「権限の回復を確認しました。先生、キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」
「いや、俺は仕事をしただけだ」
マグナスとサオリが1階のフロアへと戻るやリンはマグナスに礼を言う。サンクトゥムタワーが再稼働した事で各種機械の電源も回復、各部屋に明かりが灯っていったのだ。
「先生にシッテムの箱を渡したことで私の一先ずの仕事は終わり…ああ、いえ、もう一つありましたね。連邦捜査部シャーレの部室…つまり先生のための執務室に案内します」
マグナスは待機していたアズサ、アツコ、ミサキ、ヒヨリも召集する。今日から此処で住み込みで働く事になる以上、施設の概要を知らなければならないからだ。
因みにユウカ達は一件落着したからと各々の学校に戻ろうとしていたのだが、マグナスが簡易的でも今後の話し合いをしたいからと引き留めた。ユウカはもう少しマグナスコンボイや凱龍輝などアリウススクワッドの機体の観察をしたいという気持ちと学校に戻らなければという思いで葛藤していた為、マグナスからの引き留めを喜んでいたとか。
シャーレ部室棟本棟のある部屋。そこのシャーレのエンブレムの描かれた扉には"空室 近々始業予定"の張り紙があった。
扉を開けて中に入ると部屋はそこそこ広く、備品もある程度用意されており、すぐにでも業務を始められるであろう状態だった。
「ここがシャーレのメインロビーになります。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね。
こちらで、仕事をしていただくことになります。とはいえ、シャーレという組織は何かしらの目的があるわけではなく、その割には権限が強いもの。
つまり、先生がしたいことをやっても良い、ということです。
様々な学園に出入りし、希望する生徒をどのような立場であれ加入させることができます」
と解説するリン。彼女の言うように部屋は使用感が殆どなかった。
「連邦生徒会長には聞いてみたいことが山程ありますが、相変わらず行方不明で…」
「彼女の捜索に人員を割いているから、キヴォトス各地で発生する問題に対応できるほどの余力を有していないって事だね」
アツコの言葉をリンは頷いて肯定する。
「今も連邦生徒会に寄せられているあらゆる苦情や陳情…支援物資融通の嘆願、自治区の環境改善、落第生への特別処置、部活動の支援要請などなど…それらの対応が間に合っていません」
「という事は私達はその業務を代行させられるんですねぇ…」
ヒヨリが察した事に
「そうして貰えると私達も非常に助かります」
リンはあっさりそう答えるのだった。
各施設の案内も終わり、マグナス達はユウカ達と合流したのだが、入る前には見かけなかったゾイドと人物の姿があった。
「あれってバトルローバー?連邦生徒会もちゃんとゾイド持ってるじゃん」
ミサキが言う通り、そのゾイドはへリック共和国が開発したバトルローバーと呼ばれる中型~大型ゾイドの設計を超小型ゾイドに落とし混んだ24ゾイドの1機である。
「私達が保有するゾイドはバトルローバーやロードスキッパー、グスタフくらいですよ。戦闘用の小型以上のゾイドはヴァルキューレやSRTに優先的に配備されています」
とリンは解説した。そしてそのゾイドの持ち主と思わしき薄緑のロングヘアーに連邦生徒会の制服を着た巨乳少女はリンに気付くと
「リン首席行政官―ひぃん!」
と言って駆け寄り…躓いて悲鳴を上げながら転倒した。ドジっ子である彼女を心なしかバトルローバーは心配そうに見つめている。
「大丈夫なのか…?」
「ひぃん…大丈夫ぅ…」
心配するアズサに彼女はそう答えると立ち上がり、リンに報告したり持ってきた物を受け渡す。彼女曰くどうやらあのブラジオンやスカージというトランスフォーマー、そしてワカモは恐らくD.U外から出た為追跡が不可能である事、そしてサオリ達が制圧したバトルレックス達はヴァルキューレに押収されたとの事だ。
