先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな?   作:ミサキル

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協力プレイ

「仕切り直しでもしようか」

 

そう軽い手を叩く音ともにグルンッと視界が暗転…いや『回転』する。

そこは、まさに夢のような夢と言えばいい空間が広がっていた。

いや…具体的には、雲の上に立っていた。

白銀の世界、寒いそうな雰囲気さえある普通の光景それが雲の上という足場と下…地上が見えないという事実によって夢という非現実に書き換えられる。

 

「夢というのは不思議なものだ…そこにあると確定されてはいるが光景は固定されていない不安定な常識」

「だからこそと言ってもいい夢は固定概念というものに囚われてしまえば情景が固まり、固定されてしまう」

「つまりだ……夢は固定概念さえ捨て、未知なる瞬間を求める場所としてはうってつけなんだよ」

 

―――やばいよく分からない、セイアがドヤ顔でこの情景の説明っぽいやつをしてると思うのだが全く分からない。

 

"つまり…夢だとなんでも出来るってわけだね?"

「―――おおよそあってる、その認識で構わない」

「だが…1つ訂正するとするならば、ここは『夢』であって『夢』ではない非なる空間ということだ」

"―――え?"

「ここは夢と似ているだけの全く別の空間だ」

"なん…だって?"

「で?」

 

ハッと気づく頃には遅かった。

雲が…いや足場が壊れてた。

 

"神―――!!"「話が長いんだよ…最近の人間はそういうものなのか?」

 

ちょっと分かってしまう言葉を吐いた神の拳によって足場が崩れる。

 

"落ち―――"「落ちない」

 

落ちる、そう考えた瞬間セイアの声が響く。

瞬間そこに接着剤が貼り付けられたかのように足が『空』に固定された。

 

"どうなってのこれ!?"

 

はァとため息をつきセイアはやれやれといった手つきで話す。

 

「固定概念を捨てろと言っただろう?ここは自由だ、固定概念を捨て去っていってくれ先生」

"そう言われても――!?"

 

神が雲を着火剤として爆発するようにこちらへ突進してくる。

不味い死―――いやまだだ。

 

"動け足!!"

 

固定されていた足が動く、接触直前ギリギリに横に凪ぐように避けれた。

 

"お…ちてない……生きてる"

「だんだん分かってきたようだね、夢の歩き方を」

 

ハァハァと肩で息をしながら当然のように空を歩くセイアを見上げ質問する。

 

"ところで…ここから神をどうするの?"

 

それを聞いて、待ってたと言わんばかりに笑いセイアは答えた。

 

「どうすればいいんだろうね?」

 

"なんでさ!!!!????"

 

さすがに突っ込んでしまう。

 

「いや…それは夢とは非なる空間ということにも繋がっててね」

「実は私は少し前に一足先に現実へ通ったんだが」

 

なっ…と驚いてしまう言葉を飲み込む、話の腰を折ってはダメだ聞き続けよう。

 

「そこで私は気付いた、『先生の身体がない』とね」

"私の…?"

 

疑問をついつい挟んでしまう。

 

「少し長くなりそうだね……簡潔にまとめよう」

 

顎に手を当て少し考え直したような顔をし話を始める。

 

「この空間についてわかったことは2つある、1つこの空間はなんでも出来る夢と似ている、2つこの空間は人を取り込む…神隠しの正体がこれだ、人がこの空間に取り込まれて行方不明になったから神隠しと名付けられたと私はみてる」

 

そう、この空間について説明するセイア。

 

「私はヒーローの変身を待つほどそこまで寛大じゃないんだけどね」

 

ぼっと立っていた私。

そこへ神が瞬間移動でもしたように後ろに立った。

 

"あ、"

 

反応することも出来ない、せいぜい出来たのは死を悟って言葉を少し放つだけ。

 

「すまないが、まだ少し待ってくれないかい?」

 

神の拳が私の胸部を貫く……そう思った時。

セイアが私の手を握り、私をぶん投げた。

 

"ああああああああぁぁぁ!?"

