ワン魂   作:近衛陸

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第8訓 人の夢と書いて儚い……言葉通りだね

 

 

三人は最後の試練の部屋へと入った。部屋の中は一番隅にお馴染みの日記が置かれており、何もないように見える。新八はもう慣れたように日記を開いて読み始めた。

 

「……私は、絶望した。今日海軍が来たのだ……ストーカーの疑いで連行いたしますっと……ありえない!!ありえない!!何故に何故に私がストーカーなどと………復讐だ!!復讐をせねば……この私を認めない腐った世界に!!私は復讐に燃えた。その時、海軍基地に来ていた学者と話す機会を得た。何やら先祖代々パシフィスタという物を作ろうとしているらしい……私は莫大な金を払いそのサンプルを一つもらった。

 

しかし町で暴れさせると海軍に指名手配にされると恐れた私はそれを使い試練に来た者達を殺すことにした。さぁ、復讐の始まりだ!!」

 

新八が読んだ後二人は声を揃えて言った。

 

『ただの八つ当たりじゃねぇかァァア!!』

 

「何ですか、この人……めちゃくちゃ器小さいんですけど……」

 

新八が呆れたように呟く。その呟きに銀時はうんうんと頷いた。

 

「それにしてもよォ。その……パティシエだっけか?居なくねぇ?」

 

「銀さん、パティシエじゃなくてパシフィスタです。……確かに居ませんね」

 

キョロキョロと辺りを見渡す銀時を見ると、新八も辺りを見渡した。すると神楽がじっと天井を見ていることに気付いた。

 

「神楽ちゃん?どうしたの?」

 

新八が聞くと神楽は天井から目を離さずきっぱりと言った。

 

「戦ってるアル」

 

「戦ってるって誰…………」

 

新八は神楽と同じように天井を見上げると止まった。

銀時はそんな二人を不思議に思い天井を見上げる。天井にはなんかゴツいいかにもロボットが張り付いていた。それは、今のパシフィスタのようなクマ的なものではなく……某天才からくり技師のところにある三郎のようなものだ。

 

「何あれェェエ!!いつから!!いつから居たんだ」

 

銀時は目を見開き神楽に言う。神楽は口を開いた。

 

「私達が部屋に入った後しばらくして……現れたネ」

 

神楽が言うと同時にガッシャと機械らしい音を立ててパシフィスタのサンプルが降りてきた。三人は武器を構える。神楽は傘。新八と銀時は木刀だ。

先手必勝とばかりに神楽が動いた。サンプルへと走って行き傘で一撃を食らわした。ドゴッと大きな音がしたにも関わらずサンプルにはダメージがない。

 

「オイオイ、マジかよ」

 

神楽はあれでも夜兎だ。その一撃を受けて無傷とはどんだけ頑丈なんだ……銀時は眉を寄せる。するとサンプルは攻撃を仕掛けてきた神楽に向かって拳を振り上げた。神楽は傘を構え受け止めるがあまりの力に苦しそうに顔を歪めた。銀時は舌打ちをし、神楽とサンプルの間を開けるようにサンプルに向かい木刀を振り下ろした。

 

「銀ちゃん!!」

 

サンプルは銀時の攻撃を後ろに下がりよけた。銀時は神楽を庇うように前に立つ。新八も銀時に習うよう神楽の前で木刀を構える。

 

「大丈夫?神楽ちゃん!!」

 

新八の言葉に神楽は銀時の隣に立ちきっぱり言った。

 

「あれくらい大丈夫アル。それより気をつけるネ……あいつ思ったより厄介ヨ」

 

神楽はサンプルを睨みつけながら再度傘を構えた。

神楽の言葉に新八はコクリと頷いた。

サンプルが近付いてくる、三人は足並みを揃えて同時に攻撃をした。銀時は正面、新八と神楽は左右から。攻撃は当たる、しかしダメージといったダメージが見当たらない。

 

それに加えてサンプルの振り下ろしてくる拳は凄まじく床には拳型の穴が開いた。幸いなことに攻撃のスピードはそう速くないので注目していれば避けられるが、このまま戦いが長引けばそれも難しくなるだろう。

 

(まさか銀さんや神楽ちゃんが苦戦するなんて……せめて弱点さえ分かれば)

 

新八はこの状況に眉を寄せる。そして日記が目に入った。

 

(日記……そうだ。確か……最後のページに封筒が挟まってた)

 

新八は思い出すと日記に向かって走った。サンプルもそれに気付き新八の元に……

銀時と神楽は眉を寄せた。突然サンプルが攻撃を止めたかと思うと走っていったのだ。二人はサンプルの走っていった方向を見ると目を見開いた。

 

新八が日記を取ろうとしており、サンプルが拳を振り上げている。もちろん新八はサンプルに気付いてない。

 

「新八ィィイ!!」

 

