脱走せし少女達と機人と呼ばれし者   作:衛置竜人

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#7『襲撃せし獅子』

 

 

 

アリウス自治区内戦時代、1人の少女が実験中に命を落とした。ベアトリーチェは将来的にその少女を計画の要の1つとして利用しようとしていただけに想定外の事態であった。

しかし世の中何が起きるかわからない…時空の裂け目がアリウス自治区内に開き、そこからまだ幼い少女が現れた。その少女は死んだ件の少女と瓜二つ…いや()()()()()()()()()()()。問題点を挙げるとすればキヴォトス人ではないが故に身体が脆い事、そして反抗的な面がある事だろう。そこでベアトリーチェは彼女に後天的にヘイローを付与する実験と万が一彼女が死亡した場合の保険としてクローン培養用のDNAデータを確保を実行した。

ヘイローの付与には成功、更にこの惑星の外から流れ着いた賛同者が持ち込んだB-Linkerにも問題なく適合した事により彼女は純粋なキヴォトス人と対等なレベルの身体能力・強度を得た。そもそも彼女の血縁者が最初の適合者だから彼女もいけるだろうと彼は確信していたのである。

 

アリウス自治区B-Linker適合者第1号…錠前沙織(サオリ)はこの惑星本来の錠前サオリと入れ替わり、この地で生活する事となった。

この惑星本来の錠前サオリはミサキ、ヒヨリと共にストリートチルドレン同然の生活を送っていたところをベアトリーチェ一派にB-Linker適合実験の被験者として捕獲された…そしてサオリにはこの惑星本来の錠前サオリ(平行同位体)の記憶など当然ない。

だが、サオリはベアトリーチェや合流したミサキやヒヨリの言葉からこの惑星には元々自分と同じ名前・同じ姿の人物(平行同位体)はいたが既になくなっており、ベアトリーチェは自分を彼女の代わりにしようとしている事、そしてミサキやヒヨリにとってこの惑星の錠前サオリは家族の様な存在である事は把握出来た。

ならば、やるべき事は決まった。かつて自分が兄に守られていた様に今度は自分がこの娘達を守る…死んでしまったこの惑星の自分に変わって。

まずサオリはベアトリーチェから解放される前の記憶がない、とミサキとヒヨリに嘘をついた…彼女達を騙すようで心苦しいが真実を知れば彼女達は悲しむかもしれないと思ったのだ。

 

アリウス内戦の末期、サオリ達はアツコと出会った。

当時アリウス自治区の支配を目論んでいたベアトリーチェから最重要な存在として丁重に扱われていたサオリ達にとって彼女はまるで物語の中のお姫様の様だった。そして彼女もまたB-Linkerの適合者だった。

内戦が終戦し、ベアトリーチェが自治区を支配下に置いてから約5年8ヵ月後。サオリ、ミサキ、ヒヨリそしてアズサはB-Linker適合者としてアツコを擁するチームに配属される事になると共にアリウス産ジェノザウラーのパイロットに選ばれたある日、アズサはベアトリーチェに反発した。ベアトリーチェの教え(洗脳)に染まりつつあったアリウスの生達の中でも確固たる信念を持ち続けたイレギュラー。

もしこの惑星本来の錠前サオリであれば自分の身と仲間を守る為にも苦痛を強いてでもベアトリーチェの教えに従わせようとしたのだろう…たとえその先の未来で決別する事になるだろう。

だが、運命の悪戯なのか錠前サオリという人物が平行同位体と入れ替わっていた事で彼女達の未来は変わった。 

ベアトリーチェの洗脳に染まりつつあったサオリはアズサの行動、そしてアズサへの処罰を聞いてしまった事によって洗脳を解かれた。そしてアズサやアツコ、ミサキ、ヒヨリを救う方法を考えた。それこそ此処(アリウス自治区)を脱走するというものだった。

 

 

こうしてサオリ達がアリウス自治区から脱走してマグナスの庇護下となって約2年が経過した。

サオリ達にとってマグナスはまるで先生の様だった。基本的にはBDから学ぶのだが、わからない事や細かいところは彼が教えてくれる。ある日、アツコはマグナスにこんな質問を投げ掛けた事がある。

「そもそもどうして勉強するのかな?」

勉強が嫌とかではない…ただ単に素朴な疑問だった。それに対しマグナスはこう返した。

「そうだな…この世界の中で戦う方法を知る為だ。世の中ごり押しだけでいけるような甘いモノじゃないし何も武器でドンパチする事だけが戦いって訳じゃない。

色々と知識を蓄えていると出来る事が増えて有利になる」

そしてマグナスはサオリ達に知識と経験を積ませるべく勉強を教えるだけでなく色んな場所へ連れていった。約束通りにシンカーレースを現地で見に行ったり海に行ったりもした。アリウス自治区で生まれ育ったアズサ、アツコ、ミサキ、ヒヨリは今まで海を見た事などなく空想の話の様だった。始めて見る海に目を輝かせていた彼女達の姿を見たマグナスは連れて来て良かったと笑みを浮かべていた。

