転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について 作:アイアイホイホイおさるさん
プロジェクト・メカゴジラ。その走りである雁夜の対G兵器開発計画は、その渾名から分かる通り最終的にゴジラ型戦闘兵器=メカゴジラを開発・運用するのがゴールだ。
しかし、これ以外にも防衛軍日本支部内ではゴジラ打倒のための計画・研究を推し進めていた者がいる。その一人が、本来の《聖戦》においては作品内の「邪悪なヘイト国家日本」の象徴として悪行の限りを尽くすこの男
「ええいふざけるな!!このシン・日本男児たるこの俺様が隅に追いやられ無ければならん!!」
彼は自衛隊叩き上げの防衛軍日本支部の大将であり、日本支部のトップであった。所が、彼が推し進めていた対G兵器開発計画が失敗し、日本支部は対抗馬であった雁夜のプロジェクト・メカゴジラに重点を置く方向性を決定。鏑木も防衛軍日本支部長の立場を追われる事になった。
極右思想のナルシストである彼にとって、見下している相手である典型的キモオタである雁夜に負ける事や、それにより彼の掲げる時代錯誤な国粋主義・愛国主義による大日本帝国の復活が遠のく事は、これ以上ない屈辱であり恥辱であった。
「それもこれも貴様らが不甲斐ないせいだ!おいそこの研究員!ケツを出せッ!この俺様の精神注入棒を食らわせてやるわ!!」
「ひいいっ!!痛いいいっ!!」
そんな鏑木は完全に自暴自棄になり、傘下であった政府の研究機関に乗り込んできて「修正」と称した八つ当たりを繰り広げていた。
精神注入棒=ただのこん棒を振り回してわめき散らし、研究員を追い回す鏑木の目に、彼らの研究成果らしきカプセルに入った液体が目に入った。
「これは………ククク!そうだ、まだこれがあった!」
「だっ、駄目です閣下!それは副作用が………」
「ええい黙れ!!元はと言えば貴様らが失敗するのが悪いんだ!!」
そも、鏑木の計画というのは兵士自体の能力の底上げ………超人兵士を作るという計画から始まった。これはその名残、二度と戻れないという対価と引き換えに人を超人にするアイテムだ。
「見ておれアホの雁夜め!!この鏑木剛を甘く見たらどうなるか思い知らせてくれる!!グハハハハハハ!!」
汚い高笑いが響いた。
***
その日、対G兵器開発の為の会議に出席すべく久々に東京の外務省に出勤する事になった雪江は、日本の軍備増強に対して「怪獣も共に地球に生きる命なんだ!」「それは人間が持つには過ぎた力だ!」とナメきった事を言って妨害しようとする諸外国のあれやこれやに辟易としながら、国会を後にした。
話し合いの場で感情論と怒声でゴリ押しして話を通そうとする彼等のやり方を思い出す度に、雪江は頭が割れそうになった。早く帰りたい。帰って愛しの
「グハハハハハ!!貴様は相変わらずたるんだブヨブヨの身体だな!!この俺様を見ろ!!このシン・日本男児とも言うべき
その中年男性特有の弛んだ身体と、セクハラとパワハラを同時にぶつけてくる新たなストレス源の登場に、雪江は今度こそ頭が割れたかと思った。
"元"防衛軍日本支部総司令官・鏑木の存在は政府内でも話題だった。自身の失脚の責任は自身の愛国心を軽視する政府が悪いと、政治家や官僚に対して
「………何の用でしょう?"元"司令官様」
「グハハハハ!聞いた話だと貴様、あの機械人形のパイロットと付き合っているそうだな!?」
雪江も女性で官僚だという事もあり、こうなる前から何かとやっかみをかけられる事が多く、こうして因縁をつけられるのも初めてではない。というか正直うんざりしており、こうして皮肉を返しながら睨みつける程度には腹が立っていた。
「いえ、付き合っているのではなく婚約者ですが?」
「ええい黙れっ!!このシン・愛国戦士鏑木の目は誤魔化せんぞ!!女という性別を利用して未成年に手を出す小児性愛者め!!」
