転生したら黒歴史なゴジラ映画だった件について   作:アイアイホイホイおさるさん

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第8話

 怪獣退治の専門家、宇宙の秩序の化身、ぼくらのヒーロー、来たぞわれらのウルトラマン。

 どのような大義や過程があれ転生オリ主という、ウルトラシリーズを筆頭とする非オタク向けの正しい作品群(ふつうのさくひん)の倫理観や正義で言えば侵略者以外の何者でもない立場な以上、タクオとしては個人的な憧れは置いておいて極力関わり合いになりたくない相手でもある。そのウルトラマンが今、エヴァンゲリオンを襲おうとしたネロンガの前に立ち塞がり、対峙していた。

 

 ゲゲェェーーーン!!

 

 吹き飛ばされて怒ったのか、ネロンガがその巨体をドタドタと揺らしながら突進してきた。対するウルトラマンは無駄に動かず、ネロンガが懐に入った瞬間頭を掴み、突進の勢いを利用してそのまま転ばせてしまう。

 

 ジェアッ!!

 ゲゲェン!?

 タアッ!ヘアッ!!

 

 倒れたネロンガにさらなる追撃を入れるウルトラマン。相手に反撃のスキを与えず、一方的に空手チョップを浴びせる。全ての攻撃に無駄がなく、少しの動きからも戦いの年季の違いを知れる。

 そしてネロンガが完全にグロッキーになった所に、腕を十字に組む。あの必殺技だ。

 

「スペシウム光線だ!」

 

 タクオの実況通りガーーッという効果音と共に照射される自慢のジェット、ウルトラマンの代名詞にしてライダーキックと並ぶ日本一有名な必殺技「スペシウム光線」が、ネロンガを直撃する。

 数度火花を散らした後、ネロンガは地面に倒れる。そして大爆発を起こし、四散。周囲に焼けた肉片が飛び散り、炎の中に崩れる禍威獣を前に、ウルトラマンが勝利した。

 

「ウルトラマンは勝った、が………!」

 

 間近でウルトラマンの勝利を見たタクオであるが、こちらを振り向き、見つめる銀色の目を前にして、相変わらず緊張は解けなかった。

 先も言った通り今のタクオはウルトラシリーズの基準で言えば立派な侵略者であり、その銀河を切り裂く正義の刃の切っ先が自分に向けられる可能性は十分にあるのを自覚していた。

 ましてや、今の自分には動けないエヴァンゲリオン以外の防御手段は無い。さあウルトラマン、どう出る?どう裁く?そんな緊張感が走った。

 

『………私の名はリピアー、ある宇宙ではウルトラマンと呼ばれている。はじめまして、地球からの客人よ』

 

 そんなタクオの緊張を他所にまず、ウルトラマンが名乗った。タクオはそれがウルトラマンなりの敵意の無さの表現である事を察すると同時に、彼がよく見れば自分の知るいわゆる「初代ウルトラマン」とは別人である事に気付いた。その胸にはウルトラマンのトレードマークであるカラータイマーが無かったからだ。

 リピアーと名乗った事もあり、彼は映画「シン・ウルトラマン」のウルトラマンなのだと分かる。だが、彼はこの赤いラインの通った姿で故郷に帰還する事は叶わなかったという事を考えると、近年のウルトラシリーズでよくある並行同位体………マルチバースの同一人物という事なのだろう。

 

『まずは我々の船に来て貰いたい、そのロボットも一緒に。詳しい話はそこで聞いてもらおう』

「………それは、どうも」

 

 ウルトラマンは動かなくなったエヴァンゲリオンを優しく抱き抱えると、そのまま足裏の反重力装置を作動させ、流星のように天空へと舞い上がった。

 タクオは離れていく地表と暗くなっていく空に目をやり、彼が敵でない事とエヴァンゲリオンが宇宙を含めた全領域で運用できるよう設計されていた事を心の底から感謝した。

 

 

 ***

 

 

 ある異星を出て宇宙空間に出たウルトラマンとエヴァンゲリオンを出迎えたのは、いくつものパネルを組み合わせたかのような葉巻型のひどく巨大な宇宙船だった。

 ウルトラマンが豆粒のように見える巨大な母艦の周囲を、小型の(それでもウルトラマンと比較するとかなり大きい)同デザインの宇宙船が取り巻くように飛んでいた。ウルトラマンはその内の一つに、自分とエヴァンゲリオンを運び込んだ。

