脱走せし少女達と機人と呼ばれし者   作:衛置竜人

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#6『マーシナリーマーケット』

 

 

 

 

マーシナリーマーケット…其処は擬似国家内包型巨大都市の外で活動する傭兵達の為の補給所の様な巨大施設である。

武器や弾薬、食料の他に生活必需品や嗜好品も扱っているのだが、中には今では生産していない物を扱っているなんて事もあるし一応通販にも対応している。そしてこの様なマーシナリーマーケットは各地に点在しているのだ。

「オイ…アイツって"機人"にラチェットじゃねーか?珍しい事もあるってもんだ」

「何でキヴォトス人のガキを連れてんだ?まさか奴隷か?」

「アイツに()()()()()()が?」

「バカ!キヴォトス人は俺達以上にタフに進化した種族だぞ!多分自分の手駒にするとかだろ!」

「あーアイツ今までソロだったもんな」

目的の店に向かって歩くマグナス達に多くの傭兵達が好奇の視線を向ける。マグナスもラチェットもこの辺りでは名の知れた者達である。しかしマグナスもラチェットも基本的には通販で物資を調達するからか此処に訪れるのは珍しい事だったりする。

通路はゴドスの様な小型ゾイドであれば問題なくすれ違える程には余裕がある。これもゾイド用の武装を運搬する為であり、サオリ達が辺りを見回すと物資運送用のモルガキャリアやモルガトレイン、クレーンやフォークリフト代わりのイグアンやシーパンツァー達がせっせと稼働しているのが見える。

因みにこの通路は流石に大型ゾイドの通行は想定していないからか修理目的でない場合、中型ゾイドや大型ゾイドはパーキングエリアで駐機させなければならない。マグナス達が徒歩で移動しているのもパワードコンボイはトレーラー込みで大型ゾイドと同等の扱いになってしまい、通路を通行出来ないからである。

