キヴォトスに存在するとある高層ビルの1室。
高そうな椅子に座っているのはとある大企業の
「やはりカタカタヘルメット団だけでは勝てなかったか」
『すまない
プレジデントとディスプレイに表示されているモニター越しで会話しているのはスカージだ。そう、このプレジデントこそがスカージやブラジオンが言ってた雇い主である。
プレジデントは別のモニターに視線を移す。其処にはスカージのチャージミサイルからヘルメット団の面々を庇うマグナスコンボイの姿と
「いやいや構わんよ。連中が想定よりも厄介だったというだけだ。連中の情報が少ない中、お前さんはよくやってくれた。
それと朗報だ。アビドスの地に眠る"
『嘗てのキヴォトスでの内戦で復元され、そして失われた遺産の一つか』
「あぁ、そうだ。尤も修復と改修には時間がかかりそうだがな。こいつが完全な状態となればあのデスザウラーを撃破した凱龍輝とやらも目ではない!私を止められる者などいなくなるのだよ!
お前さんに新たな指示だ。"狂雷"の護衛を頼みたい。奴が他の連中の手に渡る事だけは避けたいからな」
『アビドスの連中はどうする?』
「ブラジオンと…後は噂の便利屋共に頼むとしよう」
スカージの問いにそう答えるプレジデントは不適な笑みを浮かべていた。
所変わりとある路地裏。闇夜の中佇む4人の少女達の姿があった。
「
「あっちにはシャーレのマグナスコンボイが現れたって聞いたけど何とかなるの?」
「機人達って噂じゃデスザウラーを撃破したらしいもんねー」
「でも、デスザウラーにトドメを刺した凱龍輝とそのパイロットは機人達と別行動中で最近はミレニアムによく顔を出しているみたいですよ」
彼女達は便利屋68。4人ともゲヘナ学園の生徒なのだが、アウトローに憧れるアルが起業した零細企業である。
見境のない活動もあってかヒナ達風紀委員から警戒されている事もあり、ゲヘナ自治区外にオフィスを借りて活動しているのである。
メンバーは4人。ピンク色の長髪に側頭部から角が生えている少女が社長の陸八魔アル、後頭部に角が生えていて白黒の髪を後ろで纏めた少女が課長の鬼方カヨコ、銀髪をサイドで纏め尖り気味の耳をした小柄な少女が室長の浅黄ムツキ、紫のグラデーションが入った髪に濃紺色の制服を着たオドオドした雰囲気の少女が平社員の伊草ハルカである。
彼女達が言うようにマグナス達が嘗てデスザウラーを撃破した事はキヴォトス内でも噂として広まっている。
そしてサオリ、ミサキ、ヒヨリがマグナス、アツコ、アズサと別行動中でミレニアムにいる事も知る人ぞ知る情報である。
しかし、戦力が分散されているとはいえ彼らの戦力が強力な事に変わりはない。
「マグナスが戦闘に介入した時は我が相手しよう」
便利屋68の面々の耳に聞こえてきた第3者の声。便利屋68の面々が振り向いた先にいたのは黄色い戦車。そう、ブラジオンである。
「ブラジオン、トランスフォーム!」
ブラジオンは戦車から人型のロボットモードへと変形すると出来るだけ視線を低くしようと片膝を着いてしゃがみこむ。
「我が名はブラジオン。お主らと同様、クライアントに雇われている者なり」
「あら、貴方が噂のブラジオンね?」
アルもブラジオンに関する噂は聞いていた。トランスフォーマーと呼ばれる変形能力を持つ
「如何にも」
ブラジオンは4人を見渡す。人間を見下しているスカージと異なりブラジオンは人間も対等に見ている。そしてブラジオンの感覚では便利屋68の面々は人間として美人揃いであった。実際整った顔立ちだから嘘ではない。
「宜しく頼む、麗しき者達よ」
と恥ずかしげもなく告げ、麗しき者というワードに4人は顔を赤らめる。
セリカとノノミの誘拐事件から1夜が明けた。マグナス、アツコ、アズサはアビドス高校の現校舎の1室で寝泊まりしていた。本当なら近くのホテルに宿泊するつもりだったのだが、ホシノやユメの圧に負けてしまったのだ。
因みに3人一部屋である。そもそもマグナスにとっては
朝食を終え、マグナスは出来うる書類仕事も片付けるとアズサとアツコを連れて対策委員会の部室へと向かった。
