転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について 作:アイアイホイホイおさるさん
それから三日が過ぎた朝。
ネオ琉球はタクオを捕らえる事を諦めておらず、沖縄全土に指名手配を出した。故にタクオはミヤラビ屋の外に出られずにいた。しかし、地下の琉球忍者の施設は使うことが出来たので、普段やってるトレーニングはそこでやらせて貰っていた。
「154………156………157………」
残念ながらちびゴジラはタクオにチートスキルは渡さなかった。いや、クローン体の時点で雁夜がある程度そこら辺が上手く行くよう調整はしておいたのだが、基本は鍛錬と努力で強くなっていくしかない。
ので、タクオは朝のトレーニングは欠かした事はない。日曜の休憩日以外は腹筋300回スクワット500回腕立て伏せ300回、これを毎朝やる事にしている。また数をこなして慣れたら、ここに100回ずつ回数を増やしていく。
「298………299………300!」
そして最後の腕立て300回をやり終え、タクオは洞窟の地面に転がった。洞窟内はひんやりしており、天然のクーラーとしてタクオの火照った身体を冷却してくれている。
「ヘイタクオ!お疲れ様デース!」
「リンディーさん、ありがと」
そんなタクオにスポーツドリンクを持ってくるリンディー。年の差に目をつぶれば部活のマネージャーのよう。
「………もう三日、ジョニー大藤が決めた日まであと四日か」
「ジャパンはどうするんデース?」
「どうだろ………」
ジョニー大藤は、日本政府が一週間以内にネオ琉球の独立自治を認めなければ、キングシーサーやムートーを使い日本を攻撃すると脅迫した。
独立を求める事はまず無いとタクオは考える。優先順位から考えて、自分を見捨てるだろうと言うのは冷静に考えてわかる事だ。
「いくら日本の守護者って言っても僕は一パイロットに過ぎないからね。あくまで必要なのは対怪獣ロボットを動かせる人間だから、切り捨てるとしたら僕だろう」
「ワッツ!じゃあ、アメリカに亡命したらどうデース?ワタシはいつでもウェルカムデース!」
「選択肢としてはアリだけど………でもそうしたらアメリカが日本に圧かける為に僕の事使いそうだしなあ」
「オォウ………」
出来るなら救助は出て欲しいし日本もそうするだけの努力はしてくれるだろうが、常に最悪の事は考えて行動しなければならない。
それにアメリカに亡命するにしても、まずはこの沖縄をどう脱出するかという問題はあった………が、その問題はすぐに解決する事になった。
「我々は二日後、この島からの脱出を計画している」
「まさか、沖縄を見捨てるんですか?!」
「それは違う。我々琉球忍者は最後の一人になるまで戦うつもりです。が、保護した市民の皆様を巻き込むわけにはいきませぬ」
天願から聞かされたのは、沖縄市民を極秘裏に用意した船に乗せて県外に脱出させる作戦。
それには天願達琉球忍者は勿論の事、リンディー達米軍の生き残りや、同じように逃げ延びた僅かな自衛隊の部隊も参加するとの事。そして無論タクオも参加するのだが………。
「それで君にはこれに乗って欲しい」
タクオに与えられた役割。それはコンバットフレームを使いネオ琉球の部隊と戦う。という物だった。
………ここで「コンバットフレーム」とは何かについて軽く説明しておこう。コンバットフレームとは、20〜5m前後を基本的サイズとする搭乗型ロボット兵器の総称である。
本来は対テロリスト用の市街戦戦力として開発が進められたもので、対怪獣においてその有用性が認められ、開発が飛躍的に進んだという背景を持つ。
