「此方は自己紹介をした。悪いがそちらの所属と名前を明かしてくれないか?」
マグナスは4人にそう要求する。
「ミレニアムサイエンススクールのセミナー所属、早瀬ユウカです」
「火宮チナツ、ゲヘナ学園の風紀委員です」
「私はトリニティ総合学園正義実現委員会の副委員長の羽川ハスミです」
「トリニティ総合学園自警団の守月スズミです」
「宜しく頼む。早瀬、火宮、羽川、守月。七神、俺達はまず何をすれば良い?」
4人の顔と名前を把握したマグナスはリンに最優先事項を乞う。
「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問、随伴者の皆さんは部員としてこちらに来ることになっていました」
「それが"連邦捜査部 シャーレ"だな?」
サオリの言葉をリンは頷いて肯定する。
「シャーレは単なる部活ではなく一種の超法規的機関となります。連邦組織の為、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒達を制限なく加入させることすらも可能かつ各学園の自治区で制約無しの戦闘活動を行なうことも可能です。
これだけの組織をなぜ連邦生徒会長が作ったのかは不明ですが、その部室があるビルの地下に
この事態を解決するにはそれが必要であり、先生を部室にお連れする必要がありますが、ビルまではここから30kmほどありますので乗り物を呼びましょう」
リンはそう解説すると
「モモカ、シャーレの部室へ直行するヘリが必要なんだけど」
携帯端末を使って連邦生徒会交通室の幹部である由良木モモカとの
『シャーレの部室?ああ、外郭地区の?そこ、今かなり大騒ぎだけど?
連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしながらシャーレの建物を占領しようとしているらしいの。
巡航戦車どころか中型から大型ゾイドを何機かまでどっかから手に入れてきたみたいだよ』
大型ゾイド…その言葉にリン、ユウカ、チナツ、ハスミ、スズミは苦い顔を浮かべる。
小型ゾイドであれば
状況を聞いたマグナスはリンとモモカの会話に割り込む。
「シャーレ担当顧問の錠前リクトだ。出現したゾイドの種類を確認したいが出来るか?」
『シャーレ担当顧問?あっ、先生か。現段階で確認されたのはゴドス20機にコマンドウルフ10機とバトルレックスが2機ってところかな』
バトルレックスとはガイロス帝国初の大型ゾイドであるデッドボーダーを改修した機体である。
デッドボーダーはガイロス帝国の本拠地たる
そんなデッドボーダーをディオハリコンなしでも稼働出来るようにしつつ
因みにバトルレックスを
「バトルレックスか…サオリ」
マグナスが出さんとした指示内容を察したのかサオリは
「あぁ、任せてくれ兄さん」
と答えて早速現地に向かって行った。
「アツコはサオリの援護、アズサ、ミサキ、ヒヨリはコマンドウルフとゴドスの相手を頼めるか」
マグナスの指示に4人は頷いて現地に向かって行った。
「大丈夫なんですか?先生」
心配そうに彼女達を見送ったユウカはマグナスに問う。
「アイツらなら問題はない。俺達はシャーレ部室の奪還に向かうぞ」
D.U市街地にて我が物顔に暴れ回るバトルレックス達。この惑星で量産化された大型ゾイドの中でも格闘戦と拡張性に秀でた機体であり、その様子は例えるなら大型ゾイド版アロザウラーであろうか。
『ん?何だ?正体不明のゾイド反応が2つ…?』