小児性愛云々に関しては、実際に雪江とタクオはコトに及んでいるため反論はできなかった。が、今回の失脚で度重なるパワハラと暴力とその他諸々が明るみに出た鏑木に言われても「お前が言うな」としか言えなかった。
もうこんなバカの相手は切り上げて帰ろう。そう思いながら雪江はタクシーに乗り込もうとした、その時。
「貴様はこのシン・愛国戦士、鏑木剛が成敗する!!これを見ろ!!」
鏑木が取り出した1本の注射器。何だろう?と雪江が気になった一瞬、それを首に注射した鏑木が膨れ上がり、巨大な腕が伸びてきた。
***
………かつて旧軍が目指した超人兵士・ジンラ號の再来を目指した鏑木の計画。その研究により偶然生まれた、とある培養細胞があった。
それは、絶滅怪獣であるグレイトエイプの力を人間に付与する物であり、言ってしまえば人間を怪獣にする危険な細胞。案の定人間に戻す手段はなく、それは研究サンプルとしてデータを取った後に処分されるハズだった。が、復讐に燃える鏑木がそれを手に入れてしまった。
「あれが元人間だってのか………!?」
自国は夜中。空輸されるエヴァンゲリオンのコックピットにて、タクオはその「かつて鏑木だったもの」を見て言葉を失った。
サーチライトに照らされた国会議事堂の前に陣取っているのは、それをゆうに超す大きさの巨大な猿人のような怪獣である。赤茶色の毛に禿げ上がった頭。戦化粧のつもりか、適当な場所で先に倒していたのであろう地底怪獣バラゴンの血を顔に塗ったくっている。
『グハハハハハ!そうだ!この鏑木剛は真に日本を愛する国の守り手、いわばシン・護国聖獣として生まれ変わったのだ!!』
元・鏑木………いや、我々の知る本来のモンスターバースにおいて「スカーキング」と呼ばれる怪獣そのものの姿となっている事から、この元・鏑木の事はスカーキングと呼ぶ事にする。
「たっくん!来ちゃだめぇ!!」
『ええいうるさいぞ女!!男の決闘の邪魔をするな!!』
スカーキングは国会議事堂の前に陣取り、その頂上に人質として捕らえた雪江を置き、エヴァンゲリオンを待ち構えていた。全ては、自身を追いやった雁夜や自身を冷遇した政府への、自業自得を棚に上げた逆恨みと復讐のために。
『ヒヒ、誰かと思えば変態ホモ自衛官じゃないか』
「父さん知ってるの?」
『鏑木剛と言えば有名だよ。愛国教育と称して新人男性兵士を掘りまくってるゲイのサディストだよ。俺の計画に負けて失脚したと思ってたけど、まさか怪獣になるなんてね、ヒヒ』
「うわぁ………」
『政府からヤツは殺していいって許可は出てるから、思い切りやっちゃっていいぜ、ヒヒヒ!』
「それを聞いて安心したよ」
そんな父・雁夜との会話も早々に済まし、タクオはエヴァンゲリオンのメインカメラ越しにスカーキングを睨みつけた。ハゲのチンパンジーを思わせる不敵な笑みは、タクオからすれば好きで好きでたまらない雪江を誘拐したクソ野郎の顔だ。
相手がホモだから手は出されていないだろうが、だったとしても倒すべき敵でしかない。元人間がどうかなど最早関係ない。タクオの眼前にいるのは倒すべき敵だ。
「雪江さんを放せこのホモ野郎!!!」
タクオの思わず太字になるレベルの怒りを爆発させ、エヴァンゲリオンがプログレッシブナイフを抜いてスカーキングに迫る。確実に殺すという強く鋭い意志が刀身からも漏れ出ていた。
が、腐っても相手は元自衛官にして、元防衛軍日本支部総司令。戦い方はあちらの方が上手であった。
『グハハ!!素人め、間合いが遠いわ!!』
「があっ!!」
突如、エヴァンゲリオンを衝撃が襲った。スカーキングの手に握られていたのは巨大な精神注入棒………のように構えた、巨大なタンカー船である。対怪獣用に頑丈に作られたそれは、普段から気に入らない兵士への虐待で棒を使い慣れた鏑木=スカーキングからすれば、ぴったりの武器であった。
「ちいっ!だったら!」
『グハハハ!銃なんて使っていいのかね!?』
