”―――”
違和感があった。
言っていることは本当だろう。
だけど何か引っかかる、魚の骨が喉に刺さったような違和感。
あのナニカは何かを隠してる。
それは間違いない、ネタばらしと言ったものの全部言うやつでは無いだろう。
そもそもの話である。
何故、彼女…黄エミコは神隠しに選ばれたのだ?
彼女の話では確かメンチカツ部が出来たらもう神隠しは行われなかったはず。
ならば何故急な神隠しが始まったのか。
毎年恒例の奉仕がその年にたまたま行われなかったのか?
それとも神隠しは不定期であるため数年経ってても大丈夫なものなのか?
それとも―――神隠しは誰かの願いで生まれたんじゃないか?
―――誰の願いで?
それはきっと……会いたいと願ったそのメンチカツ部の2人なんじゃないか?
神、それはわがままであり、全てエゴで動く存在だが…それが全てではない。
願いを叶える、そんな神も居たはずだ。
ならこのナニカは?
彼女は一体なんの神なのだろうか?
それがきっと―――違和感の正体だ
結論が出た。
このナニカはきっと悪い者じゃない、むしろ良い者の可能性がある。
”だけど”
交渉は今は出来そうにない、あいつが何かの願いで動いてるのだとしたらそれを叶えるために今動いてるはず。
そう結論付けると見えるものが見える。
視点が変わる、視野が広くなる、情報に隠れてたものが見える。
例えば昔は体が弱かったのに今は凄くエミコは動けてる、これは夢であるのもそうだが………それもエミコの願いによって神が叶えようとしてる結果なのかもしれない。
それして、昔起こった最初の神隠し。
これはそもそも殺人を隠したかった生徒を神隠しとして神が庇ったとも見える。
―――だが、それが見えたとして事態は好転する訳では無い。
良い奴だろうが、今は敵であり説得も難しい。
そもそもこれは推測であり、下手に1部当たったとしたら神の逆鱗に触れる可能性もある……。
迂闊には動けない。
目の前の神とエミコを見据えながら動いた時にとる行動を今取捨選択するしかない。
「ネタばらしも終わったし……そろそろこの物語も終わらせようか」
「じゃぁね先生、暇つぶしにいつか見にいくよ」
そう言い手を私に向ける神、瞬間信じられない程の風がくる。
台風でも近くに発生してるのかよとツッコミたいが口を開こうとするだけの余裕などない。
―――不味い、ここまで来たのにこれで最後なんて……。
なんとかまだ飛ばされきれてないがジリジリと後ろに、闇に、外皮に近づいていってる。
"神!君は――!!"
なにか手はないか、何か、何か!吹っ飛ぶのを覚悟して必死に口を開けるが。
「―――」
何も見えない、何も言わない、それは感情がない置物のように―――。
ただ呆然と立っている。
このままだと本当に……何も出来ず、エミコが――生徒が泣いているのに何も出来ないまま終わって……。
それは、それだけはダメだ!絶対それを諦めてはいけない!
人として、先生として、そのラインは必ず!もう!1回も!!
目を開け、前を見据えろ。
今は無理だ、無茶だ、無謀だ。
だがそれでも何かを掴みたいのなら、何か選び取りたいのならば。
何かを見つけろここにある違和感を全て―――。
そう覚悟を決めた時。
その覚悟に呼応するように、その思いに合わせるように。
バリッと宙に光が差した。
「―――セイアか!!」
いち早く異変を察知したのは流石と言えるだろうここの支配者の神だった。
―――今の神はセイアに気を取られて私への攻撃が来てない。
セイアが何をしたのかは分からない、だけど動くなら今しかない。
神を見る。
こちらにも見向きもせず、光の方を向いてた。
ああ―――それでいい、それがいい。
"それでやっとこっちのテーブルにつける"
走る。
これをするのは確信が足りなく、確証もなく、ただあるのは可能性だけ。
その1つの可能性のために覚悟をしろ。
たったその一瞬のために走れ。
"―――ッ!"
考えれば考えるほどおかしかったのだ。
神の行動は矛盾していた、私を排除したいのに1番簡単な『殺す』という選択をしてなかった。
それは何故か?
殺せなかったか、殺すことで不都合が起きる可能性があるかだ。
殺すことで不都合が起こることなど本来はありえない。
だがここは本来ありえないことが起こる夢の世界。
その不都合とは―――。
"時間を戻すこと"
何故わざわざ別の世界などを作って私の世界と区切っていたのか?それが時の影響を受けるからとしたらなら―――!!!
「―――先生?」
床に落ちていた冷たい感触を握って一言絶望に打ちひしがれていた彼女に言った。
"次こそ、絶対に助けてみせる"
次の瞬間、軽い音ともに私は死んだ。
*
*
*
散々とした仕事が上に詰まってまともに素肌が見えることはなさそうな机で起きる。
痛い程眩しい空を睨みつけ、時計を見ると。
7月14日の正午を指していた。