そして現在、宇宙の裏社会のオークション会場。
「総員!奴を始末しろ!」
会場の警備ロボット達は黒いロボットに向けて一斉に攻撃するが、黒いロボットは両肩の砲門から放つエネルギー弾で砲撃を撃ち落としながら警備ロボット達との距離を詰め、ピンク色に輝く剣で切り裂いたのだ。
そして黒いロボットは警備ロボット達を一掃するやゴッドカイザーに振り向き近付く。
「漸く見付けたぞ、
その姿を見て声を聞いた途端、ゴッドカイザーの
赤く染まった空の下で出会い、短い間ながらも一緒に過ごした記憶。その記憶が巡って来た後、ゴッドカイザーの視界は暗転した。
オークション会場とは異なる空間…周囲が暗闇に包まれた空間にてその少女…白洲アズサは自身と同じ位の大きさとなっていたゴッドカイザー…より正確にはその魂と対面していた。
「私は白洲アズサ。貴方は?」
アズサに対しゴッドカイザーは唸る。
「ゴッドカイザー…っていう名前なのか」
人語こそ喋れないゴッドカイザーだが、融合による影響からか伝えたい事はアズサに伝わるらしい。
「えっ、どうしたいのか…?」
それが分かったゴッドカイザーはアズサに自身の力でどうしたいのか問う。
「私は…過ちを犯した…家族を手にかけ…友達を裏切った…そして世界が滅茶苦茶になった。私は贖罪の為に戦わなければならない。
けれども、今は私を探して此処まで来てくれた彼の為に戦いたい…彼に恩返しがしたい」
少女が背負っている罪がどれほどの重さなのか融合してしまったゴッドカイザーにも伝わっている…それと同時にあの黒いロボットに恩を感じ慕っている事も。
自分はキングゴジュラスの様な大層な強さを有しているなどと自惚れるつもりはないが、ゴッドカイザーはこのちっぽけな少女には力が…自らの手で運命を切り開く為の力が必要であると考えていた。
ゴッドカイザーは短く唸る。
「力を…全てを託す!?それじゃ貴方は!?」
全てを託す…それがどういう意味なのかゴッドカイザーは理解していた。
「…そうか、貴方にも会いたい人が…」
ゴッドカイザーの会いたい人はもうこの世にはいない。何せグランドカタストロフから数百年以上の月日は流れているのだ。惑星Zi人であってももう亡くなっている事などゴッドカイザーは理解していた。そして彼に会うには死んで魂だけの存在となるしかない事も。だからゴッドカイザーは決めたのだ…この少女に全てを託す事を。
「ありがとう、ゴッドカイザー」
アズサはゴッドカイザーの鼻先を優しく撫でる。その時、ゴッドカイザーはふと思い出した。
『ゴッドカイザーって言うのか。中々イカした面構えじゃないか、気に入った!』
パイロットの男と出会った時もこうして鼻先を撫でて貰った事を。
ふと気付くとあの少女の姿はなく、あぁ居るべき世界に戻ったのだなとゴッドカイザーは察した。
「ゴッドカイザー」
そんな時、聞こえてきた懐かしき声にゴッドカイザーは思わず振り向く。ゴッドカイザーが会いたかった人…自身のパイロットだった男が其処にいた。
「長い間、待たせて済まなかったなぁ…」
パイロットだった男は出会った時と同じ様にゴッドカイザーの鼻先を優しく撫で、ゴッドカイザーは嬉しそうに唸る。
「さて、そろそろ行こうか」
撫で終えたパイロットの呼び掛けに応じるかの様にゴッドカイザーは頷き、彼らの身体は光の粒子となって霧散するのだった。
不可思議な空間でのアズサとゴッドカイザーの魂とのやり取りは現世に於いては一瞬の出来事だった。
「スカージ…やっと…私の名前を…」
彼女はその黒いロボットの正体が短い間ながらも一緒に過ごしたスカージその人である事にすぐ気付いたのだ。嘗ての面影の残る姿もそうだが、何より自分の名前を漸く呼んだ事で…
「いやいや、どうして私だって分かったの…?」
「気配と頭上に浮かんでいるヘイローで判る。
このオークションにキヴォトス人を元にした生体ユニットを組み込んだゾイドが出品されるというのは"奴"の情報や関連施設を追って行く中で知った…後はアズサかもしれない事に賭けたという訳だ」
そう、アズサの人格が宿った時点でゴッドカイザーの頭上にはアズサのヘイローが浮かんでいたのだ。
キヴォトス人の中でも人型女性種族…所謂生徒の頭上に浮かぶヘイローはそれぞれ個別の形状をしているのだが、どういう理屈かキヴォトス人同士だと基本的に形状を識別出来ず、皆同じ形状に見えるのだという。しかし、スカージの様なキヴォトス外部の存在はヘイローの形を識別出来るのだ。スカージか見た目がゴッドカイザーとなってしまっても