「あっ、そうだ!紹介が遅れました!私は梔子ユメと言います!出身はアビドス高校で元生徒会長です!」
「彼女は我々とリューズ博士のパイプ役でもあります…というよりリューズ博士の助手の様な役割ですね」
とリンは付け加える。
「マグナス先生専用コンボイタイプ…もといマグナスコンボイも無事に受け渡せて良かったぁ…」
実はマグナスコンボイがマグナスの元まで飛んでこれたのはリューズの指示を受けたユメが座標を合わせていたからなのである。
その後、待っていたユウカ達と連邦生徒会交通室幹部の由良木モモカも加えて会議室にて今後について話し合いを行った。
尚、アリウススクワッドのゾイド及びマグナスコンボイはシャーレ担当顧問及び部員の個人所有として認められている為、一先ず何の制約もないようだ。マグナスとしては凱龍輝だけでも過剰戦力になりかねない…言い換えれば生徒達を武力で支配出来る可能性もあるが故に制約が課される事を警戒していただけに拍子抜けだった。
シャーレ居住区、夜を迎えた空は暗闇に染まり、建物や街灯の照明が街を照らしていた。
そんな居住区の一角、マグナスとアリウススクワッドの面々に用意された住処。
「何か長く感じましたねぇ…ここまで長く感じたのはデスザウラー戦以来ですぅ」
ヒヨリはユメから貰ったポテトチップスを貪りながらそう呟く。その頬は餌を蓄えたハムスターの様に膨らんでいた。
「ヒヨリ、太るよ…まぁ、確かにわかるかも。あの日は情報量多すぎだった。今のサオリ姉さんが実は宇宙人で
ミサキはそう答えながら段ボールから梱包されていた自分がこれまで組んできたゾイドのプラモデルを自分の棚に飾っている。
ミサキが言っていた通りにサオリは元々この惑星の外の地球出身でヘイローはベアトリーチェによって付与された後天的な物、その事が影響しているのかサオリはマグナスと同様にヘイローの形を個別に認識できるのだ。
本来、キヴォトス人の生徒達は個別のヘイローの形までは認識できず同じ形に見える事から容姿の変化や変装をヘイローで見分ける事は出来ないそうである。
「ところで仮に三大マンモス校に行くとなった場合、どの学校に行きたい?」
そう話を切り出したのは床に敷いたマットの上で愛銃を分解してメンテナンスしているアズサだ。
「私はミレニアム一択で」
真っ先に名乗り出たのはミサキだ。一応スクワッド内ではメカニックである身としてはやはりキヴォトスで最先端技術を有するミレニアムに興味があるのだろう。
「確かにミレニアムの技術力には興味を惹かれるよね」
「ゴルヘックスがやたら多いと聞きました。今日来たミレニアムの人…ユウカちゃんに」
「ゴルヘックスって電子戦じゃ最強クラスらしいし。ただ
「空から接近して変形して電子戦に持ち込むか…かなり合理的だな。そのゾイドも見てみたいところだ」
「リューズ博士なら作れるんじゃないですかね…えへへ」
4人がそんな話をしていた一方、マグナスとサオリはロボットモードのまま片膝を着いて待機状態となっているマグナスコンボイを見上げていた。
「兄さんの新たな
「あぁ、懐かしさは感じた…だが、一方でパワードコンボイより身体が軽く感じたな。パワードコンボイ マグナスは元は旧式だったのもあって思考から行動が実行されるまでのタイムラグが多少あったが、こいつは殆どないのは流石は最新型というべきかリューズの技術力の高さというべきか」
「気に入ったみたいだな。それにしても今回も白いんだな…」
「どうやら俺への配慮らしい。赤青や青黒もカッコいいが…俺としてはこの白ボディに青マスクに思い入れがあるな」
