脱走せし少女達と機人と呼ばれし者   作:衛置竜人

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#12『キヴォトスへの帰還』

 

 

ある日の朝、ある宿の1室にて意識が覚醒した彼は布団からその身を起こす。彼の周りには5人の美少女達が寄り添って寝ている。4年以上も一緒に過ごしてきたが故にこの光景にも既に慣れたもので、彼は顔色を変えずそのまま布団から出て身支度を始めた。

彼が身支度を済ませた後に少女達も目覚めていき、先に部屋を出た彼に促されて身支度を始める。

 

 

此処はとあるマーシナリーマーケット。

依頼を達成して帰還した者、これから依頼に出る者、機体を修理待ちの者、ただ単に休息を取っているだけの者など様々な者達と彼らを接客する者達で朝から賑わう中、多くの傭兵達にとって憩いの場となっているカフェの扉が開き、6人の人物達が入店した。彼らはそれぞれ顔を隠している…一人はヘルメット、一人は硬質マスク、ガスマスクをしているのが二人、使い捨て布マスクが一人にマフラーで口を覆っているのが一人。

はっきり言うと此処の常連の大半は彼らの事を知っている為、意味があるのかと思っている。

「"機人"と"アリウススクワッド"だ…」

彼らの姿を見た誰かがそう呟く。

「アリウススクワッド?」

「お前知らないのか!?あの機人の教え子だぞ!?」

「いや機人の噂は聞いてたが此処に来たのは数年振りだし…」

「あーそれなら仕方ないか…だいたい4年くらいか前に機人が訳ありのキヴォトス人のガキを5人引き取ったんだとよ」

「何でもアイツらだけであのデスザウラーを倒したって噂だぜ」

「デスザウラーってマジかよ…」

「なぁなぁ、アリウススクワッドで誰がタイプよ?俺はあの黒髪ロングだな。スタイルが良い」

「ワイはあの銀髪天使ちゃんやな」

「オメェロリコンか?俺はあのグラマーな片目隠れかな?」

「ショートの娘一択なり」

「僕は姫ちゃんかな」

と傭兵達が5人の少女にそれぞれ色目を向けていたのだが…彼らは突如として殺気に襲われた。その殺気を出しているのはヘルメットを被った男である。

「はぁ…アイツらに手を出したり色目向けると機人が黙ってないって注意しようと思ったんだが…」

事態を見守っていた傭兵は溜め息を吐くのだった。

 

 

アリウススクワッド…ベアトリーチェとレラエルの支配下にあるアリウス自治区から脱走せし少女達。機人と呼ばれた傭兵マグナスに引き取られた彼女達は今や彼直轄のチームとして成長を遂げた。そのメンバーは以下の5人で構成される。

 

錠前サオリ…時空の裂け目を通ってこの惑星の外から流れ着いた漂流者にしてスクワッドのリーダーである彼女は麗しき美人へと成長を遂げた。一方で兄と6年近くも離ればなれだった事と姉として振る舞っていた事の反動なのか二人っきりの時は思いっきり甘えているようだ。

 

白洲アズサ…5人の中では最も小柄だが、侮ってはいけない。5人の中でもそのメンタルの強さはトップクラスである。何せベアトリーチェとレラエルの支配を全く受け付けてなかった程である。実はマグナスの義妹が生まれ変わった存在なのだが、それを現世で知るのはマグナスのみである。

 

戒野ミサキ…口数は少なめで自治区からの脱走以前は厭世観から自殺未遂をしたことすらあったが、今では手先の器用さから裁縫や模型製作など手先の器用さを生かした趣味に没頭したりと改善傾向にある。今やチーム内のメカニック担当である。

 

槌永ヒヨリ…以前は自尊心の低さもあってか薄ら笑いを浮かべて自虐的な言葉を頻繁に口にする事もあったが、過去な環境から抜け出した事で少しは改善した…のかはわからないが持ち前のネガティブさが一周回って図々しくなったのである。

 

