「ハーーーハッハァーーーー!!そうか!!ここが私の野望を叶える場所か!!」
3番目はとんでもない子だった。
今まで見た生徒と同じような制服だったが明らかに改造している。
しかも。
「我が相棒よ!この世界は何が出来るのだ!!??」
めっちゃ五月蝿く、馴れ馴れしい相棒呼びのヤバい奴だった。
この時、私は。
「え、えぇ……」
かっこよく試行錯誤した悪役っぽい感じに決めようとしたのをバッキバキにぶっ壊されて素で困惑してしまった。
*
だけどこんな3番目だからこそ。
―――■■になれたのかもしれない。
*
3番目……彼女との会話は未知に溢れ楽しかった。
彼女はモノ作りを願いにしてたらしく。
「ふふふ……出来たぞ!!」
毎日のようにものを作っては私に見せつけてきた。
「こ、今回はなに作ったんだ……?」
この12回目の発明の時には既に……彼女の作った兵器の才能を知っていた。
「よくぞ聞いてくれたな我が相棒よ!!これはスーパーハイテクグレネードランチャー!」
そういうや否や、背中からなにかのボタンがあるバックを出し。
「ポチッとな」
そのボタンを押した途端に……バックはグレネードランチャーになった。
(凄いけど毎回のネーミングセンスが酷いな……)
私の心情を知らずに。
「この威力を喝采せよ!!!」
振り向くことさえせず、グレネードランチャーを遠くの山へ向けて撃った。
放った爆弾の威力は凄まじく、山を火炎に燃やし尽くした程……改めて考えてもおかしい火力である。
「ハーーーッハッハァーーーー!!!どうだ!我が相棒よ!!この火力!この機能美!この素晴らしい名前!」
「名前には同意しかねるけど、すごいと思うよ、ほんと」
「そうだろう!そうだろう!私の考えついた兵器は!!」
(思いついた兵器を実現する力か……)
「今回の発明の凄いところはな!!」
キラキラとした目で説明し始める彼女を横目に、相棒としての毎日も悪くないななんて、考えてた。
「はいはい、聞いてあげますよ」
神様よりも神様っぽい力を持った彼女の毎日は爆発と血と涙と汗にまみれた情熱の日々だった。
―――長く、永く続いたが、それも終わりが見えてしまった。
*
終わりは突然だった。
いつものように彼女が居る実験室に入りながら彼女のインスピレーションを待ってた時だった。
「あ、無くなった」
それは彼女にしては簡潔で、勢いがなく、それ故に彼女の終わりを示してたようだった。
「ど、どうしたんだ……?」
この日々を楽しく思ってしまった私にとって彼女のその言葉は死刑宣告のように重く、苦しかった。
振り向き私を見つめた彼女はなにか大切なことを言うそうで……それを聞いたらもう、戻れないような気がして思わず。
「待って!待って……くれ」
―――引き止めるような言葉を発してしまった。
彼女はそんな様子の私に対して軽々しく笑い。
「そう不安がるな我が相棒よ」
いつものように、けどいつもよりも優しく語りかけてくる。
それが怖かった、彼女が消えてしまいそうで。
初めての…心が通じあってた■■を失うようで。
ただ彼女はいつもの荒々しさを潜め……
朗らかに、優しく、明るく。
「ちょっとした話をしようか」
話を始めた。
*
「なに、そんな死ぬことじゃないさ。まだ私は現役バリバリのJKだからね!!」
軽く、優しく笑いながら話す彼女の声は芯が灯ってて温もりを感じた。
「なら…なんでそんな顔するのさ……」
弱々しい言葉で引き留めようと、留めさせようとする私の姿は彼女にはどう見えていたんだろうか?
「なに、ただ願いが叶ったんだよ」
思案するように、彼女は手を顎に付けて話す。
「言うとすれば…願いの限界か」
疑問、言葉は簡潔で意味を咀嚼することさえも難しいが。
年月がその言葉をゆっくりと飲み込んだ。
「願いの限界……」
「そう、願いの限界…私のインスピレーションでこの力は使えるけど…どうやらここは居心地が良すぎたらしいな」
古い友人に親しみを込めるような声で話す彼女の声を私は聞きたくなかった。
その声一つ一つが彼女の余命を縮めてるようで。
「もう…今のワタシが考えられる全てを、考えきったらしい」
有難くがるように笑って話す彼女が……とても明るかった。
眩しくて、目が開けられないほどに。
「どうやら願いを叶えきって願い自体が無くなるとここから消えるらしいな!」
嫌だった。
その思いを分かってるように、こちらを見つめ。
「――だが!ここに居る我が相棒を置いてここから去るのは少々目覚めが悪い!」
「え……」
ニカッと太陽に笑う彼女はただ一言。
「だから、この願いを受け取って欲しい!」
そうまるで秘密の作戦を話す子供のように無邪気に笑ったのだった。
*
「願いを……受け取る?」
思いがけない発想を受け取った私は困惑したが、すぐに理解に至る。
―――ここはこの空間を管理してる神だからこそ、かもしれない。
いや、神なんて今の自分に言えるのだろうか?
