先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな?   作:ミサキル

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間章(過去回想)
目覚め


ごおんごおん。

脳を揺さぶられる音がする。

むかし…昔に確かにそこに居た気がする。

何故だ~って思うこともあるけど、それを知っている自分を認知することができない。

それは――――

 

 

「起きろ」

 

うるさい、まだ寝たいのに…

せめて、あと5………いやまだあと10分…

 

「そんなに寝るなバカ」

 

バカでもいいっす…とにかくまだ寝させてほしい。

疲労困憊ということで…今日はこのまま…………ね?

 

「はぁ……」

 

むにゃむにゃむにゃ。

すやすやぴーぴー。

 

「死ぬぞ」

 

「うわああああああああああああ!?」

 

悪寒が走る程にゾッとする声がかかり冷水を浴びせられたようにガバッと起き上がる。

 

「やっと起きたかこのバカ」

 

 

理解が脳を拒む、その存在の事実と『声』に驚愕する。

 

「なんだ、驚いてるのか」

 

チロチロと長い舌を伸ばしうねうねと動くその形は……

 

「―――蛇?」

 

いや、それ以上に……その声は?

脳が理解を進める事に脳にエラーが表示される。

 

理解できない、理解したくない。

―――いや分かる、分かってしまう。

 

一体どれほどこいつに苦渋を舐めさられたと思ってるんだ。

理解を拒む脳を経験が無理やり理解させる。

そこから分かるこいつの正体は……

 

「神?」

「そうだ…最もこの姿だと『イノリ』と呼んでくれると嬉しいけど」

 

そこには神の声をした黒い蛇が居た。

黒、黒、真っ黒で孔のような黒。

インクをベタ塗りしたかのような黒に身を染めて、眼だけが紅い蛇は嗤う。

 

―――いや、違う。

 

現状理解をしてこの瞬間の理解を深めろ。

 

「神…というより、神が蛇の姿をした?」

 

それを嘲るように彼女?は話す。

 

「逆だ、蛇が神の姿をしてたんだよ」

 

人の姿なら多分私を指さしているだろう、そう安易に察せられるような言葉遣いだ。

つまるところこいつは私を舐め腐っている。

完全な上位者の視線。

居心地の良い玉座に座るように机にいる蛇に私はどう映る?

 

「なんか…嫌っすね神の正体が蛇とか」

「えぇ…そんな事言うなよ、こんなんでも一応元神だぜ」

 

なんか妙にフランクだなこの元神の蛇……

 

「ええい!もういいっす!というかどうなってんすか!色々!私首掴まれて寝たんすけど!!」

 

まどろっこしい事は嫌いだ、できるだけシンプルにしたい。

 

「そうだったな…まぁ座れよ床にずっと居るの汚いだろ?」

 

……それは、そうだ。

周りを見渡してみればどうやらここは教室のようだし、床だと背中が汚れるだろうし……まぁ…座ってもいいだろう。

 

あと、なんだかこいつからは敵意とか、殺意とか、そういう危害を加えるような気配を感じない。

むしろどこか憑き物が落ちたような…そんな感じがする。

それで警戒を解くほど私は緩くはないが……

警戒レベルをMAXから3まで下げてもよさそうだった。

 

「それじゃ、話でもするか」

「…………何を話すんすか?」

 

問う言葉に一言。

 

「自分語り」

 

えぇ……

 

思わず顔に困惑が滲む、いや誰だって困惑するだろう。

さっきまで謎めいた神が急に自分語りに付き合ってくれ、なんて話すのだから。

怖いを越えて恐ろしい。

この蛇には一体どんな心境の変化があったんだ?

 

「はぁ…まぁ聞きますすっよ」

 

それでも何となく聞こうと思ってしまう私が、神の思惑に突っ込んでるようで嫌いだった。

 

神…いやイノリか、そう名乗った彼女はただ嬉しそうに。

 

「ありがとう」

 

と言った。

ただ……本当に嬉しそうに、裏がない表情で。

 

「やめてくださいっす、なんだか…ほら死亡フラグ感あるっすよ」

 

どことなく嫌な予感がした私はシッシッと手を軽く動かす。

こいつに感謝をされるなんて日があるなんて過去の自分に言ったとしても多分信じないだろう。

 

―――本当に、なんか今日は特殊だった。

 

いつもは何か罠と思ってしまうのだが、なんだかイノリの『素』を見てるようで、少し…少し寂しいような気がする。

あの最後に戦った時に感じ寂しさと同じだ。

悪いヤツ……それなのに嫌いになりきれない。

それは自分の弱さかまた別のなにかなのか、それは分からない…分からないままだ。

………最初の語りをイノリは嘘だと、演技だと、断じたがそれを嘘だと演技だと……そう言いきれないこの心がこういう気持ちにさせてるのか。

 

分からない

 

分からないけど、なんだかこれで全て終わりなようで。

 

「……まぁとにかく話してくだいっすよ」

 

その寂しさを紛らわせるように、私は話を急かした。

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