マグナスとサオリは缶コーヒーを飲みながら楽しそうに微笑みながら話をしていた中、彼らは自分達に向かって近付く気配を感じ取ると話を中断、サオリは襲撃に備えて銃に手を伸ばす。
「―心外だなぁ…こちらに戦闘の意思はないのに」
その言葉と共に空から天使の降臨の如く現れたのはまるで宇宙を表現しているかの様なヘイローに天使の様な羽、先端が薄い水色のグラデーションになっているピンク髪の少女。その白い制服に刻まれた校章はトリニティのものだった。
「やっほー
彼女…聖園ミカはそう言うと2人の前に降り立ち、
「初めまして、聖園ミカだよ!あっ、貴方達の名前は知ってるよ。サオリ達がアリウス自治区から脱走した事も」
「…だろうな。俺達がこの惑星の外の出身である事を知ってる様子だからな」
マグナスはそう言いつつサオリに対し
「それはそうと何故私達がこの惑星の外の出身という事を知ってるんだ?連邦生徒会曰く一般には生徒会長クラスであっても公表されていない筈だが」
そう、サオリが指摘した様に錠前兄妹が
「それは私がリューズが
で納得してくれるかな?」
ミカのその一言で2人は納得し、ミカは話を続ける。
「4年位前…ちょうどサオリ達がアリウス自治区から脱走する前にリューズと出会って同盟を組んだの。」
「同盟?」
サオリの言葉にミカはそうそうと相槌を打つ。
「簡単に言えばこの世界が滅びないように頑張ってハッピーエンドを目指す同盟!その最初の成果が梔子ユメ先輩だよ」
「梔子が?」
「信じるか信じないかは貴方達次第だけど、私って実は所謂転生者って奴じゃんね。
前世で一度死んで目が覚めたらこの世界で生まれ直して人生をやり直す事になっちゃった!的な。で、その世界だとユメ先輩はシャーレに先生が赴任する2年前に死んじゃってるんだよね。以来、同盟の娘の1人はずっと悔やみ続けてて…今回も危うくそうなりかけたところ何とか救えた!って所かな?」
「なるほどな…4年前にリューズが言ってた小さな友人はお前の事だったのか…」
「わーお。私が言うのもなんだけど驚かないの?というか信じてくれるの?」
「驚きはしたさ。だが、この惑星で数々のオカルトじみた超常現象が起きているのは事実だ。俺達が通ってきた時空の裂け目がそうだ。それにキヴォトス人に宿る神秘という奴も。だから地球じゃよく物語の題材になっていた転生者が実在しても不思議じゃないし、それに一々取り乱してたら身が保たない」
「私も兄さんと同意見だ。それと前世で何があったのかは敢えて訊かない」
ミカの言った事を2人は馬鹿にすることなくすんなりと受け入れた。
「サオリは優しいね…そしてやっぱり貴方をシャーレの先生に選んで正解だったかも」
「それはどういう意味だ?」
「貴方をシャーレの先生にすべきって連邦生徒会長に推薦したの、私とリューズなんだよね」
「何故兄さんだったんだ?」
「至極単純、相応しいと判断したからだよ。実はね、貴女達の事はずっと見てたんだよ。ゾイドを使ってね」
ミカの言葉と共に現れたのは2機のヒョウ型の小型ゾイド…高速戦闘ゾイドの始祖たるヘルキャットである。白く非武装のヘルキャット達はミカの後ろで座って待機している。
「なるほど、光学迷彩で姿を隠して監視してた訳か。監視だけならパイロットなしのスリーパーで充分だろうからな。だが覗き見とは趣味が悪い」
「ごめんごめん。でも、私
まるで突風の如くミカは去っていった。そしてマグナスとサオリは今日のミカとの会話は心の中にしまっておく事を選んだ。
こうして激動のマグナスのシャーレ
一方、その日の夜…
「まさか
自室のベッドの上でスズミはそう呟いた。シャーレの先生と共にやって来た5人の少女…いや、彼女達の場合は帰ってきたと言うべきだろうか。その内の1人…アツコの顔をスズミは
壁に立て掛けてある彼女の愛銃には刻印されていた文字を削り取った跡が残されていた。
To be continue…