ワン魂   作:近衛陸

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第4訓 回想ほど楽なものはない

 

 

青い空、白い雲、キラキラ光る海だった景色は一変して……辺り一面は、鬱蒼と生い茂る森へと変わった。そう、今銀時たちは遭難的なことになっているのであった。

 

「であった……じゃないィィイ!!なんですか?この始まり方!!誰もついて来れないから!!」

 

…………今、銀時たちは遭難しています?

 

「ちげぇよォォオ!!言い方じゃねぇよ!!」

 

「落ち着け、新八。バカなナレーションと遊んでんじゃねぇよ」

 

「そうヨ。今はどうやって森を抜けるかが第一ネ」

 

銀時と神楽が口々に言い出す。新八はそんな二人を見て言った。

 

「けど、このままじゃ読者の方々には何が起こってるのかサッパリなんですけど……」

 

新八の言葉に銀時はため息をついた。そして、面倒くさそうにガシガシッと頭を掻く。

 

「ったく、仕方ねぇなァ。じゃあ回想にはいんぞ!!」

 

 

 

 

 

 

銀時たちが遭難する数時間前……

 

 

「わぁー、銀ちゃん!!新八ィ!!すごいアル」

 

神楽は海賊船から降りると目の前の光景に、はしゃいだ。海賊船から見た島は、想像していたよりも大きな島なのだろう。活気に溢れた港町が広がっている。町の中心に行くであろう道の両脇には所狭しと色んな店が開いている。それはどれもこれもこの世界に来て初めて島に上陸する銀時たちにとっては見たことのないものばかり。

 

「銀さん。あれ、あれは何でしょうか?」

 

新八は年相応の表情をして、気になる物を指差しながら銀時の着流しを引っ張る。

 

「銀ちゃん!!銀ちゃん!!あれ、あれ見たいネ」

 

神楽も新八とは反対側の着流しを引っ張りながら銀時に言う。

そんな二人を見ると銀時は微かに笑い二人の頭に手をポンと置いた。

 

「まぁ、待てお前ら、まだジャンから金貰ってねぇだろ?」

 

銀時の言葉に神楽と新八はそうだったっと顔を見合わせる。そして海賊船を見つめジャンが降りてくるのを今か今かと待った。

この島に上陸する前ジャンは銀時たちが無一文だと知り、島にいる間不便がないようお金を渡してくれると言ってくれたのだ。彼は本当に海賊団の船長なのだろうか……良い人過ぎる。

 

しばらく待つと誰かが、海賊船から降りてきた。三人はジャンだろうかっと期待してその人物を見つめた。しかし、降りてきたのはケン。銀時と神楽は誰が見ても分かるくらいがっくりと肩を落とした。新八も残念だったのだが、流石に失礼だと思い顔には出さなかった。

 

「え?ギントキさんにカグラさんどうしたんですか?」

 

ケンは二人の様子に気づくと首を傾げる。

 

「チッ、なんでもねぇよ」

 

舌打ち混じりに銀時が言う。

 

「空気読めよ。駄目副船がっ……」

 

神楽は続けるように標準語でボソッと小さく呟いた。

 

「え?」

 

どうやら幸いなことに神楽の呟きは聞こえてなかったらしい。聞き返そうとしているケンに新八は慌てて聞いた。

 

「と、ところでケンさん!!僕たちに何か用ですか?」

 

新八の問いかけにケンは思い出したように懐を探る。そしてパンパンに膨れ上がった袋を取り出した。

 

「これ、ジャン船長から預かってきたんですけど……」

 

どうやらジャンは忙しくて今は来れないらしい。

ケンは銀時にその袋を渡した。銀時は袋の中身を見るとケンの肩をポンポンと叩く。

 

「よくやった。お前なら出来ると信じてたぜ」

 

神楽も銀時の横から袋の中身を確認するとうんうんと頷いた。

 

「ほんとネ。ただの船長のオマケじゃなかったアルな」

 

「え?え?これ、褒められてるんですか?カグラさんに至ってはグサグサ言葉刺さるんですけど……」

 

ケンは困ったように新八を見る。しかし……

 

「ケンさん、良かった。やってくれたんですね」

 

新八は何故か感動していた。

 

「えぇぇぇ!?シンパチさんまでェェエ!!俺はそんなに使えない子かよォォオ!!」

 

ケンの言葉に三人は力強く頷いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「……え?銀さん?回想の続きは?」