もっとざっくりした説明をすると、イェーガーがサイズとパワーと装甲で叩き潰す所謂「スーパー系」とするなら、コンバットフレームは小回りと汎用性がウリの「リアル系」と言った所か。
「これって………!」
してタクオが乗るという、琉球忍者が地下に用意した極秘の格納庫に鎮座する一機のコンバットフレーム。
白を基調としたトリコロールの目立つカラーリングに、人面を模した
「ガンダムじゃないですか!?」
ガンダム。連邦の白い悪魔、型番のRX-78-2とも呼ばれる、あのガンダムがそこに鎮座していた。
一瞬混乱したタクオだったが、外見の細かいディテールからそれが昔お台場にあったという「実物大ガンダム」と同じ物である事に気付く。たしか、この世界では怪獣が海から上陸する危険性から撤去されたと聞いている。
「何かのイベントで使うために沖縄県が勝ったのですよ。改造してコンバットフレームにしてね」
「コンバットフレームに、ですか………」
「ある意味これは本物のガンダムと言えるかもしれませんな、コンバットフレームとして十分に戦えるのですから」
天願からの説明を聞き、タクオはこれが単なる動く巨大なフィギュアではない事を知る。
聞けば装甲もわざわざコンバットフレーム用の物に換装し、ガンダムの代名詞であるビームサーベル・ビームライフルもメーサーにより再現している。よくもまあここまで再現したものだと、タクオは感心した。
そこにいるのはまさしく、現実に現れた機動戦士ガンダムと言えた。
***
そんな事があってから、一日が過ぎた。
所変わってここは那覇市のとある高級ホテル。ネオ琉球の指導者たるジョニー大藤は、市役所ではなくこの場所こそ自らの居城に相応しいと、街を見下ろすホテルのスイートルームでふんぞり返っていた。
「へへへ、絶景かな絶景かな………今や俺を見下し馬鹿にした連中は、俺の足元にいる」
街にいる人質代わりの沖縄市民………独立が成功すれば強制的にネオ琉球の国民となる予定の人々を見下ろしながら、ジョニー大藤はほくそ笑んでいた。
………そも、ジョニー大藤が事を起こした理由の大本にあるのは、県知事を決める選挙で惨敗した事だ。
平和のため米軍基地を沖縄から撤退させる事をマニフェストとして掲げていたジョニー大藤であるが、到底現実的な事とは言えず、おまけに県外から来たハーフの彼を支持しようという者もおらず結果は惨敗。
その左巻きの思想がネットで拡散された事もあり、嘲笑に晒され失意のどん底に落とされる事になった。
「何が時代は人類一丸で怪獣に立ち向かう!だ、米軍がシマにイクサを持ち込まなければこうはならなかった!俺は正しかった!それを嘲笑ったのはお前達だ!!」
そんな時、世界的な反政府活動をしているという一人の男がジョニー大藤に接触してきた。Mr.Aを名乗ったその男から提供されたORCAにより、ジョニー大藤は怪獣という無限の力を手に入れた。そして、自分を馬鹿にした連中を踏みにじって回った。忌々しい米軍基地もキングシーサーに破壊させた。Mr.Aから提供されたムートーのクローン体も対機動兵器戦力として役立っていた。
こうして、ORCAという無限のパワーを手に入れたジョニー大藤は、イカれた負け組政治家からネオ琉球の支配者へと上り詰めた。
「約束では期限は明日までだが………もう我慢はせん、あの忌々しい
そして手に入れた力はジョニー大藤を増長させた、自身で取り付けた約束すら無碍にする程に。
ジョニー大藤はORCAを起動し、キングシーサーとムートーを本土に向け突撃させようとした。しかし………
………ぼんっ!!