 

 エヴァンゲリオンが運び込まれた宇宙船の格納庫は無重力空間だった。だからタクオは80mあるエヴァンゲリオンから安全に降りる事ができた。

 

「こんちには、異星の方!」

「こっ、子供………!?」

 

 その時、タクオを出迎えたこの船の乗組員である宇宙人達であるが………基本的な見た目は人間のそれであったが、髪は皆白く、瞳は黄色く、一番の特徴としてその全員が13歳前後の子供の姿をしていた。まるで子供の国のようだった。

 

「彼らミレニアン星雲人は君達基準で言う子供の姿のまま大人になるんだ。こう見えても彼等は君よりもずっと年上だ」

「あなたは………ウルトラマン?」

「ああ、かつて命を与えた男の姿を借りている」

 

 そんな「ミレニアン星雲人」の人々とは打って変わっての低く、落ち着いた声が聞こえてくる。タクオの視線の先に居た、スーツ姿の背の高いその男はどことなく俳優の斎藤工に似た美丈夫であった。

 タクオは「シン・ウルトラマン」を既に履修済だった為、それがウルトラマンに変身する神永新二の姿である事を察した。それが、そねはウルトラマン本人による擬態だという事も。

 

「結論から言うと、君の来訪はこのミレニアン船団の一人が既に察知していた。案内のついで、君がいるこの船団が置かれている状況について話そう」

「………ありがとうございます」

 

 ウルトラマン………改めリピアーに宇宙船を案内される最中、タクオはリピアーからこのミレニアン船団が何者か、今どんな状況なのかを聞かせてもらった。

 

 彼らミレニアン星雲人は既に母星を失い宇宙を彷徨う流浪の民だと言う。また、このような存在は宇宙において珍しくないらしい。

 ………その原因たる《聖戦》の真の主役と言える黄金の三つ首竜が原因である事は、タクオにも察しがついた。

 ミレニアン星雲人は、その有り余る科学力でこの巨大な宇宙船団を第二の故郷とし、そこで子を産み、育て、そして死んでいった。

 そんなある日、彼らミレニアン星雲人は他文明から戦争を仕掛けられた。発達した科学力を持ってしても、彼らとの戦力の差は圧倒的に過ぎた。多くの船が破壊され、命が失われ、事態の収拾の為にリピアーが派遣され今に至るという事らしい。

 

「通常光の星は文明間の戦争には介入しない。問題はミレニアン星雲人を襲っているのが金星人………宇宙各地で侵略と破壊を繰り広げ、勢力を拡大している連中だと言う事だ」

「金星人………ですか」

「ああ、君の住む地球のある太陽系に起源を持つ知的生命体だ。彼らも星を滅ぼされ、宇宙を彷徨っている」

 

 ミレニアン星雲人を追い詰めている勢力の名を聞かされた時、タクオは正直「やっぱりか!」という気持ちになった。

 ………そも《聖戦》における問題の一つに、日本が異星人と結託して世界征服をしようとする悪の帝国になるというのがあるが、その異星人というのが金星人。地球人の登場以前に太陽系を支配した超文明の持ち主なのだ。

 

「気にする事はない。連中が太陽系の出であるだけで、地球と金星は別の星だ。蛮行の責任は蛮行を犯した金星人にある」

「………そう言ってくれると嬉しいです」

 

 当たり前だが本編と変わらぬ悪辣ぶりに、タクオは一周回って感心した。《聖戦》において金星人の最終目的が地球を征服して失った故郷の代わりにするという物だったが、まさか地球に来る前も侵略戦争を繰り広げていたとは。それも、同じような流浪の民を相手に。

 

「そして君の来訪を予見したのが、この部屋にいる巫女だ」

「巫女?宇宙船に?」

「ミレニアン星雲人は科学文明人であると同時に、シャーマニズムを思想の根底に持つ宗教民族でもある。大体一つのグループに一人巫女が居て、予言や占いでおおまかな政治を決めているんだ」

 