「自由登校って聞いてたけど1人を除いて集まってる?」
アズサが言うように対策委員会の面々はセリカを除いて集まっており、何ならユメも一緒にいた。
「ん。自由登校日でも大抵はみんなここに集まる」
と答えるシロコ。
「梔子はD.Uに戻らなくても良いのか?」
「それが!何と!先生達のお目付け役としてついてあげてという指示がリューズ博士からありまして!」
マグナスの疑問にユメは嬉しそうに答えながら膝枕をしてあげているホシノの頭を撫でている。
「そう言えばセリカの姿が見えないけどどうかしたのかな?」
アツコはセリカの不在について訊ねる。
「この日のこの時間帯ならセリカちゃんならいつものとこにいるんじゃないかと」
そう答えたのはアヤネだ。
「せっかくなのでみんなで会いにいきましょうか?」
ノノミは皆に提案し、他の対策委員会の面々は勿論、アツコとアズサもノリノリでマグナスも反対する理由はない為、一同はセリカがいる場所へと向かうのだった。
アビドスの市街地の一角。其処には柴関ラーメンというラーメン店がある。
他学校の自治区から訪れる客もいる程、口コミは高評価の飲食店ではあるものの、交通網が貧弱な砂漠の中のアビドス自治区にあるという立地の悪さから客足は決して宜しくはなかった。
店を切り盛りする店主は柴犬型の獣人種の男性である柴大将である。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?空いているお席にご案内いたしますね!」
そして其処に調理以外の業務を手際良く笑顔を忘れずにこなしているのがアルバイトであるセリカである。
セリカは最早この店の看板娘となっていたのである。
「あの~!8人ですけど~」
「あはは…セリカちゃん…その、お疲れ」
「ん、セリカお疲れ」
「やっ、セリカちゃん。やっぱりここだったねー」
「セリカちゃん相変わらず可愛いよ~」
セリカの顔が
「美味しそうな匂いが漂っている…!」
「アズサ、ヒヨリみたいな事言ってるよ。確かにそうだけど」
現在アビドスに滞在中のシャーレ部員であるアズサとアツコ
「昨日ぶりだな、元気そうで何よりだ黒見」
そして
「アビドスの生徒さん達か。いらっしゃい、そっちは始めて見る顔だね?」
「連邦捜査部シャーレの担当顧問の錠前リクトです。此方はシャーレ部員で私の義妹の白洲アズサと秤アツコです。
この度はアビドス自治区で起きた事件について調査すべく滞在中です」
マグナスから発せられた口調に対策委員会の面々はギョッとしてマグナスの顔を見やる。一方のアズサとアツコは平然としている。
「こう見えて義兄さんは初対面の年上の相手には畏まった態度で応対するの」
アツコは対策委員会の面々にそう説明する。
「そんなに変なのか?」
「まぁ、私達はともかく出会って日が浅い彼女達は慣れなくてビックリするだろう」
真顔で訊ねるマグナスにアズサはそう答える。
「礼儀正しい兄ちゃんじゃないか。セリカちゃん、皆を席に案内して注文を取ってくれないか?」
柴大将はマグナスに感心しつつセリカに指示を出す。
「うぅ…そ、広い席にご案内します…ね…」
セリカはマグナスに気まずさを感じつつも柴大将の指示に従うしかない為、彼らをボックス席へ案内した。
「皆は食べたい物を選んでくれ。代金は俺が支払う」
「よっ先生!太っ腹だよぅ!」
マグナスの言葉にユメはまくし立てる。ラーメンの代金を払う事などマグナスには安い物だからだ。
各々がそれぞれ食べたい物を注文し(因みにマグナスとアズサ、アツコは柴関ラーメンと鶏の唐揚げを頼んだのだが、これはマグナスの実の両親がラーメン屋に行ったらラーメンに加えて鶏の唐揚げを必ず注文するという癖がマグナスにも受け継がれ、更に義妹達にも受け継がれたというものである)、皆は美味しそうに頬張る。
「せ、先生…」
そんな中、注文の品を運び終えたセリカはマグナスに声を掛ける。
「どうしたんだ?黒見」
「昨日は…その…ありがとう…」
その日の内に礼を言ったノノミに対しセリカは反発的な態度を取ってしまった事と気まずさから中々礼を言い出せず、昨日は礼を言えなかったのだ。