 

また!と言いたい言葉を飲み込み上下感覚をぶっ飛ばす浮遊に身を置く。

 

"そうか!!これも"

"固定!!"

 

意識し、イメージを形にするために言葉を灯す。

ぶっ飛んだ浮遊は急停止し内蔵を殴られる感覚を覚えながらなんとか止まった。

 

"セイアは!?"

 

逆さの状態で止まってしまった滑稽な自分を無視しセイアの方向をみる。

セイアは―――。

 

「やっぱり主とは厳しいか!」

「ほらほら!頑張ってくれ!」

 

瞬間移動のように移動を繰り返す神とそれに必死に避け、避けた場所にクッションのように雲を配置したりしながら神への攻撃に対応するセイアだった。

 

"不味い"

 

完全にセイアが後手にまわり、神が圧倒してる。

このままだと結果は火を見るよりも明らかだ。

セイアを助けたいが……どうする?

何かできることを考えなくては―――そもそも夢とは言ったがここはそれとは似て非なるものだ。

なんでも出来るとは考えにくい、そもそもなんでも出来るのならば私よりこの空間に詳しいだろうエミコが負けた理由が分からない。

つまりこの空間には何か制限があると見てもいいだろう……だがそれが分かってどうする?

このままでは―――せっかく来てくれたセイアを見殺しにしてしまう。

 

いや考える場合じゃない!!!

 

"セイアああああああああぁぁぁ!!!"

「先生!?」

 

空を走りながら突っ込む私にセイアは驚く。

 

「先生!神の狙いは私じゃない!」

 

にたっと笑い神がこちらへ突っ込んでくる。

―――いや構わない。

よく見ろ、時間はスローにならないが行動はよく捉えられるはずだ。

目を、眼を開けて神を視た。

突っ込む神に合わせるように、前に転がり込む!

 

「―――マジか」

 

驚く神の声を聞きながらなんとかセイアのところまで進む。

 

"セイア!!"

「先生……よくその場でそれを」"今ははいい!ここはちょっと動きずらい!アレやって!アレ!"

「―――わかった」

 

一瞬考えたセイアはアレの正体がわかったらしい。

パンッと手を叩きまた空間が回転する。

次に目の前に広がったのは―――。

どんよりとした、機械的な地下だった。

 

「すまない、最近来たことがある場所でパッと思いついたのがこれだった」

"少し聞きたいことが増えたけどありがとう!セイア!"

"それでここからどうする!?"

「まずは逃げる!」

 

即決、会話したいことも共有したいこともあるが神から逃げないとそれもまともに出来ない。

 

「またか!」

 

走って2人で逃げる私たちに苛立ちをぶつけるように壁に拳を叩きつける神。

それだけで……だ。

それだけで壁が壊れた。

 

「ここも長く持たない!すまないがもう1回チェンジだ!」「いいやそれはここで終わりだ!」

 

場所を変えようとしたセイア、その瞬間に合わせるように空間が2度、回転する。

 

"ぐげぇ……頭がクラクラする"

 

回転に巻き込まれ、目を開けた先は―――。

壁に窓が張り付くように、絵画が張り付いている…椅子がそこら中に転がっているがその形すらもボヤけてて不安定な感じがする……

一言で言うと不可解な白く広い部屋だった。

 

"神の趣味なの!?こういう部屋!"

