エミコは話を始めた。
「昔、昔の話っす」
「神隠しという現象が起きました」
「まぁここまでは先生も知ってると思うっす」
「けどこの神隠しの話裏があるんっす」
「後々ヴァルキューレとかの方が調べてわかったらしいっすけど」
脈拍が上がる。
脳が警鐘を鳴らす。
ごくり、と喉を通る唾の音が頭に響く。
……何故か。
何故かわからないけど。
嫌な予感がする。
これを、知ったら、戻れない、よう、な。
「……先生?」
”大丈夫、話を続けてエミコ”
「?」
そうだ、もう私には逃げ道はない。今までは何回も何回も逃げ道自体はあったが。
それでもここに居るのは。
”もう覚悟が決まっているからだ”
心の中で呟いたその言葉は身体に滲み染み込んでいった。
「ま、まあ、先生がそう言うならいいっすけど……とりあえず言いますっすね」
”うん”
「後々ヴァルキューレで分かった事実、それは」
「…………最初の神隠し、殺人事件だったんっすよ」
"……うん"
「驚かないんっすね」
”覚悟が出来ているからな……”
「そうっすか」
それだけ言ってエミコはまた話を続けた。
「私はこれ聞いたときは驚いたんっすけどね」
「なんで殺人事件が起こったのかとかそんなに簡単に死ぬことってあるのかとか…言いたいことは色々あるんっすけど、確実に言えるのは」
「神隠しの最初は神なんかが起こした曖昧なものじゃなくて殺人事件っていう明確な事件ってことっす」
「………その後、不定期に1人、1人と人が居なくなることが起きたらしいっす」
「亡霊とかじゃなくてなんで神隠しになったのか…なんて昔のことすぎて今の私には分からないっすけど」
「とにかく最初の事件から神隠しは起こって、人が消えていったんすよ」
「そこからは先生の知ってる通り、神隠しを収める為に神社とお供えものをする部を建てて…狙い通りかは分からないっすけど神隠しは終わったって話っす」
「……神ってやつはその事を知ってるらしいっすけどね」
"神は…神は一体何者なんだ?"
「分からないっす、本人が言うには神そのものではなくてまた別の存在らしいっす」
「他には夢を作り上げて、先生みたいに人をループさせる能力があるっすけど…」
「ただ言えるのは神を騙ってるあいつは性根が腐ってて人を絶望させることが目的ってことっす」
なんで絶望させたいか知らないっすけどねとエミコは付け加えて彼女の説明は終わった。
"……そういえば神の使いってなんなの?"
「あーそれは簡単なことっす」
「先生も多分知ってるっすけど、たまに人に出会うことがあるじゃないっすか」
セリナやカンナのことだろうか…?
"あぁ…確かに会った"
「この世界って基本的に神の作った夢の世界なんで、夢に入らせた人の記憶に居る人を出せたりできるんすよ」
ほら、夢って基本記憶から生まれるものっすからと補足をしながら話すエミコ。
「その人は神の操り人形、ある程度その人の記憶に合わせて動かしてそして急に攻撃したりさせてその人を絶望させるんすよ」
「その人達を神の使いって私は呼んでるっす」
"なっ!?"
驚きともに納得が入る、この世界…いやこの夢の違和感の正体それがわかった。
"私はセイアの夢の世界に居たから現実と夢の違和感に気付いたんだ…"
それとカンナのこともそうだ、急に攻撃したりしたのはそういうことか。
セリナの事はわからないが……あの後ループしたのを考えると何かあったのは間違いないだろう。
「まぁ別に今更驚く話じゃないっすよって言っても無理な話っすけどね、神はそういう悪辣な手を使うクソ野郎っすからいつもの手口っす」
「先生も気をつけてくださいよ」
そう言った直後にエミコは急にむむむと首をかしげ。
「でも神の使いじゃない人…それも先生が居るなんて…多分私と先生の夢がくっついてこんな形になったんすかね?」
「記憶に居た存在を操るから記憶に居ない先生がなんでここにいるのか不信感抱いてたっすけど」
"……エミコがさっき言った通り、多分私の夢とエミコ夢がくっついてこんな形になったんじゃないかな?私はこの学校の内装とか知らないし……"
「そんなところっすかね?」
そうしてこのループの最初から感じていた違和感の悩みが解決されたのだった。