バトルレックスの内の1体のパイロットが近付く機影を捉えた。その正体はサオリが操る凱龍輝とアツコが操るジェノザウラーAHSである。
『何だあの恐竜型ゾイド!?見たことないぞ!』
『落ち着け!此方はバトルレックスだ!そう簡単にはやられるもんかよ!』
未知のゾイドに焦燥するバトルレックスのパイロット達は臨戦態勢となる。
『サッちゃん、話し合いに応じてくれなさそうにないね』
『そうだな。やるしかないか。被害を最小限に抑える為にも』
『そうだね。早いこと片付けて義兄さんに合流しよう?』
サオリとアツコがやり取りをしている中、真っ先に動いたのはバトルレックス達だ。
手始めに高い連射性で硬質な装甲を貫通する右腹部なレーザー砲と左腹部の二連ビーム砲を発射するが、当然ながら凱龍輝はそれを吸収してしまう。
『吸収しやがった!?反則だろそれ!』
『ならばこれはどうだ!』
バトルレックスの内の1体は各部のスラスターを噴射して凱龍輝との距離を詰めつつ背中にマウントしていた手持ち式の槍を手に装備してそれを振りかざす。
それに対し凱龍輝はバックステップで回避、その隙にもう1体のバトルレックスは背部の
『煙幕か!?だがそんな目眩まし―』
当てなくともかすれば問題ないと言わんとしたバトルレックスのパイロットだったが、そこへジェノザウラーAHSが真正面から迫り、ハイパーストライククローによるヤクザキックをバトルレックスに浴びせる。あまりの衝撃によろけるバトルレックスに追い討ちをかけるかの様にジェノザウラーAHSは機体を急速旋回してスマッシュテイルに叩き攻撃を間髪入れずに与える。
それと同時に槍持ちのバトルレックスも凱龍輝のスマッシュテイルによる叩きを受けそうになるが槍の柄で受け止める。攻撃を防がれた凱龍輝だったが、バックパックに追加したロングアサルトキャノンを後方に向けてバトルレックスに向かって発砲するのだった。
バトルレックスのパイロット達が光学兵器を無効化してしまう凱龍輝に恐怖した事は付け加えておこう。
「守月、2時の方角のバリケードの先に向かって閃光弾を放て」
「はい!天罰の光を!」
サオリ達がそれぞれ対ゾイド戦を繰り広げている一方、マグナス達はシャーレ部室奪還を遂行中だった。
マグナスは事前にユウカから聞いた各々の能力と武装を元に配置を決め、ユウカを先頭にその失うにスズミ、後方にハスミ、チナツとリンが援護に回っていた。マグナスも本当なら先頭に行くはずだったのだが、彼女達の力を信じてとリンに説得されて後方からの指示に徹していた。
「先生、11時の方向から敵増援が来ているのを確認しました」
「了解した、火宮。早瀬、先導している奴を引き付けろ、羽川は後方から指揮を出している奴にぶちかませ」
「はい!弾道計算は完璧…そこよっ!」
「承知しました。畳み掛けます」
スズミが閃光弾で敵陣営の不良生徒の目を眩ませ、彼女達への増援をチナツが牽制しつつユウカとハスミが制圧していく。そして残党はリンの乗る装甲車による機銃掃射で完全に鎮圧された。
「先生、この一帯の敵集団は壊滅。戦闘の終結を確認しました」
「了解した。報告感謝する。総員、警戒を怠らずに手当て完了後に前進するぞ」
リンからの報告を受けたマグナスは礼を言うとともに指示を飛ばす。
「先の戦闘、いつもよりやりやすかった気がします」
「やっぱりそうよね?」
「同感です」
「先生の指揮のおかげで、普段よりもずっと戦いやすかったと感じます」
とスズミ、ユウカ、ハスミ、チナツは話していた。チナツは一行の手当ても行いつつである。
手当ても終わり、一行が前進し始めたその時である!
