光のれな子 作:あーばれすと
さて、駆け落ちするにも準備がいる。しかし夜は遅い。ということで私達はホテルで泊まることした。
私は紫陽花さんとホテルのエントランスを抜けると、紫陽花さんの手を軽く引いてエレベーターに乗り込んだ。
淡いピンクの照明が廊下を優しく照らし、足音が柔らかく吸い込まれるカーペット。
紫陽花さんはまだ少し固い表情で、私の横顔をちらちらと盗み見ていた。
部屋のドアを開けると、広い空間が広がった。キングサイズのベッドに、大きな窓から夜の街の灯りが差し込み、ジャグジー付きのバスルームがガラス越しに見える。
典型的なラブホテルらしい、派手すぎず落ち着いた内装。
「ひろーい」
私が満足げに呟くと、紫陽花さんが小さな声を上げた。
「わぁ、わぁ、わぁ……」
「どうしたの?」
「ここって、ここって……」
紫陽花さんの声が震え、頰がみるみる赤くなる。
「ラブホ。私はよく使うから、少し休むならここでいいかなって」
「よく使う!?」
紫陽花さんの目が大きく見開かれた。
「大丈夫。相手は女の子だけ」
「女の子だから大丈夫という話じゃないよ!?」
紫陽花さんが慌てて手を振る。
私はくすくすと笑って、紫陽花さんの肩にそっと手を置いた。
「ははーん、さては紫陽花さんエッチな妄想したね。ラブホ女子会とかで使ってるだけだよ。紫陽花さん、興味あるの?」
「………………」
紫陽花さんはぱっと顔を真っ赤にして、口を閉ざした。視線を床に落とし、指先でスカートの裾をぎゅっと握る。
「へぇ、そういう感じ。まぁいいや、一緒にお風呂入ろう」
「お、お、お風呂!? なんで!?」
紫陽花さんの声が裏返る。
「紫陽花さんの裸が見たい」
「直球過ぎない!?」
紫陽花さんが両手で顔を覆い、耳まで赤く染まる。私は悪戯っぽく笑って、紫陽花さんの両手を優しく外した。
「だって、私、紫陽花さんのこと好きだもん」
紫陽花さんが、ぱちりと目を見開いた。息を飲む音が、静かな部屋に響く。
「真唯と付き合ってたのも知ってるでしょ? 私はそういう感じなんだよ。紫陽花さん。紫陽花さんは可愛いし、心も魅力的だよ」
「れなちゃん……」
紫陽花さんの声が、かすかに震えた。
瞳が潤み、戸惑いと、どこか期待のようなものが混じっている。
「だからまずは仲良くなろう。裸で」
紫陽花さんはしばらく黙っていた。ゆっくりと息を吐き、こくりと頷く。
「……うん、わかった」
「分かってくれたようで何より」
私がにこりと笑うと、紫陽花さんはふと思い出したように顔を上げた。
「そう言えば、さっき言ってたれなお姉ちゃんって何?」
私は紫陽花さんの腰に腕を回し、耳元で囁くように言った。
「教えて上げる。その身体に」
紫陽花さんの体がびくりと震え、私はそのまま、バスルームの方へゆっくりと歩き出した。ガラスの向こうで、湯気がすでに立ち上り始めていた。
夜は、まだ始まったばかりだった。
◆
バスルームの扉を開けた瞬間、温かな湯気が甘く甘いフローラルの香りと混じり合い、二人の肌を優しく包み込んだ。
ジャグジーの広い浴槽には、すでに熱いお湯がたっぷりと張られ、表面に浮かぶ白い泡がぷくぷくと音を立てて弾けている。
薄いピンクと紫が溶け合う照明が、濡れたタイルを艶やかに照らし、すべてを柔らかく、淫靡に染め上げていた。れな子はためらいなく服を脱ぎ捨て、素肌をさらけ出した。
滑らかな曲線を描く背中、細く引き締まった腰、柔らかく揺れる胸――すべてが湯気の向こうで淡く輝いている。
彼女は浴槽の縁に腰を下ろし、足をゆっくりとお湯に沈めると、心地よさげに目を細めた。
「ふぅ……気持ちいい。紫陽花さんも早く入って」
