闇のカードゲームの方が得意です。   作:さら@骸教

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第2話

 

 

「…ヨル様、よく来てくださいましたね」

 

 

 私の部屋の二倍以上の広さがある自分の部屋で腰まであるくらいのスカイブルーの髪、右目は青い目片方は黄色の目のオッドアイに白のドレスを着た少女、ティアはそう微笑んで、私を出迎えてくれる。

 

 白を基調にした部屋に可愛くデフォルメされたたくさんのWFのキャラクターのぬいぐるみが置かれており、高そうなWFのキャクターの絵が額縁に飾られており、彼女がどれだけWFが好きなのかは一目見ただけでわかるような部屋になっていた。

 

 

「WFを教える約束だからね」

 

「それにアラトス様もこんにちは」

 

『ええ、こんにちは。世界に愛されし者さん』

 

 

 ティアも精霊が見えており、この大きなティアの屋敷にも彼女の多くの精霊がいるのだが、ほとんどはアラトスが怖いのか隠れて、こちらを伺っている様子だ。

 

 

 それもこれも以前ここに来た際に、アラトスがあの子達を見て、美味しそうと舌なめずりしたせいだ。

 

 

 可愛い精霊と触れ合いたかったのに私もアラトスの主人ということでとても怖がられている。解せぬ。

 

 

『だって、あまりにも美味しそうだったから仕方ないじゃない。しかも、あの私を恐ろしむ視線、誘っているとしか思えないわ。その顔を絶望に歪むまで鬼ごっこでもしようかしら。うふふふ』

 

「もう揶揄わないの。ごめんね」

 

「いいえ、大丈夫です。貴方たちはとても優しくて強い方ですから彼らに何もしないことは分かっていますよ。私を助けてくださったあの時だってそうでしたもの」

 

「そうかな…あはは」 

 

 恋する乙女のように顔を少し赤くして、語ってくれるティアに私は実は成り行きでそうなったことを言えずに苦笑する。

 

 

 そこで闇の組織『ユートピア』が動いていることを知らない私にアラトスが、面白そうなことをしようとしている人たちがいるから見に行かない?と言われたのがそもそもの始まり。

 

 行ったら闇の組織とのバトルをする事になるとはその時、思っていなかったし、ティアが囚われていることも知らなかった。

 

 というか最初、バトルせずに相手が拳銃等を使用して、リアルファイトに持ち込もうとしてきたから闇の力でバトルで勝たないと私に傷つける事ができなくし、負けた方が意識を失うようにしたもの。

 

 そんなこんなでユートピアの構成員を片っ端から1人残らず叩き潰し、最後に研究施設の奥の部屋に辿り着いて、ティアと初めて出会ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、ここ潰しに来ました」

 

「へぇ、これは驚いた。君、すごいね。一人でここまで来るなんて。あっ、僕の名前は郷里(ごうり)ソウ、よろしくね」

 

 

 淡々と言う私にボサボサの肩にかかるくらいの長さの黒い髪の白衣に、黒縁の眼鏡をかけた女性、郷里がフレンドリーに笑って声を掛けてきたが、この人がこの一件の黒幕で間違いないらしい。

 

 

 部下たちが皆倒されたのに、大分、余裕そうな感じを見るにこれまで戦った者と明らかに雰囲気が違っている。

 

 

「早速なんだけど僕の仲間にならないかい?君はとても優秀そうだしね。今なら高待遇で雇うけど…どうかな?」

 

 

 敵である私にも普通に勧誘してくるし。

 

 

「それで靡くぐらいなら最初から邪魔していませんよ」

 

「それもそっかー。残念。同じ闇のカードを持っている者同士仲良くできると思ったんだけどなぁ」

 

 

 闇のオーラを纏ったカードを持って、明らかに残念がってない風に郷里が言う中、私の目線は、その後ろのヘルメットに電極がつけられ、機械のポッドのような物に寝かされている少女の方に移っていた。

 

 

 ここで何かの実験を行っていたみたいだ。一体何の?と思う中、郷里が、私の視線に気づいて、説明を始めた。

 

 

