光のれな子 作:あーばれすと
「ってことがあったんだよ〜。助けて紗月えもん〜。ちっ、コイン裏か。なんだこのクソゲー。おもんな」
「最近の騒がしい感じはそれね。こうなると産休で抜けたうちの担任の一人勝ちね。甘織は本当にギャンブルデッキ好きね。はい、パールキアで攻撃、勝利」
「ぐぁー、負けた。あんなに派手な事件が起きてしまえば学校の全体の問題だし、矢面に立つことになっちゃった紫陽花さんの立場も厳しい」
「一つ間違えれば、瀬名が主犯ってことになりかねないわね。でも、そうならないように手は打ってあるのでしょう?」
「まぁね。色々と情報を集めて先生に提出したけど、事件の中心人物が全員が転校ってなると世間体はもちろん、生徒のメンタルもね。あ、次は王の遊戯やろう」
「いいわよ。幸いなのは先生方が真面目に対応してくれていることかしら。今回の件は継続した虐めではなく、花束をきっかけにした一過性の暴走であるとが調査によって判断さていること。貴方の手柄ね」
「うん。それは良かったけど。問題は紫陽花さんなんだよね。純粋に傷ついている。あ、聖なるバリア発動」
「は? なんでそのテーマでそんなカード入れてるのよ。おかしいでしょ。瀬名は傷ついているでしょうね、でも貴方が優しくしてあげたんじゃないの?」
「優したけどねぇ。効果は微妙かな。言葉や行動より、時間が必要なタイプかな。2枚捨ててカードを引く」
「時間か……腫れ物に扱われるのが苦しい時もあるし、責めて欲しい時もある。側にいて欲しい時もある。逆に優しく慰めて欲しい時もある。分からないわね。モンスターで攻撃。貴方のライフは残り500。ふふ、真面目にやっても私の勝ちね」
「私にできるのは、側にいることだけかな。悔しいね。自分の力不足を嘆くばかり。はい、勝ち。封印されしエグゾディア。揃った時点で勝利する。残念さよならホームラン。勝ちを確信した癖に負ける敗北者の気分を教えて?」
「は? ふざけんな。なにこのクソゲー。つまんないわね。空気悪いわ。でも流石、坐殺博徒に近い術式を持つ術師ね。ギャンブルを己に課すことで、リターンを大きくする」
「…………」
「なに?」
「紗月さんも、順調に染まってきたね。サブカルチャーに」
「なにそれ悪口? それなら警察を呼ぶけど」
「この状況下で警察を呼ばれたら私は本気で逮捕されちゃうからやめて」
「なら口の利き方に気をつけなさい。私と貴方が同列だと勘違いしないことね。人としての格が違うのよ、格が」
「そう。わかった。紗月。パン買ってきて」
「貴方が上って意味じゃねぇのよ!!」
一旦、落ち着き。
例の事件を整理することになった。というか紗月さんが資料を用意してくれた。
「こういうのサクッと作れるの紗月さん凄いよね」
「崇めて褒めなさい」
「紗月さん、結婚しよう」
「いいわよ」
「え?」
「さ、資料を読みなさい」
■人物
紫陽花さん:普段は優しく皆に好かれる存在。今回の事件の「責任者」とされる側だが、本人は自分のミスを強く自覚している。
→ 現在は「被害者」として過剰に擁護され、逆に苦しんでいる。
被害者:紫陽花と一緒にお花の計画・作業を行っていた→ 失敗した責任を押し付けられ、孤立・攻撃されている。
→ 紫陽花を「優しいだけの風見鶏」「全部持ってるのに庇われる」と激しく非難。
加害者:紫陽花さんの熱心なファン・擁護派→ 紫陽花を「優しい聖女」「完璧な被害者」と決めつけ、被害者の少女を一方的に悪者扱い。
私達: 第三者的な立ち位置→ 状況を俯瞰して見ており、最後に介入して場を収める。
■核心の出来事(何が起こったのか・時系列順)
・過去の事件(この事件場面より前)
・紫陽花が家族のことで忙しく、「お花を渡す」などの約束・役割を忘れてしまった。その結果、何らかの失敗・トラブルが発生。
・本来は紫陽花にも責任があるはずの出来事。
