先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな?   作:ミサキル

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「まぁ会って早々ですまないんだけどね」

 

ゾワッと声を聞いただけで背筋が冷える。

 

「ご褒美でもやろうかなと思ったんだ」

"ご褒美……?"

 

あの、ナニカが語るご褒美。

ご褒美とはなんだ?目に見える報酬か?それともこれから先使えるかもしれない情報か?それともただ絶望させるための仕掛けか?

ぐるぐるとぐるぐると頭に思考が流れ混む。

 

「いやいやそんなものじゃないよ」

 

バチンッと思考を断ち切るように声が聞こえる。

カツ、カツ、と硬い足音を響かせこちらに近づいてくる。

反応したのはエミコだった。

 

「―――ッ!!!」

"エミコ!?"

 

エミコが突っ込んで行く、あまりの速さに表情も、顔も、行動さえも見えない。

 

「あぁ…そういう感じね」

 

に、対してだ。

余裕そうなナニカは片手を出した、それだけだった。

エミコが吹き飛ぶ。

数メートル、いやそれ以上。まるで何かに引っ張られたように数メートル先までぶっ飛んでいく。

 

"エミコ!?"

 

駆け寄ろようとしたその時、ナニカはもうエミコの目の前に立っていた。

さっき、エミコに一瞬視線を合わせてた時ナニカから視線を外した瞬間。

もうそこにはナニカは居なくエミコの前に居た。

 

「まぁそうなるなよ」

 

悠々といっそフランクに話しかけるナニカ。

 

「ただ、ご褒美をするって話なのにさ」

「前置きが長くなったね先生、早速ご褒美といこうか」

 

震える、この存在に、このナニカに認知されているという事実に。

その事実を認めたくないと体から防衛本能がでる。

ガタガタと、足を震わせてしまう。

それを気にもとめずナニカはまるでエンタメのように語った。

 

「実はエミコって子は隠し事しててね」

「その隠し事は―――」「やめ」

 

静止は聞こえなかった、ただナニカの声が妙に刺さるように聞こえた。

 

 

 

 

 

「1年前に死んで、神隠しの被害者としてここに来てるんだ」

「そして、先生君が…今回の神隠しの被害者なんだよ」

「それも全ては黄エミコが仕組んようなものなんだけどね」

 

そう、まるで黒幕が正体を晒すシーンのようにいっそ小物臭く滑稽な程全て笑いながら話したのだった。

 

 

「そもそもの話、先生はどこまで知ってるのか曖昧なものだから」

「これを話してもちっとも伝わらない可能性を覚悟してたんだけど……その顔をみる限りその心配はいらなかったようだね」

 

そう笑っているナニカの目に映る私は…きっと酷い顔をしているんだろうな。

そう他人行儀にみることでなんとか心の傷を塞ごうとしている自分に今気づいた。

 

"なんで……なんでそんなことを?"

 

絞り出した声は枯れ枯れで秋の葉のようだった。

 

「―――」

 

エミコは答えようとはしない、倒れたまま何も言わず蹲っていた。

 

「話してみようよ、黄エミコ、君が望んだことだろう?」

"望んだ…?"

 

エミコは話さない、ただその暗い表情の奥に見えたのは小さな涙だけだった。

動けない、この涙を見ても、動けない…いや動けないんじゃない、固定されている。

足が、体が、まるで標本にある動けない蝶のように固定されている。

 

「今更気づいたの?」

 

と笑いを堪えてるナニカが喋る。

 

「何かされたら困るからね、まぁ何かできるとは思えないけど」

 

少し声のトーンを下げ頭をこくりと下げたと思ったら。

 

「嗚呼……にしても堪らないね、ここは暇だしさぁ!」

 

ガバッと顔を上げ狂ったように笑い、語る。

 

「こうやって人が何も出来ず、それを笑えることぐらいしか暇つぶし出来ないんだよ!」

 

ニヤリとひと笑いした後にこちらに目を向け。

 

「何も出来ないなら……そうだね、せめて神様にでも祈ったら?」

 

と悪趣味に嗤った。

 

「とは言っても、ここまで来たのは賞賛に値することは認めるよ」

 

笑って舐めて腐らせて満足したのか喋るナニカ。

 

「まぁそろそろめんどくさいネタばらしでもしようか?」

「これもご褒美ってね」

 

そうしてナニカは語りだす。

この起源、全ての始まりの話へ。

 

 

「昔の話、1年前だけどね」

 

まぁいいかとため息し話を再開する。

 

「とある学校には仲良しな3人組が居ました」

「アホの黄エミコ、勢い任せの赤城ヒトミ、優柔不断の水戸野ミト」

「その3人組はクラスはバラバラな1人の3年生と2年生達のグループでした」

「その3人組が仲良くなった経緯とかはいいか…ま、3人組は同じ部活で仲良くなったのさ」

 

軽く、まるでそこは意味が無いように吐き捨てるナニカ。

 

「ですがある日そんな3人組に転機が訪れます」

 

ニヤリとここからが面白い話とばかりに大きな声を出す。

 

「なんと、元々体が弱かったエミコの容態の変化です」

「エミコは近くの誰かに助けを求めようとしましたがそれは叶いませんでした…」

「それは何故か?簡単!単純!実はミトを原因にヒトミと喧嘩をして、帰り道を変えたからなのです!」

 

既に笑いが込み上げて堪らないのか笑いそうになる口を手で塞いでる。

 

「なんともまぁバカなエミコ!わざわざ遭難しやすい山道で帰るとか…いやちょっと笑いが止まらないですね」

 

はァと笑い疲れたのかナニカは息を整え。

 

「そしてそんな道の中、誰に知られるまでもなくエミコは死んでしまったのでした!」

 

と嬉々とした表情で語るのだった。

 

「嗚呼……でもそれは一年前の過去の話であり、起点だ」

 

落ち着い様子で話す。

 

「今の話をしようか」

 

ガタッとエミコが少し動く、まるで死んでいながらも肉が生きてる魚のように。

 

「あぁ…そういえば君は知らなかったな、君がここに来てから1年経ってるよ」

 

その反応を見てそういえばと、思い出すように話すナニカ。

 

「話が逸れたね」

 

話を戻すようにコホンと咳をして話す。

 

「エミコが死んで失意の2人、そんな彼女たちに私は言いました」

「彼女に会いたいのならばこの学校に誰か連れ込めと…」

「その誰かが神隠しにあった時、エミコを会わせてあげようと」

 

締めくくるようにナニカは言う。

 

「それがこの話の発端、全ての始まりなんだよ」と。

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