先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな?   作:ミサキル

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恐怖

「むかーしむかし、言うほど昔じゃないっぽいっすけどね」

「まぁそんな昔の話、ここには神社があったらしいんですよ」

「ですがその神社…埋め立てられたらしいんすよね」

「なんでもここを建てるのに邪魔だったらしいっすけど、罰当たりっすよね〜」

「まぁ実家バチが当たったのかは分からないっすけど」

「建てられた学校からは1人……1人……不定期ですけど生徒が居なくなったんすよ」

「うひゃ〜怖いっすね」

"い、今はどうなの…?"

「そうっすね…今は大丈夫っすよ」

「神様はきっと自分の住処を荒らされて怒ったんすよ」

「なら話は簡単で、新しい住処を作ればいい」

「連邦生徒会長の提案だったらしいっすけど詳しいことはわかんないっす」

「まぁそんな訳でこの学校は校区内に神社が建てられたんすよ」

「その元々あった神社の場所にね」

「まぁそんな神隠しの話がこの学校にはあるんっすよ」

「ちなみになんすけど!神様を怒らせないためにお供えを作ることになったんすけど!」

「そのお供えの部活が我らが部活!メンチカツ部なんすよ!!」

 

彼女はそう言いドヤ顔でこの話をしめた。

 

「まぁそんな昔の噂話は置いておいて!」

「そのセイアさんってのを探すんすよね!」

"う…うん"

 

エミコがぐぃっと近づく。

いい香りだな…なんて思いながらその勢いに気圧されて少し後ろに下がってしまう。

 

「ならこのメンチカツ部、その部長であり、3年でもある頼れる先輩?いや多分頼れる先輩な私が!」

「先生のお悩みをちょいちょいと解決するっす!」

"……ありがとう"

 

不安が残る中でなんだか押されまくって…エミコがこれから一緒に行くことが決定した。

 

”それで何処に行くの?”

「そうっすね…探索するにしても職委員室とかは開いてないだろうし…」

「まずは準備室に行きましょう!」

「私は色々知ってるっすから!案内人として任せてくださいっす!」

”(なんか不安…………)”

 

 

「おっと先生、気おつけてくださいっすね」

「ここの一応ライトで照らしてるとは言っても暗いっすから」

 

そういいつつ歩く場所は暗闇の準備室。

 

"アダァ!?"

「おー言ってたのに痛ァ!」

 

忠告していたのに仲良くものにぶつかる悲しき者がそこにいた。

……私たちだった。

 

「えっと…あ!ありましたっす!」

"ナイス、エミコ!電気をつけてくれ!"

「おけ野原の戦いっす!」

 

カチッと軽いスイッチの音と共に電気がつく。

 

「うぅ…私はこの銃のやつにぶつかったのか…っす」

"痛た…なんで準備室に立てられた机あるの!?"

「あーそれは多分別の部活のものっすね…多分前に使ってたコタツっす」

"なるほど…え?"

「とりあえずここには何か使えるものとか人はなさそうっすね…銃も要らないっす」

"準備室ってこんなにもの溢れてたんだ…"

 

コタツの疑問は小脇に置き、その場所の乱雑さをみる。

今までが綺麗すぎたのか?と思うほど乱雑にものが置かれてた。

 

「あ!面白いやつあるっす!」

 

何か面白いものを見つけたらしいエミコが笑いながらこちらに……え?銃?

 

パン。

 

軽い音がした。

 

「これで終わりっすね」

 

そんな声を茹だる意識の中でき―――い―――t。

 

 

"はっ!?"

 

撃たれた衝撃で体を起き上がらせるとそこには正午を示している。

 

シャーレの時計があった。

 

 

"嘘だ――"

 

思わず乾いた笑みすら浮かべてしまうほどこの状況は絶望に満ちていた。

単に全て無くなった訳では無い。

生徒に、エミコに銃弾を食らわされたことへのその絶望がどっしりと心に重くのしかかった。

 

"そんな…に……信用されて…………なかったのかな"

 

信用されてないのはまだ分かる、ホシノも最初はそうだった。

だから信用の問題はこっちの落ち度だ。

だけど。

 

"銃か……"

 

撃たれた、いや撃たれたこと自体はあった……だけどあの一瞬、親しくいていこうとした。

努力して歩み寄ろうといこうとして、して…………これだ。

 

"ちくちょう…"

 

どうしようもなく弱くなった自分。

行動を予見出来なかったとかではなく、その行動の恐怖。

最初に銃を向けられたあの瞬間。

確かに私恐怖を抱いた。

それが尾を引いて、今、足を、ガタガタと揺らしてる。

 

"情けないな"

 

絶望と恐怖に支配された哀れな人間はぼんやりと呟いた。

びったりとした背中につく汗。

気持ち悪いのにどうにかする気力は湧かなかった。

 

"―――ぁ"

 

ふと。

ふと気づく、そういえば、そういえばの話だ。

アロナバリアはどうなっているんだ?

 

気づけば行動していた、タブレットをつけて呼びかける。

 

"アロナ!!アロナ!?居るか!?"

 

―――反応がない。

同じようにプラナに呼びかけたがこちらも反応がない。

まるで―――。

まるでシッテムの箱の中身が無くなったようだった。

 

"う、嘘だよな――"

 

信じられない、いやここに信じられるものはあるのか?

街並みも、景色も、何もかも全て偽物じみていてるこの世界に自分の信じられるナニカなんてあるのか?

 

"―――"

 

絶望が。

 

諦観が。

 

恐怖が。

 

ゆっくりと蛇のように、ゆっくりと、ゆっくりと私を飲み込んでゆく。

沈んだらそこから出られないようなそんな底なし沼に私は沈んでいく。

 

カチ。

 

カチ。

 

時計の音が今は死刑宣告の宣言をいつか教えてくれる死神のようだった。

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