ジェノザウラーSJSの記憶を引き継いだ凱龍輝は全速力でパワードコンボイの元へ向かい、到着した時にはデスザウラーがパワードコンボイに向けて荷電粒子砲を放とうとしていた。
凱龍輝の特性をサオリは知っている。各部の集光パネルは光学兵器を無効化する事が可能…それは荷電粒子砲とて例外ではない。
流石にデスザウラーの荷電粒子砲をすべて吸収・無効化する事は厳しいが、リューズは其処も想定済だったのか本来搭載されていないEシールドジェネレーターを装備、それと併用する事で防ぐ事は出来る。
流石に短い期間での連撃は防ぎきれないが、それでも防げるという点は大きい。
凱龍輝はデスザウラーから吸収した荷電粒子を自らのエネルギーに変換しつつ追加兵装のロングアサルトキャノンをパワードコンボイを拘束しているサーベルタイガーに向けてそれぞれ連射する。
砲撃に貫かれたサーベルタイガーはその場に崩れ落ち、パワードコンボイは拘束から逃れる事が出来た。
『兄さん!』
そんな凱龍輝からサオリはパワードコンボイへの音声通信を試みる。
『サオリか?どうして此処に…?』
『アツコを取り戻したい…そして兄さんの力になりたい!』
『…俺の事をまだ兄と呼んでくれるのか…』
『例え罪を犯したのだとしても私にとって兄さんは兄さんだ。兄さんが背負っている十字架を私も一緒に背負う。だから―』
サオリの言葉を遮るかの様にデスザウラーは咆哮する。あと一歩でパワードコンボイを消滅させられた。それなのに乱入してきたゾイドに台無しにされた。
『何なんだよ!テメェは何なんだよ!』
レラエルは怒りを込めて凱龍輝とサオリに問う。それに対しサオリはこう答えた。
『凱龍輝のパイロットにしてマグナス…いや錠前リクトの妹の錠前サオリだっ!』
サオリがそう答え時、何処からか砲撃が飛んで来た。撃ったのはジェノザウラーHTS…ではなくHTSの装備に換装したジェノザウラーAHSとジェノザウラーSJSの脚部を移植されたジェノザウラーMISだ。
『サオリ姉さん、置いていくなんて酷いですぅ!』
『私達も姫を取り戻したいのは同じなんだけど!』
とヒヨリとミサキはそれぞれサオリに対し文句を言う。
死に損ないが…そう言わんばかりのデスザウラーに対し上空からの砲撃が浴びせられる。
『虚しいのだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない…だからアツコを、家族を返してもらうぞ!』
その主はアズサが操るジェノザウラーASSである。両手にはハイパーキラークローの代わりにAZレーザーショットガンを、機体上部にはジェノザウラーMISにも装備されているAZ3連誘導ミサイルを装備している。
サオリ達の姿にマグナスは頼もしさを感じてしみじみとしたが、すぐさま切り替える。今はアツコを取り返しデスザウラーを仕留めなければならない。
『良いか!デスザウラーの腹部の銃座にアツコは囚われている!其処をぶっ飛ばした場合、アツコも無事では済まないだろう』
『じゃあ、どうやって取り戻すの?』
ミサキの言葉に
『俺が行く!俺が腹部装甲を剥がして吸収する』
『それじゃパワードコンボイは…』
大破するのではないのか?とヒヨリは心配していた。
『俺とパワードコンボイの事は良い。お前達の、俺達の"
アズサ、デスザウラーの弱点は背中の荷電粒子インテークファンだ、其処を狙え。破壊すれば荷電粒子砲が使えなくなって全性能が低下する。だが、背中と尻尾の付け根にインテークファンを守る為の武装があるから気を付けろ』
『了解!』
ミサキ、奴の尻尾の付け根には16連装のミサイルランチャーが装備されている。あのミサイルランチャーは対空能力もある。空から攻撃するアズサの援護を頼む。尻尾自体も強力な格闘兵装だ気を付けろ』