「ああ、あれはねすごいんだよ。全てのカードとの相性が良い子なんだよ。でもさ、WFがあまり上手くなくてさー。

悩んでたわけよ。

その時、頭が良い僕は思いついたわけさ。僕の相性に彼女の相性が合わさったら最強のWFプレイヤーになるんじゃないかって。

そうして作ったのはあの機械ってわけ。

あの子に強くなれる方法を教えてあげるよって言ったら簡単についてきてまじで笑えたよ。

素直な子供って本当に扱いやすくて「あの」ん?」

 

「まだその馬鹿長い話続きます?」

 

 

 長ったらしくなりそうな郷里の話に私は口を挟んだ。

 

 

 若者は長い話が聞けないと言われるかもしれないが、そろそろ夕ご飯の時間になるので早く決着をつけて帰りたい時間だから許してほしい。

 

 

 しかし、話を聞いていて、全てのワールドに相性が良い人がいるという話は驚いたが、それが、最強になりえるのかは疑問に思う。

 

 

 結局、どんなに相性が良いワールドがあっても、クラシックワールド以外の組み合わせはルール上できないからだ。

 

 

 それに相性がいくら良くても、そのデッキ40枚の効果が書き換わるわけでもないし、本来持っている最大出力以上の力は出す事ができない。

 

 

 戦う相手によっては有利、不利があるし、その相手に合わせて使うデッキのワールドを変えて、完璧にプレイできるなら最強にも至れるかもしれないが、この何枚有るかも不明なカードプールの中で全部のカードを使いこなすということはほぼほぼ不可能に等しい行為だと思う。

 

 

 しかし、そんな風に郷里が最強かどうかを私が考えるより本当に最強なのかWFで確かめてみるのが一番手っ取り早い話か。

 

 

「…馬鹿だって?この最強の頭脳を持った僕にぃ…いいだろう。君をもうWF出来なくなるように圧倒的な力を見せてやろう」

 

 

 その時、アラトスがデッキケースの中から腹を抱えるように笑ったアラトスが現れる。

 

 

『ククッ、アハハハッ、無自覚に相手の地雷を踏んじゃうご主人様、本当に最高だわ。それにさっきまでと違って、少しは食べ応えがありそうだし、今日のメインデッシュにはぴったりね』

 

「もしかして、最初からこれを狙ってた?」

 

『ふふっ、もしかして、こんな危ない事に巻き込まれるとは思わなかったのよ。私を信じてって言ったらご主人様は私のことを信じてくれるのかしら?』

 

「うん、絶対に信じないね」

 

「何を一人でぺちゃくちゃとっ!早くデッキを構えろ。地に這い蹲らせてやる!」

 

「そうですね。では、はじめましょうか。せいぜい口だけじゃないことを祈っています」

 

「「バトル!!」」

 

 これから始まるのは闇のバトル、カードは実体化して、ライフにある程度以上の大きさのダメージを受けると痛みが伴なっていくバトルだ。

 

 

「まず、僕のターン1ターン目、先行はドローできないからこのままは1FPを使って、僕の切り札を場に出すよ。その顔が絶望に染まる瞬間が楽しみだ」

 

 

  1ターン目から切り札?もしかして、1コストの速攻ファイターか?あれめちゃくちゃ強いし、確かに出ると出ないとではライフアドバンテージが明らかに違うことを思えば切り札と言えなくもないが、使おうとしてるのは闇のオーラを纏っているから多分違うかな。

 

 

 あと、こう言う自分で天才と言っているタイプは、どちらかと言うとシステムカード、何らかの条件を満たすと、強力な効果を発動するものだったり、ドローソースを確保できるようなカードを、使う事が多い傾向にある私調べ。

 

 

 速攻デッキもある程度頭を使わないと勝てないと、思っている私からしたら、この人がこれで速攻デッキだったら多分、私たち友達になれる気がする。

 

 

「僕はワールド『ユートピア』のオーナメントカード、『理想郷への旅路』を場に設置」

 

 

 相手の場に現れたのは何とも言えない不気味なオーラを放つ、謎の紋様が描かれた一個の古ぼけた本。

 

 

「このカードは、自分がドローする時、さらに1枚追加でドローする事ができる。さらにこのカードは相手の効果では破壊されないし、選択する事もできない。そして、これが最後の効果は特殊勝利だ」

 

 

 特殊勝利、基本的にWFは相手のライフが0になったり、相手が山札切れでドローできなくなったら、勝ちというゲームだが、その枠組に入らないのが効果によるある条件を満たすとバトルに勝つ事ができる特殊勝利というわけだ。

 

 

 ただ、1コストで特殊勝利カードということはちょっと条件が難しそうな感じかな?

