ワン魂   作:近衛陸

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第5訓 主人公苛めは控えることをオススメします

 

 

銀時と新八は神楽のうしろを歩いていた。少し歩くとはるか高く登るのが困難だろうと思われる崖の下に着いた。

 

「あれアル」

 

神楽はまるで壁のような崖下に出ると右上を指差した。二人は神楽の指差した方向に顔を向ける。確かに神楽の言うとおり右上の壁にぽっかりと穴が開いているのが微かに見える。

 

「確かに……洞窟みたいですね」

 

新八の言葉に銀時は上を見上げては眉を寄せた。

 

「あぁ。けどよォ、よく見つけられたもんだ」

 

「フフン、私にかかればこれくらい朝飯前ネ」

 

銀時の言葉に神楽は自慢気に胸を張った。それもそのはず、崖を上がる途中にあるので崖の上からも下からも見えにくく発見が難しい。

 

例え遠くからでも森の木が邪魔をして見えないだろう。ほんと神楽は目ざといというか……野生の勘がすごいとい……ドカッ

 

「何か言ったアルか?」

 

ナレーションのいる空間が音とともに揺れた。どうやら神楽が殴っ……ドカッ……いえ、小突いたようだ。可愛い神楽ちゃんには殴るなんて野蛮な芸当はできませんので

 

「……銀さん。なんかあっち大変みたいなんですけど」

 

新八がこっちを指差しながら心配そうに言った。しかし、銀時は聞こえないと耳を塞ぐ。

 

「バカ……目を合わせるな。巻き込まれるぞ」

 

銀時はナレーションを見捨てた。

 

 

 

 

しばらくすると神楽は落ち着いたらしく二人の元へ戻ってきた。

 

「よし、神楽も戻ってきたし……行くぞ」

 

先程、あっさりとナレーションを見捨てた銀時は上の洞窟を指差した。そんな銀時に新八は眉を寄せる。

 

「け、けど銀さん。登れそうにないんですけど……」

 

新八の言うとおり崖は険しく、そう簡単に登れるようなものではない。

そんな新八に神楽が力強く言った。

 

「何言ってるアルか新八!!そんなことで立派な忍者になれると思ってるアルか!!」

 

「いや、僕忍者になる気ないんですけど……」

 

新八は呆れたように神楽に言うのだが、神楽は聞いていない。それどころか銀時に訴えかける。

 

「父ちゃーん。新八が、新八が、忍者にならないって……」

 

「バカヤロー。母ちゃんを苛めるんじゃねぇよ!!」

 

銀時は神楽を慰めるように頭を撫でながら言った。

 

「え?何これ?父ちゃん母ちゃんってあんたら僕の親のつもりですか」

 

「つもりって何アルか!!お腹を痛めて産んだネ!!」

 

神楽は思い出しながら言うもなんか可笑しい。何故なら思い出の中の神楽は食事を取っており、たくさんたくさん食べ……お腹を押さえてトイレに直行していた。

 

「待てェェエ!!お腹痛めて産んだって食べ過ぎでお腹壊しただけじゃねぇかァァア!!」

 

「違うネ。食べ過ぎじゃなくて生卵に当たったのヨ」

 

「どっちも似たようなもんだァァア!!」

 

新八の叫び声が森の中に響いた。

 

 

「はぁ。……取り敢えず真面目にやりましょう?絶対この小説進み度遅いですよ」

 

新八の言葉に神楽と銀時は顔を見合わせた。

 

「仕方ねぇな。じゃあ、本題に戻るか」

 

銀時はガシガシと頭を掻き上にある洞窟を見上げた。神楽と新八も同じように見上げる。

 

「どうしましょうか」

 

見上げたまま新八が話しかける銀時は黙って辺りをキョロキョロ見渡した。そして何かを見つけたらしく森の方へ歩きだした。

 

「銀さん?」

 

新八は首を傾げて銀時を待つ。しばらくして銀時は何かを持って帰ってきた。銀時が持っているのは丈夫そうな木のツタだ。

 

「これで登るぞ」

 

銀時の作戦とはこうだ。誰か一人が頑張って洞窟まで登り、洞窟から木のツタを降ろし下の二人を引き上げるという作戦だ。

この作戦はあの険しい崖を登る体力と人を引き上げる力が無くては出来ない。結果的に先に上に登るのは神楽と銀時のどちらかに絞られる。

 

「おい、神楽行ってこい」

 

銀時は木のツタを渡そうとした。しかし、神楽は首を振り洞窟を指差した。銀時は指を差されたほうを見ると眉を寄せた。崖の下側は森の木により影になっているのだが、洞窟の少し下側は太陽の光に当たっており明るい。太陽の苦手な夜兎の神楽にとってあそこを登るのはキツいだろう。

最終的に登れるのは銀時だけになった。

銀時はチラッと二人を見る。

 

二人とも早く登れやっという顔をしながら銀時を見つめていた。

 

(オイオイオイ、マジでか。銀さんマジ登らなきゃ何ねぇの?)

