トランスフォーマー…サイバトロン星を起源とする可変能力を持つ
スカージと呼ばれていたそのトランスフォーマーは人間などの有機生命体を見下し、嫌悪する傲慢な男であった。彼らの種族では珍しい事ではない。
元々その傾向があった上に嘗てのオートボットとディセプティコンの戦争にて地球人はオートボットに味方し、結果として地球での戦いにてディセプティコンは敗戦したのだから。
尤もスカージは単なるディセプティコンではなく、元々はオートボットの犯罪者であり、オートボット上層部は同胞達共々プロトフォームへと初期化された状態で改心する事を願って強大な力が眠る地球へと派遣した。
そんな中、強大な力を求めるプレダコンのメガトロンの手によってディセプティコンの兵士として目覚めさせられたのである。
地球に眠る力を巡るオートボットとプレダコン&ディセプティコンの戦争が終結した後、拘束されたスカージはサイバトロン星に連行され、刑務所に収容される筈だった。
しかし、運命の悪戯か…スカージは時空の裂目に飲み込まれた末にこの
トランスフォーマーとてエネルギーがなければ動けない。そのエネルギー源の確保の為にスカージは傭兵として生きる道を選んだ。
此処に共に戦ったメガオクティン達はいない。それにキヴォトス人は"先生"と呼ばれる大人以外はスカージがいた地球人より頑丈な上に中にはトランスフォーマーとも対等に戦える者もいる、そもそも銃弾が飛び交う事が日常茶飯事な世界だ。
そんな場所で万全な状態でない中、エネルギー施設を襲っても返り討ちにされるだけなのをスカージも理解していたからだ。
そんな元々治安が良くなかったキヴォトスでの日々もある日を境に完全な無法地帯と化した。
キヴォトスでも最大勢力であるトリニティ総合学園とゲヘナ学園の間で締結される筈だったエデン条約…その締結式で発生した大規模テロが発生し、条約が破談となったのだ。
原因はキヴォトス全土の掌握を望むゲヘナ学園の生徒会長が一方的に恨んでいた自校の風紀委員長への報復として彼女に向けてミサイルを放った事、そしてゲヘナ学園を嫌うトリニティ総合学園の
憎しみの連鎖によって発生したこのテロは背後で暗躍する悪しき大人達の介入の末、マルチバースのとあるゾイド達が召喚された事で地獄絵図となり、"先生"及びトリニティ総合学園のティーパーティーのホスト3人、アリウス分校の精鋭部隊であるアリウススクワッドの5人中部隊を裏切った人物以外の4人全員を筆頭に多数の犠牲者を出す事となった。
特に"先生"の死亡による影響は凄まじいものであった。彼に救われ彼を慕う様になった者達は数知れず、そして彼の存在がブレーキとなっていた者も多い。
そんな彼が死んだとなればどうなるか?答えは明白だ…自殺する者達が現れたりブレーキがなくなって暴走する者達が現れ、彼女達を止める為にやむを得ずヘイローを破壊する者が現れるという事だ。
それも一人や二人というレベルではない。数十人、下手すれば数百人というレベルだ。更に暴走する者達に便乗して好き放題に暴れる者達も現れ、キヴォトスの治安は最悪を通り越して例えるなら世紀末、無法地帯と言うべきだろう。
特に"先生"が死ぬ原因を作ったトリニティ、ゲヘナ、アリウスの3校と先生を殺したゾイド達、ゾイドと同じ金属生命体への当たりは強く、3校の生徒に対し他校の生徒どころかキヴォトスに住まうロボット人族も、そしてトランスフォーマーという金属生命体であるスカージも
有機生命体を見下していたスカージはやられたらやり返しながらも彼女達の怒りの矛先が自分にも向けられる理由は理解していた。
プロトフォームの状態で眠っていた期間が長かったものの人間より長い時を生きてきたスカージに対してキヴォトスの生徒達は幼い。力が強く武器を使えて地球人より頑丈な
しかも、ゾイドに関しても親玉と思わしきギガノトサウルス
万全な状態のスカージであればこんな無法地帯であっても1人で生き延びる事が出来ただろうが、迫害する者達の猛攻やゾイドの襲撃によってまともにエネルギー補給と整備が出来ない状況が続いた事で追い詰められていた。
「クッ…この俺がまさか此処までやられるとはな…」
物陰に身を潜めたスカージは自分自身に呆れ冷笑していた。あんな小娘や巨大な野獣にやられるとは、嘗ての自分が見たらどう思うだろうか?
