前世世界での出来事によって成熟せざる負えなかったたホシノや苛酷な経験をしてきた大人であるマグナスと違いセリカはまだ子供である。
いくら連邦生徒会であっても各学園が有する自治区の犯罪等でない問題への介入は建前上出来ないのは解っていても割り切って納得する事など出来なかった。
それにセリカは感情を表に出しやすいタイプである。
「わっ、私は認めないわ!」
セリカはそう言って何処かへ去ってしまい、ノノミもセリカを追いかけるべく部屋を出ていった。
「ごめんね、
とホシノはマグナスに謝罪する。彼女もまたミカと同じ様に自身にとって先生はあの人だけだからという思いがあるからかマグナスの事を先生と呼ぶ事に抵抗があった。
「いや、構わない。理由がどうあれ連邦生徒会が此処を取り巻く問題に梔子以外介入して来なかった事は事実だ。
それに反発的な態度の奴の相手ならしたことあるからな。しばらく頭を冷やせば戻って来るだろう」
マグナスの言葉にアツコとアズサは((それミサキの事だ))と心の中でツッコミを入れた。
一方、校舎から逃げるように飛び出したセリカとそれを追いかけるノノミの姿を監視する者達がいた。ブラジオンと同じくデストラクティコンの一角たるスカージとヘルメット団の面々である。
武人として強者との戦いを願望するブラジオンに対しスカージは目的を遂行する為には手段を選らばない冷酷な選択を取れる存在だ。
「ヘルメット団、解っているな?クライアントの指示だ、捕らえろ」
恩情はあるブラジオンと非情なスカージ…飴と鞭の様な関係性。ヘルメット団の面々はスカージと行動を共にしていると息が詰まるような感覚に襲われている。しかし、行き場のない彼女らはこういった後ろめたい仕事をこなさなければ過酷なこの世界で生き抜く事が出来ないのもまた事実である。
スカージの指示の元、ヘルメット団はセリカとノノミへ奇襲し、彼女らを気絶させる。
「ネフティスの令嬢は脅しや交渉にも使える。丁重に扱え。そっちのは…外の世界にでも売り飛ばすか。キヴォトス人のガキは頑丈であるが故に奴隷や娼婦、実験動物として欲しがる奴もいるらしいからな。
お前らもそうなりたくなければ情など捨てて依頼を遂行することだな」
スカージはヘルメット団の面々を脅し、ヘルメット団はセリカとノノミに心の中で謝罪しながら彼女らの手足を縛り、スカージが牽引しているトレーラーに載せるのだった。
良心が痛まないのか?と言われれば嘘になる。匿名でもシャーレに通報する事が彼女達の頭に浮かんだもののその案を彼女達は却下する。スカージやクライアントが通信を傍受して即バレてセリカの様にキヴォトス外に売り飛ばされるのがオチだ。ブラジオンと異なりスカージは同格か上ならともかく格下の反逆は許さない。匿名でもシャーレに通報などすればどうなる事か…
ヘルメット団の面々がそう思っている一方、スカージは念の為に電子戦用大型ゾイドのディメトロドンを遠隔操縦して妨害電波を発生させる。
もしかすれば位置探索で居場所を知られる可能性があるとスカージは用心しているからだ。
時を同じくしてセリカどころかノノミとも連絡がつかなくなった事を受けてホシノは皆を召集した。
ホシノの前世世界でもセリカが連れ去られた事は2回もあり、一度は連れ戻す事に成功したが二度目は帰ってくる事はなかった。
しかも今回はセリカだけでなくノノミも連れ去られたと見るべきだろうとホシノは内心焦っていた。
「小鳥遊、焦る気持ちもわかるが、出来るだけ冷静に保つんだ。焦ったままだと失敗する可能性も高くなる」
其処へマグナスは気を利かせて水が入ったペットボトルを彼女に渡した。マグナスが言う事も尤もだとホシノも解っている。
「ありがとう、機人さん」
ホシノはマグナスに礼を言うとペットボトルを受け取って水を飲み、熱くなっている思考をクールダウンさせる。
この場にアズサがいないのはマグナスの指示で偵察に出ているからだ。更にアロナには2人の
『すみません先生、妨害電波で位置を特定出来ませんでした』
アロナは申し訳なさそうに謝罪のメッセージを表示させ
『気に病むなアロナ。それだけ相手の警戒心が強く用意周到だったという事だ』
マグナスは慰めのメッセージを送る。