「あっ………!」
ならばとパレットガンを取り出したエヴァンゲリオンの前で、スカーキングはわざと国会議事堂の上の雪江を見せつけた。おびえる彼女の姿は、飛び道具なんて使えば彼女を巻き込むぞ?というスカーキングからの脅しである。
「人質のつもりかよ、卑怯者!」
『グハハハハ!卑怯もラッキョウもあるものか!我が愛国精神のためなら女の官僚が一人や二人死のうがそれは尊い犠牲!!グハハ!!』
屁理屈にしか見えない答えを投げつけた後、スカーキングは同じぐらいの勢いでタンカーを振り回し、抵抗できないエヴァンゲリオンを暴打する。一撃一撃が飛ぶ度に、ガキンバキンという装甲が悲鳴を上げる音が響いた。
『グハハハハ!そう!俺様こそが愛国!!日本そのものなのだ!!それに逆らうならお前も売国奴だ!!俺様の敵はすなわち日本の敵!!真に日本のためなら俺様に従え!!グハハ!!グハハハハハ!!』
なんたる傍若無人だろうか!だが、これが鏑木の言う愛国心の正体=歪みきった極端なナルシズムなのだ。
そして主張こそ滅茶苦茶だが力は本物。何度もタンカーで殴られたエヴァンゲリオンは、蓄積したダメージの為か全身からスパークを出し、その場に倒れ込む。
「ぐうっ………くそっ!」
コックピットのタクオは、機体の異常を知らせる警告音で赤く染まるコックピットで、砂嵐が混ざるモニター越しにこちらを見下ろすスカーキングを睨みつけた。
「たっくん!!!」
たまらず雪江が叫んだ。そうした所でどうにもならない事ぐらい、彼女が一番解っていた。けれども彼女の深層心理までに達する様々な感情が、自分のせいで愛する少年を失おうとしている彼女に叫びを上げさせた。
そして………これが運命の気まぐれか、またはタクオの転生により生じた因果律のバタフライエフェクトだったのかは分からないが、天に彼女の祈りは届いた。
『グハハ………ハ!?』
瞬間バチンッとスカーキングの腕が、光と共に焼き切れた。切断された腕諸共タンカーが地面に落下した。
「あれは何だ!?」
周囲を取り囲んでいた防衛隊の戦車部隊の1人が叫んだ。指さした先は上空、月を背にこちらへと飛んでくる巨大なヒトガタがあった。それは黒く、エヴァンゲリオンと違いマッシブな………身も蓋もない事を言うとビースト覚醒版のオプティマスプライマルのロボットモードまんまの姿をしていた。
『き、貴様!このシン・愛国男士たる鏑木剛の………あぎゃあああ!?』
そして大地に降り立つと、問答無用でスカーキングに対して両腕のメーサー
『あぎゃ………あぎぎぎ………ぎっ』
そしてしばらくの痙攣の後、スカーキングはピクピクと痙攣し、そのまま白眼を剥いて倒れてしまった。スカーキング鎮圧完了。
ほどなくして防衛隊の部隊によりスカーキングの死体が包囲され、雪江は救助の部隊により助け出され、今回良いとこなしだったタクオは黒いロボットを何だと見つめていると、突然コックピットに通信が入る。
『ヘイ!ジャパニーズボーイ!それがジャパンのイェーガー?中々にタフデースが、ワタシの「メカニコング」も負けてマセーン!』
「うおっ………!」
イェーガー、と言うのが英語圏における対怪獣用巨大ロボット兵器の総称である事はタクオも知っていたが、何より気を引いたのはその似非外国人ボイスと共に通信に現れた、黒いロボット=メカニコングのパイロットたるショート金髪のメリケン娘である。
テンガロンハットにセパレートのへそ出しルックに巨乳という、今の時代では人種のステレオタイプだとしてヘイト表現に引っかかるようなこの彼女………ケロロ軍曹のメロディー・ハニーやガオガイガーのスワン・ホワイトの系譜の見た目とキャラの彼女は、嫌でもタクオの気を引いた。
「ワタシは「リンディー・ダーレス」。ハゥワーユー?ジャパニーズプリティーボーイ♡」
見た目がエロと性癖の極みだと言うのもあったが、何を隠そう彼女はアメリカ大統領令嬢なのだ。