 リピアーとそんな話をしながら、気がつけばそのミレニアンの巫女なる存在がいる部屋の前にタクオは来ていた。

 

「巫女はこの先にいる。彼女は君に会いたがっている」

「僕に、ですか………」

 

 やがて扉が開く。巫女というぐらいだから神殿のような空間が現れるのではと予測していたタクオであったが、そこに広がっていたのは机が一つにベッドが一つという、子供の勉強部屋を思わせる意外にも簡素な部屋であった。

 

「………はじめまして」

 

 して、そこに居た「巫女」であるが、小さな背丈に白髪に黄色い瞳というのは他のミレニアン星雲人と同じである。しかし格好は地球のセーラー服に似た衣服に身を包み、赤い髪飾りで結った長いツインテールと、巫女と言うよりはよくいる美少女キャラと言った印象。

 全体的に某電子の妖精を温和な表情にしたような印象を受ける。凹凸の少ない庇護欲をそそる少女体型も同じだ。声も聞いていて安心感を与えるウィスパーボイスで、初対面だというのに色々と心を開きそうになってしまう。

 

「私は「イオ・ミレニア」、この第2000番船の巫女をしております。あなたをお待ちしておりました………"佐藤拓夫"さん」

「なっ………?!」

 

 久方ぶりに前世での名前を呼ばれ、タクオは思わず声を上げる。どうやらミレニアンの巫女というものは、タクオが想像するイメージの通り色々と解るようだ。

 

「………リピアーさん。しばらく、彼と二人で話をしたいのですが、よろしいですか?」

「それなら貴女の意見を飲もう、ミレニア」

 

 リピアーが部屋を後にした。扉が閉じられ、部屋にはタクオとイオが2人きりで残された。

 タクオが啞然としている間に、イオが部屋の中心に座布団らしきものを敷いていた。どうぞおかけになって。と彼女が表情で促した事もあり、タクオは警戒しながらも座布団に座る。そんなタクオに向かい合う形で、イオも座布団に座った。

 

「いいんですか?僕と二人きりにして。僕、悪者かも知れないんですよ?」

「心を見れば、あなたは悪い人じゃないって解りますから………」

「………どこまで解るんです?」

「どこまで、かは解りません………ですが、巫女という立場上、色々な物が見えちゃうんです。その人の未来、人となり、過去、魂………貴方の知る言葉で一番近いものを挙げるとすれば、ニュータイプ能力というものがそれに当たるでしょうか」

 

 本人にも把握はできないにしても、タクオの想像するシャーマン的な物におおよそ似通った能力を持っていると考えて間違いないようだった。

 それなら、少なくとも未来の事が分かるなら聞かなければならない事が一つある。

 

「じゃあ教えてほしい。僕は地球に帰れるのか?僕は帰らなきゃいけないんだ!」

 

 少なくとも今世の地球には、タクオは未練も執着もある。あそこには自分を愛してくれる人が居て、怪獣から人々を守るという責任もあった。

 もし、自分が居ない間に日本に強力な怪獣が上陸してしまったら?そうでなくとも、雪江と自分の婚約が取り消されて別の男に奪われたりしたら?不安は次から次へと湧いてきて、タクオは気が気ではなかった。それが、一度は前世を捨てた身としていかに虫のいい話かも理解した上で。

 

「………安心してください、あなたは帰れます」

「それは、本当なのか!?」

「ええ………しかし、近い将来である事は分かるのですが、何時、どのようにして帰れるかまでは、私にもわかりません………」

 

 帰れるという未来は解った。しかし、詳しい詳細までは解らなかった。

 それに安心もできなかった。未来という物は変えられてしまうものというのは、タクオはそれまで見てきた多くのアニメや特撮作品から学んだ。何かの弾みで未来が変わり、帰れなくなる可能性だって十分にあるのだ。

 ましてや、詳細の不確かな未来予知だ。拓夫の不安は拭えなかった。

 

「ですが、ご安心ください………この船団にいる間の貴方の身の安全は、私、イオ・ミレニアの権限の元で保証しますので………どうか、ご安心を」

 

 ただ一つ明らかな事は、未来が変わるか変わらないかはさておき、その時が来るまでタクオはこのロリータ異星人巫女イオ・ミレニアの世話にならなければならないという事だ。

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