「うわらば!?」
突如、ORCAは爆ぜた。爆発した。砕け散った。
ハッキングにより外部から起動したそれにはそれなりの自爆システムを積んでいたのか、顔全体に軽い火傷を負ったジョニー大藤。呆然としている彼の耳に、同じくハッキングにより外部から侵入した音声が聞こえてきた。
………やけにハッキングという行為が万能のように扱われているが、《聖戦》は元よりこうなのだ。
『私はアラン・ジョナ、反政府主義者だ。怪獣という借り物の力で慢心するお前の姿は実に滑稽だった。しかしそれもここまでだ。お試し期間は終了だ。これよりキングシーサーと二体のムートーは貴様のコントロールを離れる、私が寄贈した「プライム」もだ。では、大いなる怪獣に踏み潰されて果てるがいい、裸の王様よ』
「な、な、な………!」
ここでようやく、ジョニー大藤は自分がメフィストフェレスに騙されて契約を結んだ愚かな人間である事を突きつけられた。
そして今まで怪獣の力で好き勝手した報いは、今自分のいるホテルのすぐ近くでコントロールを離れたムートーとキングシーサーが立ち上がるという光景で提示された。
今から怪獣同士の戦いが繰り広げられるのだが、当然ながらジョニー大藤に逃げるだけの時間は残されていなかった。
***
那覇市のビル街を破壊しながら地底から現れたのはムートーのメス。オスと違い巨大な身体を持ち、空は飛ばない代わりに格闘戦に優れた姿をしている。
そして、同じく立ち上がったキングシーサーと同じく100mサイズ。歩くだけで周囲を破壊する大怪獣だ。
カロロロロロロ!!
ムートーがその大きな
当然ながら那覇市にいた人々に瓦礫が降り注いだ。
「逃げろぉぉ!」
「踏み潰されるぞぉぉ!!」
確かに、彼らはネオ琉球の暴力に怯えて何もしなかった。だがそれは仕方ない事だ、彼らはただの市民であり戦う力はない。そもそも罪のない無辜の民だ。
だからだろうか。運命の女神は彼らを見放しはしなかった。
「こっちです!」
「あ、貴方は………」
「説明は後です、さあ避難を!」
動いたのは、こんな時に備えて沖縄各地に潜伏していた琉球忍者達。彼等は構築していた避難ルートに市民達を誘導してゆく。なんてことはない、作戦の開始が一日早まっただけである。
***
同じ頃、別の場所………離島で眠りについていたムートーのオスも目を覚ました。ORCAから解放され元来の野生を取り戻し、青い海に黒い翼を広げていた。
そして本能に従い、本島・那覇にいるメスの元へと飛び立とうとした、その時。
………カロロッ?
巨大なコンテナ船が海に浮かんでいるのが見えた。ムートーはそれを見てニヤリと笑うように唸る。
結論から言うとこのムートーはまだ若く、人間の子供がそうであるように好奇心旺盛だ。だから離島の風景の中に不自然に現れたコンテナ船にちょっかいを出してやろうと思ったのだ。
カロロロロッ!!
翼を広げたムートーが、コンテナ船向けて飛びかかる。次の瞬間!
ズバビュウウン!!
コンテナの中から飛び出した光の一撃が、ムートーの顔を直撃した。何が起きたか分からぬまま、ムートーはその一撃によりふっ飛ばされ、沖縄の海に転がる。
カロ………カロロロ!?
何が起きた?何をされた?困惑するムートーの眼前で、コンテナ船から白き流星がごとく飛び出したのは、そのムートーの半分以下………18m程度しかない
兵器と言うには派手なトリコロールカラーの機体色。頭部から伸びた二本のツノ。それはおおよその分類としてのリアルロボットと言うのはケレン味が強く、かと言ってスーパーロボットと呼ぶには無骨すぎた。
「せめて行きますって言いたかったけどしゃあない………お前の相手は僕とガンダムがしてやる!」
コックピットに座るタクオは、じっとムートーを睨みつけて操縦桿を握る。
そんなタクオの覚悟と殺意を反映したかのように、メーサー砲を加工したビームライフルとチタン合金の二倍の強度を持つとされる超耐熱合金TA32のシールドと装甲で身を固めた、魔改造コンバットフレーム・ガンダムはそのカメラアイをギンッと光らせた。
ガンダム、沖縄の大地に立つ。今青い空と白い雲をバックに、日本製リアルロボットvsハリウッドの大怪獣という反則対戦カードが切られようとしていた。