先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな?   作:ミサキル

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"―――何とか戻れたっぽいね"

 

ふぅと安心のため息がでる。

あのまま戻れない可能性もあったが何とかなりそうだ。

 

"神の様子は分からないけど…効いてるなら情報アドバンテージはこっちにあるはずだ"

 

私が神について知らない可能性も考えてたってことは、神は多分ずっと見ていない。

 

"最後のセイアの行動が少し不安だけど…大丈夫のはず"

 

……セイアを信じてとにかく今は神の対策についてしっかりしなくてはいけない。

真夏の太陽、イライラするほどに炎天下の中私はシャーレを出てあの学校へと走り出した。

 

 

あの学校へは案外早めに着けた、まだ時間はあるはず……

外皮はとりあえず前と同じ車とエミコで一緒に突破できるはずだ。

今はとりあえず前に見てなかったあの倉庫の日記を今回は見ようか。

 

 

ガラガラといつか最近聞いたはずなのに昔に聞いたような安心感を覚えながら倉庫への扉を開けた。

 

"ここにあ……た!"

 

ガサッと音を出し見つけたのは日記だった。

 

"結局なんの日記なんだ?"

 

気になったままエミコに撃たれて失った日記。

―――今は特に何も感じなかった。

それを見てもいいか不安になる感覚それがなく、今は見てもいい気がする。

逸る好奇心を押さえつけながらペラッと軽い音と共に日記を覗いたのだった。

 

 

私の名前は黄 エミコ

とある学校に居る高校三年生!メンチカツ部所属!

この日記は私が私を忘れないために書くもの!

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姉貴は、赤城ヒトミ

舎弟は、水戸野ミト

そして番長な私!

↑忘れないように!

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5月6日

最近よく姉貴が怒ってる、よくドヤ顔でヘッドホンをしてることを自慢してたけど…最近壊れちゃったらしい

なにか舎弟と一緒に買ってあげよう

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5月10日

一緒に舎弟と買ったヘッドホンは凄く気に入ってる!

舎弟が選んだものだったけど良かった!

こういうヘッドホンの種類について疎いことを悔やむむむ…舎弟が居て助かった!

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6月6日

今日はメンチカツ部として大切な日!メンチカツを作って神様に供物として捧げるのだ!

なんでもメンチカツなのは最初の神隠しの子が好きなものなんだって

神隠しにあった子達へのものと神様へのもの供物……その2つの需要を満たすメンチカツなのだ!

でも神隠しにあった子達はどうなってるんだろ…?

 

 

ペラペラとめくる。

最初の3年のところに消しゴムの跡があるのは進学してる度に書き直してるのかだろうか?

 

"なにか――重要な情報はないのか?"

 

ページをめくると気になるページを見つけた。

 

 

7月3日

体調が悪い、最近よく倒れることが多いみんなから心配されているけどまだ大丈夫、物忘れもまだそんなに酷くない

いつかよくなる

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7月8日

頭が痛い、とにかく薬を飲まなきゃいけない

昨日、ヒトミから課題のこと言われたけど忘れてた

今までこんなことなかったのに

今まで?私の今までって信頼出来るのかな

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7がつ12か

つよくあたっちゃった、みんなにあやまらなきゃ

いたい、あたまがいたい

にっきをかくのもつかれる

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7がつ13か

またやっちゃった、どうしよもない

あのころにもどりたい、かみさまたすけてください

あのころにずっといさせてください

このいたみからかいほうして

 

 

パタリと日記を閉じる。

そこから先は空白だった。

わかったのは―――。

 

"エミコは体が弱かった、その影響か頭の痛みも感じてた"

"そして神に願った…強い体を"

 

強く、頑丈で、病に倒れないような、そんな体を願った。

 

"でもそれは叶うことなく"

"次の日にまた2人と喧嘩したままいつも違う山道で帰って"

 

死んだ……そう黄エミコは死んだ。

 

"そしてそれも、神隠しになった"

 

どんな気持ちだったんだろうか?この箱庭に閉じ込められたまま、友達と喧嘩別れしたまま、ただ最後に願った願いが叶ったのは――。

分からない、私は人の気持ちを分かるなど言えるほど傲慢になりきれない。

 

"でも、だからと言って人を理解することを諦めたくない"

 

メンチカツ部の3人、昔の後悔。

神が言っていた通りのことを改めて確認する。

―――なら、すべきことは。

 

"神を説得でもなんでもして3人を再開させることだ"

 

……この日記はこれで終わりかな。

そう思い日記を閉じて元の場所に戻そうとした時だった。

かさ。

軽い…軽い音を立てて小さな紙が落ちた。

自分を見て欲しいと言ったようなそんな音だった。

 

"なんだろう…この紙?"