ただ助けてという願いに応えて、祈りを捧げられることもなく、時間だけが無為に経過するのを知っていながら、それでもなお。
愚かな、私を。
神という言葉で人は私を示すのだろうか?
……………思考の時間は終了だ。
今は彼女に集中しなければいけない。
「………………願いを受け取った人は、眠る……もしかして」
パチンと指を鳴らし、彼女は答える。
「そう!私が目覚めているこの状態だとそのうちにここから消えるかもだが………」
「願いを無くした場合の……そうだな……仮死状態とも言うべき状態だと成り、私は多分消えることはない!…………はずだ」
ドヤ顔で話す彼女に私は一言。
「いいの……?」
オドオドした様子で、聞いた。
「いいさ!我が野望を叶えるいい協力者であり相棒なのだから!」
即答で、彼女はそう答える。
―――それが彼女らしいな、なんて今更ながら思った。
「なら……手を握らせて」
「うむ!相棒の頼みならば!」
ふと、最後に思ったところがあるように彼女は話す。
「その黒い髪と白いメッシュ……意外といいな!!私がいつか目覚めたら真似しよう!」
それが彼女との最後の会話だった。
嵐のように現れて、嵐のように消え去った彼女だった。
*
―――チュートリアルはここで終わりだ。
*
願いとは絶望で産まれるものである。
その絶望が大なり小なり…絶望と願いは結びついてる。
―――4番目と五番目は、どうやら繋がりがあったらしい。
誰にも触れられたくないと願って暴風のような力を手に入れた彼女。
たった1人に触れたいと願って見えない手の念力を手に入れた彼女。
対象的なようで意外と共通点があった奴らだった。
ただもう誰にも触れないで欲しいと願った彼女の願いを叶え、寝させた。
その1人が存在しない世界には居たくないと願った彼女の願いを叶え、寝させた。
願いをとるほど、とるほど、神に。
『慣れる』
『熟れる』
『成れる』
『なれた』
*
はず、なんだ。
*
ふと、鏡をみた。
そこには白い髪の神が居た。
黒一つもない純白の髪。
「この顔も……もう見慣れたな」
3番目までは上手くいかなかったが、4番目から上手く行き始めたなと今ままでの経歴を考える。
そういえば、誰かが私の黒い髪が好きだと話してた…そんな気がした。
―――思い出せない。
そもそも私の髪は黒かったのだろうか?
それすらも分からず、胸の中につっかえたナニカは。
「いや、いいんだ。それで」
いい。これでいい。
この私に間違いはない、あってはならない。
―――このままで私は正しい道を行けてるのだろうかとも思ったが。
「そもそも最初から間違いだったな」
そう思い直して、嗤った。
醜く全て嘲笑うような顔だった。
―――酷い顔だな、なんて昔なら思ったのだろうか。
「?」
無駄なノイズだ。
*
久々に、面白い少女に出会った。
なんでも彼女は同じ日が何日も繰り返したらいいと思ったらしい。
―――何故かどこか共感してしまう誰かが胸の中に居たが、私では無いと否定した。
そんなことを置いて、私は慣れた感じで嗤う。
「退屈しのぎにはちょうどいい」
何度も同じ日が続いたら、なんて願った人間がその同じ日が繰り返されることで苦痛に歪むと思うと乾いた心が愉悦で潤う。
「堪らないね」
変わらない1日に心が折れそうになってる六番目をみて満たされる心を感じながら。
いつ。
その苦痛は自分の願いですよ。
と種明かししようと考えて心が高鳴った。
*
腐る。
この先に光はない。
腐る。
この先には何も無い。
腐る。
この先には救いはない。
腐る。
この先には道はない。
腐った。
もうどこにも行けない。
*
黒の炭が灰の白となり消える。
夢の中、何処までも続くような夢の中。
帰り道は無くなって、後ろには誰もいない。
叶えろ。
叶えろ。
願いを苦痛にして、苦痛を糧にして。
叶えろ。
叶えろ。
――――最初はどんな願いを叶えたんだろうか?
分からない。
分からなかった。
なら。
もういい。
いいんだ。
*
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くまでに。
■きたかった。
■きたかったはず……なのに。
「いつから、こんな風になったんだ」
そう呟いた記憶すら掠れて消えた。