まず校舎から姿を現したのは強化服を纏ったマグナスだ。彼に対しヘルメット団は銃口を向ける。
「お前なんだろ?ブラジオン、一週間ぶりだな」
しかしマグナスはヘルメット団を意に介さずブラジオンに声をかける。
「ふむ、やはりお主がこの地に来たのは本当だったようだ、マグナスよ」
ブラジオンはそう返すと共にロボットモードへと姿を変える。
「
「我もこやつらもクライアントの指示故に」
「クライアントの事も教えてくれる訳ないだろうな」
「当然の事。守秘義務があるのでな」
「ならば戦いは避けられないか…」
対話で済めばそれに越した事はないと考えていたマグナスだったが、相手にその意思がない以上は戦わなければならない。マグナスは遠隔操縦でマグナスコンボイを呼び出すとトラクターヘッドへ乗り込み、トレーラーを切り離してロボットモードへ変形させる。
『ならば、こちらも抗戦させて貰おう。総員戦闘開始!』
マグナスコンボイから発せられたマグナスの指示で対策委員会とアズサ、アツコは動き出した。
まずは校舎屋上からセリカが狙撃、3発撃った銃弾は全てヘルメット団の団員にそれぞれ命中する。
セリカによる狙撃直後、シロコ、アズサ、アツコは校舎玄関から一番近いバリケードに身を隠し、ノノミは校舎の窓からマグナスコンボイが牽引してきたトレーラーの上に飛び移るとヘルメット団に向けてミニガンを連射した。
ヘルメット団がノノミに気を取られている隙にまずアツコ、シロコとアズサの順でバリケードから飛び出し、アツコは他のバリケードに身を隠し、シロコとアズサは前衛のヘルメット団に向かって走り出す。前衛のヘルメット団は2人に銃口を向けて発砲しようとするが、バリケードに残っていたアツコからの牽制射撃を受けてしまい、その隙にシロコとアズサによる蹴りと射撃を受けてしまう。
他のヘルメット団の面々は当然シロコとアズサを狙って銃口を向けるが、セリカの狙撃とノノミによる掃射、バリケードに身を隠したアツコによる射撃を前に身動きが取れない。
そして彼女達に随時指示を出しながらマグナスはブラジオンと1体1で戦っていた。
彼は事前に
勿論、簡単に出来る事ではない。これもアリウススクワッドを引き取ってデスザウラー戦でパワードコンボイ マグナスを失うまでの2年間に習得したマルチタスクの実践例である。
刀を振るうブラジオンに対しマグナスコンボイはサイバーソードで応戦、ブラジオンが攻めてきている時は受けに徹し、隙を見て攻めていく。
パワーではブラジオンの方が優る一方でマグナスコンボイは硬い装甲より関節を狙う。装甲が硬い相手には関節を狙え…この鉄則もダイアクロン隊員時代に学んだ事だ。
「やはりなかなかやるな…楽しい…!楽しいぞマグナス!」
ブラジオンは峰打ちでマグナスコンボイの右手を叩き、激しい衝撃でマグナスコンボイはサイバーソードを落としてしまう。
「この勝負、我の勝ちで終わろうか」
刀を振り下ろそうとするブラジオン。
『まだだ!』
しかしマグナスコンボイは左手に
「人様の庭でさぁ、何をドンパチしてくれてるのかなぁ」
そう言いながら校門前に現れたのはバトルローバーに騎乗したままショットガンと"IRON HORUS"と書かれた盾を構えているピンク髪で青と金のオッドアイかつ小柄の少女…対策委員会の委員長たる小鳥遊ホシノその人である。
その瞳には怒りが滲んでいた…ヘルメット団とブラジオンに対して。
「貴殿が"暁のホルス"こと小鳥遊ホシノか…推して参りたい所だが…」
ブラジオンもホシノの事は知っていた。アビドス高校最高戦力であり、単騎で大型ゾイドを仕留めたという噂もある強者である。1体1で戦うならともかく今回はヘルメット団も加えた実質的やチーム戦、故に彼女も加われば消耗している此方に勝ち目はないという事をブラジオンも理解しているのか