「見つけたぞ!巨大な鉄野郎だ!」
「殺せ殺せ!」
「始末しろ!」
そんな中、スカージは追手に見つかってしまった。制服からして相手はトリニティの生徒だろうが、装備している武器は最新鋭の物…おそらくミレニアム製の物だろう。強奪したのかはたまた取引したのか…それはスカージにはわからない。
そしてスカージは以前の戦闘で脚部を負傷しており、修理する暇がないからか自己修復に頼って無理をした事が祟ったのか自己修復が間に合わず身動きは取れない上に武器システムもダウンしていて今は使い物にならない。
まさかこんな所で死ぬかもしれない…呆れて物も言えぬスカージに救いの手が差し伸べられたのはまさにそんな時だった。
追手のトリニティ生達に向けて何処からか催涙弾が投げ込まれ、ガスが解き放たれる。スカージに効果はないが、有機生命体であるトリニティ生達には効果抜群であり、彼女達は咳やクシャミ、落涙、嘔吐に襲われる事となった。
そして、その催涙弾を放ったであろう人物はスカージとトリニティ生達の前に立ち、トリニティ生達に銃口を向ける。
銀髪に白い翼、150センチ行くか行かないかの小柄な体格、ガスマスクで覆われた顔、そして銃身には"VANITAS VANITATUM, ET OMNIA VANITAS"という言葉が刻まれている。
「出たな裏切り者!」
「こうなったのもお前らのせいだ!」
トリニティ生達は苦しみながらもガスマスクの少女に憎悪を向ける。
「そうだな…確かにその通りだ。私は裏切り者だ…
だが、ガスマスクの少女はその文言を否定せず受け止める…その文言には後悔の念が滲み出ていた。
「だから、あの事件の当事者たる私は何と言われても反論するつもりはない…けど、あの事件に無関係の者を痛めつけるのは違うんじゃないか?」
一方で八つ当たりの様にスカージを追い詰める彼女達に怒りを抱いていた。そんな彼女に気圧されたかトリニティ生達は催涙ガスによる苦しみが残りながらも舌打ちして去っていった。トリニティ生達が去った後、ガスマスクの少女はスカージに振り向き
「大丈夫?」
と訊ねる。
「…大丈夫だ。少し休めば自己修復機能が働く」
と突っぱねるかの様に答える。スカージはちっぽけな人間…それも身体が頑丈で銃を扱いこなせるだけの小娘に追い詰められたどころか(別の人物だが)助けられた挙げ句に心配までされた事に自分が情けなくなって嫌悪感を抱き、立ち上がってその場を去ろうとするが、その瞬間に激しい痛みに襲われて立ち上がる事すら叶わなかった。
彼が強がっているだけなのは火花が飛んでいる脚部から見ても明らかだ。ガスマスクの少女はスカージに近づくとガスマスクを外し、破損箇所を確認している。
「酷くやられているね」
「あの機械の象や小娘共と連戦が続いたからな、修理する暇もなく気付けば自己修復が間に合っていないという様だ」
そう答えるスカージに対し少女は鞄から工具を取り出し、破損箇所の応急修理を始める。その様子を黙って見ていたスカージは少女の顔を見て思い出した。
(確かエデン事変の当事者、白洲アズサだったか…)
白洲アズサ…
しかし当の本人は
アツコの死亡によって運命の歯車が狂ってしまったのか…その後に起きた出来事の末に"先生"という生徒達に取っての良心でありブレーキとなる存在が失われた事で今の無法地帯と化したキヴォトスが出来上がってしまった。
そして何処からか情報が漏れたのかこの状況を作ってしまった現況の1人がアズサである事が広まってしまい、アズサは友人達に被害が及ばぬように単身で自警団紛いの活動をしていたのである。
「何故俺を助けた?俺はお前らから見れば悪党だ」
スカージはアズサに問う。スカージにはアズサが自分を助ける理由について見当が全くつかないからだ。
「私は貴方がどんな事をしてきたのかこの目で見た訳じゃないしヴァルキューレやSRTじゃないから逮捕なんて出来ない」
「ならば放っておく事もできた筈だ」
「過ちを犯そうとしていた
「その責任を取る為か?独り善がりも良いところだ」
「そうかもしれない…でも、迫害された傷付き弱った相手を追い詰める行為を見過ごす事なんて出来ない。貴方がどんな存在だろうと今はこの世界で暮らす市民だから。
それに…例え全ては虚しいものだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならないから」
そう答えるアズサにスカージは興味を抱いていた。普通なら精神的に壊れてしまい、最悪の場合、死を選ぶこともあり得ただろう。この年なら尚更だ。
だが、目の前で自分を修理する
To be continue…