紫陽花さんはドアの近くで立ち尽くし、下着姿のまま頰を真っ赤に染めていた。指先が震えながらブラのホックに触れ、ゆっくりと外す。
布地が落ちる小さな音が、静かな空間に響いた。
彼女は両腕で胸を隠し、恥ずかしそうに足を踏み入れる。お湯がぱしゃりと音を立て、紫陽花の白い肌を優しく受け止めた。
「わ……熱い……でも、気持ちいい……」
私はすぐに隣に滑り込み、肩を寄せた。私達の肌が触れ合う瞬間、紫陽花さんの体が小さく震える。
「楽ちんだよね、ここ。泡が体を包んでくれて……まるで抱きしめられてるみたい」
私は両手を広げ、泡をすくい上げると、紫陽花さんの肩にそっと乗せた。指先で優しく広げ、滑らかな肌の上を滑らせる。
泡が溶けるように消え、温かな肌の感触が直接伝わってくる。
「紫陽花さんの肌……本当にすべすべ。触ると吸い付いてくるみたいで……離したくなくなる」
紫陽花さんは目を伏せ、恥ずかしそうに息を漏らした。それでも、逃げようとはせず、ゆっくりとれな子の腕に手を置いた。
「……れなちゃんの肌も……すごくきれい。温かくて、柔らかくて……」
彼女の指先が、私の鎖骨をなぞる。ゆっくりと、ためらいながらも、確かめるように。れな子は小さく笑い、紫陽花の手を取って自分の胸元へ導いた。
「もっと触っていいよ。ここ、好きに触って」
紫陽花さんの指が、私の柔らかな膨らみに触れる。掌全体で優しく包み込むように、そっと揉む。
思わず甘い吐息を漏れて、体を少し反らした。
「ん……紫陽花さんの手、優しい……でも、ちゃんと力が入ってるね。ドキドキする……」
今度は私が紫陽花さんの背中に手を回し、泡を塗り広げながら、指を滑らせた。背骨のラインをなぞり、肩甲骨のくぼみを優しく押す。
紫陽花さんがくすぐったそうに体をよじり、小さな声を上げる。
「やっ……そこ、感じちゃう……」
「ここ? もっと?」
私は悪戯っぽく囁き、指先で紫陽花さんの脇腹を撫で上げた。敏感な部分を軽くくすぐるように触れると、紫陽花さんの体がびくりと跳ねる。
「ひゃっ……だめ、くすぐったいのに……気持ちいい……」
紫陽花さんも負けじと、れな子の腰に手を回した。指を滑らせ、腰のくびれをなぞる。さらに下へ、太ももの内側へ。
私の息が少し乱れる。
「紫陽花さん……そこ、弱いんだ……だからあんまりしないで」
「へえ……覚えておくね」
紫陽花さんは大胆さを増し、れな子の太ももを優しく揉むように撫でた。泡が指の間から滴り落ち、肌をより滑らかにする。
二人はお互いの体を洗い合いながら、ゆっくりと、深く、感触を確かめ合った。胸を寄せ合い、泡にまみれた肌が密着する。
私は紫陽花さんの首筋に唇を寄せ、軽く息を吹きかけた。
「紫陽花さんの匂い……甘い。お湯と混じって、もっと欲しくなる」
紫陽花さんは目を閉じ、私の肩に顔を埋めた。小さな声で、震えながら。
「れなちゃん……私も、もっと触りたい……」
私達はジャグジーの泡の中で、体を絡め合うように抱き合った。
額が触れ合い、瞳が近い距離で溶け合う。
湯気が二人の輪郭をぼかしながらも、熱い吐息だけがはっきりと伝わってくる。
「れなちゃん……好きだよ」
紫陽花さんの小さな告白に、私は優しく微笑み、唇を重ねるように近づけた。
「私も。もっと、もっと仲良くなろうね……全部、感じ合おう」
泡が弾け、水音が響く中、私指先は再び互いの肌を優しく、貪るように這い始めた。温かなお湯が、体温をさらに高めていく。
夜は深く、甘く、果てしなく続いていた。
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