「…それとだ…スカージという名は捨てた。これからは"
「えっ…?」
「提案したのはアズサの方だろ」
素っ気なく答えるスカージ…否、ブラックコンボイは何処か照れくさそうであり、自分の話をちゃんと聞いていてくれた事に
「行けるな?」
「うん」
ブラックコンボイの言葉に
警備ロボット達は一斉に砲撃を開始するが二人はものともせず接近、
ギルベイダーの様な巨体であれば切り裂かれた程度で済んだだろうが警備ロボット達の大きさはブラックコンボイと同じ位であった為、切断より粉砕という状態が相応しい。
一方のブラックコンボイも次々と警備ロボット達を切り裂いていく。背後から近付く相手に対しては上方に突き出た肩アーマーに備わっている砲門からデッドレーザーを、左側面の相手にはプラズマガンを発砲して応戦する。
警備ロボット達を相手に無双する二人の姿でオークション会場はパニック状態と化しており、殆どのバイヤー達は我が命が優先だからか一目散に逃げ出す。
「せ、せっかく大金叩いて落札したんだ!オラ!言うこと聞け!アイツを始末しろ!」
その中でただ一人ゴッドカイザーのバイヤーは諦めきれなかったからかゴッドカイザーに命令するが、当然
「断る」
と
「こいつは元々俺の連れだ。死にたくなければとっとと失せろ」
更にブラックコンボイに脅された事でバイヤーもゴッドカイザーを諦めて逃げ出してしまった。
「さて、後は脱出するだけだが…」
「ブラックコンボイ、私みたいに
「連中が言ってたキヴォトステクノオーガニクスプロセッサーにされた生徒共か」
ブラックコンボイの言葉に
「残念だが、今はいる該当者はアズサだけだ」
「そう…じゃあ此処に用はないね」
「そうだな…ならば脱出するぞ」
この日、宇宙の裏社会のオークション会場の一つが1体のトランスフォーマーと1体の
オークション会場から飛び立ち、宇宙を航行する1機のジェット機の姿がある…ブラックコンボイの
「携行式素粒子コントロール装置があったのは良かったが…その姿は目立つな」
ブラックコンボイ…正確に言えばその頭部が変形したヘッドマスター本体は自身の膝の上で寛ぐ
素粒子コントロール装置は変形時にサイズが変化する事があるオートボットやディセプティコンの特性を応用した物体のサイズを伸縮させられる(但し出力サイズに限度あり)装置である。ブラックコンボイはオークション会場で一つ奪取して
しかしいくら携行式素粒子コントロール装置で小さくしたとは言えゴッドカイザーのヒロイックな外見は少々目立つものだろう。二人っきりの時ならまだしも万が一に人がいる場所に降り立った時には特に。
「元の姿に戻りたいか?」
ブラックコンボイは
「…この力と姿は託された物だから…
アズサは自身にすべてを託したゴッドカイザーに気を使ってこの様な返答をしたのだ。
「そうか」
「ブラックコンボイは…元の姿の方が良い?」
「どんな姿だろうと俺は
惚れた、という言葉に
「そうだな…戦闘時はその姿の方が適している。だが、さっきも言った通り潜伏時には目立つ。だから戦闘時と潜伏時で姿を使い分けるというのはどうだ?」
「ブラックコンボイみたいに?出来るの?」
「それはこれから模索すれば良い。いくらでもお前に、アズサのやりたい事に付き合ってやる」
「ありがとう、ブラックコンボイ」
かくしてゴッドカイザーとなってしまったアズサとブラックコンボイの旅が始まった。
「そう言えば、ブラックコンボイはどうやってその姿になったの?」
「あぁ、そうだな…」
時は遡りアズサが連れ去られた後の事。
『―スカージよ』
「何者だ?」
そんなスカージに何者かが声をかけたのだ。
『名乗る程の者ではない。私はお前を見てきた、お前の行動のすべてを』
「ふん、そうか。惨めな最期もか?」
『惨めだとは思わない。そもそもお前はこれまで様々な悪行を行ってきたが、それで終わったのであれば此処へ呼んではいない』
「ならば何故、俺を呼んだ?」
『お前は小さき命を守ろうと戦った』
その声の主はスカージがアズサの為に戦っていた事を指摘したのだ。
「…結局、護れなかったがな」
スカージは自嘲するかの様に答える。
『それでもお前があの命の為に戦った事は紛れもない事実。
他が為に己の身を犠牲にしてでも戦う…お前が言う
彼女はある存在の手によって人成らざる存在へと作り替えられている。それでもお前は彼女を救い出したいか?』
