「あーまた落ちてる」
私、
『ワールドファイト』、通称、WFは全世界で遊ばれているトレーディングカードゲーム(TCG)だ。だが、それはただの遊びとしての側面ではなく、この世界ではそれが義務教育になっており、有名なプロ選手なんかの年収は億単位であり、子供がなりたい職業ランキング一位はWBのプロ選手だったりするくらいだ。
それを目指すプロの育成学校は、多くの場所に設立されており、私もそんな有名なところの1つ『聖ワールドファイト学園』に通う1人なのだが…。
「あ、また闇のカードかぁ」
拾ったカードである『漆黒の騎士ーブラッドナイト』を見て、私はため息を吐いた。
この世界には人それぞれカードの相性というのが存在する。
相性によってこの世界では特定のカードをこういう拾ったり、パックから出やすくなったりしていたり、引きの良さにも関係している。
そして、私が相性が良いのは今、拾ったような闇のカードたち。
闇のカードはその名の通り闇の力を持ったカード、基本的にカードパワーが高いものが多く、所有者の心の闇を増幅させて、最終的にその持ち主の心はその闇に呑まれ、悪に堕ちると世間では言われている。
何故か私はそれを普通に使えてしまうんだけれども。
でも、そんな危険とされているカード群は場に出した際に闇のオーラが出てしまったり、私は制御できるが、闇のカードから発生するダメージは痛みを伴ってしまったりしてしまう。
そんなカードたちを表の場所で使えるわけもなく、私が使えるのはクラシックワールドと言う他のワールドと共存できるクラスのカードで限定されている。
やはり他のワールドと比べると、カードパワーは控えめだからパワー負けしたりすることはある。
そこは私の腕次第でなんとかできるって言いたいところだけど、学園上位の人たちはプレイングも上手いし、手札も全くって言って良いほど事故ったりしないから正直言ってかなり理想的な手札でなんとかなるかならないかなんだよね。
だから、私の学園での実力はあって中の下ぐらいなんだよねトホホ。
『うふふ、ならやっぱり学園でもわたくしたちを使うべきよ。あんな強そうな人達を見ていると…喰らいたくて…めちゃくちゃにしたくて仕方なくなっちゃうもの』
何もない空間から現れたのは真っ白な長い髪を、アルビノの白い透き通るような肌、血のような赤の瞳の白いワンピースを着た少女が私の腰につけているデッキケースから現れ、獰猛な笑みを浮かべて、そう提案する。
彼女は私のカードの精霊、触媒となるカードに魂が宿っていることがあり、このように実体化することができる。
触ったりはできず、私を含め一部の者しかしか見えないらしいけど。
彼女の名を『深淵に眠りし捕食者ーアラトス』、見た目は可愛い少女の姿をしているが、そのカードイラストの手を差し伸べている少女の影には得体が知れない無数の触手みたいなものが複数あり、それが彼女の真の姿なのだろう。
ただ、この不気味な影と白い少女のアンバランス差を感じるイラストは味があってとても気に入ってたりする。
「でも、だめ。昨日いっぱい使ってあげたでしょ?」
『あのくらいじゃ腹の足しにもならないわ。わたくしを満足させたいのならもっと上質な獲物を用意なさいな。それはご主人様も思っていたことでしょう?』
「…それはそうだけれども」
「あっ、ヨルちゃーん、おはよう〜!!」
アラトスと会話をしていると茶髪の肩にかかるくらいまでの長さで私のクラスメイトで幼馴染で親友でもある少女、
使用するのは『
彼女は、この学園に入ってから、WFを初めたばかりで、プレイングはまだまだだが、咄嗟に見せる神の一手のような引きとプレイングで徐々に頭角を現している。
「ユイ、おはよう」
「あれ?ヨルちゃん1人?誰かと話していた気がしたけど…」
ユイにはカードの精霊は見えていないが、ユイのデッキにはきちんと精霊が宿っており、彼女がピンチときに切り札であるカードが守るように立っている時もある。
『この子もとても美味しそうなのよね。その希望溢れる顔を絶望に染めあげたら…想像しただけで果てちゃいそう』
「ああ、今日は科学の小テストあるし、語呂合わせを口にして暗記してただけ」
とりあえず、それっぽいことを言って誤魔化した。
因みに科学の小テストがあるのは本当である。
いくらプロ選手を目指す学園でも普通の高校の範囲の授業はあるしね。
それを聞いたユイが一回、ネジが止まった人形のように硬直して、顔がどんどん青ざめていく。
あっ、これは…
「ああーっ!!すっかりデッキ調整に夢中で忘れてたぁーっ!!」
『流石、ご主人様、ファイトをせずにこの子の笑顔を奈落に突き落とすなんて素敵すぎるわ』
いや、私は何もしてないのだが…アラトスが楽しそうだし、まぁ、触れなくてもいいか。
とりあえず、涙目になっている親友には学園に着き次第簡単に覚えられるところに絞って教えることにした。
ホームルームの挨拶が終わり、放課後となるとこの学園は基本的に騒がしくなる。
この学園では放課後になると生徒同士がデッキの調整やファイトをしたり、放課後に開催される放課後大会に参加したり、学園ランキングのポイントを賭けての試合をしたりとファイターが活発的にな時間帯になるからである。
「ふぅ、やっとワールドバトルができるよ〜。ヨルちゃん、この改良した私のデッキとファイトだ」