「つまらぬつまらぬつまらぬ!歯応えのある奴はおらぬか!」
その声と共に現れたのはエイブラムスM1A1突撃戦車をベースにしたと思わしき戦車だ。主砲の後ろにはエネルギータンクらしき物が、側面には左右にそれぞれ巨大なミサイルがついている。
その戦車に一行が何処か普通の戦車と異なる違和感を抱いていた。スピーカーからの音声とは何処か異なるまるで戦車そのものから発せられている声。マグナスからしてみれば友人であるラチェットの様に…
「―まさか、お前へトランスフォーマーか?」
ある可能性に気付いたマグナスはその戦車に問う。
「如何にも。ブラジオン、トランスフォーム!」
戦車は形を変えて人型のロボットとなった。右肩の付け根にはエネルギータンクらしき物が直結した主砲が背負われ、両腕にはミサイルを装備、頭部の形状は兵士のヘルメットを彷彿とさせる。
「我の名はブラジオン。"デストラクティコン"が一角なり。我は望む。
ブラジオンと名乗ったトランスフォーマーは苛立ちをぶつけるかの様に車を踏みつける。
「ブラジオン、悪いが俺達はやる事がある。悪いが通してくれないか?」
マグナスはブラジオンに対話を申し込むが…
「断る。お主から強者の気配を感じる。故に此処を通りたくは我と戦え!我はお主らとの戦いを申し込む!」
まるで駄々をこねるかの様にブラジオンはそう言うと右手に刀を、左手にハンドガンを装備してマグナス達に向けて発砲する。
「何なのよコイツ!言葉が通じるのに話が通じないのかしら!」
ユウカはブラジオンに対し怒りながらも発砲する。しかし、ブラジオンの装甲が堅牢であるからかあまり効果がないようだ。その頑丈さはレッドホーンやゴジュラスに匹敵するレベルだろう。
(クソッ、こんな時にパワードコンボイがあれば…)
パワードコンボイがあればブラジオンとマトモに戦えたかもしれない。しかしもうない物をねだっても仕方ない。此処はアリウススクワッドの誰かが合流するまで持ち堪えるしかない…マグナスが持久戦も覚悟していたその時だった。
『お困りの様だねぇ我が友マグナスよ』
聞こえてきたのはよく知る
「えっ!?プロフェッサーリューズ!?先生、リューズ博士と知り合い!?」
ユウカはリューズの事を知っているからかマグナスとリューズが友人である事に驚いていた。一方、リンは静観、チナツ、ハスミ、スズミは置いてきぼりにされていた。
『まぁねユウカ君、私は彼の事は友人だと思っている。
「悪いがリューズ、今は取り込み中だ。話なら騒動を終息させてからで良いか?」
と素っ気なく言うマグナス。
『まぁ待ちたまえ。君は今こう思っているだろう?
リューズの言葉は図星だった。いくらレラエルが用意した機体だったとは言えマグナスがあの機体に思い入れがあったのは事実であり、様々なゾイドの操縦を試したもののどれもしっくり来なかったのも事実だ。
『そんな君にプレゼントがある。左を見ろ』
何時にもなく真面目な様子で告げるリューズに従ってマグナスが左を向いた数秒後、空から1つのコンテナが降ってきて、マグナスから100メートル先の地点に降着するや格納された脚が展開され、杭が打ち込まれる事によって地面に固定される。
『リン君。あのコンテナのセキュリティロックの解除キーに連邦生徒会統括室首席行政官である君達の名札を設定させて貰った。それを電子ロックに翳せばロックを解除出来る』
「リューズ博士、何故そのような回りくどい事を?」
リンは冷静さを保ったままリューズに問う。
『念には念を入れておきたいからねぇ。簡単には破壊されはしないがね』
「わかりました。先生」
「あぁ。総員、持ちこたえてくれ」
マグナスの頼みにユウカ、チナツ、ハスミ、スズミは頷き、彼を守る様に陣形を整える。
そしてリンとマグナスはコンテナの前まで走って向かい、リンは自身の名札をかざして電子ロックを解除する。解除と同時にコンテナは開き、マグナスはコンテナの中に入った。
「これは…!?」
『君の為に作った君だけの"コンボイ"だ。トランスフォーマーの金属細胞を使用し、操縦システムにはパワードコンボイと同じくB-Linkerによる脳波コントロールシステムを採用している。機体の色は君以前の愛機に合わせておいた。受け取ってくれ、マグナス』
コンテナの中身…それはリューズがマグナスの為に作った彼の新たなる機体だ。サイズなど細部は異なれどその姿はマグナスの嘗ての愛機そのものだった。
「リューズ、ありがたく使わせて貰うぞ!」
不適な笑みを浮かべたマグナスはリューズに礼を言うとその機体に搭乗、起動させる。
【B-Linker検出、認証完了】
その機体はマグナスを主として登録、モニターに機体名が表示される。
「"マグナス専用バトルコンボイ type:Re"って長いな…そうだな…今からお前の名は―」
マグナスの声に連動したその機体はその目に光を灯し、コンテナを突き破りながら立ち上がった。
「"マグナスコンボイ"だ!」
To be continue…