「たった今、シッテムの箱を通して連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスして2人の座標の特定を試みた」
「せ、先生はそこまでの権限をお持ちなんですか!?」
アヤネが驚くのも無理はない。セントラルネットワークはキヴォトスに於けるインフラの根幹を為している、それに遠隔アクセスする事など常識の範囲外だからだ。
「まぁな。だが、相手は妨害電波を発生させている」
「それじゃノノミとセリカの居場所を調べられない…」
落ち込むシロコ。
「妨害電波の発生箇所がアビドス旧市街地方面である事までは解ったがそれ以上は…」
「ひぃん!広すぎて探すのも困難だよぉ!」
ユメに至っては涙目になっていた。
『義兄さん、此方アズサだ』
そんな時、マグナスの元にアズサから音声通信が届いた。アズサが操るエヴォフライヤーは妨害電波範囲外から探索していた為、影響を受けていないどころかB-Linkerによる脳波コントロール操縦は妨害電波の影響を受けないのだ。
「何か手掛かりを見つけたのか?」
『あぁ、地図でいう旧市街地郊外から信号弾が見えたんだ』
「信号弾?誰が撃ったのかという疑問はあるが妨害電波で位置特定が出来ない以上、有力な手掛かりである事に変わりはない。罠の可能性もあるが…」
「ん、解ってる。それでも私は行く」
マグナスに対しシロコは真っ直ぐな眼差しでそう答える。ホシノもアヤネもシロコと同意見の様だ。
「そうだな…アツコ、相手がどれ程の戦力を隠し持っているかはわからない。ジェノザウラーで出撃しろ」
「うん、わかった」
マグナスからの指示に二つ返事で応えたアツコは部室を出た。
「万が一ブラジオンかスカージが現れた場合は俺が直接対処する。小鳥遊、砂狼は捕らわれた十六夜と黒見の休出、梔子と奥空はその支援に向かうぞ」
時は少し遡り、旧アビドス市街地郊外の砂漠にてヘルメット団の面々は葛藤していた。仕事かつ自分達が生き残る為とはいえ彼女達の人生を完全に奪う結果となってしまっても良いのだろうか?越えてはならない一線を越えてしまうのではないのか?
「どうする?」
「どうするって言われても…」
「なぁ、今思い付いたんだけど…」
あるヘルメット団員が思い付いたのは信号弾を空に打ち上げるという至ってシンプルかつアナログな手段だ。
打ち上げてしまった事も整理中にミスで発射してしまったと誤魔化せる。どのみちスカージが怒る可能性は高いだろうが…
ヘルメット団の面々は覚悟を決め、ロボットモードのスカージが此方から目を離している隙を突く形で空に向かって信号弾を発射した。
「何をしている!」
案の定スカージにバレてしまい、彼の怒りを買うが
「すみません!整理中に誤って発射してしまって!」
とヘルメット団の面々は誤魔化す。スカージはマグナスや対策委員会にバレた事を想定して警戒体制となる。
そしてヘルメット団が打ち上げた信号弾をアズサは発見し、マグナスに報告したのである。
警戒しつつ妨害電波を発生させていたディメトロドンは自身に接近してくる機影を捉えた。先行していたジェノザウラーAHSである。
護衛のガイサック達が対ゾイド30mmビームライフルから、レッドホーン
ディメトロドンはレーダーで味方機体と敵機の位置を把握出来るが、他はそうにもいかない。
ガイサックが1機、また1機とジェノザウラーに始末されていく。
ジェノザウラーAHSがガイサック達を始末していき、スモークディスチャージャーの範囲外にいたスカージがエヴォフライヤーからの牽制を受けていたその時、マグナス達も現場に到着した。
『スカージか…奴は俺が相手をする!アズサはアツコの援護へ、小鳥遊、砂狼、奥空、梔子は予定通りに十六夜と黒見の救出へ向かえ!』
マグナスは
『チェンジ!マグナスコンボイ!』
マグナスコンボイをロボットモードに変形させ、マグナスコンボイはレーザーライフルをスカージに連射する。
「
スカージはマグナスコンボイを軽蔑し忌み嫌うかの様に左手に持ったアサルトブラスターを発砲する。
ボディにトランスフォーマーの金属細胞を培養した物を使い、メイン動力源にエネルゴンを使いながらトランスフォーマーの証たるスパークを持たぬマグナスコンボイはスカージからしてみればトランスフォーマーの紛い物でしかない。それを
