転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について 作:アイアイホイホイおさるさん
ここは、北海道は屈斜路湖。
かつては未確認生物のクッシーがいるという噂が流れ賑わいを見せたが、それも昔の話。今は静かで雄大な自然の広がる観光地………の、はずだった。
この付近の地層から、湖の湖底まで続く謎の地下遺跡が発見されたのだ。それと同時に、屈斜路湖周辺に未知の怪獣の目撃情報が多発。程なくして遺跡と怪獣の両方の調査をするべく、両方の技術に明るいNIGODに白羽の矢が立った………。
***
「やってきました北海道!」
「観光じゃないですけどねー」
仕事で観光地である屈斜路湖に来れてご満悦の雪江と、仕事である事を自覚しているのであまり乗り気でないタクオ。しかしちゃっかり二人とも付近の売店で買ってきたアイスクリームを召し上がっている辺り浮かれてはいるようだ。
「というか、なんで雪江さんまで来てるんですか」
「権限よ。それに愛する旦那様が行く所、どこでもついていくのが出来たお嫁さんってもんでしょ?」
端から見れば親子でしかないのは置いておいて、さてそんな二人が同行してきたNIGODの調査隊は、地質や歴史、様々な角度からの遺跡の調査を行っていた。そして、調査と推理と研究の果てにある事実が明らかになった。
「間違いじゃないのか?」
「はい、この遺跡はどう考えても二万年以上前に造られた物です」
「バカな!?縄文時代だって1万3000年前だぞ!?それより前に誰がこんな遺跡を………!」
見つかった遺跡は、日本最古の文明である縄文時代のそれよりも前の物だった。それだけでなく、神殿と思われるその遺跡は広く、精巧であり、屈斜路湖の中まで続くほど広大だ。
一体誰がこれを作ったのか?そんな疑問が調査隊に広がったその時。
「あれっ?」
「どうした?」
「湖に放ったドローンが次々と機能停止して………ああっ!アレは何だ!?」
調査隊の一人が指を差した先は、今まさに泡立っている屈斜路湖の中心。まるで湖底から何かが浮上しようとしているかのようだ。
「ソナーに反応!上がってきます!」
そして屈斜路湖の水面を割り、巨大な姿が晴天のもとに現れる。
キキィーーッ!!キキィェーーーッ!!
それは真っ白な身体に稲妻のような黒い模様と、三日月のような角の生えた異質な怪獣であった。
まるで牛とナメクジを合体させて二本足で立たせたような姿で、長い尻尾が水中から踊るようにうねっている。
「なんだアレは!?」
「見たことのない怪獣だ!」
調査隊は驚愕と混乱に包まれた。あの怪獣はそれまでの歴史上出現した事のない、まったくの新種だったのだ。
だが、その怪獣の事を知っている人間は、ここに一人だけいた。タクオである。しかしそのタクオも、ここにこの怪獣がいるという状況には混乱するしかなかった。
「(バカな!?なんでエレキングがここにいるんだ!?《聖戦》が引用した作品にウルトラシリーズは無かったハズだ!!)」
その怪獣は、タクオが生前「宇宙怪獣エレキング」として見知った怪獣である。ゴジラシリーズや東宝特撮映画の怪獣ではなく、生みの親を同じ円谷英二とする姉妹作と言えるウルトラシリーズの一つ「ウルトラセブン」に登場する、つまるところのウルトラ怪獣の括りで分類される怪獣である。
しかし《聖戦》が引用した作品の中にはウルトラシリーズは無い。本来ならエレキングはこの世界に出現するハズがない怪獣なのだ。だが、タクオの眼前には屈斜路湖に陣取るエレキングの姿がはっきりと見えている。
「たっくん!エヴァンゲリオン発進よ!!」
「はっ、はい!!」
しかしそんな事は気にしてもいられない。まずは眼前のエレキングをどうにかしなければならないのだ。
雪江に手を引かれたタクオは、怪獣退治のためにあらかじめ持ってきていたエヴァンゲリオン運搬車両………その場で仮設の基地にもなるクソデカトレーラーへと向かう。
そしてタクオがエヴァンゲリオンに乗り込み、荷台が某パトレイバーのそれのようにリフトアップし、エヴァンゲリオンの機体が立ち上がった。
「エヴァンゲリオン………発進ッ!!」
タクオがエヴァンゲリオンを突撃させる。固定が解かれてトレーラーから出撃した80mの巨体が、上陸しようとするエレキングの前に「待った!!」と言わんばかりに立ち塞がる。
対峙した事で分かった事だが、このエレキングも本来の大きさと比べるとかなり大型である事が分かる。80mのエヴァンゲリオンと対峙できる程なのだ、軽く見積もっても100mはあるだろう。
キキィーーッ!!キキィェーーーッ!!