 

 

「このカードが場に置いてあり、山札の最後の1枚をドローした時、僕はこのバトルに勝利するんだ。聞いて驚いたかい?これが僕の最強の切り札だよ。あとは僕はゆっくりと戦うだけで、バトルに勝てるんだ。やっぱり相性が良いのは最高だね。こう言うピン刺しのカードでも初手に出す事ができるんだから」

 

「…」

 

「驚いて声も出ないか…諦めたくなったらすぐ諦めていいからね。ターンエンド」

 

 

 残り郷里の山札は35枚、さらに通常のドローで2枚引けるから、最低でもあと18ターン経ったら郷里は勝利する。

 

 

 そんなデッキにドローソースを積んでないわけないから、せめてあと8ターンくらいまでには、勝負を決したいところだ。

 

 

「私のターンドロー、1FPを、使って、オーナメントカード、『何者かが潜む深淵』を設置します。

このカードは場に出た時、また、相手のターンの終了時に効果が発動でき、山札から1枚ドローして、その後、手札を1枚選んで墓地に送り、自分の場に深淵の卵のトークンカードを1体を場に出します。そして、このカードが場から墓地に送られた際には私は2枚カードを引く事ができる効果を持っています。そして、私は卵を召喚する効果を発動しますね」

 

 このカードを発動すると、私の場に闇の霧のような物が現れ、効果発動の宣言をし、1枚ドローして、手札を1枚墓地に送ると、そこから紫色の粘液のような液体を纏った卵がボトッと落とされる。

 

深淵の卵(トークン) AP0.HP1

 

「このカードが場から離れた際に私の体力は1回復します。そして、山札から1枚ドローして、これで私はターンエンドです」

 

 私がターンエンドをすると、郷里は明らかに見下したような顔をして、鼻で笑う。

 

「私と違ってかなり弱いオーナメントカードを場に出したね。しかも、APが0のトークンカードを場に出すなんて何か意味があるのかい?」

 

 ええ?このカードかなりやりすぎだと思うんだけどなぁ。

 

 1コストで毎ターン手札交換する事ができるカードだし、相手のターンを跨いで、発動できるから卵は最低でも一体は場に残るし、墓地に行ったら2枚もドローする事ができるし、どちらかと言うと結構ヤバめのカード寄りと私は評価している。

 

 

 でも、相手のカードの効果の方が派手だし、分りやすいからそう評価を下されても仕方ないかもしれないね。

 

「私は1ドローし、『理想郷の旅路』の効果で更に1ドローする」

 

 そうすると、『理想郷の旅路』出た本のページが徐々に捲られていく。

 

「2FPを使って、理想郷に向かう貧民たちを場に出すよ」

 

 理想郷に向かう市民 AP1.HP2

 

「このファイターが場に出た時、1枚ドローでき、理想郷と名がつくカードが他に場にあるなら、更に1枚ドローして、このファイターは破壊される。『理想郷の旅路』の効果で更に2枚を引く事ができる。」

 

 

 市民たちが場に出ると、天から恵みのように沢山の食べ物が降ってきたと思ったら、その食べ物に押しつぶされて、生き埋めになってしまい、本のページが捲られていく。

 

 

 ユートピアは追加の効果を発動すると、破壊されるカードが多い。

 

 

「まぁ、理想郷に至るためには多少の犠牲もやむなしってことさ。彼女と同じようにね」

 

 しかし、ユートピアの追加効果の解釈はもう一つある…それは何事も望みすぎは自身に破滅を齎らすってことだ。

 

 

『さて、絶望に歪むのは一体どっちなんでしょうね?』

 

 私の後ろでアラトスは微笑みながら呟いた。

 

 

 

 

 

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