 

突然戻ってきた読者の視線に新八は首を傾げた。そんな新八に木の枝を避けるように進む銀時がきっぱり言った。

 

「あ?終わりだけど?」

 

「いや、終わりだけどって……結局ケンさん弄りをしたことしか読者に伝わってないんですけど……」

 

新八の言葉に銀時は立ち止まりやれやれと肩をすぼめた。

 

「オイオイ、お前なァ。読者様ナメたらダメだぜ。マジ凄いから……もう、1を知って100を知るみたいな感じだから。」

 

「いや、銀さん。それって10じゃないですか?大体知るじゃないよね」

 

銀時の言葉を律儀に訂正する新八。そのとき前を歩いていた神楽が興奮した様子で話に入った。

 

「マジアルか!!1で100をなんて昔隣に住んでたジェニーちゃんみたいヨ」

 

「いやいやいや、違うから100じゃないから……大体ジェニーって誰!!」

 

興奮した神楽に新八はブンブンと首を振り否定をした。

 

「ジェニーちゃんは1人に一度でも注意を受けると適当に100人呪うネ」

 

「オィィイ!!無駄に怖いんですけどォォオ!!何その八つ当たりっ子」

 

神楽の言葉に驚く新八。銀時も聞いていたらしく動作が止まっている。

 

「オ、オイオイ……神楽よォ。そんな呪いとか?非科学的なこと……え?お前信じてるの?」

 

銀時はダラダラと冷や汗を流した。銀時の中では呪い=霊現象なのである。

 

「……そういえば、ジェニーちゃんネットにも出没するネ。そして不親切な小説を呪うヨ」

 

神楽の言葉に銀時はピシッと止まった。目は泳ぎ挙動不審にキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「お、お前らァァァア!!何やってんだァァア!!おま……回想途中でよく分かんなくなってんだろうがァァア!!」

 

「いや、あんたが止めたんでしょう」

 

銀時の叫びに新八がきっぱりと言う。すると銀時は新八の方へ振り向いた。

 

「ち、違いますぅ。おま……アレは回想続くと読者さんが疲れると思った銀さんの優しさなんですぅ」

 

「なんかその喋り方ムカつくんですけど……はぁ、分かりましたよ。じゃあ、そろそろ回想に戻りましょう」

 

新八は呆れたようにため息をつくと銀時を見つめた。銀時もコクコクと頷いた。

 

「じ、じゃあ、今度こそ最後までやるからの、呪いなんて信じてねぇけど……やるから!!不親切じゃないから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンと別れた三人は町の中を色々と見て歩いた。やはりどれもこれも見たことのないものでいっぱいだった。三人は本当に楽しそうに歩く。しばらく歩いていくと三人の目の前に一軒のレストランが現れた。

 

「銀ちゃん、私お腹すいたアル」

 

神楽はそのレストランを見つけるとお腹を軽く押さえ銀時をじっと見つめた。そんな神楽を見ると銀時は頬をポリポリと掻き、小さく呟いた。

 

「あー、じゃあちょっと食って行くか」

 

ケン……もといジャンから貰った金はたんまりとある。それに銀時も少しお腹がすいていた。

 

「そうと決まったら善は急げヨ!!」

 

「あっ、待ってよ。神楽ちゃん」

 

神楽と新八は嬉しそうに笑うとレストランへとかけって行った。

 

「オイ、お前ら食べ過ぎんじゃねぇぞ!!……ってかパフェ的な物ねぇかな?」

 

銀時もガシガシッと頭を掻きながらレストランに向かう。

 

レストランに入ると思っていたのとは少し違った。4人で座るテーブルが幾つか転々と置いてあり。奥はバーなのだろうか?カウンターがあり、その奥にお酒が所狭しと並んだ棚が並んでいるのだ。レストランというよりもむしろ酒場に近い。銀時は既に二人が座っているテーブルへと向かった。

 

「あっ、銀さん。甘い物一つしか無さそうだったんでそれと他適当に選びましたよ?」

 

新八の言葉に銀時は一瞬眉を寄せた。しかし店の雰囲気からして甘味があまり無いことは分かっていたので、無言で椅子に腰を下ろした。

しばらくすると料理が運ばれてきた。見たこともない料理だった。銀時たちは美味しそうに料理を頬張った。銀時たちが楽しい食事をしていると、店屋のドアが開いた。どうやら客が来たようである。