「そんなもの決まっている。出来るもんなら今すぐにでも取り戻したい」
スカージの答えは決まっていたが、今のスカージの状態ではそれも叶わぬのが現状だ。
『最期に他が為に戦ったお前の行動に敬意を表し、お前に新たな力を授けよう』
声の主はそう言うと現実世界に於けるスカージのボディを
『ゆけ、スカージよ』
声の主がそう告げると共に暗闇に支配された空間に亀裂が生じて光が射し込む…そう、この不可思議な空間も終わりに近づいている事を示していた。
「スカージ…違うな。俺は―」
スカージに過るのはアズサとのやり取り。
『黒い守護者…"ブラックコンボイ"とかどう?』
アズサがくれた新たな名前。
「ブラックコンボイだ」
スカージ―否、ブラックコンボイはその名を名乗った。
あの声の主が何者だったのかブラックコンボイには分からない。しかし、あの存在がいたからこそ今の自分がある、とブラックコンボイは名も知らぬその存在に心の中で感謝を告げるのだった。
「ふうん、あのゴッドカイザーがブラックコンボイを名乗るトランスフォーマーに連れ去られて行方不明ねぇ…。
まぁ、あの機体は散々遊び尽くしたし欲しい物も獲られたのだからもうどうなっても良いのだけれど」
一方、とあるマルチバースのキヴォトスにてレラエルはそう呟いた。何を隠そうこのレラエルこそアズサをテクノオーガニクスプロセッサーKVへと作り替えてサルベージしたゴッドカイザーに移植した張本人である。
そんなレラエルの背後にそびえ立つ培養ポッドの中に浮かぶのはゴッドカイザーのゾイドコア。
中型ゾイドでありながら同クラスのアロザウラーはおろか大型ゾイドのデッドボーダーをも凌ぐ戦闘能力やに目を付けていたレラエルはあのゴッドカイザーのゾイドコアをクローニングしていたのだ。クローン故にオリジナルよりやや劣るだろうが大した問題ではない。
そして、このクローニングされたゴッドカイザーのゾイドコアが調整された上でアリウス産ジェノザウラーに搭載されるのはまた別の話である…
完
To be continue…?
・ゴッドカイザー(アズサ機)
分類:ティラノサウルス型
全長:約23.2m
全高:約7.8m
最高速度:200km/h
装備:テクノオーガニクスプロセッサーKV
ホバリングシステム
武装:サンダーソード
電磁ビーム砲
バイトファング
メタルクロー×2
三連キャノンビーム砲
二連装ショットガン×2
グランドカタストロフによって惑星Ziの人々が他の惑星へと移民した世界に於けるゴッドカイザーをレラエルがサルベージし、キヴォトス人を元に生成された一種の半永久的生体ユニットたるテクノオーガニクスプロセッサーKVの試験運用機として改修した個体。
パワーコネクターが廃されたものの、テクノオーガニクスプロセッサーKVを通しての神秘の付与によるブーストとホバリングシステムの追加など純粋な機体スペックそのものは改修前より上がっている他、自己修復能力もマルチバースの惑星Ziで開発・運用されていたオーガノイドシステム搭載機に匹敵する。
本機の検証データは後のB-Linker対応機の開発に貢献した他、ゾイドコアそのものもクローニングされ、アリウス産ジェノザウラーのゾイドコアとして流用された。
データも取り尽くした事で手元に置いておく理由がなくなったレラエルは繋がりのあった宇宙の裏社会の商人に売却(元々レラエル自身は自身の開発した兵器を繋がりのある者に売却し、その兵器が混沌をもたらす様を見物する事を楽しんでいる節がある)したのだが、そんなレラエルでも元となったキヴォトス人―聖園ミカの前世世界に於ける白洲アズサの人格が復活した事は想定外だった。
因みにこの出来事の後にマグナス達が交戦したライガーゼロ(帝国仕様)もテクノオーガニクスプロセッサーKV搭載機に該当する。
・ブラックコンボイ
種族:トランスフォーマー/ヘッドマスター
所属:ディセプティコン→なし
役割:傭兵
変化(トランステクター):フルトレーラータイプのタンクローリー/ジェット機/基地
武装:フューリーセイバー
プラズマガン
デッドレーザー/デッドエナジーミサイル
ブラックコンボイという名前は白洲アズサから与えられた名前であり、元々はスカージというあるマルチバースに於けるディセプティコンの一人だった。
アズサと出会い、共に過ごした事でスカージ自身は変わり、最期は彼女の為に戦おうとして敗北した。しかし、彼の勇姿を見ていた
その姿は