先に9話と9.5話を投稿してしまいました。瀬名紫陽花との会話がある8.9話が挟まります。
朝の校舎は冬の静けさに包まれながらも、あちこちで人間の笑い声が響く。
私は窓際の席で、その様子をぼんやり眺めていた。
人が多い場所は、やっぱり少し疲れる。嫌いではない。でも、長くいると、頭の中がざわついてしまう。
「れなちゃん」
隣から柔らかい声が聞こえた。振り向くと、紫陽花さんが小さく笑っている。
「おはよう」
「うん、よろしく」
「ねぇ」
「ん? なになに?」
「今日は私が聞いてもいい?」
私は首を傾げる。
「んにゃ、なにを?」
「れなちゃんのこと」
「……私?」
「うん」
紫陽花さんは真っ直ぐ私を見る。
「私ばっかり話してたでしょう? 今度は、れなちゃんの番」
「私なんて、特に話すことないよ」
「あるよ」
即答だった。
「絶対ある」
沈黙。
その沈黙を、紫陽花さんは急かさない。
私はその時間がありがたかった。やがて、小さく口を開くことにした。
「……私ね」
「うん」
「昔から人付き合いが得意じゃないんだ」
紫陽花さんは何も言わない。ただ聞いている。
「大人数になると何を話したらいいのか分からなくなる。だから一対一が好き」
私は遠くを見る。
「一人で静かな時間が好き。ゲームも、本も、哲学も全部、一人で考える時間があるから好き」
紫陽花さんは優しく笑う。
「れなちゃんらしい」
私は肩をすくめる。
「でも、たまに一人すぎるなって思う」
その言葉が、自分でも意外だった。私は誰にも言ったことがなかった。紫陽花さんは驚かない。否定もしない。
ただ「うん」とだけ返した。
「通知も来ないし、休日も一人が多い。それでいいって思ってた。でも」
私は苦笑する。
「紫陽花さんと遊んだ日。あの日だけは帰ってから、また遊びたいなって思った。一人は楽だけど、独りは寂しい」
「私、れなちゃんのことそんなこと思うタイプじゃないと思ってた」
紫陽花さんは少しだけ目を潤ませた。
「れなちゃん。私ね、すごく嬉しい」
「どうして?」
「だって、れなちゃんもちゃんと寂しいって思う人だった」
「な、なにそれ? 私は紫陽花さんに機械みたいな人間だと思われていたのか……!」
「うーん、機械ではないけど、もっと超人みたいな人だと思ってた」
「そんなわけないのですよ、甘織れな子は弱い人間です」
私は笑った。
「疲れるし、落ち込むし、失敗もする」
やがて、紫陽花さんが、私の袖を少しだけつまんだ。
「ねぇ、これからは私だけが助けてもらうんじゃなくて、れなちゃんも私を頼ってね」
私は驚いた。
その言葉は、前の紫陽花さんなら、絶対に言えなかった。
「……そうだね、そのときは遠慮しない」
「約束?」
彼女が小指を差し出す。
私は少し照れながら、小指を絡めた。
「約束」
二人で笑う。
もう昔の孤独とは違う。
一人でいることを知っている二人が必要なときには互いを頼れる。
そんな関係が、できたと思う。
関わりが見たいヒロイン
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王塚真唯
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瀬名紫陽花
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琴紗月
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小柳香穂