『わかった』
『サオリ、ヒヨリは俺の援護として奴の動きを牽制。アツコ救出及びインテークファン破壊後、奴に集中砲火を浴びせろ』
『は、はいですぅ!』
『サオリ、奴の装甲を融解してゾイドコアを撃ち抜くには莫大なエネルギーが必要になるだろう。だから集光パネルで吸収したエネルギーを極力温存しろ。だが、集光パネルとEシールドも受けすぎると耐えられなくなるかもしれないから過信はするな』
『あぁ、兄さん!』
マグナスの指示に各々はデスザウラーとの交戦を始めた。
凱龍輝とジェノザウラーAHSは主にデスザウラーの腕を狙う。デスザウラーの瞬発力はシールドライガー程度の速力の機体であれば捕獲して電磁クローで引き裂ける程だ。凱龍輝ならまだしもHTSの装備に換装したジェノザウラーAHSは捕まる可能性も高いだろう。ならばひたすら撃って格闘戦に持っていく隙など与えなければ良いという話だ。
上空からジェノザウラーASSはまずインテークファン上部の接近戦用ビーム砲に狙いを定めてロングレンジパルスレーザーライフルとAZレーザーショットガンを発砲するが、デスザウラーもじっとしている訳ではない。
当然ながら彼方も接近戦用ビーム砲を撃って反撃して来るしミサイルランチャーからミサイルも撃ってくる。
だが、アズサは接近戦用ビーム砲からのビームはともかくミサイルに関しては全く気にしていなかった…何故ならばミサキとジェノザウラーMISが落としてくれると信じているからだ。そんなアズサの期待どおりにジェノザウラーMISはミサイルを全弾撃ち落としている。
『全ては無に帰し、徒労であると知れ!』
アズサの言葉と共にジェノザウラーASSはAZ3連誘導ミサイルを
『何もかも無駄…!』
ミサキの言葉と共にジェノザウラーMISは残っていたミサイルをそれぞれデスザウラーの接近戦用ビーム砲とミサイルポッドに撃ち込み、それらが見事命中した事でデスザウラーは対空火器を失った。
火器類を失ったのなら格闘兵装で仕留めれば言います…インテークファンを破壊しようとする2機を加重力テイルでなぎ払おうとするデスザウラーだったが、ヒヨリが駆るジェノザウラーAHSの荷電粒子砲と凱龍輝によるロングアサルトキャノンの発砲でデスザウラーの加重力テイルを抑えるのに成功はしたのだ。
しかし、デスザウラーもやられているばかりではない。巨体に似合わぬ反応速度によって電磁クローでジェノザウラーMISを捕らえると爪をジェノザウラーの胴体へ食い込ませ、ゾイドコアを貫いたと同時に地面へ投げ捨てた。幸いにもコックピットは無事だった事でコアを貫いた瞬間に緊急離脱装置が作動し、アズサとミサキは無事で済み、それぞれ銃とロケットランチャーを片手にデスザウラーに立ち向かう。
更にデスザウラーが2機のアリウス産ジェノザウラーを仕留めた隙にジェノザウラーAHSはホバリングを行かしてデスザウラーの背後に周ると
『狙うはインテークファン…!』
インテークファンに向かって荷電粒子砲以外の銃火器を発射し続けた。耐えきれなくなったインテークファンは融解して機能を失い、それと同時にジェノザウラーAHSもエネルギー切れを起こして不時着するのだった
パワードコンボイ本体の損耗率は現在60パーセント…恐らくこの戦いが最後になるだろう事はマグナスも充分理解していた。名残惜しい気持ちもある…だが、あの5人が再び笑顔で笑い合える様になるなら安いものだと、むしろ自分が背負っている十字架を一緒に背負うと言った
デスザウラーの腹部からの銃撃をパワードコンボイは避けつつデスザウラーの腹部へ近付く。タイヤが撃ち抜かれてバーストして走行不能となるとロボットモードへ変形し、その足で走ってデスザウラーの腹部に近付く。
