけるための機械デス。使い方によっては怪獣を意のままにコントロールすることも出来るとか………」

「モナークって言うと、いつも僕達に文句ばっか言ってる科学者集団か!」

「モナークのオーストラリア支部から何者かに物資を奪われたという情報が入りマシた、恐らくそれが………」

 

 モナークの名を聞き、タクオの表情が怒りに歪んだ。普段からされている善良なる意見の数々(ひぼうちゅうしょう)を思い出したからだ。

 ………そもそもモナークと言うのは怪獣の調査と監視を目的に設立された組織であるのだが、怪獣の持つ雄大さに魅せられた結果「悪いのは自然環境を破壊し怪獣を怒らせた人間だ」という思想に走る者が多くいる。その結果、本来協力するべき立場の防衛軍との対立が問題になってしまっている。

 

 ………それを考えると、オーストラリア支部から強奪されたオルカがネオ琉球に使われているというこの構図も、何やら怪しく思えてしまう。

 具体的に何がどうとは言わなかったが、タクオはなんとなく「ガンダムGP04ガーベラ」だとか「シナンジュ・スタイン」だとかの単語が脳裏に浮かんだ。

 

「リンディーさんの話が本当だとして、奴の手からそのオルカという機械を奪う。もしくは破壊する事が目的になりそうですな」

「イエース!そうすればキングシーサーもジャスティスソウルを取り戻すはずデース!」

「………そこまで伝説通りなら、ね」

 

 そう、そもそもキングシーサーが琉球の守護神だという話もあくまで伝説上の話でしかない。

 多くの怪獣に関する神話がそうであるように、伝説の蓋を開けてみればただの凶暴な怪獣が神として伝わっていただけ、というのも珍しくないのだ。

 

「いいえ、キングシーサーは間違いなく我々の為に戦ってくれます」

「失礼ですが、根拠は?」

「琉球の魂」

「なんじゃそりゃ」

 

 しかし、タクオは口では皮肉を口走りつつも、天願の話を聞いていると………本来キングシーサーが善の怪獣である事を知っている事も相まって、想像せずにはいられないのだ。

 キングシーサーが、自分達の味方となって共に戦う様を。

 

 

 ***

 

 

 その同じ頃………闇夜と月が照らす海域にて。

 対怪獣用に設置された機雷の合間を、いくつもの影が泳いでいた。

 

 フルシャアア!!

 フルウウウ!!

 

 百足とヘビを合体させ甲殻類で割ったような深海魚のような怪獣の名は「マンダ」。海に生息する怪獣で、日本海で最初に確認され閣議決定で決まった「マンモス級の蛇」を名前の由来として持つ。

 群れを成す生態を持ち、この時も三体の群れで獲物として捉えた一体の怪獣を複数体で追い回していた。

 

 フルシャアア!!

 ギャエエェン!!

 

 しかしその一体の怪獣は中々どうして賢かった。

 いつもマンダが狩りの際に行う機雷原に相手をぶつけて弱らせる戦法も、その怪獣には通じなかった。機雷に当たる所か、マンダ達がやるように機雷の間を縫うようにして泳いでいるのだ。

 

 ………フシャアア!!

 

 しびれを切らしたマンダの一体が牙を剥いて噛みつきにかかった。怪獣は待ってましたと言わんばかりに、すぐ横にあった機雷に手を伸ばした。

 機雷を海底に繋いだ鎖を引きちぎると、鎖付き鉄球に見立てそれをマンダに向けて投げつけた!

 

 フシィ!?

 

 ボンッ!という爆発と共に、マンダの頭部に機雷が直撃した。

 マンダは怪獣全体で見てもそこまで強い種ではなく、人類の兵器で対処可能なのだ。機雷の一撃で砕けた頭部から血の煙幕を広げ、沈んでゆく様がそれを物語る。

 

 フシャアア!!

 

 機雷の合間から、隙をついた二体目のマンダが迫りくる。そいつはその怪獣に対して尖った鱗と鋭い爪を立て、すれ違いざまに何度もガキンッ!バキンッ!と切りつける。

 出血による衰弱に追い込もうとしているのだが、その怪獣の体表は酷く頑丈であり、その程度では傷一つつかない。

 

 ………ギャアアン!!

 フルシッ!?

 

 そして、そんな小手先だけの戦法が通じる訳もなく、マンダは怪獣に捕まってしまう。そして怪獣は、マンダの長い身体をジャイアントスイングの要領でぶん回した。

 ………この海域は機雷の巻かれた機雷原。そこで細長いマンダを振り回せばどうなるかは一目瞭然。

 

 どごん!ぼがぁ!どがぁ!!

 

 マンダに接触した機雷は次々と爆発。夜の深海に轟音と火花が散り、気がつけば怪獣が握っていたマンダの尻尾から先は砕け散って無くなっていた。

 そしてここで、怪獣は油断した。これより前にも連戦を繰り返し、疲弊していたのもあるだろうが。

 

 フルシャアアアアッ!!

 ギャエェンッ!?

 

 隙をついて襲いかかってきたマンダが、その200m以上ある身体でその怪獣に巻き付いてきた。ニシキヘビ等が獲物に対してやるような巻き付き締め上げ(ローリング)戦法だ。

 しかもマンダの場合は尖った鱗がアイアンメイデンのように相手の体表を傷つけるというオマケまでついている。ガリガリ、ゴリゴリという削る音が深海に響く。

 

 フシャアアア………!

 

 嘲笑うように唸るマンダは愚かだった。だから知らなかった。勝ち誇った時が一番危険なのだと。

 

 ………ドゴォン!!

 

 ………大爆発の原因はエネルギーの爆裂だった。

 本来口から吐くブレスに使う為の体内エネルギーを、怪獣は全身から放射する事で衝撃波を発生させ、巻き付いたマンダを内側から吹き飛ばしたのだ。

 バラバラになったマンダの死体が周囲に散乱し、この戦いは幕を閉じた。

 

『………相手が勝ち誇った時、既にそいつは敗北している。名言だな、これは』

 

 怪獣はそう超音波(エコロケーション)で呟いて、ゆらゆらと落ちてくるマンダの肉片をおもむろに掴み、バリバリと食べてみせた。ウナギのような味がした。

 その怪獣が何故人間の名言を知っているかと言うと、ひとえにその怪獣が「かつて人間だったから」に他ならない。

 

『………まったく鬱陶しい!さっきから何なんだこの不愉快な音は!?あれが聞こえだしてから海の怪獣はおかしくなるし、俺は不愉快になるし、ああもうっ!!』

 

 ………それは、複数のゴジラ族の死体をつなぎ合わせる事で出来た死体人形に、人間の魂が乗り移る事で誕生したいわば「フランケンシュタインのゴジラ」もしくは「ゴジラ・キマイラ」。

 人造巨獣「ジゴラ」は、その頭に響くオルカの不愉快な旋律に頭を痛めながら、ゆっくりとだが確実に沖縄に近づいていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。