「違うが」

 

少し苦い顔をして話す神だが、理由が分からない。

今までと少し違う顔だ……少し名残惜しさを感じるような。

 

「先生!伏せてくれ!」

 

声に無意識に身体が反応する。

伏せた瞬間、パンッと軽い音が連続して2、3発放つ。

 

「効かないよ」

 

うんざりとした神は、防ぐとか避けるとかそんな体を守る行動すらとらなかった、ただ突っ立ってるだけ。

 

「効かない……か」

 

セイアの重苦しい声と共にまた戦闘の足音がたてられる。

 

「先生!いちいち情報共有してる暇はない!とりあえず色々捨ておいて話すよ!」

 

セイアの必死の声に応えるように神は右手を掲げ。

 

「ここの支配権は私なんでね、さすがにここまで客人に暴れられると示しってものがつかないんだよ」

 

右手―――サブ、マシンガン。

銃口がこちらへ向く……アロナバリアはない。

が、イメージしろ。

アロナバリアはないがアロナバリアを作り出すことは出来るはずだ。

 

「先生!」

 

必死に叫ぶセイアを安心させるように笑う。

 

"目に物を見せてやらなくちゃ"

 

夏の温度が染み付くようにべっとりと張り付いて離れない、私は私を信じれるか?という自問自答のようだ。

それに答えるのは1つ、YESとだけ。

神は何も言わない、処刑する罪人のように立っている私に向けて銃は無慈悲にも人の命を奪う音をした。

 

 

 

 

はずだった。

 

「なっ!?」

 

銃が悲鳴をあげるように捻られる光景を見て驚く神を前にやっとと息を吐き笑う。

 

"やっと目に物を見せれたね"

 

そして振り向き。

 

"―――セイア!"

 

驚く神を前に今だと叫ぶ。

セイアは無言でその言葉に応えるようにパンッと軽い音が何発も加わる。

 

「無駄なことを……!」

 

苛立つ神に。

 

「それはどうかな?」

 

とニヤリと笑い応えるセイア。

セイアは近くにあった椅子を掴み、神に向けてぶん投げる。

苛立つように舌打ちをし、神は椅子を謎の風でぶっ飛ばす。

重い音と共に椅子は落ちるが、それを意に介さないように神は問う。

 

「何回も…何回も……面白いが同じ味は飽きる」

「先生…君たちは何度繰り返すだ?」

"勝つまで"

 

考えることすら無意味だ、ただ勝つまでこうやって逃げて、何度も突破口を開くように隙を見つけるように試す。

それが私に出来ることなら、それをするという選択肢しか道はなかった。

 

―――そういえば、だ。

 

さっきからセイアが話そうとする度、神は言葉を遮るように攻撃を仕掛けてきてる。

ポツリと、本当に些細そうで全く些細では無いことに気付く。

もしかして……もしかしてだけど。

 

"……結構焦ってる?"

「……」

 

答えは無言、沈黙であった。

 

"わ、わかりやすい……めっちゃわかりやすい"

 

思わず呟いてしまった言葉、それが失言だと気付くのは遅かった。

神は無言のまま椅子を手に掴み、強引に、無造作に投げ、投げ続けた。

 

"うわああああああああああぁぁぁ!?ごめん!!"

 

少し謝りながら逃げる、逃げる、逃げる。

右へ、左へ、少し後ろに戻りながら砲弾のように投げられる椅子を避けながら。

銃は意味が無いと思ったのだろうか、銃はさっきの1件以来出さず椅子を投げるのに留まる。

 

「私を忘れないで欲しいね!」

 

神に注視されてなかったセイアここぞと言わんばかりに壁に飾ってある絵画をまるでフリスビーのように投げた。

 

「ものを大切に扱うことも出来ないのか、ティーパーティーの人間ってやつは」

 

頭が痛い、と言わんばかりにこめかみに右手を当て左手で投げられていた絵画を風で飛ばす。

 

「本当に!馬鹿みたいに!無敵だな君は!」

 

セイアはさすがに何をしても無駄なことになってしまう神に苛立ちを覚えてる様子で怒っていたが手はとめない。

絵画をフリスビーのように投げまくってた。

私のことは煽るだけで戦闘力がないと見切りをつけたのか、神はセイアの方を見て。

 

「まずは君からだ」

 

と呟いた。

 

 

「本当にしくじった…これはまずい」

 