撃たれようと命中しようと進むパワードコンボイをデスザウラーは両手の電磁クローで捕まえようとするが、凱龍輝とアズサとミサキの砲撃、そして対物ライフルを構えたヒヨリの狙撃に阻まれる。
その隙にパワードコンボイは跳躍し、両足でデスザウラーの腹部にしがみつく。デスザウラーが連装ビーム砲座をひたすらに連射し、ゼロ距離でパワードコンボイの腹部に命中する。損耗率はどんどん上がっていく…それでもやらなければならないとパワードコンボイはデスザウラーの腹部装甲の僅かな隙間に
その瞬間、パワードコンボイはまるで自分の役目は終わったと言わんばかりにデスザウラーから剥がれ落ち、踏み潰された。
「済まない…今までありがとう、パワードコンボイ…」
マグナスは長年乗り続けた愛機に感謝と謝罪、別れの言葉を投げ掛けるとアツコに向き合い、拘束具を破壊し
「さぁ、帰るぞアツコ」
とアツコに手を差し伸べる。その手をアツコは
「うん、"
しっかりと握って立ち上がり、マグナスはアツコを抱えてデスザウラーの銃座から飛び降りた。
アツコへの被害を出来だけ減らす為にマグナスはアツコを抱いたまま自らの身体をクッション代わりにすべく背中から落下、その甲斐もあってアツコへの衝撃は最小限で済んだものの一身で受けたマグナスは激しい衝撃に襲われ吐きそうになったがそれをなんとか耐える。
「マグナス!」
「俺の事は気にするな…!急いで離脱するぞ…!」
マグナスは痛みを堪えながらアツコに退避を促し、2人はアズサ、ミサキに支えられながら出来だけデスザウラーから距離を取り、凱龍輝とヒヨリは4人の撤退を支援すべくデスザウラーを撃ち続ける。
そして安全圏まで撤退出来たと判断したマグナスは
「サオリ!仕留めろ!」
今出来うる限り背一杯の叫びを上げ、それに答えるかの様に凱龍輝は尻尾と首の装甲を展開、各部の集光パネルを輝かせながら荷電粒子砲をデスザウラーの胸部に向けて放った。
デスザウラーの
デスザウラーは目から光を失い、立つ力もなくなって前方へ倒れる形で崩れ落ちるのだった。
デスザウラーとの戦いの後、緊張の糸が解れたのかマグナスは意識を失ってしまった。
「此処は…何処だ…?」
そして目が覚めたかと思えば辺り一面は暗闇に包まれていた。
「「リクト」」
ふと名を呼ばれた
「父さん…母さん…」
その声の主はリクトとサオリの実の両親だった。
「そうか、俺は死んだのか…」
と納得するかの様に呟くリクト。
「いや、死んでねーからな、意識失っているだけだからな」
と彼の実母はツッコミを入れた。
「お前がこっちに来るのは早すぎる」
実父がうんうんと首を縦に振りながらそう言うと2人は彼を優しく抱きしめる。
「リクト、良くやった」
と彼を褒めた。
「俺の力じゃないさ…サオリ達の力だ。それに俺は義―」
「それに関してはホント済まなかった!アンタ達の為にも父親代わりになる人が必要かなと焦ったばかりに…あんなクソ野郎だとは思わなかったわ。だから本当にごめん!」
実母は申し訳なさげに彼に謝罪する。
「殺したのは法律的にはアウトだが…それも
と実父は彼をフォローする。
「だけど、結局は救えなかった…あいつを…」
義妹の最期を思い返しながら彼は悲しげな顔を浮かべる。
「それでも、お前に会えた事はあの娘にとっては幸せだったんじゃないか?それに輪廻転生って知っているか?」
「今、あの娘は生まれ変わって新たな人生を歩んでるわ。例え記憶がなくなったとしても生きてまたアンタに会いたいからってね」
「待ってくれ、それどういう事だ?」