神楽が叫ぶ。銀時は新八のもとへと走った。果たしてこの距離間に合うのだろうか……

 

「なっ!?」

 

新八は神楽の声に気付き日記から目線をそらした。目の前にはサンプルが拳を振り上げ下ろしてきていた。新八はギュッと目を閉じる。聞こえてきたのは、ぐはっと小さな悲鳴と骨が折れる音……そして壁がガラガラと崩れるような音だ。

 

「え?」

 

新八は目を開けた。そして、音のした方向を見る。壁が崩れており、壁の向こうに何かが飛んだようだった。

 

「ぎ、銀ちゃーん!!」

 

崩れた壁に向かって神楽が叫ぶ。新八は理解した。自分を守って銀時がやられたのだと。

 

「銀……さん……」

 

新八は放心したように崩れた壁を見つめる。サンプルは再度拳を振り上げて新八を狙った。新八に向かって拳が振り下ろされる。

 

「ホワチャァッッ!!」

 

神楽が掛け声とともに拳を蹴り上げて軌道を逸らす。床に着地をし、新八の手を掴むと走って逃げた。

 

「何ボーっとしてるアルか!!」

 

神楽は新八に怒鳴るように言った。

 

「神楽ちゃ……銀さんが……ぶひゃらッ」

 

不安そうに壁を見つめる新八に神楽はバキッと思い切り殴った。

 

「しっかりするネ!!あれぐらいで銀ちゃんがやられるたまかッ!!」

 

神楽に殴られ新八は吹っ飛ぶとヨロヨロと起き上がった。

 

「神楽ちゃん……そうだね。銀さんは殺しても死にそうにないし…………けどこれやり過ぎじゃねぇ?」

 

起き上がった新八の頬はぷくっと膨れ上がっていた。

 

「ぶひゃひゃひゃっ、新八すごい顔アル」

 

神楽は新八の顔を指差して楽しそうに笑うそんな神楽を見て新八がきっぱり言った。

 

「ちょ……神楽ちゃんがやったんでしょう!!」

 

新八が言うと近くで機械音が聞こえた。どうやらサンプルが来たようだ。新八は木刀をギュッと握りしめ、神楽は傘を構える。

 

『万事屋銀ちゃんをなめんなこのヤロー!!』

 

二人は同時に言うとサンプルに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

「いっ……クソっ、こりゃぁ骨いってんなァ」

 

銀時は攻撃を受けたわき腹を押さえて瓦礫の中から起き上がった。攻撃を受けた衝撃で少し気を失っていたようだ。穴の空いた壁の遥か向こうでは戦う音が聞こえる。

 

「神楽、新八……」

 

銀時は木刀を杖代わりにして立ち上がった。そして戦いの場に戻ろうと壁へと歩こうとした。しかし背後から微かに何かの音がするのに気付き立ち止まった。そして杖にしていた木刀を握り締めゆっくりと振り向く。

 

「こ、こいつは……」

 

銀時はそう呟き目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、新八と神楽はサンプルと戦っていた。サンプルが新八に攻撃しようとすると神楽がそれを阻止。

 

反対にサンプルが神楽に攻撃しようとすると新八が攻撃をして阻止。二人は交互に攻撃をした。しかしサンプルにはあまり効果がなかった。流石に長い間戦って疲れていたのだろう。傘を振り下ろし攻撃をした神楽のバランスが崩れた。そんな神楽にサンプルの拳が迫る。

 

「神楽ちゃん!!」

 

新八が声を張り上げた。神楽は覚悟を決めて衝撃に備える。しかしいつまでたっても衝撃は来なかった。神楽は拳が向かってきた方を向く。なんと拳は神楽に当たる直前で止まっていた。

 

「あれ?」

 

神楽が不思議そうに首を傾げた。

 

「危ねぇなオイ、間一髪だったじゃねぇか」

 

銀時が飛ばされた壁から姿を現した。

 

「銀ちゃん!!」

 

「銀さん!!」

 

二人は動かなくなったサンプルを警戒しつつも嬉しそうに銀時のもとへと走る。

 

「あれ……銀ちゃんがやったアルか?」

 

銀時の元へ着くと神楽はサンプルを指差して聞いた。

 

「あぁ、ちょうどあれのシステム機械のある場所に飛ばされてよォ」

 

そう、銀時が飛ばされた所には幸運なことにサンプルの制御システムあったのだ。銀時は慣れないながらもそれを弄りサンプルを停止させたのだ。

 

銀時と神楽が話しているとおずおずと新八が口を開いた。

 

「あの……銀さん、さっきは……」

 

そんな新八を見ると銀時はポンと頭に手を置いた。そして口を開く。

 

「あー、新八ィ……銀さんなんか甘いもん食べてぇ。はやく悪魔の実ゲットして町帰るぞ」

 

「え……あっ、はい!!……けどあまり食べ過ぎたらダメですよ」

 