「全員いるな…着いたぞ」

マグナスは目的地に着くやサオリ達の安否を確認して店の中に入った。

店の棚には様々商品ながところ狭しに陳列されている。

そんな商品達の中からアズサはあるぬいぐるみ達に釘付けになっていた。

黒いボディにデフォルメした骨のようなデザインの顔のキャラと舌が露出して目の焦点が合っていない白い鳥のキャラのぬいぐるみである。

サオリ達が商品達をジロジロと眺めているとカウンターの奥から虫の様な外見をした宇宙人が姿を現した。

「イラッシャイ!待ッテタアルネ、ミスターマグナス!」

「まさかあんたが直々に出迎えてくれるとはな」

「君ガ久々二直二来店ト知レバ出ルアルヨ。君ニハ恩モアルカラネ」

「そうか…それでチャンマー、頼んでおいた物は?」

「モチノロンヨ!トレンタ、ミスターマグナスガ取リ置キシテタ商品ヲ持ッテキテ欲シイネ!」

「へい大将!ただいま!」

マグナスからチャンマーと呼ばれたその宇宙人はカウンターの奥にいる人物にそう指示し、奥から猫耳を生やした男性が箱を載せた台車を押しながら現れた。

「ゴ注文ノキヴォトス共通初等教育BDト中等教育BD、ソレカラ大画面ノBD再生機能付キテレビ、携帯端末5ツ分諸々アルネ」

「間違いないっすかねマグナスの旦那!」

マグナスはしゃがむと台車に載った商品を確認する。

「あぁ、間違いない。感謝する」

マグナスは確認し終えると立ち上がった。

一方のサオリ達は置いてきぼりになっていた…ただ、アズサだけは件のぬいぐるみ達に釘付けになったまま微動だにしない。

「しかし驚いたっすよ。まさか旦那がキヴォトスの教材を注文するとは思わなかったっすから」

「独学だった俺が一から教えるより教材を使った方が正確かつ効率的だからな」

とマグナスは答える。マグナスがこの惑星に流れ着いた時、彼は独学でこの惑星の事を学んだのである。

「アァ、自己紹介ガマダダッタアルネ、オ嬢サン達。ワタシ、マーキンド星人チャンマー、コノマーシナリーマーケットノ責任者アルネ。以後オ見知リオキヲ」

「あっしはトレンタっす。惑星ブレキの出身っす」

自己紹介をしたマーキンド星人チャンマーと惑星ブレキ人トレンタにサオリ達も自己紹介をした。

「しかしドクター以外にも宇宙人がいるなんて…」

そう呟くミサキに

「君達キヴォトス人モ言ッテシマエバ宇宙人ノ末裔アルネ。ソシテマグナスダッテ地球ト呼バレタ惑星カラ流レ着イタ宇宙人アルネ」

チャンマーの発言にアズサ、アツコ、ミサキ、ヒヨリは一斉にマグナスの方へ向く。まるで事実を確認するかの様に。

「確かにそうだ。俺は2年前に地球から時空の裂け目を通ってこの惑星に流れ着いた」

「どうして言ってくれなかったんですか?」

「別に隠していたつもりじゃない…ただ単に今まで聞かれなかったからだ」

ヒヨリの疑問にマグナスはそう答える。一方のサオリは地球という単語に懐かしさを感じていた。まさか、地球人に会えるとは思わなかったからだ。

「どうしたの?サッちゃん?」

そんなサオリの顔をアツコは覗き込むかの様に見つめる。

「いや、何でもない」

とサオリは誤魔化すのだった。

「そう言えば我が故郷の惑星ブレキがハシリヤンから解放されたんっすよ旦那!」

「それは良かったな」

更なる単語の出現にサオリ達はまたも置いてきぼりになっている。

「あぁ、置いてきぼりにしてごめんっす、お嬢さん達。あっしの故郷の惑星ブレキは銀河系単位の通販事業をやってたっす。しかし、ハシリヤンって宇宙マフィアに乗っ取られて(侵略されて)しまったっす。

あっしらは様々な宇宙へ散り散りになって逃げて…あっしは時空の裂け目に呑み込まれた末にこの惑星に流れ着いて大将に拾われ雇われ今に至るっす」

「しかし解放されたって…」

「つい最近の話っす。ハシリヤン本家の首領がマルチバースの地球で討ち取られたっすよ。しかもその討ち取った人物の1人が惑星ブレキ人の中でも宇宙通販の若旦那と呼ばれたお方だったから驚いたっすよ。

今やハシリヤンの連中も残党が好き勝手に暴れているって噂っすよ」

アズサに対しトレンタはそう答えた。

「なんとも規模のデカい話…」

とアツコは呟くと共に惑星ブレキとアリウス自治区を重ねていた。アリウス自治区もベアトリーチェ一派という外部の大人達に支配されているのだ。

「銀河ハ広大アル。マルチバースノ中ニハ宇蟲王トイウデタラメナ奴モイタッテ話アルネ」

「それ、若旦那に聞いたっすよ。何でも宇蟲王の支配下にあったチキューって惑星の住人と王様達が倒したって」

此処まで規模がデカいと信じるのも難しいだろう…そう、この広大過ぎる宇宙は何でもありなのである。

そんな与太話をしつつもアズサは件のぬいぐるみ達にチラチラと視線を向けていた。

「何だ?気になるのか?」

とマグナスはアズサに訊ね、アズサはこくりと頷く。

「モモブレンズアルネ。傭兵達ノ中ニモディープナマニアイルアルネ。白イ鳥ミタイナノガ"ペロロ"、ソノ右隣ノガ"スカルマン"アルネ」

スカルマンに釘付けになっていたアズサを見かねたマグナスは数秒考え

「…お前ら欲しいのを持ってこい、今回は2つだけだ」

マグナスの言葉に5人はマグナスの顔を見上げる。まるで良いのかと言わんばかりだ。

「時間は有限だ。だからさっさと探してこい」

マグナスがそう言うとサオリ達は散り散りになって店内を散策する。アズサだけはペロロとスカルマンのぬいぐるみを棚から出して両手に抱えるとマグナスに渡し、マグナスはそれをレジカウンターに置くとトレンタはぬいぐるみのタグのバーコードをスキャナーで読み取り、マグナスはカードで商品の代金を支払う。

トレンタは代金の支払いが完了したぬいぐるみをマグナスに渡すと、マグナスはぬいぐるみをアズサに返した。

「ありがとう…」

とアズサはぬいぐるみを抱きながらマグナスに礼を言った。

 

その後暫くしてサオリ、アツコ、ミサキ、ヒヨリも戻って来た。

サオリはヘッドフォン、アツコはデジタルカメラ、ミサキはテディベアのぬいぐるみとガイロス帝国のタルボサウルス型ゾイドであるデッドボーダーのプラモデル、ヒヨリはファッション雑誌2冊を手に抱えていた。

マグナスは嫌な顔せずそれぞれの商品を一旦受け取るとレジカウンターに置き、トレンタがそれぞれの商品をレジに通してマグナスに渡し、マグナスはそれをサオリ達に返し、商品を受け取ったサオリ達もそれぞれマグナスに礼を言うのだった。

 

 

時刻は昼頃…トレンタの店で買い物を済ませたマグナス達が次に訪れたのはとあるカフェだ。

マグナス達が来店すると当然ながらその視線は彼らに向けられる。

マグナスは構わずにテーブル席に向かい、マグナスが椅子に座った後、それに続いてサオリ達も椅子に座る。

「いらっしゃいませ、お久し振りですねマグナスさん」

「あぁ、久し振りだマスター」

「おやおや、その小さなキヴォトス人のお連れ様は?」

「数日前から面倒を見る事になってな」

「なるほど、訳ありですね」

「あぁ、そうだ。俺にはジンジャエールとチーズバーガー、フライドポテトを頼む」

とマグナスは真っ先に注文する。サオリ達はメニュー表を見ながらから何を食べようかなと話し合っている。

その後、各々が注文した物がテーブルに置かれ

「いただきます」

とマグナスが言うとそれに続けてサオリ達もいただきますと言う。マグナスは少量かつ元々食べるスピードが早めだったからか直ぐに完食し、サオリ達が食べる姿を微笑ましく眺めていた。因みに食べる量はヒヨリが一番多かった事を付け加えておこう。