彼がまさかの衝撃情報について問い質そうとした時、暗闇で包まれていたこの空間に突然罅が入り始める―それはこの空間ももうじき消滅する事を意味していた。
「もう時間がないからこれだけは言っておくわ。あのかわいい娘達を泣かせるんじゃないよ!」
「頑張れよ!リクト!サオリとあの娘達を頼んだぞ!」
実の両親からの激励の言葉に
「あぁ!行ってきます!」
と応え、暗闇の空間は完全に崩壊、マグナスの意識は暗転した。
「ん…此処は…」
意識を取り戻したマグナスは状況把握しようとしたのだが…
「兄さん!やっと目が覚めたか…!」
真っ先に涙目のサオリの顔が視界に入った。そして自身がサオリに膝枕されている事に気付いて身体を起こすとサオリが抱き付いてきた。
「兄さん…あの時の続きを言わせて欲しい…例え罪を犯したのだとしても私にとって兄さんは兄さんだ。兄さんが背負っている十字架を私も一緒に背負う。だから…私の前から勝手にいなくならないでくれ…あんな思いは…もう、したくない…」
涙声で訴えかけるサオリに
「サオリ…今まで本当に済まなかった…」
マグナスはサオリを抱き返しながら謝る。暫くしてマグナスが辺りを見回すとデスザウラーの残骸、そしてこちらをじっと見ているアズサが目に入った。
まるで何か言いたげなその表情を顔文字で例えると…
(ᓀ‸ᓂ)
…と、こんな感じである。その顔に何かデジャブを感じたマグナスは数秒後、思い出した。そう、今は亡き義妹がよくこんな表情をしていたのだ。
(いや、待てよ…まさか…父さんと母さんが言ってた事ってこういう事かよ!?)
実の両親が言っていた事…義妹は記憶がなくなっても生きて再び自分に巡り会う為に
「どうしたんだ?アズサ?」
「
どうやらマグナスが何時も自分達に言い聞かせているくせにそのマグナスがアツコを取り戻すためとは言え下手したら死んでたかもしれない無茶をした事にご立腹と心配していた様だ。
「…本当に済まなかった…あとサオリそろそろ離れ―」
「嫌だ」
「…好きにしろ……ん?アズサ、俺の事、今何て言った?」
「だから義兄さんって」
「私達とサッちゃんは家族の様なもの」
其処へ割り込んでくるアツコ。
「つまりサッちゃんのお兄さんって事は私達のお義兄さんって事になるね。あっ、お義兄ちゃんの方が良かった?」
「うわぁぁぁぁぁぁん!私達は今やお義兄さんなしでは生きていけない身になってしまいました!責任取って養ってくださいぃぃ!あと新しいファッション雑誌買ってくださいぃぃ!」
「…
更にヒヨリとミサキに至っては欲しい物の請求までしてくる始末。
確かに彼女達をこの様に育てたのはマグナスであり、マグナスは彼女達の保護者…つまり彼女達の面倒を見る責任があるのである。
「あーもう分かった!俺の負けだ!お前らも俺の
そんな彼らの姿をマグナスが意識を失った後に合流出来たラチェットやチャンマー、トレンタは微笑ましく見ていた。
本当の意味で再会を果たした兄妹、そして義兄と義妹という関係となった彼ら。
彼らの新たな
第1部『脱走せし少女達と機人と呼ばれし者』
完
To becontinue…
「ロイヤルブラッドの捕獲と脱走兵とマグナスの始末に始末したが…まぁ良いわ。ロイヤルブラッド用に調整したデスザウラーからデータは採取出来た訳だし。しばらくは泳がせてあげるわ」
とある施設にてレラエルはモニターに映し出されたマグナス達がデスザウラーと交戦する映像を眺めていた。
映像が終了した後、レラエルは石化したとあるゾイドに視線を向けながら呟く。
「その時が来たら楽しませてもらうわよ…錠前リクト。そして貴様に
そう語るレラエル…その顔はマグナス達やベアトリーチェと対面した時の人間の顔ではなく、昆虫を彷彿とさせる異形の顔であった。