脱走せし少女達と機人と呼ばれし者   作:衛置竜人

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#8『兄妹』

 

 

 

 

その日の依頼を片付けたマグナスとサオリはこれから帰ると皆に連絡を入れようとした。

『通信が繋がらない…?』

『嫌な予感がする…急いで戻るぞ』

マグナスの言葉にサオリは頷き、パワードコンボイのキャリアの下段にラチェット、上段にジェノザウラーSJSが乗り込むとマグナスはアクセル全開にして倉庫へ戻るのだった。

 

 

 

 

そして現在。ジェノザウラーSJSは荷電粒子砲によってディメトロドンを撃破するとキャリアから飛び出し、ライガーゼロにワイヤーメタルクローを伸ばすライガーゼロはバックステップで回避するが、すかさずジェノザウラーSJSとジェノザウラーAHSはロングレンジパルスレーザーライフルを発砲、ライガーゼロに命中する。

更にジェノザウラーAHSは目眩ましとしてスモークディスチャージャーから煙幕を噴出して再びライガーゼロの視界を潰す。

そしてパワードコンボイは走行しながらトレーラーのゲートを開き、ラチェットは飛び出すや

「トランスフォーム!」

ロボットモードへ変形、右腕にブラスターを装備すると上空のレドラーBCに向けて発砲しつつアズサ、ミサキ、ヒヨリの元へ駆け寄る。

『ライガーゼロ…それも帝国カラーか…まさかこいつまで現れるとはな…!』

ライガーゼロを目の当たりにしたマグナスはそう呟くと

『装甲合体!パワードコンボイ マグナス!』

パワードコンボイのトラクターヘッドをロボットモードへ変形させ、更にトレーラーも変形し、人型へと姿を変えると背面にパワードコンボイが合体、トレーラーに内蔵されていた飛行ユニットが2つに分離、胸部アーマーとヘルメットとして装着、肩にミサイルランチャーが装備されパワードコンボイ マグナスは完成した。

両足のタイヤで地面を疾走しながらライガーゼロとの距離を詰めたパワードコンボイ マグナスは右腕を伸ばしてライガーゼロの頭部を殴る。

一瞬ふらついたライガーゼロだったが踏んばって体勢を立て直すと前脚のストライクレーザークローを発光させながらジェノザウラーSJSに迫る。

ジェノザウラーSJSはロングレンジパルスレーザーライフルを発砲しつつホバリングでライガーゼロとの距離を置いているが、ライガーゼロの方が足は速い故に追い付かれてしまい、ライガーゼロは右前脚を振るった。ジェノザウラーはワイヤーメタルクローを前方に向けて防御態勢を取る事でストライクレーザークローを防ごうとしたが、ライガーゼロのストライクレーザークローの一撃はワイヤーメタルクローの強度を上回ったらしく、ワイヤーメタルクローは砕けてしまった。

ライガーゼロに追い付いたパワードコンボイ マグナスは尻尾を掴むがライガーゼロはすかさず尻尾の先端のAZ108mmハイデンシティビームガンを連射、パワードコンボイ マグナスが持ち堪えている隙にジェノザウラーAHSは脚部のハイパーストライククローでライガーゼロの尻尾を切断しようとするが、ラチェットの砲撃を潜り抜けたレドラーBCが急降下、ジェノザウラーAHSのロングレンジパルスレーザーライフルを可変レーザーブレードで切断すると外付けのコックピットを前脚のストライククローを食い込ませると後脚で本体を抑えてながらもぎ取った。

その隙にライガーゼロは後脚でパワードコンボイ マグナスを思いっきり蹴り飛ばし、衝撃によってパワードコンボイ マグナスはライガーゼロの尻尾を離してしまう。そしてライガーゼロはジェノザウラーSJSの胴体を右前脚のストライクレーザークローで切り裂くパワードコンボイ マグナスから距離を取ると立体映像を投影した。