「ヘルメット団よ、此処は撤退するぞ。あの者が参戦した以上、今の我々に勝ち目はない」
と撤退を指示、ヘルメット団の面々は去っていく。
「マグナスよ、また相見えようぞ」
最後にブラジオンはマグナスにそう告げると戦車へと変形して去っていった。
ブラジオンを見送ったマグナスはマグナスコンボイから降りるとホシノの前に立つ。
「許可なく戦闘行為に及んだ事を謝罪する。
物資搬入中にヘルメット団とブラジオンの襲来を受け応戦していた」
謝罪するマグナスに対しホシノは注意深く観察していた。
「うへぇ~君が
まるで察してくれと言わんばかりの言い方に流石のマグナスも察していた。
「そうか、リューズの同盟の一人で転生者か」
「そうそう。そしてアビドス高校生徒会改め対策委員会の委員長やらせてもらってる小鳥遊ホシノだよ。君の事はミカちゃんとアヤネちゃんから聞いてるよ」
「そうだったか。宜しく頼む、小鳥遊」
ヘルメット団の撤退後、対策委員会の面々とユメ、マグナス、アズサ、アツコは対策委員会部室に集まっていた。
「義兄さん?考え事?」
考え込んでいるマグナスが気になったのかアズサは声をかける。
「あぁ、ブラジオンとヘルメット団についてな。奴らが…正確には奴らの背後にいるクライアントが何故アビドスを狙っているのか…砂狼は『あいつらまた性懲りもなく』と言っていた。口振りからして頻繁に襲撃を受けているようだが…
引き渡しに関してもアビドスは多額の借金を抱えている…連邦生徒会ですら匙を投げたレベルのな」
「それなのに果たして欲しがるのか…?土地に関しても砂漠に覆われているし…」
「あくまでも俺の推測でしかないが、クライアントが欲しがる何かがあるのかもしれない。
借金まで抱えているのを分かった上で狙ってくるという事はそうまでして得たい物が眠っているか借金の元締めが件のクライアントか、もしくはその両方か」
マグナスとアズサの会話を盗み聞きしていたホシノは彼の洞察力に関心していた。
あくまでも前世世界での事ではあるがマグナスの推測は当たっている。
ホシノの前世世界ではアビドスの砂漠にはとあるオーパーツが眠っていた…それでこそキヴォトスのパワーバランスを崩しかねないレベルだった。
惑星Ziからの移民者が開拓したという歴史の成り立ちとゾイドが存在しブラジオンやリューズの様な
ホシノはヘルメット団の背後にいる存在が何なのか察してはいるが、下手に動くと
アビドスの土着企業の一つであるセイント・ネフティス社の経営者一族であるノノミの金で借金を返済するという手段は端から考えていない。
ノノミの
一方のマグナスは今回の依頼はあくまでも補給物資の運搬及びユメの護衛のみであるものの、アビドスへの一連の襲撃と背後にいる存在を無視する事が出来ず、この問題に介入するつもりでいた。
その背後にいる存在がブラジオンの雇い主であり、現にD.Uでの騒動に関与していた以上、自分達にも再び牙を向く可能性がある。それに指摘されれば否定するものの彼自身が年下の子供に対してはお人好しなのだ。
「アツコ、今良いか?」
マグナスは対策委員会の面々と談話していたアツコを呼び出す。
「どうしたの義兄さん?」
「今回の依頼はあくまでも補給物資の運搬及び梔子の護衛だけだが…此処を取り巻く問題へ介入しようと考えている。暫くは此処に滞在する事に―」
「「義兄さんならそう言うと思ってたし私も付き合う」」
アズサとアツコは声をハモらせてそう言った。
「分かった。サオリ達にも言っておかないといけないな…」