入ってきた男は40代くらいだろうか?しっかりとした身体付きをしている。

 

「よぉ、マスター」

 

店の亭主の知り合いのようだ、慣れた様にカウンターの席に座り亭主に話かけている。

銀時は再度料理に集中しようとするも止まった。男の口から悪魔の実の情報が飛び出したからだ。

 

銀時は甘味を平らげると立ち上がりゆったりとした感じで男に近付いた。

 

「銀さん?」

 

「ムシャムシャ……銀ちゃん?」

 

神楽と新八は話が聞こえてなかったのだろう。男に近付いていく銀時を不思議そうに見つめる。

 

「ん?なんだ?兄ちゃん……俺になんか用かい?」

 

男は近付いてきた銀時に気付いたのか首を傾げた。

 

「あぁ、わりぃけど……その話もっと詳しく聞かせてくれねぇか?」

 

男は驚くも喜々として話をし始めた。ちょうどマスター以外にも話し相手が欲しかったのだろう。長々と話し出す男に料理を食べ終えた新八と神楽も近付く。だんだんと悪魔の実以外のことも話していく男。どうやら話は止まらないようだ。

 

 

2時間後。ようやく銀時たちは男から解放され、レストラン……否酒場から出てきた。三人はどっと疲れているようだ。

 

「話……長かったですね」

 

「ああ。」

 

「けど……重要な話が聞けましたね」

 

「あぁ、まさか……奥さんが最終的にああなるとは……」

 

「ほんとネ。びっくりヨ」

 

新八と言葉にうんうんと頷く銀時と神楽。

 

「ちげぇよ!!確かにびっくりしましたけど……実の話ですよ!!悪魔の実!!」

 

男の話によるとこの先の森の奥にある。洞窟が怪しいらしい。っといってもその洞窟は本当にあるのかも不明なようだ。その洞窟があるであろう森は薄暗く、似たような木ばかりが生えており、町の人でも安易に入ると迷うほどなのだ。

 

「それにしても……銀さん。どうしましょうか?」

 

「ん?そりゃあ、森に行くに決まってるだろ?」

 

新八の言葉に銀時はきっぱりと言った。

 

「え?けど、さっき安易に森に入ると迷うって」

 

「オイオイ、新八ィ。銀さんこれでもこの小説の主人公よォ」

 

「え?あっ……はい……?」

 

銀時の言葉に新八は不思議そうに首を傾げた。

 

「お前……主人公が迷う森で迷子なんてベタベタな展開やらねぇって」

 

「ほんとヨ。ベタベタ過ぎて逆に新鮮なくらいネ」

 

「オィィイ!!ダメじゃん!!新鮮ならダメじゃん!!」

 

新八は神楽の言葉に突っ込んだ。そして三人は森の方角へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っというようなベタベタな展開により、今に至る。どうだ?不親切じゃないだろ?ないだろ?」

 

「そうですね……分かりましたから銀さん。歩きにくいんで離れて下さい」

 

新八に言われると銀時は眉を寄せた。

そう、銀時は回想中べったりと新八にくっ付いていた。

 

「あ?なんだよ。お前が怖くないよう銀さん守ってやったんだよ?回想中きっちり守ってやったんだよ?」

 

「いや、いいんで……冷や汗ベタベタな人に守ってもらってもアレなんで」

 

新八は銀時の親切?をきって捨てた。そのとき、ガサガサと草むらが動いた。動きはだんだん激しくなり、こっちへ近付いてくるようだ。そして何かが出てきた。出てきたのは神楽だった。

 

「銀ちゃん!!新八!!見つけたアル!!……銀ちゃん?」

 

「あれっ、銀さん?」

 

二人は首を傾げた。さっきまで居たところに銀時がいないのだ。よくよく探してみると、別の草むらに頭を突っ込んでいる銀時を発見した。二人は銀時に冷たい眼差しを送る。

 

「いやいやいや、違うからなんか……ムー大陸の入り口が」

 

「はいはい、ムー大陸にでもどこにでも行けヨ。クソが!!」

 

神楽の辛辣な言葉が銀時に突き刺さる。そんな光景を見て、新八は苦笑いを浮かべて言った。

 

「そ、そういえば神楽ちゃん。さっきなんか見つけたって言ってたけど……」

 

「そうアル。私、発見しちゃったネ。洞窟を!!」

 

新八の言葉に神楽は得意気に胸を張って言った。

 

 

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