個性、黒殿様飛蝗。   作:気まぐれな富士山

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体力テスト

「デッカ。バリアフリーってレベルじゃねぇぞ。」

 

ちょっと早めに教室に入ると、まだ誰もいない。

自分の席に座り、小説を読み始める。

すると、もう一人眼鏡の男子生徒が入ってくる。

 

「おはようございます!」

「……………おはよう。」

 

挨拶を返すと、ツカツカと隣に来て手を差し伸べてくる眼鏡。

 

「僕は私立聡明中学校出身、飯田天哉だ。よろしく。」

「…………武蔵野第二中出身、跳田飛真。よろしく。」

「よろしく、跳田くん。」

 

握手をすると、飯田は自分の席に向かい、ピシッとした姿勢で勉強を始めた。

 

(あんな真面目くんもいるのか……………)

 

そうこうしているうちに、だんだんと生徒が増えてくる。

身長120cmもないようなブドウ頭や、逆にかなりデカいタコのようなマスク男、あからさまなほどに頭が爆発したヤンキーなど、今日だけで今までの価値観が破壊されていく。

しばらくすると何やら担任らしき相澤という人物が出てきて、体操着を着てグラウンドに来いとのことだ。

入学式も授業ガイダンスも無いとは、中々面白い。流石は雄英だ。

 

 

 

着替えてグラウンドに向かうと、相澤担任から今日やることを告げられる。

 

「個性把握テストォ?」

 

どうやら中学までやっていた個性なしの体力テストを個性を使って行うらしい。

さらには最下位に除籍処分とまできた。

俺の個性ならまぁいけるだろうが、油断してられない。

 

「なぁ、お前なんで背中穴空いてんだ?趣味?」

「……………?あぁ、個性のせいでな。こうしないと破れるんだ。フンッ………!!」

 

体に力を入れて変体する。

背中から触腕が生え、体が黒色の殿様飛蝗のようになる。

 

「すげー!オイラ峰田実!お前は?」

「跳田飛真だ。よろしく。」

 

峰田の身長は、俺の腰より低そうだ。

何やら頭に丸いものがついていて、それが個性のようだ。

測定が始まると、皆自分の個性をフル活用して記録を出していく。

最初の競技は50m走。これは自信のある競技だ。

一番最初に教室で出会ったメガネくん、飯田は凄まじい速度で駆け抜けていった。

 

「3秒04か………面白い。」

 

飛蝗の跳躍力を生かし、クラウチングスタートを切る。地面が抉れてしまったが、初速は飯田より早い自信があった。

 

「すげー!3秒32!」

「うーん、やはり繋ぎが難しいな。」

「跳田くん、君も足に自信があるのか?」

「まぁ、な。走りよりも跳ぶ方だが。」

 

飯田とはなかなかいいライバルになれそうだ。

 

そして一番の得意競技、立ち幅跳び。

 

「うおー!跳田飛んだな!」

「ありゃあすげぇ………ゴリゴリのフィジカルタイプだ。」

 

記録は29m。かなりいい記録が出た。

 

その後の競技もそれなりにこなせていたが、ふと頭に相澤担任の言葉が過ぎる。『最下位は除籍』。今の除籍対象は………あの緑谷というもじゃもじゃ頭の男子だ。

致し方ない。ヒーローとは、誰もが誰もなれるものではないのだ。南無、と手を合わせ目を背けると、背後からゴオッ!っという音と共に風圧が伝わってくる。緑谷が投げたソフトボールが、705mを記録していた。俺の、何倍も大きい数値だ。

 

「………緑谷。」

 

意外とあいつは、すごい奴なのかもしれない。

 

 

 

記録を取り終えると、やはり最下位は緑谷だった。結局除籍か…………と思っていると。

 

「ちなみに除籍はウソな。君らの本気を出させるための、合理的虚偽。」

 

周囲からブーイングと呆れる声が聞こえてくる。しかし開始時の相澤担任の言葉には嘘を全く感じなかった。

……………本当、心臓に悪い虚偽だ。

 

 

 

放課後。帰宅しようとしていると、校門前で緑谷と飯田を見かける。隣には、ソフトボール投げで♾️を出していた女子がいた。名前は確か麗日、だったか。

 

「よう。緑谷に飯田、それと麗日。」

「跳田くん!君も帰りかい?」

「うわっ、バッタの人や!あのジャンプ、すごかったね!ボゴォッて地面抉れちゃって!」

「麗日は………たしか、ソフトボールで♾️出してたよな。」

「わ、私よりも!デクくんの方がヤバかったよ!指バッキバキになってたし!」

「木偶?それは………緑谷のことか?」

「あ、う、うん!僕のあだ名………僕、出久って名前で、音読みでデクだから…………」

 

そう言えば教室で爆豪に恫喝されている時も『こらデク!!』って言われてたな。あれはあだ名なのか。

 

「そういえば緑谷、指はもういいのか?かなりぐしゃぐしゃになっていたような…………」

「う、うん!リカバリーガールに治してもらって、今はひどい突き指くらいかな。」

 

それは結構痛いのでは………と思いながら、緑谷の方にポンと手を置く。

 

「………最初お前をみた時、俺は正直お前をみくびっていた。だが………それは間違いだったみたいだ。」

 

緑谷が見せた、あの超パワー。パワー系は王道と言われるが、あれほどのものは見たことがない。まるで、オールマイトのような………今はあの超パワーに身体がついていかないようだが、もしあの力をフル活用されたら…………考えたくもない。

 

「これから、よろしく。」

 

雄英で初めてできた友達関係に、少し心が跳ねた。

 




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