・現在の状況(階段の下) 少女が取り囲まれ、いじめ・非難を受けている。 紫陽花が現れ、少女を庇おうとする。 しかし擁護派の生徒たちは「紫陽花さんは被害者」「少女が悪い」と逆に紫陽花を過剰擁護。
→ 紫陽花本人が「私が悪い」と認めているのに、周囲がそれを認めさせない。
・少女の爆発 少女が感情を爆発させ、紫陽花を「容姿も頭脳も人脈も全部持ってる」「優しいだけの風見鶏」と攻撃。
→ これで空気が一変。少女への攻撃がさらに激化。
「私」の介入 場を強制的にクールダウン。
被害者 → 医務室へ のち病院へ。
加害者たち → 職員室へ
紫陽花と甘織れな子→保健室
■本質的に起きていること
【責任のすり替えと過剰な美化】
・紫陽花が「良い子」「優しい子」というイメージが強すぎるあまり、彼女のミスが周囲に許容されない(=認めさせてもらえない)状況。
【偽りの優しさの残酷さ】
・紫陽花を「守る」という名目で、少女を徹底的に悪者化し、彼女の痛みを無視している。
【紫陽花自身の苦しみ】
・本人は自分の非を強く自覚しているのに、周囲がそれを否定し続ける → 自己否定と罪悪感が逆に増幅される。
【群衆心理・正義の暴走】
「好きな人を守る」ことが正義になり、反対意見を言う者を排除する構図。
■まとめ
・誰もが『正しい』と思っている優しさが、誰かを深く傷つけ、責任を正しく見えなくしている
■甘織れな子へのおすすめ】
・道教的無為均衡主義
・カント的絶対真理・責任主義
・ニーチェ的有限性肯定努力主義
・懐疑的シニカル相対主義+逆説的救済犬儒主義
◆
「すごい綺麗に纏ってるね。最後のは何?」
「この世界にある哲学と主義思想の簡単に纏めたもの。好きなの選んで瀬名に言ってあげなさい」
「うーん、これいる?」
「というより、議論の種にしなさい。納得や理解はできなくても、一緒に考えることで折り合いがつく場合がある。地獄に落ちる前に、今できる事を最大限やるべきでしょう」
「流石、紗月さん。因みに、紗月さんこの事件の感想とかある?」
「愚かで未熟な人間たちによる暴走」
「はは。愉快」
「知性ではなく互生が足りないわね。勉強の知識を実生活に転用できてない良い例よ。それとも瀬名の人徳かしら」
「その人徳が本人を傷つけるとは皮肉だね。天与呪縛によるフィジカルギフテッドがありながら、家で猿扱いされるが如し」
「瀬名が事象への適応できればよいけどね」
「なんかアドバイスある?」
「隣にいてあげなさい。貴方は失敗を糧にできるタイプだから良いだろうけど、それだって、ノウハウがいる。瀬名は苦手でしょ、そういうの」
「確かにね。紫陽花さんの悪いところ……いや、未熟なところは『自分が悪い』で思考停止する部分だからね。そこを促す役回りをしないと精神が壊れて終わりかな。ありがとう紗月さん」
「ええ」
「紗月さんも、紫陽花さん主催の地獄ツアーついてくる?」
「遠慮するわ。私は別の地獄へ行く予定だから。王が独りにならないようについていく必要があるわ」
「そっか」
「甘織」
紗月さんは手を出してくる。
私はなんとなく手を乗せた。すると紗月は息すって、大切な詠唱を開始する。
「我等、今こそ決戦の地へ。信じろ、我等の刃は砕けぬ。信じろ、我等の心は折れぬ。たとえ歩みは離れても鉄の志は共に在る。誓え、我等地が裂けようとも再び生きて、この場所へ」
私と紗月さんは、拳をお互いに合わせて、別々の道を進んだ。
関わりが見たいヒロイン
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王塚真唯
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瀬名紫陽花
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琴紗月
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小柳香穂