其処に映し出された人物をサオリ達は勿論、マグナスも睨み付けている。

『久し振りね、"錠前陸斗(リクト)"…いやマグナスと呼ぶべきかしら』

『レラエル…!』

そう、この人物こそダイアクロン隊を追放されたB-Linker開発者にしてベアトリーチェの賛同者ことレラエルである。

「アツコを返せ!」

サオリはレラエルに向かって叫ぶが

『はぁ?するわけないだろうが』

レラエルは普段とは異なる口調で言い放つとミサキとヒヨリに向けて嘲笑うかのように告げた。

其処の2人(戒野ミサキと槌永ヒヨリ)の馬鹿ねぇ…錠前サオリが平行同位体と入れ替わっているのに気付かないなんてねぇ!!』

レラエルが言った真実にミサキとヒヨリは動揺してサオリの顔の方へ視線を向ける。…先程議論していた事への答え合わせをサオリ本人ではなくレラエルからもたらされた事に。サオリはミサキとヒヨリに対し申し訳なさそうに顔を反らす。

『この惑星の錠前サオリは既に死んでいるわ。だって私が行った実験で命を落としたもの。しかし、そんなタイミングで都合よく時空の裂け目が開いて錠前サオリの平行同位体が現れたのよ!だから彼女を使って実験した!流石は"()()()()()()()だってね!』

レラエルが言った更なる事実にサオリは目を見開いて呆然としていた。何故自分は今まで気付かなかったのか…この2年と数ヶ月の間、一緒に過ごしてきて色んな事を教えてくれた先生の様な存在(マグナス)実の兄(錠前リクト)その人であった事を…電流が走ったかの様に漸く思い出せたのだ。

『あんたら兄妹のおかげでB-Linkerシステムの実用化と更なる発展に漕ぎ着けたわ!周囲から隔絶された極限環境下で育ったが故に健常なキヴォトス人より弱体化しているアリウス生であってもB-Linker適合者にしてしまえさえすれば健常なキヴォトス人の平均値並みかそれ以上の能力を発揮しうる存在となる!それを他ならぬあんたらが証明した!

あっ、そうそう。不適合者もそのまま廃棄するのは勿体無いからリサイクルしているわよ…"ヘイロー破壊爆弾"にしたり脳を取り出して制御ユニットとして組み込んでパイロットなしでも射撃などの細かい動作を行えるようにしてね』

『まさか、このライガーゼロも…!』

『正解~!このライガーゼロは死んだこの世界の錠前サオリの脳髄を移植してるわよ。まぁ、彼女の人格や記憶は一切残っていないのだけれどね』

そう解説するレラエルにサオリ達は勿論、マグナスも激怒していた。

『ふざけるな!糞野郎が!』

『あら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ぶっ壊れていたあんたに生きる目的を教えたのは何処の誰だったかしらね?そう、私!あんたが今生きていられるのも私のおかげって訳よ!私がB-Linker被験者に選ばなかったらあんたは今頃牢獄にいただろうになぁ!あぁ、知られたくなかった?知られたくなかった?そこの実妹と騙されてた馬鹿どもに知られたくなかった?復讐に走って!人を!殺した!人殺しだって!ヒャッハッハッハッハッ!』

『黙れ』

パワードコンボイ マグナス(マグナス)は怒りのままにブラスターを立体映像に向けて発砲するが当然効果はない。

『さて、あんた達にもう用はないのよね。全く、ロイヤルブラッドを連れ出すとか余計な事をしちゃって。何処にでも消えるといいわ!』

レラエルはそう言い残すと通信を切り、ライガーゼロとレドラーは撤退した。

 

 