銀時の言葉に新八は嬉しそうに頷き、そして注意をした。そんな二人を見て神楽は二人の間に飛び入った。

 

「銀ちゃん、新八。私もめちゃくちゃお腹すいたネ!!全財産使ってたらふく食べるアル」

 

『いや、それはダメだろ』

 

神楽の言葉に二人は同時に突っ込んだ。そしてクリア時に現れる階段へと向かおうとするもそれらしい階段が見当たらない。

 

「あれ?階段見当たりませんね……」

 

新八が呟くと遠くから機械の音が聞こえた。三人は、音のした方を見る。なんとサンプルが動いていた。

 

「え?嘘……でしょう」

 

「まだ動くアルか?」

 

新八と神楽が呟く。そして三人は戦闘態勢へと入った。しかしサンプルは三人ではなく壁へと向かった。そして目的地についたのか拳を振り上げ壁を壊す。壁の先には階段が見える。サンプルは壁を壊すとそのままどこかへ去っていった。

 

「何あれ……」

 

「壁壊して行ったアル」

 

「クリアってことだな」

 

新八の問いに神楽と銀時がうんうん頷いた。

 

「オィィイ!!なんだこれ?え?いいの?なんかグダグダ感あるんだけどォォオ!!確実に階段の出し方おかしいだろォォオ!!」

 

「仕方ないネ。この小説の作者なんてこんなものヨ」

 

「そうだぞ。このグダグダ感がこの小説の良いところだ」

 

叫ぶ新八にきっぱり言いながら神楽と銀時は階段へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

三人が階段を上がりまず目についたのはクリアおめでとうっと書かれた垂れ幕だった。そしてその下には机があり、その上に宝箱が置いてある。

三人はそれを見ると宝箱に歩いていった。銀時がドキドキワクワクしながら宝箱のフタに手をかけ開ける。

中には黒くてグルグルと螺旋模様のブドウみたいな果物が入っていた。三人はそれを見て歓喜の言葉をあげるでもなくほぼ同時に心の中で呟いた。

 

【なんかすっごく不味そう!!】

 

しばらくと三人は悪魔の実をじっと見つめた。三人の中に変な空気が流れる。

 

「銀ちゃん、サッサと食べるネ」

 

神楽が悪魔の実から目を外し銀時を見つめた。新八も悪魔の実から銀時を見た。

二人の視線を受けると銀時は恐る恐る悪魔の実を手に取り眺めた。あまりにも不味そうで食べる決心がつかないのだ。

 

(何これ?この果物すっげぇ不味いですよオーラ出してんだけど……しかも真っ黒じゃん!!お妙の可哀想な卵焼き並みじゃねぇか!!)

 

銀時は悪魔の実を見つめ、二人に視線を移した。二人はじっと銀時が食べるのを待っている。

 

(食べなきゃダメオーラ出てるし。いや、待て待て銀さん……あれだ。確かに不味そうだけどこれはサラサラになる実だろ。俺のキューティクル侍への一歩だろ。行け行くんだ俺ェェエ!!)

 

長い葛藤の末銀時はついに大きな口を開けた。神楽と新八はそれを食い入るように見つめる。銀時は悪魔の実を食べようとするも再度止まった。

 

(………そういや……これ、本当にサラサラの実なのか?確か確実にサラサラの実とは誰も言ってないような……)

 

「おい、お前らこれ……」

 

「サッサと食えやァァア!!」

 

「ムグッ……ゴックン」

 

銀時がついにある考えに達するも遅かった。痺れを切らした神楽が悪魔の実を銀時の口に勢いよくぶち込んだ。思わず一粒飲み込んでしまう銀時。そして……

 

「ま、まずぅぅぅう!!」

 

外見通りあまりの不味さに銀時はしゃがみ込んだ。

 

「銀さん……大丈夫ですか?」

 

「銀ちゃん!!どう?どう?変化したアルか?」

 

二人はしきりに銀時に聞いた。銀時は不味さから復活するとまず髪を触った。残念ながら普段通りのクルクル天然パーマだ。次に身体をペタペタ触る。そしてあることに気付いた。

試練4の戦いで骨折した骨が治っているのだ。体力も回復している。

 

「あー、なんか……健康体?」

 

銀時が呟くと新八と神楽は顔を見合わせる。すると新八が思い出したように言い出した。

 

「そういえば、僕日記に封筒が挟まってあるの見たんでした。何か書いてあるかも……」

 

新八の言葉に三人は4階へと戻った。

 

 

 

 

 

 

4階に着くと三人は日記へと向かう。

 

銀時は日記を拾いそこから封筒を取り出し中の紙を広げた。

 

「これは……」

 

銀時の呟きに新八と神楽は銀時の横から封筒から出て来た紙を見る。そして三人そろって叫んだ

 

『なんだこれェェエ!!』

 

 

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