マグナスは2人の意思を確認するとシッテムの箱を通してサオリとのビデオ通話を始める。
「サオリ、俺だ」
『兄さん、ビデオ通話だなんてどうしたんだ?何か問題でも―』
「アビドス高校がヘルメット団から襲撃を受けた…その中にブラジオンが同行していた」
『兄さんがマグナスコンボイの初陣で戦ったトランスフォーマーだな…』
「あぁ。奴らの
そこでこの件に関して調査・介入を行うつもりだ。故に俺達は暫くはシャーレに帰れない」
『そうか…分かった。ミサキとヒヨリにも伝えておく』
「ありがとう。もしかしたらお前達やRABBIT小隊の力も借りなければならなくなる可能性もあるから準備も進めておいて欲しい」
『あぁ、帰り次第
実はサオリもミレニアムサイエンススクールのとある部活からの依頼を受けて現在ミレニアムを訪れていたのだ。
そこで一つ騒動があり、その件についてリューズから協力を得られた事をサオリは報告した。
「なるほどな…此方の案件が一段落した後、ミレニアムにも顔を出そう。その"AL-1S"というアンドロイドの件も気になる」
その後しばらくして通話は終了した。
「話し合いは終わった~?」
マグナスに訊ねてきたのはホシノだ。
「あぁ。そうだな。その事について2人っきりで話がしたい」
マグナスの言葉にホシノは頷くと2人は対策委員会の部室を出て屋上に行った。
「今回…いや、これまでのアビドス高校への襲撃、裏に何者かの陰謀がある」
「うへぇ、その根拠は?」
そう問うホシノの眼差しは何処か彼を試しているかの様だった。
「此処に来てヘルメット団が襲撃してきた時、砂狼は頻繁に襲撃が起きているという言いぐさをしていた。
しかし、アビドスを襲撃してヘルメット団に何のメリットがあるのか?練度は明らかに対策委員会の方が上かつそもそもアビドス高校は多額の借金がある。
そして今回の襲撃ではブラジオンという
ブラジオンがヘルメット団と現れたという事はヘルメット団もブラジオンやスカージの言うクライアントに雇われてアビドスを襲っている。
これを踏まえた上での推測でしかないが、クライアントがアビドスの借金の元締めの可能性がある。
そして、この地にあるのかもしれない何かをクライアントは欲しがっている。
ブラジオンやスカージも動員したD.Uでの一件も踏まえて俺としては見過ごす事は出来ない。故に俺達シャーレは今回の件への介入を行うつもりだ。
それと小鳥遊、お前の前世世界について詮索する気はない。誰にだって言いたくない事、語りたくない過去はあるだろうからな」
「普通、何があったんだって聞きそうなのに」
マグナスの言葉にホシノは驚いていた。
「俺だってそうだし、それに無理に聞き出して関係を悪化させるような真似はしたくないのでな。此方も今後の事を考えて今は味方は一人でも多く増やしたい」
理由を答えたマグナスそう答えると協力し合おうという意思を示すかの様にホシノに手を差し伸べる。その意味を察したホシノは握り返すのだった。彼女とてマグナスを完全に信じた訳ではない…一先ず懸けてみる価値はあると判断したのだ。
話し合いが終わり、2人は部室に戻って今後の方針…ブラジオンやヘルメット団の
勿論、クライアントがアビドスの借金の元締めである可能性がある事、今回の一件がアビドスの借金問題を解決する手掛かりになるかもしれない事も話した。
シロコ、ノノミ、アヤネは賛成していたが…
「今まで大人がこの学校の問題にまともに対応してきたことなんてあったの!?連邦生徒会だって借金のこと把握していたのにユメ先輩以外は何もしてこなかったじゃない!
だから私は先生に関わらせるのには反対よ!」
ただ一人、セリカだけは反対の立場だった。
To be continue…