故に人間に嫌悪感を抱いておらず情に厚いブラジオンとは同族ではあるが、根本的には相容れないのである。
マグナスコンボイはレーザーライフルを発砲しながら前進し続け、ある程度近付くと両肩の
この排気管は排気管としての機能はない代わりにスモークディスチャージャーとしての機能を有している。マグナスコンボイは煙幕を噴射してスカージの目を眩ませると背後に回って右手に持ったサイバーソードの刀身にエネルギーを込める。
『バーストスラァァァァァァァッシュ!』
煙幕の中から飛び出し、スカージの視界の前に現れたマグナスコンボイはバーストスラッシュの発動直前である。
スカージは右腕のランチャーにチャージミサイルを装填、直ぐ様マグナスコンボイに向けて発射する。
エネルギーを殆どチャージしなかったが故に威力は低いものの、バーストスラッシュの直撃を防ぐには充分であり、ミサイルと光の刃の衝突によって発生した爆風が2体の
爆風が収まった後、2体はまだ健在ではあったのだが…
「何だクライアントよ、今は取り込み中だ」
戦闘継続中のスカージの元にクライアントからの通信が入った。
「了解した。
スカージは冷酷である…故に信号弾を撃った
クライアントはある指示をスカージに出し
「了解した」
スカージはそう返答すると同時に右腕のランチャーにチャージミサイルを装填、マグナスコンボイの動きを牽制しつつエネルギーを充填し、対策委員会の面々に拘束されたヘルメット団に向けて発射した。
拘束されて逃げる事も叶わない彼女達は目を瞑り、生命の危機を感じたのか怯えて失禁していた。
しかし、彼女達が爆風に包まれる事はなかった。
ヘルメット団の面々が恐る恐る目を開くと自分達を爆風から庇うように膝をついて覆い被さっているマグナスコンボイの姿だった。
チャージミサイルが着弾する寸前にマグナスコンボイはヘルメット団の面々に覆い被さり、更にアロナがシッテムの箱の機能の1つである
『先生、大丈夫ですか!?』
『俺なら問題はない。何が起きた?』
『シッテムの箱には所有者を守る力があるんです!ミサイルが着弾する寸前にバリアを張りました!』
『そうか…助かった、ありがとう』
ミサイルの着弾後、スカージはビークルモードへ変形して撤退、一方のシッテムの箱もマグナスコンボイのサイズに合わせたバリアを張ってミサイルの直撃を防いだ代償に莫大な電力を消費してしまい、残存電力は10%を切っている。
マグナスがアロナに礼を言った後、電力が尽きたのかシッテムの箱の電源は切れてしまった。
「何でアタシらを助けてくれたんだ?」
そんな中、ヘルメット団の一人がマグナスコンボイを見上げながらそう訊ねる。
『信号弾を打ち上げたのはお前達なのだろ?俺達は連れ去られた十六夜と黒見の捜索を進めていた中で信号弾を見て手掛かりとして駆け付けた。
居場所を教えた事への借りを返した、というだけだ』
「私達は仕事とはいえその2人を…」
別のヘルメット団の一人は申し訳なさそうに対策委員会の面々に視線を向ける。ノノミとセリカはホシノとシロコの手によって拘束具を外された所だった。
『俺の仕事は問題を解決する事であってお前達を捕えて裁く事ではない。
お前達をどうするかはあいつら次第だ』
マグナスコンボイは対策委員会の面々に視線を向ける。
「そうだねぇ、ノノミちゃんとセリカちゃんを連れ去る片棒を担いだ事はおじさんとしては赦せないけど…機人さんが言ってた様に君達が信号弾を打ち上げてくれたから居場所が分かったのも事実。結果オーライとしておじさんは赦すよ。まぁ、もしまた同じ様な事をするなら…容赦しないけどね」
代表して答えたのはホシノだ。嘗ての彼女なら赦さなかったかもしれないが、前世世界の出来事に加え、この世界ではユメを死なせずに済んだ事が良い意味で影響して彼女達を赦すという選択が取れたのだ。
現在のアビドスの長であるホシノがそう言うのであればと他の面々もホシノの選択に従う考えのようだ。
その後、今回のノノミとセリカの誘拐に関わってしまったヘルメット団はヴァルキューレに自首し、連邦矯正局へ更迭された。更生した彼女達は後にユメとマグナスの伝で連邦生徒会の職員となるのだが、それはまた別の話である。
To be continue…