エレキングが、そのバイザーのような口からカッター状の光線を発射。エヴァンゲリオンは咄嗟に避けるが、足元に光線が命中し炎上する。
「この野郎!!」
飛び道具には飛び道具だと、ウェポンラックからパレットライフルを取り出し撃とうとした、その時。
「うわあ!?」
突如、エヴァンゲリオンは体勢を崩して屈斜路湖の湖底へと引きずり込まれた。知らぬ間にエレキングが足元へと尻尾を伸ばし、エヴァンゲリオンの足に巻き付かせていたのだ!
そして………水中に引きずられる刹那、拓夫は行きの飛行機で雪江と交わした会話を思い出していた。
『約70キロ………広いんですね屈斜路湖って。深さはどれぐらいあるんですか?』
『最深で118m。シン・ゴジラが収まるぐらいね。まあエヴァンゲリオンで水泳するぐらいには丁度いいと思うわ』
『そんなドラえもんの映画じゃないんですから………』
そう、屈斜路湖の深さは最深118m。エヴァンゲリオンが80mである事を考えると、いくら機体がすっぽり入るとはいえ、ここまで深く引きずられるのはおかしい。
「このっ!!」
キキィィ!!
エヴァンゲリオンがマゴロクEソードを引き抜き、エレキングの尻尾を切断した事でようやく解放された。
そして改めて周囲を見てみると、なんと屈斜路湖の底が抜けてエヴァンゲリオンが水泳所かダイビングできるような深さの空間が広がっているではないか。
………考えるまでもなく、これが屈斜路湖の本来の姿であり、エレキングはこの下に潜んでいた。それが崩れた事でエレキングは地上に姿を現し、屈斜路湖は湖底が崩れてこの姿を現した。と、タクオは仮説を立てた。
この世界に転生し、14年を過ごした為についた予測だ。大怪獣時代において、怪獣が原因で既存の地理や学説がひっくり返る事など珍しくない。
キキィーーッ!!キキィェーーーッ!!
そんな空間を泳ぎながら、エレキングが高速で突っ込んできた。おそらく再び尻尾でエヴァンゲリオンを捕らえるつもりなのだろう。
………エレキングはデンキウナギのように全身に放電器官を持つ怪獣であり、その長い尻尾で相手を締め上げ、放電するという戦法を得意とする。現に「ウルトラセブン」本編では、セブンの仲間怪獣である「ミクラス」をこれでダウンさせていた。
「来るか!!」
そしてそんな物を黙って食らってやるタクオではない。水中でパレットライフルは使えない為、マゴロクEソードを構えて突進。そしてエレキングが急速接近したと同時に、一陣。
キッ………!?
すれ違いの一瞬。尻尾ごと真っ二つにされたエレキングが、断末魔すら上げずエヴァンゲリオンの後方へ二つに分かれた死体となり流れてゆき、消えた。
肩のウェポンラックに汎用ブースターを増設しておいたのが助かった。この水中戦を制したのはエヴァンゲリオンだった。
「………それにしても何だ?ここは………」
邪魔者のエレキングもいなくなった事で、改めてタクオは周囲を見渡す。広い水中空間が広がり、エヴァンゲリオンはそこをゆっくりと下降してゆく。
そして届く光が無くなった深水の水域に到達したその時、タクオはエヴァンゲリオンに設けられた赤外線カメラ越しに「それ」を見た。
「これは………!?」
それはナスカの地上絵を彷彿とさせる、建造物で作られた巨大な魔法陣のようにも見えた。複雑怪奇ないくつもの図形を組み合わせた円形のオブジェが湖底に広がっていた。しかもエヴァンゲリオンよりも大きい………規模で言えば街にも相当する広さだ。
『タクオ君どうしたの!?何を見たの!?』
「雪江さん、街だ!屈斜路湖の底に街がある!!エヴァンゲリオンのメインカメラの映像を見て!!」
興奮気味に叫ぶタクオは、決して考古学に詳しい訳ではない。だが、これが世紀の大発見である事は解ったし、何より転生者が故にこの世界がモンスターバースの
この世界にも
「えっ、な、何だ………!?」
その時、異変が起きた。