秤アツコ…ロイヤルブラッドと称されるへリック・ムーロアの末裔。だが、当の本人はそういった事に興味がなく、仲間(家族)と過ごして思い出を作る事の方が重要である。因みに淑やかに見えて実は実力行使のハードルが低かったりする。そもそも先祖のへリック国王はおろか息子達も自らゾイドに乗って戦線に参加するような武闘派だったので最早血筋である。

 

そんな彼女達を束ねる保護者がマグナスこと錠前リクト。サオリの実の兄である。妹()を守れなかった後悔を抱き続け、一時は病んでいた彼であったが、実妹との再会と新たな義妹が出来た事で快復しつつある…のだが、その分の反動か否か妹達に甘くシスコン気味になっていた。

 

マグナスとアリウススクワッドの面々はカフェのカウンター席(何時もの場所)に座るとそれぞれカフェのマスターに注文する。注文した物が来ると彼らはそれを口にする。

ジンジャーエールを一杯飲み終えたマグナスはマスターにこう告げた。

「マスター、暫く…いや下手したらもう此処には来られないかもしれない」

マグナスの発言に盗み聞きしていた傭兵達は衝撃を受けて固まっている。デスザウラーとの戦いで愛機(パワードコンボイ)を失った彼はゾイドに乗り替えて傭兵を続ける事も出来た…のにも関わらずサオリ達アリウススクワッドの育成に注力し、傭兵としては実質的に引退状態となっていた。

何せ対ゾイド戦も妹達に任せて自身は後方支援に回っていたのだ。

これは完全に隠居か?と傭兵達は疑っていたのだが、以前から彼から今後の事を聞いていたマスターは動じなかった。

「そうですか…いよいよ"キヴォトス"に行かれるのですね?」

「あぁ、チャンマー達には既に挨拶を済ませてマスターが最後だ。

予定通りに俺は新設される組織の担当顧問、コイツらは部員として配属される」

「寂しくなりますね」

「そうだな…この惑星に流れ着いてから数年、世話になった」

マグナスがマスターに礼を言った後、サオリ達も続けて感謝の意を伝えるのだった。

 

 

 

 

今から3ヶ月前…マグナスの元にある依頼が入った。依頼人は連名であり、その中にリューズの名もあった。

依頼内容を確認するやマグナスはリューズに問い合わせたのだ。

『やぁやぁやぁ!我が友マグナスよ!?さっそくメッセージを見てくれたんだねぇ』

「あれはどういう意味だ?リューズ」

『意味も何も書いてある通りさ。

キヴォトスの行政組織"連邦生徒会"を束ねる"連邦生徒会長"がこの度あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関を新たに立ち上げる。そこの担当顧問に私と()()()は君を推薦し、連邦生徒会も君を選んだ。勿論、彼女達の同行も大歓迎!むしろ彼女達の力も借りたいところさ!

何せキヴォトスは擬似国家内包型巨大都市の中で一番広大(デカい)からねぇ!それに自治区で差はあれど治安は基本的に悪い!だから戦力はあるに越した事はないのだよ!

…それに、君達もいずれキヴォトスに行こうとはしてたのだろう?あの()()()()()()()()()()()をぶちのめしてアリウス自治区を連中の支配から解放する為に』

リューズが言った事はマグナスはおろかサオリ達にとっても図星だった。そもそも自分達はいつの日かキヴォトスに向かい、ベアトリーチェとレラエルとのケリをつけてアリウス自治区を解放する…その為にマグナスはサオリ達に経験を積ませたのだ。

『勿論、私も協力するさ。脳波コントロール仕様かつEシールドと素粒子コントロール装置を内蔵した凱龍輝を提供したのもその為だからね』

「あの時からか…まぁ、良い。どっちにしろ何時かキヴォトスには行く予定だった事に変わりはない。その予定が定まっただけだ」

マグナスはサオリ達の意思確認をすべく振り向き、サオリ達も行こうと言わんばかりに頷いた。

「という訳だ、リューズ。お前達の依頼を引き受けよう」

『感謝する、同士マグナス。詳細は追って伝えよう。此方も君達の受け入れ準備をしなければ』

 

 

 

 