食事を終えた一行はごちそうさまでしたと言ってカフェのマスターと少々世間話をした後に退出した。

 

 

その後は武器屋に行ってサオリ達の武器を見繕った。将来キヴォトスに戻るのなら銃は必須となる。

サオリとアズサにはアサルトライフル、アツコには短機関銃、ミサキにはロケットランチャー、ヒヨリにはボルトアクション対物ライフルがあてがわれた。これはベアトリーチェの元にいた時にそれぞれ訓練で使っていた物をあてがったからだ。

 

武器を見繕った後は地下ドームで行われたゾイドによる戦闘競技(ゾイドバトル)を観戦したりもした。この惑星でのゾイドバトルは基本的に単体から最大3機でのチーム戦で行われ、コンバットシステムがフリーズするまでなど様々な条件の元で行われる。参加には参加費が必要となるが、勝てば参加費以上の賞金が貰える上に場合によっては武器メーカーがスポンサーに就いたりそのスポンサーから試作武器の提供を受けたりもしている。

中にはシンカーやコマンドウルフを用いたレースを実施している場所もある事をマグナスはサオリ達に教え、いつか皆でそのレースの観戦に行く事を約束したりもした。

 

そうこうしているにあっという間に夜を迎えていた。マグナス達は既にマーケットから出て帰路に就いており、サオリ達はラチェットの車内で熟睡している。まるでテーマパーク帰りの子供の様だ。いや、マグナスやラチェットからしてみればまだ庇護下にあるべき子供だ。

「ラチェット、あいつらの健康診断の結果は?」

『あぁ、出ている。帰ってからゆっくり見るといい』

マグナスは音声通信でラチェットと会話をしながら運転している。

「分かった。それと、やはりサオリは…」

マグナスはラチェットにサオリのDNA鑑定も依頼していたのだ…疑惑を確信に変える為に。

『君が思っている通りだ。ベアトリーチェとやらがどの様にして後天的にヘイローを付与させたのかは分からないが…』

「そうか…一目見たときにもしかしてとは思っていたが…やはりか…」

『しかし、どうするんだ?君はこの事を彼女達に話すのか?』

そう訊ねるラチェットの言葉には彼女達への心配だけでなく彼への心配も含まれている。マグナスがこの惑星に流れ着いて最初に出会い、一番付き合いが長い存在がラチェットだ。だからこそ彼はこの惑星に流れ着くまでの経緯は既にラチェットには明かしている。

「いや、黙っておいてくれ。義理とは言え俺は親殺しだ…その十字架をサオリには背負わせたくない」

『第三者視点から言わせて貰うが…君は悪くない、義妹を救おうとした一種の正当防衛だ』

「だが…俺は結局…救えなかった…救えなかったんだ…」

マグナスは視線を一瞬だけある写真に向けながら今にも消えそうな声でポツリと呟く。その写真に写っているのは4人の人物。仲睦まじい夫婦…マグナスの実の両親とまだ少年だったマグナス…そして彼より年下の少女だ。その少女は幼き日のサオリそのものだったのだ。

 

 

そんな彼らのやり取りの断片を偶々意識が覚醒してしまったアツコは聞いてしまったのである。マグナスとサオリの関係性…それをアツコが、そしてアズサ、ミサキ、ヒヨリが知るのは2年後の話である…

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 






・ジェノザウラーHTS
分類:ティラノサウルス型
全長:約15m
全高:約7.8m
最高速度:200km/h
乗員人数:1名
パイロット:槌永ヒヨリ
装備:レーザーセンサー
   脚部アンカー×2
   放熱システム
   ホバリングシステム
   脳波コントロールシステム
   内蔵型素粒子コントロール装置
   エネルギータンク
武装:ハイパーキラークロー(腕部)
   ハイパーストライククロー×2(脚部)
   スマッシュテイル
   ハイパーキラーファング
   収束荷電粒子砲
   ロングレンジパルスレーザーライフル×2
   AZ対空連射砲×2
   AZ2連装キャノン砲×2
   AZ4連レーザーガトリング

惑星Ziがグランドカタストロフで滅びなかった世界から流れ着いた断片的な機体データを元にベアトリーチェの賛同者が開発した機体の1つ。
近接格闘戦より火力重視という点はジェノザウラーMISと共通だが、中~近距離向けだったMISに対しこちらは中~遠距離からの砲撃に特化しつつ光学兵器に重点を置いた装備編成となっている。

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