 

勿論、マグナスはサオリ達へ勉強を教えたり様々な経験を積ませたりする一方で傭兵としての仕事も続けていた。ただ今まで強いて言うならばマグナスの仕事をサオリ達も手伝うようになった事だろう。

サオリ達も彼に頼ってばかりでは申し訳なく思ってのだろう、だからせめて金を稼ぐ手伝いはしたいと申し出たのだ。マグナスにとっても彼女達の申し出はありがたかった…何せパワードコンボイもガタが来はじめていたのだから。

元々はマグナスが生まれる前から存在した機体を回収して彼に合わせて改修した機体だ。

メンテナンス済みとはいえ本来なら骨董品として保管されるべき代物を今日に至るまで酷使し続けてきた上にトランスフォーマーやゾイドといった金属生命体とは違い自己修復機能もない。彼自身の立ち回りが上手いからか損傷は最低限で済んではいるがこのままだといずれは大規模な修理をしなければならなくなるか大破するかであろう…

 

 

 

 

「同士ベアトリーチェ、ロイヤルブラッド一行の潜伏先がわかったわよ」

口調に反して低い男性の声の人物…賛同者はベアトリーチェに報告する。

「…で、何処にいるのです?」

ベアトリーチェはこの約2年もの間、当然ながらアツコの潜伏先を探し続けていた。

ベアトリーチェに対し賛同者はモニターに座標を表示させる。

「部隊は既に向かっているわ。後はロイヤルブラッドを捕獲するだけよ」

「"アレ"の準備は?」

「出来てるわよ。今は格納庫で待機中」

ベアトリーチェと賛同者が見ているモニターの映像が切り替わる。格納庫の中には1体のライオン型ゾイドが鎮座していた…出番を待ちわびているかの様に。

 

 

そんなある日の事、何時もの倉庫にてミサキはサオリがマグナスやラチェットと共に外出しているタイミングでアズサ、アツコ、ヒヨリに招集をかけた。

「サオリ達に黙って招集なんてどうしたんだ?」

アズサはミサキに訊ねる。呼び出された3人は用件すら教えられていないのだ。

「姉さんって何者なのかなって…何か私達とは違う気がしない?」

「言われてみれば確かにそんな感じはするね…言葉で表すのは難しいけど…」

「あの時からですねぇ…一度マダムに捕まってB-Linker適合者になってから…あの時のサオリ姉さん、私達の事を忘れちゃってましたし」

「ちょっと待て、どういう事だ?初耳だぞ!」

「私やアズサがサッちゃんに会ったのはB-Linker適合者になってからだからそれ以前の事は知らないし…」

「B-Linker適合者になる前から私とヒヨリは姉さんと一緒に暮らしていた。けれども、ヒヨリが言ってた様に再会した姉さんは私達の事を覚えていなかった。記憶がない以外は今までの姉さんと殆ど変わらなかったけど…」

「そうだ、始めてマーシナリーマーケットに行った時の帰りにマグナスとラチェットが話しているのを聞いたの。

『マダムが後天的にヘイローを付与させた』とか『マグナスが義両親を殺してその十字架をサッちゃんには背負わせたくない』とか『マグナスは大切な人を救えなかった』とか。マグナスは私達には言いたくないのかなって思って今まで胸の中にしまっておく事にしてきたけど…」

「確かその時は健康診断を受けた後だっけ…採血もして…姫、マグナスとラチェットは姉さんの事で他に何か言ってなかった?」

「うん、『やはり』とか『思っている通りだ』とか…」

ミサキの質問に答えるアツコ…それを聞いたアズサはある可能性に行き着いた。

「…もしかして、サオリとマグナスは血縁関係なのか…?」

 

 

アズサ達がサオリとマグナスの関係性について考えていた中、密かに倉庫に迫る機影群があった。

爆装したレドラーBC(ブースターキャノン)4機の空戦部隊とその内1機に空輸されているゲーターを先導するのは茶色いフレームの上から赤と金色の装甲を身に纏ったライオン型ゾイド。

シールドライガーに迫る大きさかつキングライガー以上の速度を有するその機体はジェノザウラーと同様にこの惑星と移民元の惑星Ziでは開発されなかった機体だ。いやこの機体が開発される前に惑星Ziが滅びてしまった、というのが正しいだろう。