マグナスは何だその事かと心の中で呟くとセリカの頭を優しく撫でながら
「無事で良かった」
と微笑むのだった。
翌日、対策委員会の部室では恒例行事である借金返済と生徒数確保について各々の案を出して会議する事が行われていた。
「では、ご意見のある方は挙手をお願いします」
司会・進行役はアヤネであり、他はプレゼンターである。
「はい!はい!」
真っ先にセリカが自信満々に挙手した。
「はい、それじゃあセリカちゃん」
「これを売りつけてさあ!ガッポリ稼ごうよ!」
アヤネから指名を受けたセリカがカバンから取り出した1枚のチラシである。
そのチラシにはデカデカと『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金!』と書かれている。
(胡散臭すぎるというかどう見てもマルチ商法じゃねーか)
マグナスは心の中でつっこむのも無理はない。
「街で声を掛けられて説明会に連れて行ってもらったの!これを身に着けるだけで運気が上がるんだって!」
セリカの案に対する対策委員会の面々の反応は…
「セリカちゃん…それ、マルチ商法だから…」
「儲かるわけない」
「セリカちゃん、騙されちゃって可愛いですね」
コメントを出したのはそれぞれアヤネ、シロコ、ノノミである。ホシノとユメに至ってはコメントはしていないが苦笑している。
ダメージを受けたセリカはノノミに泣きつくのだった。
「えぇっと…それでは他に意見のある方…」
「はい!はい!」
続いて挙手したのはホシノである。
「私達の学校ってさ、生徒数が少ないでしょ?生徒数を増やせば毎月の金額もかなり増えるよね。そして生徒を手っ取り早く増やすには…スクールバスを拉致ろう~!
登校中のスクールバスをジャックして、ウチの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするんだよ!これで生徒数が増えること間違いな~し!」
(おい委員長それで良いのか)
マグナスが頭痛に襲われた感覚になったのも仕方ないだろう。
「ホシノちゃん!それは、メっ!だよ!」
ユメはホシノの額にデコピンを浴びせるのだった。その時のホシノの顔が何処か嬉しそうに見えたのはマグナスのみである。
「えー次は…シロコ先輩ですね」
最早投げやり気味になっているアヤネが次に指名したのは何時もの済ました顔をしている。
「ん、銀行を襲う。ターゲットは選定済み。市街地にある第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいた。覆面も用意してる。これが確実かつ簡単な方法」
「砂狼、一つだけ言わせて貰うが、ヴァルキューレ行き不可避だ」
マグナスはため息を吐きながらとうとう突っ込みを入れる。
「あの、私からも良いかな?」
此処で挙手したのはアツコである。
「長期的になるかもしれないけど私に良い考えがあるの」
アツコの良い考えにマグナスとアズサは嫌な予感しかしていない。
「皆は子供を作―」
「アツコ、それ以上は止めておこう」
「えー良い案だと思ったのにー」
アズサの待ったに頬を膨らませるアツコ。
「義兄さんを見てみろ、駄目だこりゃと言わんばかりに頭を抱えている。まるで"ばにたす"だ」
「でも、義兄さんは私達を見捨てないって分かっているから。あの日だってそうだったし」
そう答えるアツコは悪戯に成功した子供の様な笑みを浮かべている。
「身内が失礼した、続けてくれ」
ため息を吐きながらアヤネに催促するアズサであった。
「はい…ではノノミ先輩」
果たしてノノミはまともな案を出せるのか否か…
「犯罪でも詐欺でもない素敵な方法があります!アイドルです!スクールアイドル!」
これがもしスクールアイドルかそのマネージャー経験者であったのならノリノリで乗っかっていたかもしれないだろう。だが、運悪く経験者はこの場にはおらず…
会議はアヤネが真面目にやれとブチギレて機嫌が悪くなった事で中止となるのだった。
To be continue…