 

銀時は崖を見ると洞窟までの距離を測った。そして崖に近付き触れる。

 

(ムリムリムリ。高いとかじゃねぇよ。なんかアレじゃん……崖ってこうデコボコしてるんじゃねぇの?なんかハゲオヤジの頭並みにツルツルなんですけどォォオ)

 

銀時はなんとか登ろうと登りやすい場所を探す。しかし見当たらない。もうほんとツルツルなのだ。

 

「銀ちゃん!!ファイト」

 

「銀さん頑張って下さい」

 

子供たちの声援が背後から聞こえる。銀時は覚悟を決めてブーツを脱いだ。どうやら手と足の力だけで登っていくようだ。

銀時は強すぎず弱すぎず微妙な力加減でゆっくり一歩ずつ登っていく。少しでも力加減を間違えると滑って落ちてしまうのだ。

数十分後、なんとか洞窟まであと一歩というところまできた。

 

(も、もう少し……)

 

銀時は呼吸を整え全神経を手と足に意識させた。手を動かし登ろうとしたその時神楽の声が聞こえた。

 

「銀ちゃーん。よくよく見たら下にも洞窟あったアル」

 

「え?」

 

銀時は神楽の言葉を聞き止まった。そして……止まったことで力加減を間違えてしまったのだろう。

 

ツルンッっと効果音を立て銀時は滑って落ちていく。

 

「え?え?えぇぇぇえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は洞窟の中を歩いていた。洞窟の中は思っていたより暗くない。何故かというと洞窟の壁に所々生えているコケが光っているからだ。

どうして光っているのかは分からないが、光っているものは光っているので考えても仕方ない。グランドラインならではの不思議とでも言っておこう。

そんな不思議なコケが生えている洞窟を歩いている神楽はご機嫌だ。どうやら光るコケに興味津々らしい。楽しそうに歩きながらコケを手に取り観察している。

そんなご機嫌な神楽の後ろを暗い雰囲気でついて行く一人の男が居た。

 

そう、先程情けなく崖から滑り落ちた銀時だ。その隣には銀時を慰めている新八もいる。

 

「銀さん。元気出して下さい」

 

「元気出せって……新八ィ。わかるか?銀さん頑張ったんだよ?珍しく頑張ったんだよ?」

 

銀時は歩きながら自分の片手で顔をおおった。暗さはだんだんとアップしていく。

 

「う……あー、けど……流石銀さんですね。あんな所から落ちても怪我一つなかったじゃないですか」

 

そう。新八の言うとおり銀時はとっさに受け身を取り怪我をしなかったのだ。腐っても主人公ということだろうか

 

「あー……あれは、まぁな」

 

銀時は新八の言葉に頬をポリポリと掻いた。どうやら少し機嫌が直ったようである。

 

そんな銀時を見て新八はたたみかけるように言った。

 

「それに今からサラサラの実を探すんでしょう?元気出して頑張らないと」

 

新八の言葉に銀時はピクッと反応をする。

 

「サラサラの実……」

 

「そう。サラサラの実です」

 

銀時の言葉に頷き新八がもう一度力強く言った。

 

「……ッ……テメェら行くぞォォオ!!」

 

銀時のやる気が満々になったようだ。片手を上げ先頭をきって歩きだした。

神楽と新八は銀時の様子に一瞬驚くも笑い合うと元気よく返事をした。

 

「おうヨ!!」

 

「はい!!」

 

銀時復活からしばらく洞窟内を歩くと洞窟の出口だろうか?先が明るく光っている。銀時たちは早足でその光へと向かって歩いた。

 

光の目の前……いや、洞窟の出口付近まで行くと三人は足を止めた。

 

「こ、これは……」

 

「わぁ、すごいアル」

 

「なんですか?……ここ」

 

銀時、神楽、新八の順で三人は声を上げた。三人の目の前にはたくさんの建物が立っていた。そう、人は居そうにないが……町があったのだ。

 

 

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