神は雑に持った絵画をこれまでのお返しだと言わんばかりに投げつける。

銃弾では無駄ならここにあるものなら効くかもと思ったがどうやら現状はそこまで甘くなく、さらにそれのせいで自分を追い込む事態になってしまったことに焦りを覚える。

先生に情報を伝えようにも避けるのに必死だと伝えられるものも伝えられない。

 

「せめて接触できなら…!」

 

せめて先生の近く行ければいいがそれも神が投げる絵画によって阻まれる。

 

「絵画を投げるのやめとければ良かった」

 

なんて言う暇もない。

思考は回避に必死で状況打破の答えなど出てはくれない。

隙を縫って銃弾を撃ち込もうとするがそれも効かない。

 

「無駄な抵抗はやめてみたら?」

 

たまに笑いながら煽るようにそう言う神にイラッとくる。

さすがに私でも堪忍袋の緒というものがあるが怒っていても意味の無い状況だということぐらいは理解している。

 

―――そういえば先生の姿がさっきから見えない。

 

一体彼は何を……そう考えた時。

 

"セイアああああああああぁぁぁ!"

 

後ろで叫ぶ先生と目が合った。

 

 

"セイアああああああああぁぁぁ"

 

叫ぶ、これで少しでも神が私に注視してくれたなら嬉しいんだけどどうやらそうはいかないらしい。

が。

 

「は?」

 

私の行動は神にとってはとんでもないことらしい。

私の手にはライターがあった。

この行動への道を思い返す。

 

 

―――疑問に思ってたことがあった、なんで絵画は壊れないのだろうと。

セイアが投げつけて、神がぶっ飛ばしても、それでも絵画が壊れたりはしてなかった

何故か?夢だからと全て断じるのは簡単だ。

だが神がそんな意味の無いことするか?それはないと……そう思う。

ならば何かこの絵画は理由があると思い絵に注目してみた。

 

"これ…同じ人物?"

 

それは誰かの思い出と思わしきものだった。

同じ人が登場してるのはそれだけその人が記憶に残ってるのだろうか?

 

"そうだ……夢、記憶"

 

繋がる、夢と記憶という言葉。

忙しすぎて忘れていたが、夢は記憶を反芻するものだ。

 

"ならこの絵画は……神隠しの?"

 

誰かは知らないが、神隠しの被害にあった誰かの記憶なんだと結論付ける。

それ以外でこの絵画の人物を証明する方法はない。

……持ち得る情報では、それしか証明できないとも言えるが。

 

"なら……この絵画を"

 

神は誰かを絶望させるために記憶を使って攻撃するならその記憶であるこの絵画を壊したりする行動をすれば……もしかしたらこっちに注意が向いてセイアの攻撃が止まってこっちにくるかもしれない。

 

 

「待てよ」"やっぱり…この絵画は重要なんだね"

 

焦った様子の神をニヤリと笑う。

どうやら予想は的中したらしい。

 

"この絵画もしかして何か大切なことでも描いてるの?"

 

「……」

"沈黙は肯定だよ、神"

 

身動ぎも出来ない、ただ時間だけがすぎていく。

これは人質のようなものだ、もし燃やしてしまったら神は即座に私をこの空間から追い出すだろう。

そうなればこっちは時間を戻したとしても意味がない。

今更な夏の温度が自我を主張するようにジンジンと皮膚を刺す。

沈黙を崩したのは神だった。

 

「仕方ないな」

 

諦めたように、冷めたように、冷たく、冷酷で透明な言葉だった。

身動ぎしても遅い。

瞬間移動のように目の前に現れた神に私は反応が出来なかった。

 

「――はぁ」

 

とため息をつく神はどこか少しもうし訳なさそうな顔で……

 

”ぇ?”

 

今まで見たこともない神速の速度で神の拳が振り抜かれる、その1秒の先に「先生!」と飛び出したセイアが私を庇うように私を押し出した。

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