コックピットから降りたサオリ達はパワードコンボイ マグナスを見上げる。乗っているマグナスにレラエルの話が本当なのか問う為に。

『奴が言っていた事は事実だ。俺は義父をこの手で殺し…義母と義妹を死に追いやった…今まで黙っていて済まなかった』

パワードコンボイ マグナスはライガーゼロとレドラーBCが去って行った方角へ向く。

『ラチェット、彼女達の事を頼む。俺は奴らを追う。アツコを取り戻す為に』

「わかった…だが、その後はどうするつもりだ?」

そう訊ねるラチェットはマグナスの事を心から心配していた。

『さぁな、多分今まで通りに何処かで傭兵を続けるかな…』

そう答えるマグナス。ラチェットは察してしまった…アツコを取り戻した後、マグナスはサオリ達の元から去るつもりだと。

『サオリ、済まなかった…ごめんな、こんな兄ちゃんで…それと、大きくなったな…』

マグナスはそう告げるとパワードコンボイ マグナスをビークルモードへと変形させてライガーゼロとレドラーBCの追跡を始めた。

「待ってくれ!行かないでくれ兄さん!」

サオリの言葉が届く事なくパワードコンボイ マグナスは肉眼で見えなくなる程遠くへ行ってしまった。

「「姉さん…」」

「サオリ…」

地面に膝を着いて見送る事しか出来ないサオリに声を掛けようとするミサキ、ヒヨリ、アズサだったが、どう声を掛ければ良いか分からなかった。

「ミサキ、ヒヨリ…今まで騙して済まなかった。私はお前達と一緒に暮らしてきた錠前サオリじゃない…奴が言っていた通り、地球という惑星から流れ着いた錠前サオリだ。殴りたければいくらでも殴ると良い…」

ミサキとヒヨリは今のサオリの姿を先程のマグナス(錠前リクト)と重ねていた。

「推測でしか語れないが…サオリが今までベアトリーチェから解放される前の記憶がないと嘘をついていたのはミサキとヒヨリの事を思っての事じゃないのか?真実を話せば二人の心は傷付いてしまうから」

アズサの推測を肯定するかの様にサオリは無言で頷く。

「姉さん…立って」

ミサキの言葉にサオリは立ち上がり、ミサキはサオリの頬を叩き、パチンという乾いた音が響き渡る。本気ではないがそれでも確かな痛みがサオリを襲う。

自罰的になっていたサオリは"次"を待っていたが、ミサキは叩く訳でも殴る訳でも蹴る訳でもなくサオリを抱き締めた。それに続く形でヒヨリも一緒になってサオリを抱き締める。

「ミサキ…?ヒヨリ…?」

「まだ心の整理はついていないけど…今の姉さんも私達の事を思ってくれてたの、今までの行動で伝わってたから」

「サオリ姉さぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁ!サオリ姉さぁぁぁぁぁん!」

ミサキとヒヨリの様子にアズサは心配無用だったなと安堵していた。

「ラチェット…マグナスが…サオリの兄という事は…」

「あぁ、事実だアズサ。マグナス…錠前リクは確かにサオリの実の兄だ。DNA鑑定の結果も事実を証明している」

「ドクターラチェット…教えてくれ、兄さんの身に何が起きたのか」

サオリの頼みにラチェットはマグナス…錠前リクがこの惑星に流れ着くまでの経緯を語った。サオリが時空の裂け目に呑み込まれた後、義妹と共に義両親から虐待を受けていた事、何時の日にか義妹を連れて家を出ようとした事、その矢先に義妹を強姦した義父を怒りと憎しみのあまり殺した事、義父を愛(に依存)していた義母は義妹を道連れに自殺した事…その時に呪いの言葉を投げた事、そしてサオリだけでなくアズサ、アツコ、ミサキ、ヒヨリに手を差し伸べたのもベアトリーチェから虐待を受けてきた彼女達の姿に義両親から虐待を受けていた自分と義妹の姿を重ねていた事。