 

綺麗に折りたたんである紙を開きその文字をみる。

 

「神は神であることが神たる所以であり、故にその玉座から引き摺り堕ろすことが―――」

 

"最後はめちゃくちゃでもう読めないな"

 

必死に素早く書いたのだろう、文字はめちゃくちゃでしっかり読み通すことも難しい、読めるのはここが限界だ。

綺麗にたたんであるのに文字はめちゃくちゃ、その歪さが怖いが、逆にそれがここに書いてあることが重要だと示しているようだった。

 

"覚えておいて損は無い…よな?"

"……とりあえず次は校舎の二階にでも行くか"

 

少し不安な気持ちを抱えたがここでやれることはやった。

次に行く場所を決め、一応倉庫にあった懐中電灯を持ち倉庫から出たのだった。

 

 

グラウンドを抜け校舎に入り2階へ足を進める。

ギィィ…ガタッと少し緩く古い音を階段は奏でた。

……結構心配になる音だった。

 

"とりあえずついたけど…"

 

周りを見渡すと案内表があった。どうやら2階は教室と音楽室ぐらいなものらしい。

 

"とりあえずここは色々な教室でも回ろうかな?"

 

 

多いがとりあえず色々な教室をまわることにした。

 

"まずは1番奥から!"

 

扉を開けるが…特に何も無い、黒板になにか書いてるある訳では無いし、なにか机の中にとんでもないものが入ってる訳でもない。

 

"次だ!"

 

 

特になし。

 

"次や!"

 

 

なし!ない!

 

"次の教室はまだなにかあるかもしれない…次!"

 

 

なし!!

 

"ま、まぁなにかある方がおかしいしね…次!"

 

 

ガラガラと音を立て扉を開く。

ぶらりと、窓が空いていたのか夏の風がこちらに吹いてきた。

 

"なんでここだけ…?"

 

歩くと1つの机だけ教科書などが入っていた。

 

"名前は――"

 

確認すると名前は黄 エミコと書いてあった。

他の机などはには特に何も無く、ただその机にだけ教科書が中にしまってある。

 

"……ここに居たんだね"

 

夢の廻廊、記憶の中……つまり彼女の記憶に残ってる場所、それがここなのだろう。

自分の席、自分の場所。

 

"救おう、必ず"

 

改めて覚悟を決め、この教室から出ていこうとした時。

 

バリッと引き裂くような千切るようなそんな痛々しい音が聞こえた。

 

”!!?”

 

いやバリッは違う。正確にいうとビリ、ジリィという音だ……嫌な音ではない、むしろ心地いいとさえ感じた。

――とにかく教室の扉から180度回転し窓に行く。

 

"まさか…セイア?"

 

外には天使の梯子のような光の裂け目があった。

これはつい最近見た事がある…神と相見えた時のそれだ。

ビリリッと響く音に呼応するように裂け目が広がっていく……セイア側の干渉が強くなっていってるというのだろうか?

 

「ーー!ーーー!」

 

下から悲鳴が聞える――足は無意識のうちに悲鳴の元へ駆け寄っていってた。

声の方向から予測するに準備室からの悲鳴。

 

"神か?それとも使いの方か?"

 

疑問を挟むが答える人も答える時間もない、できるのはみっともなく必死にその場所へ走るだけである。

 

 

ガラガラッと強く扉を開く……電気がついていた。

そこには、誰も居なかった。

いや居なかったのではない、居た痕跡はある……つまり誰かが消えたと考えるのが妥当である。

 

"ここに居るとしたら…エミコ、だよな"

 

何故エミコが?と疑問を持つ…神の干渉なのは間違いないと思うが何故神が…そもそもなんでエミコは準備室に?

そんな疑問を壊すように、劈くような悲鳴のような裂け目の音がした。

 

"―――多分、時間はもうない"

 

エミコは居なくなった、なら神への挑戦は私一人でとなる、できるか不安だが……やるしかないようだった。

幸いといってもいいのか準備室には色々なものがある。

決戦…というには少し心もとないがこの中から色々選んで車に積めば緊急事態もなんとかある可能性があるかもしれない。

 

"いいじゃないか…ひとりぼっちでも"

 

カッコつけるように少しニヤッと笑い怖気付きそうな心をぶっ飛ばす。

 

"やってやるさ"

 

ヒナでもホシノでもネルでもミカでもパンちゃんでもなんでもやってこい!全員躱してやる!

 

そうして熱意に燃え一人車に荷物を積んだのだった。

 

 

"作戦開始と行くか"

 

前の反省を踏まえて今までとは少しルートが違う道を選ぶ。

時間の影響を受けるなら神はまた同じ配置で私を待ち受けてるはず……だがこちらは今までの道を知ってる。

ならば攻略の道も見えてくるものだ。

前を向き、俯きたくなるほど燃えてる太陽を睨みつけ、少し暗くなりつつある夕焼けの時間に車にエンジンをかけた。

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