快晴が恐ろしい――日常ホラー。

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晴れは嫌い

 晶は晴れの日が苦手だった。

 

 と言っても、すべての晴れの日――つまり、雨の降らない日が嫌いというわけではない。

 雲のない、完全な快晴を苦手としていた。

 物心ついた頃からのことである。

 

 幼い頃は、その理由を理解することができなかった。

 なんとなく、嫌だなあ、そう思うだけであった。

 

 苦手とする理由が、明確にわかったのは高校生の時分であった。

 

 ファストフード店で、クラスメイトの友人と会話していた際のことだ。

 

「晶ってさ、目強いよな」

 

 友人がそう言ったのを、晶は笑った。

 

「目ぇ強いって何? 目力ってこと?」

「いやいやそうじゃなくて、いやそれもあるかもだけどさ」

 

 ストローでコーラを飲んだ後、友人はこう続けた。

 

「今日一緒に昇降口出た時さ、晶は目開いたまんまだったじゃん」

「……どゆこと? そりゃ開いてたけど」

「言い方悪かったわ。あー……目をさ、細めなかったじゃん?」

 

 目を細める。

 その言葉を聞いた瞬間、晶の心臓は飛び跳ねた。

 その瞬間はなぜだかわからなかった。

 だが、友人の次の言葉を聞いて、静かな納得がやってきた。

 

「今日スゲー快晴で、()()()()()()()だろ? 日差しも強かったのに、いきなり外出て目開きっぱなしなの、目ェ強ッ! と思ってさ」

 

 ――封印していた、子供の頃の記憶がよみがえる。

 

「今日は()()()()()()()だなあ」

 

 夏の日、父が目元を手で覆いながらそう言った。

 晶は父の言葉に首を傾げた。

 

「雲、あるよ?」

 

 晶は自分の頭の上を指さした。

 そこには雲があった。白く、陰のあって灰色の部分もある、普通の雲だ。

 それは晶の真上にあった。だから晶は父のように、目元に手をかざす必要などなかった。

 

 そんなことをしても眩しくないからだ。

 

 父は怪訝な顔をして、晶の指さしたほうを見上げた。

 

「うわっ、まっぶし! 晶、お前そう言ってお父さんの目を太陽で焼く気だな~!?」

「ちがうよ~!」

 

 悪い子はこうだ~! と父は幼い晶の体を持ち上げ、ぐるぐると回った。

 晶はそれに笑って、自分の頭の上にある雲の話を忘れてしまった。

 

 ――忘れようとした。

 

 幼心に気づいたのだ。

 おかしいのはきっと自分であると。

 

 晶は()()()()()()()()()()()()

 知人や友人、通行人が「今日は雲一つないね」などという会話をしているのを耳にしたことは何度もあった。

 その度に、なんだか背筋が凍るような思いをして、聞かなかったことにしてきた。

 

 今ようやく、その理由を理解した。

 

 自分の頭の上には、いつでも雲がある。

 そしてそれは自分にしか見えない。

 

 だから自分は、眩しさで目を細めたことが、生涯一度もなかった。

 今日もそうだったのだろう。

 

 晶はもう氷しか入っていない紙コップから、ずずずず、とわざとらしくストローを吸った。

 

「そう、昔から目めっちゃ強いんだよね」

「やっぱ強ェ~んじゃん!」

 

 晶が茶化すように言えば、友人はドッと笑った。

 

 友人に言われるまで、晶は今日が()()()()()()()であることを知らなかった。

 これからも、晶は本当の意味で、雲一つない快晴を知る日はやってこないのだろう。

 

 晶の頭上には、()()()()、晶にしか見えない雲がある。

 それがなんなのか、晶は知らないし、知りたくもなかった。




配信でお題貰って30分で書いたやつ
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