「―今まで黙っていたのは妹に自分が背負っている十字架を背負わせたくないからだろう」

「やっぱり…兄さんはあの頃の優しい兄さんのままだ…」

ラチェットの話を聞き終えたサオリは涙を流しながらそう呟くと立ち上がり、マグナスが去って行った方角を向く。

「ドクターラチェット、ジェノザウラーの修理はどれくらいかかる?」

「残念だがジェノザウラーSJSはコアを損傷していて修復は―」

とラチェットがそう伝えたその時だった。

『お困りの様だねえラチェット君』

ラチェットの元にリューズからの映像通信が入った。

「リューズ、済まないが今は君と話をしている場合じゃないんだが」

『それは分かっているさ、ベアトリーチェと賛同者(レラエル)が動いてロイヤルブラッド(秤アツコ)を捕獲したのだろ?』

何処から情報を掴んだのかと怪訝な眼差しを向けるラチェット。一方のサオリ達は立体映像越しに突然現れた宇宙人(エイリアン)に何だコイツと言わんばかりだ。

『アリウスのお嬢ちゃん達、自己紹介がまだだったねぇ。私はファントン星人リューズ。マグナスやラチェットの友人さ。敵ではないから警戒を解いて欲しいねぇ。

さて、錠前サオリ…君はこれからどうしたい?』

「私は今すぐアツコを救出に行きたい。そしてマグナス…いや兄さんが私達に手を差し伸べた様に今度は私が兄さんの力になりたい」

「私じゃなくて私達が、の間違いだろ?」

「私達だって姫を取り戻したいしマグナスに恩を返したい」

「私、マグナスさんなしでは生きていけななくなったのでマグナスさんには責任取ってですぅ」

とアズサ、ミサキ、ヒヨリも立ち上がる。ヒヨリの言い分は誤解を招きそうだが誰も突っ込まなかった。

『いやぁ、予想通りの返答で安心したよ!君達に期待していて良かった!実はこんな事もあろうかと君達にプレゼントを用意してたのだよ!そろそろ着く筈だが…丁度良いタイミングで来たみたいだねぇ』

リューズが不適な笑みを浮かべたその時、ラチェットのレーダーが近付く機影を捉えた…巨大なコンテナを載せたトレーラーを牽引しているグスタフである。

グスタフはサオリ達の前で停止、コックピットから

「お届けものっす!」

「リューズ女史カラアルネ!」

トレンタとチャンマーである。

トレンタはリモコンを操作し、コンテナを展開させる。

コンテナの中身…それは1体のゾイドだ。アズサ達にとっては見たことない未知のゾイド。

対してゾイドが物語やプラモデルの中の架空の存在となっていた地球出身であるサオリはそのゾイドの事を知っていた。

 

『兄さんが一番好きなゾイドって何なんだ?』

『そうだな…やはりコイツかな。見た目もカッコいいけど、名前に込められた意味がな』

『名前の意味?』

 

サオリの脳裏に蘇る幼き日の兄との思い出。どうして今まで忘れてしまってたのだろうとサオリは思う。

「…私と兄さんが一番好きなゾイドだ…」

そんな思い出のゾイドが今、目の前にいる…感慨深さからサオリの目から涙が流れた。

『君達がマグナスの元へ身を寄せた事を聞いてから今後に備えて用意していたんだが、ベアトリーチェとレラエルが動いてしまってにねぇ。

この機体が実在するマルチバースの惑星Ziを探し当て、そこから取り寄せた機体データを元に現存して今こうして何とか形になる所まで再現出来るまでに2年かかったものの、まだ未完成なのだよ』

「だが、こうして持ってきたという事は策があるのだろう?」

『流石ラチェット君、話が早いねぇ。このゾイドには人間でいう脳に該当するメモリーバンクがまだついてないのだよ。そこでジェノザウラーSJSのメモリーバンクを移植する。

アリウス産ジェノザウラーと同じくゴッドカイザーのゾイドコアを使用しているからきっと上手くいく筈さ』

「分かった、善は急げ、早速取りかかるとしよう」

ラチェットはジェノザウラーSJSからメモリーバンクを慎重に取り出すとコンテナに積まれていたティラノサウルス型ゾイドへ移植し、その間にサオリはそのティラノサウルス型ゾイドの頭部に備え付けられたコックピットへ搭乗し、そのゾイドのコンソールパネルを優しく撫でる。

 

 

 

移植作業は滞りなく無事に完了してラチェットが放れた後、サオリはそのゾイドを起動させる。

 

 

そのゾイドの名の意味…ある意味今の自分達にぴったりだろうとサオリは思う。

「頼む…私に再び力を貸してくれないか…」

サオリの想いに呼応するかの様にジェノザウラーSJSの記憶を引き継いだそのゾイドは天に向かって咆哮し、各部の()()()()()を輝かせながら目的地へ向けて飛び出すのだった。

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

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