屈斜路湖湖底に広がる「街」が、建造物の魔法陣がぼんやりと青白く光った。まるで、この「街」そのものが起動するかのように。
『タクオ君!どうしたの!応答しなさい!』
「雪江さん………街が動いてる。街が、光が広がって………」
『タクオ君!どうしたの!タクオ君!たっくん!!』
やがて光は広がり、タクオの視界を飲み込んでいった。
光の点滅を見て気が遠くなり、タクオの耳に響く雪江の声が遠くなっていった。
そして………雁夜タクオとその乗機エヴァンゲリオンは、忽然と姿を消した。
***
………長い夢を見ていた気もする。
意識の混濁から目覚めたタクオは、ブラックアウトしたモニターを前に、愛機エヴァンゲリオンが機能停止状態にある事に気付く。
「僕は………どうしたんだ?どうなった?」
タクオは咄嗟に脳内で緊急事態時のトラブルシューティングを思い出す。NIGODでパイロットをやる内に叩き込まれた、こういう時にはどうすればいいかの行動を思い出し、予備電源システムを起動し、状況確認のための最低限のシステムを起こす。
するとブラックアウトしていたモニターが点灯し、周囲の光景を映し出した。
「ここは………!?」
しかし、そこに広がっていたのは屈斜路湖の湖底ではなかった。一言で言うならそこは、異星の荒野と言うべきか。岩肌の露出した砂色の大地がどこまでも広がり、大気のある青い空にはいくつもの惑星が透けて浮かんでいた。
空の様子を見てタクオはすぐに理解した。少なくともここは地球ではない。
「冗談だろ………異世界転生の上に異世界転移とかジャンルごちゃごちゃだよ、読者が混乱するからやめろよ………!」
タクオは頭を抱えた。少なくとも今のタクオ個人に、元いた地球に帰還する能力はない。それ以前にここが何処だかも分からない。異星ならまだいい方で、異世界や異次元の場合だといよいよ帰還の確率は本格的にゼロになる。
しかし、この時タクオはある意味運が良かったと言えるだろう。無駄に時間があれば悩み詰める所、その暇を与えない新しいトラブルが舞い込んでくれたのだから。
ズシンッ………ズシンッ………ズシンッ………
地響きが聞こえてくる。それなりの期間怪獣と戦ってきたタクオはこれを怪獣の足音だと予測したが、その通りの答えが荒野の岩山の影から姿を現した。
ゲゲェェーーーン!!
それはエレキングと同じ「ウルトラ怪獣」に分類される、3本の角とバラゴンからスーツを流用した身体が特徴の「ネロンガ」に酷似した姿をしていた。だが同時にタクオはそれが「怪獣」ではなく「禍威獣」のカテゴリーである事も理解していた。
映画「シン・ウルトラマン」に登場する生物兵器「透明禍威獣ネロンガ」が、その正式な分類になる。大きさも80mクラスの巨体を持ち、エヴァンゲリオンを餌と認識しているのか、真っ直ぐこちらに近づいてくる。
「しまった!奴は電気を食べるんだ………!」
エヴァンゲリオンをただの鉄の塊にされては敵わないと、タクオはエヴァンゲリオンを起こそうとした。
しかしモニターに出たのは、起動するだけのエネルギーが足りない事を意味する「EMPTY」の文字。
「しまったガス欠………!?」
エレキング戦で消耗しすぎたらしい。動けないエヴァンゲリオンをじりじりと追い詰めるように、ネロンガは一歩、また一歩と迫ってくる。
ここまでか。タクオの表情に諦めが浮かんだ、次の瞬間。
どぉッ………ん
一瞬、頭上に赤い光が見えたかと思った次の瞬間、エヴァンゲリオンの前方に何かが落下。衝撃と土煙が上がり、ネロンガの巨体が吹き飛ぶ。
呆然とするタクオの眼前で、土煙の向こうで巨大な影が立ち上がるのが見えた。
「まさか………ウソだろ………!?」
それはエヴァンゲリオンに似た巨大なヒトガタに見えた。しかしロボット然としたエヴァンゲリオンと違い、そのデザインはシンプルかつより洗練されているように見えた。
白銀の金属質な体表に赤い
「………ウルトラマン!?」