「早速だね。バイトまでまだ、少し時間があるし、一戦くらいならできるかな。じゃあ、私も新しく作ったデッキをちょうど試して見たかったし、やろうか」
「おお、ヨルちゃんも新しいデッキなんだね。じゃあ、いざ尋常に…」
「「ファイト!!」」
デッキを机の上に広げて、ファイトが開始される。
初期手札を5枚引いて、後攻のプレイヤーは1ターン目から、先行のプレイヤーは2ターン目からドローを行うことができる。
1ターン毎に自身のFP(ファイトポイント)が1ずつ増えていき、最終的に10ポイントまで増える。
そのポイントを使用して、ファイター、スキル、オーナメントカードをプレイしていき、プレイヤーのライフ20ポイントを削り切った方が勝ちなのが基本的なルールだ。
「私は2コスト、傭兵を召喚」
傭兵 AP2.HP2
基本的に、出したファイターはそのターンはアタックすることができないため私はターン終了の宣言をする。
傭兵は、能力を持たないファイターだ。
他のワールドでは相手の場にいる『大楯の騎士』と同じ能力値なのに向こうは『シールド』、攻撃する際に、相手のプレイヤーかファイターを選択して、攻撃できるのだが、シールド持ちのファイターがいる際はシールド持ちを選択しないといけないと言う便利な効果を持っている。
他にも同じ能力値なのにドロー効果を持っていたり、場に1ダメージを与えたり、色々と上位互換のファイターが多いので、傭兵を使うプレイヤーはほとんどいない。
でも、他のワールドと相性が良くない私には他のワールドの2コストのカードを採用しても、序盤に引けないから、採用せざるを得ない。
流石に2ターン目にほとんど引けない2コストと比べれば全然マシだからだ。
それに効果がないってことが必ずしも悪いことではない。
例えば私のこのデッキの切り札の『凡人たちの下剋上』はそれを生かせる効果になっている。
6コストのオーナメントカード、ファイターと違い、AP、HPが存在せずにフィールドに置いてその効果が常時発動したり、決まった状況で効果を発動するものなどさまざまではあるが、なんとこのオーナメントの効果は自分の効果を持たないフィールドのファイターのAPを1あげて、そのカードが出た時でも、アタックすることができる『速攻』、さっき言っていた『シールド』、さらにファイター同士がバトルする時に相手のプレイヤーに1ダメージを与えることができる効果を持たせてくれる。
場に出たらこの能力を持たないカードたちが他のワールドたちの強カードと渡り合えるくらい強くなる。
まさに起死回生の逆転のカードだ。
「私は6FPのオーナメント、凡人たちの下剋上を設置!!それで私の場にいる傭兵で大楯の騎士と相打ち、猟犬二体で、ホワイトナイトと相打ちしてターンエンド。ふふっ、これで次のターンからの私は強いよ」
よし、これでまだまだ、勝負になっ「よーし、ペガサスパラディンを出して、速攻攻撃と残りのファイターたちでプレイヤーに攻撃で私の勝ちだ」…ていませんでした。
まぁ、置ければ強いのだが、置いた時に無防備になるのが明確な弱点なんだよね。
序盤からバフできたりして、フィールドのファイターたちやライフをどんどん削って、テンポをとっていく速攻よりのデッキには速度が間に合わない感じたけどやっぱりかー。
もっと除去を多くしたり、回復を入れたりしてもいいかもしれないけどそこは回しながら調整していく必要がありそうだ。
「あー負けちゃった。ユイ、プレイ上手くなったね」
ビートダウン、殴って盤面を作っていくデッキは単純だが、単純だからこそ難しいデッキだ。
常に自分の手札と相手のデッキに何が入っているか、どこでファイターを倒し、どこでプレイヤーにアタックするかを考え続けなければならない。
自分のプレイング次第で勝ち負けが決まりやすいデッキなんだよね。
「そうでしょう。えっへん。私と私のデッキは日々進化しているんだよ」
「うん、これならランキング上位を目指せるんじゃないかな?」
「そうかなぁ。じゃあ、早速ランキングポイントを上げる為にいってくるよ。ヨルちゃん、また、やろうね」
「うん、頑張って。また明日」
そうしてランキングポイント戦に行ったユイと別れて、校舎から出て、バイト先に向かおうとすると何やらワイワイガヤガヤと他の学生たちがなにやら騒がしい。
その目線の先を見ると、私はあちゃーと頭を抱えそうになる。
黒塗りのしかも、お金持ちが乗ってそうなイメージがあるとても縦に長い車が学園の外に停まっており、そこに知り合いの片眼鏡をかけたイケメンの金髪の男性執事がいたからだ。
その際に、執事と目があってしまい、一礼される。
「学業お疲れ様です。ヨル様。ティア様の命によりお迎えにあがりました」
「あのローグさん、こんなふうに迎えに来るなんて聞いてないんですけど」
「はい、ティア様が学園から屋敷まで歩いてくるのは可哀想です。学園まで直接迎えに行ってくださいますか?と申しつけられたものでいきなりで申し訳ございません」
「兎に角、目立つんで行くなら早く行きましょう」
うう、絶対明日学校行った時、皆んなに詰められるよ。しかも、善意100%だからあまり強く言いにくいし…まぁ、とりあえず、バイト終わってから考えよう。
これからやるのは私と違って、