このリューズとのやり取りの後、マグナス達もリューズ達もキヴォトスへ行く(迎える)準備を進め、今日とうとうキヴォトスへ出発する日を迎えたのである。

「いよいよだね」

「あぁ、遂にこの日が来た…」

アツコに対しサオリは拳を握りしめてそう返す。

尤もキヴォトスに着いて早々にアリウス自治区に行くわけではない。いくら此方がゾイド乗りかつ1機は凱龍輝だとはいえ6人。対して彼方はガルタイガーやジークドーベルを筆頭に多くの戦力を有しているだろうし、ライガーゼロやデスザウラーの様な隠し球もあるかもしれない。そうなると戦力的には不利な事に変わりはないし、そうなるとマグナスに合う機体を探さなければならない。ヒヨリの新たな機体は確保出来た一方でこの2年4ヵ月の間、マグナスはサオリ達の教導をしつつ自分に合う機体を探していたのだが、本人がしっくりくる機体が見つからずに今に至る。それほどまでにレラエルが用意したとはいえあのパワードコンボイに愛着を抱いていたのだ。

マグナスとしてはサオリ達に直ぐアリウス自治区奪還(ベアトリーチェとレラエルへのカチコミ)を実行に出来なくて心苦しさと申し訳なさもあるが、サオリ達も今の自分達では戦力不足というのは充分に理解している。

…という訳で彼らは話し合った末にまずは此方の戦力を増やす…つまり協力者(味方)を増やすという事で満場一致となったのである。

 

 

 

鉄道に乗ってキヴォトスへ向かうマグナス達だったが、何時の間にか眠ってしまった様だ…そして彼らが目を覚ました時、自分達の座席とは反対側の座席に一部が血でやや赤く滲んだ白いの制服を着た蒼い長髪の少女が一人ポツンと座っていた。

マグナスはアツコに一瞬アイコンタクトを取り、アツコもその指示を汲んだのか医療キットを出そうとするが、蒼髪の少女は彼らに対し右手の掌を前に向けた…まるで無駄だからしなくて良いと言わんばかりに。

「…私のミスでした」

そして少女はポツリと語り出す。

「私の選択…そしてそれによって招かれたこの全ての状況。結局…この結果に辿り着いて初めて…()()()の方が正しかったことを悟るだなんて…

だけど、貴方になら、いえ、()()()ならこの捻れて歪んだ終着点とは、また別の結果を…そこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです。だから、マグナスさん…そしてアリウススクワッドの皆さん…どうか―」

彼女の言葉の続きを聞く前にマグナス達は眩い光に包まれて意識を失うのだった。

 

 

 

 

「―、―生、"()()"、起きてください」

聞き覚えのない誰かの言葉が聞こえてきたマグナスはその意識を覚醒させる。起きてまず彼はサオリ達(妹と義妹達)の安否を確認する。サオリ達は壁に寄りかかる形で眠っていたらしく、丁度マグナスと同じタイミングで目を覚ました様だ。

サオリ達の目覚めを確認したマグナスは先程の声の主の方を向く。

エルフの様な尖り気味の耳を持つ黒髪ロングで純白の制服を纏った長身の少女だ。

「彼女達共々中々起きないほど熟睡されるとは…」

「それについては謝罪しよう。それとキヴォトス行きの鉄道に乗って以降の記憶が混濁しているんだ、状況と自己紹介を頼む」

「わかりました。改めて現状をお伝えします。私は七神リン、学園都市キヴォトスの連邦生徒会所属の幹部…首席行政官です。

そして貴方達は恐らく、私達がここに呼び出した()()と随伴者…のようですが」

「なぜ疑問系なんだ?」

「あれじゃない?ここに来た経緯を詳しく知らないからとか」

アズサの疑問にミサキは自分の推察を述べる。

「彼女の言う通りです。恥ずかしながら。呼んだのは連邦生徒会のトップたる連邦生徒会長ですので」

とリンは不甲斐なさそうに答える。

「それよりも先生、貴方にやってもらわねければいけないことがあります。

私についてきてください。このキヴォトスの命運をかけた大事なことですので」

リンの言葉にマグナスは頷くとついていき、サオリ達も合わせてついていく。

リンがあるボタンを押すと扉が開く。中はエレベーターの様だ。

リンに促されたマグナス達はエレベーターに乗り、最後にリンが乗ってボタンを操作すると扉は閉じた。

「キヴォトスへようこそ、先生」

エレベーターから覗く外の光景。いくつもビル群に広めな幹線道路は車自動用とゾイド用、自転車道に歩道とで分けられている。

よく見ると各地で煙が立ち込めている…戦闘行為が行われているのだろうとマグナスは察した。

 