賛同者がマルチバースの惑星Ziから流れ着いた物を修復した機体…

 

 

その名は"ライガーゼロ"。

 

 

レドラー4機によって投下されたゲーターはパラシュートの展開で着地に成功すると倉庫に素早く接近しつつ妨害電波を発して通信網を遮断する。

ゲーター1体だけだと妨害範囲はディメトロドンやゴルヘックスと比べて劣るものの、今回はこれで充分だと判断したのだろう。

異変を察知したアズサ、アツコ、ミサキ、ヒヨリは様子を見るべく外へ出た瞬間、レドラーとシュトルヒによる爆撃が降り注いだ。

爆煙によって倉庫は燃え盛り、4人は爆撃の雨の中で急いでそれぞれのジェノザウラーを元のサイズに戻してコックピットに乗り込む。

『この爆撃は目眩ましの様だったな』

アズサが乗るジェノザウラーASSは爆煙の中から空へ向かって飛び立つとロングレンジパルスレーザーライフルを発砲、被弾したレドラーBCはそのまま墜落するが、今度は残り3機が一斉にジェノザウラーASSに向けてブースターキャノンを撃ちながら追い回す。ジェノザウラーASSは何とか回避し応戦するが、そもそも相手は純粋な空戦ゾイド…元々陸戦機だったのを無理矢理空戦仕様に改造したジェノザウラーASSではレドラーBCには不利である事に変わりはない。

 

対空性能を有するジェノザウラーHTSはジェノザウラーASSを援護すべく射撃、ジェノザウラーMISとジェノザウラーAHSはゲーターの殲滅に向かおうとしたのだが爆煙の中から現れたライガーゼロに阻止される。

『何このゾイド…こんな機体、見た事ない…!』

『ヒヨリは引き続きアズサの援護を、あのライオン型は私とミサキが相手をするから』

『り、了解!』

ジェノザウラーMISはライガーゼロに向けてミサイルを、ジェノザウラーAHSはスモークディスチャージャーから煙幕を噴出してライガーゼロの視界を潰しつつロングレンジパルスレーザーライフルを発砲するが、ジェノザウラー以上の機動力を有するライガーゼロは難なく回避、回避しきれなかった分は胸部のAZ208mm2連装ショックカノンと尻尾の先端のAZ108mmハイデンシティビームガンで撃ち落としつつ気配で居場所を察知したジェノザウラーMISに対し距離を詰めて噛み付こうと飛び掛かる。

ジェノザウラーMISはホバリングで回避出来たもののライガーゼロも素早く方向転換し、展開させた背面のイオンターボブースターを噴射させて距離を再度詰めつつ前肢のストライクレーザークローを輝かせ、ジェノザウラーMISの脚部に向けて振るう。

ライガーゼロのストライクレーザークローによって脚部を破壊されたジェノザウラーMISは立つことはおろかホバリングも出来ずに地面に落ちてしまい、ライガーゼロは落ちたジェノザウラーMISを踏み台代わりににするとイオンターボブースターと腹部側面のダウンフォーススタビライザーを展開し、ブースターを噴かしながら上空に向けて跳躍、ジェノザウラーASSに向けて飛び掛かる。想定外の奇襲にジェノザウラーASSは回避も叶わず、逃げ出そうにもライガーゼロの方がパワーも上回っているからか逃げられない。

ジェノザウラーHTSはライガーゼロに向かって対空連射砲を放つが、ライガーゼロは機体を仰け反らせるとジェノザウラーASSを盾にして直撃を防ぐ。

フレンドリーファイヤーに焦るヒヨリを追い詰めんとライガーゼロは今度は標的をジェノザウラーHTSに向け、ジェノザウラーASSを足場にして蹴り飛ばすと共にジェノザウラーHTSに飛び掛かると見せかけて手前で着地すると胸部から首に目掛けて右前肢のストライクレーザークローを振るった。

ジェノザウラーHTSは見るからに戦闘継続は困難、脚部を損傷したジェノザウラーMISと足場代わりに蹴り飛ばされた末に墜落したジェノザウラーASSも同様である。

 

4機のアリウス産ジェノザウラーの内3機がたった1体のライガーゼロによって戦闘不能にまで追い込まれた。

今戦えるのはアツコが乗るジェノザウラーAHSのみ…対する相手はライガーゼロにレドラーBCが3機、そしてディメトロドン1機…だったのだが、何処からか飛んできたビームがディメトロドンの命中した。ライガーゼロがビームが飛んできた方角を振り向くと其処にはパワードコンボイのトレーラーのキャリア上段に機体を固定させて荷電粒子砲発射態勢を取っているジェノザウラーSJSの姿があった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

 

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