 

 

 

目的の階層に到着したエレベーターは停止し、チャイムが鳴ると共に扉が開かれる。

扉の向こう側のロビーへと出た彼らを出迎えたのは連邦生徒会の職員…ではなく

「見つけたわよ!首席行政官!数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんかウチの学校の風力発電所と新鋭のメガソーラー設備の大半がシャットダウンしたんだから!こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの!」

見るからに連邦生徒会のとは異なる制服を纏ったツーサイドアップの少女だ。見るからに不機嫌な事は初対面のマグナス達でもわかる彼女はリンに向かってへずかずかと歩み寄ってきた。その後ろから背中に黒い羽を生やし黒のセーラー服を纏った黒髪ロング長身の少女に灰色を基調とした制服を纏った銀髪の少女、セミロングの髪の先を左右で束ね眼鏡をかけたエルフ耳の少女もリンに問い詰めんと続けて歩み寄る。

「義兄さん、あの黒髪の娘と銀髪の娘…トリニティの生徒だよ」

「そうか…彼方が警戒する可能性もある。お前達がアリウス自治区出身である事は此処では伏せておこう」

アツコは小声でマグナスに報告する。アツコは黒髪の少女と銀髪の少女の制服の校章からトリニティの生徒だと把握したのだ。

マグナスの指示にアツコは頷き、同じマグナスからの指示を受けたサオリ、アズサ、ミサキ、ヒヨリも頷く。

「首席行政官。お待ちしておりました。戦車やヘリコプター、ゾイドにその他機動兵器など、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました」

「スケバンのような不良達が登校中、うちの生徒たちを襲う頻度も最近急激に高くなりました。有志の方のご助力も受けていますがそれでも治安の維持が難しくなっています」

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。

風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求されています」

黒髪の少女と眼鏡をかけた少女はリンに訊ねるが、当のリンは不機嫌な様子で

「あぁ…面倒な人達に捕まってしまいましたね」

あからさまな溜め息を吐いていた。その様子は火に油を注ぐかのようであり、事態の推移を見守っていたマグナスは口を出す事にした。

「七神、苛つく気持ちはわかるがその態度は止めておいた方が良い。助力を得られなくなる可能性があるからな」

マグナスから咎められたリンは

「すみません先生。皆さんも失礼しました。現在連邦生徒会長は行方不明になっています。

それに伴いサンクトゥムタワーの最終管理者不在により行政制御権を喪失、先程まで回復させる方法はありませんでした」

と謝罪し、現状を伝えた。

「それでは、今は方法があるということですか?」

「こちらの先生が、フィクサーとなってくれるはずです」

黒髪の少女の言葉にリンはそう答え、4人はマグナスに視線を向ける。

「キヴォトスの外から来た錠前リクトだ。マグナスという名で傭兵をしていた。後ろにいるのが俺の妹達だ」

「兄さ―マグナスの実妹でゾイド乗りの錠前サオリだ」

「義妹の白洲アズサだ。空戦ゾイド乗りだ」

「秤アツコ…義兄さんの義妹。ゾイド乗りもしてる」

「戒野ミサキ…右に同じく義妹兼ゾイド乗り」

「槌永ヒヨリです…私もゾイド乗りやってる義妹です。えへへ…」

4人が面食らったのも無理はない…マグナスがキヴォトスの外から来たと公言したのに他5人は頭上にヘイローを浮かべている…どう見てもキヴォトス人である。それに5人ともゾイド乗りと言ったのだから。

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

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