ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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10話(挿絵有)

午後のチャイムが鳴る頃、僕は教室を後にしてひとりアリーナへ向かった。

 

アリーナに到着すると、すでにフィールドの準備は整っていた。観客席にはクラスメイトの姿もちらほら。昨日に比べれば声援も増えてきたように思う。「空の王子様」とか「マザコン王子」とか、好き勝手なあだ名で呼ばれているのが聞こえてくる。いや後者は絶対許さないからな。

 

「対戦者、入場!」

 

場内アナウンスが響くと同時に、僕はバングルを操作し、整備台の上に《ハクロ》を呼び出す。白と黒のツートンに塗り直された機体が光に照らされると、観客席から小さなどよめきが広がった。やっぱり見た目って大事だよな、と心の中で頷く。

 

対戦相手は、いかにも組み上げたばかりといった機体。フレームはむき出し気味で、外装も寄せ集め感が強い。コアもレベルが低いのか、起動の動作だけでモーター音が唸っていた。

(悪いけど、踏み台だな)

 

セーフティフィールド点灯。ブザーが鳴る。

「——飛ぶぞ、ハクロ」

〈了解、マスター〉

 

穏やかなジェット音とともに、ハクロはすぐさま上昇。観客席から再び「おぉ!」と声が上がる。空戦機体とそうでない機体の差は歴然だ。相手は必死にジャンプして距離を詰めようとするが、全く届かない。

 

「旋回しながら牽制」

指示を出すと、ハクロは円を描くように動き、ビームガンを連射。エフェクトが相手の装甲を次々と焼き、姿勢を崩していく。

 

「ビーム、下段狙い」

〈照準固定〉

瞬間、白い光が相手の脚部を撃ち抜き、膝が砕けたように折れた。バランスを失ったところに追撃。ビームがコアに直撃し、相手機はセーフティに弾かれて力なく倒れ込んだ。

 

ブザーが鳴り響く。勝者、白銀 白夜。

 

……正直、試合にならなかった。観客席から「強すぎだろ!」「相手かわいそう!」と笑い混じりの声が上がる。僕は肩を竦めつつ、観客席に軽く手を振って応える。ここでガッツポーズなんかしたら本当に“調子に乗ってる王子様”扱いされそうだからな。

 

「お疲れ、ハクロ」

〈完勝だ、マスター〉

機体をデバイスに収納し、僕はアリーナを後にした。

 

 

 

 

 

 

 廊下を歩きながらふと思う。勝つのは嬉しい。けれど、ここまで一方的だと拍子抜けしてしまう。対策されるのは時間の問題だろう。

(……まぁ、それまでは“圧勝王子”でいてやるか)

 

 

 自嘲気味に口元を緩めながら、僕は夕焼けに照らされた寮へと戻っていった。

 

 ——部屋のドアを開けると、すでにテッペイが机に向かっていた。教科書とノートを広げ、眉間にしわを寄せながら必死にペンを走らせている。意外と真面目だなと感心しつつ「ただいまー」と声をかけると、こちらも待ってましたと言わんばかりに振り返る。

 

「お疲れーカツカレー!」

 寒いギャグと共に笑顔を見せる。

 

「……帰宅ギャグが食べ物って、なんでよりによってカツカレーなんだよ」

呆れつつも笑って返す。

 

「で?早かったな。バトル終わったのか?」

 

「おうよ。昼イチにさっくり負けて、そっこーで帰ってきてやったぜ」

 本人は全く気にしてないように笑って言う。

「いや、自慢げに言うことじゃないから」

 

「相手がアサルトガンマンでさ!逃げても逃げても弾が追ってくんの。俺のはキャリアーだぜ?戦う前から無理ゲーってやつよ」

 

「……まぁ、技術系だし無理する必要ないのか」制服を脱ぎながら僕が答えると、テッペイは胸を張って「問題ナーシ!」と豪快に言った。

 

「技術系は1年の間だけ耐えれば、2年3年はラボに籠もってればいいんだとよ」

 

「ぁーそうか、1年は技術者として、苦手でも実地はやっとけってことか」

 

「そういうことじゃねーの?2だから白夜も2年になったら修理は全部俺に頼め。がっつりポイント落としてくれ!未来のお得意様だぞ!」

 

「お得意様て……まぁ、頼りにしてるよ」と笑って答える。

 

 そんなやり取りをしていると、不意に僕の生徒手帳が「ポンッ」と着信音を鳴らした。画面を開くと、新着メッセージ。

 

 ——佐倉 桃香。

 

佐倉 桃香【さっきは急にごめんね!】ポンッ

佐倉 桃香【白銀君、いつも人に囲まれてるから】ポンッ

佐倉 桃香【今いかなきゃって思って】ポンッ

 

 短い文面がリズムよく続き、画面に彼女の名前が並ぶ。

 ふむ、これはそういうことなのか。

 

「お、白夜めっちゃ鳴ってんじゃん。さては女の子かぁ?」

 にやにや顔のテッペイがこちらを覗き込む。

 

「初日に一緒に食堂で見ただろ、白ピンクの子だよ」

 

「あー……あの子かぁ……」と一度目を閉じ、思い出そうとする。次の瞬間、バッと顔を上げて大声を出した。

 

「って超かわいい子じゃねぇか!!!!」

 

 大げさな反応に僕は苦笑するしかない。

 

「いつの間に連絡先なんて交換したんだよ!やっぱイケメンだからか!くそぉおお!」

 体育会系のごつい体で叫ぶ姿は迫力あるが、どこか滑稽だ。

 

「教室で勉強してたら、たまたま会って交換しただけだよ。特に何もないから」

 

「いやいや、なんもなかったら交換なんてしねぇから!絶対だ!」血涙を流しそうな勢いで訴えてくる。

 

「……それもそうか」思わず納得してしまった。

 

「で?どうなんだよ白夜。付き合ったりするのか?」急に落ち着いた声色で聞いてくる。さっきまで大騒ぎしていたのに、この切り替えはなんなんだ。なんだこいつ。

 

 

「いや、まだ何とも考えてないよ」

 

「そうかそうか……それでなんだが——」と、急に妙に丁寧な口調になり頭を下げる。

「その子の友達とかを紹介してくれたりはしませんかね?」

 

「……それが狙いか」僕は呆れながらも笑い、制服をハンガーにかけた。

 

「だってよぉ!俺だって青春したいんだよ!頼むって!」

 

「誰が友達かも知らないのに紹介できるかよ」

 

 

 

 

 

 

寮の部屋に笑い声が響く。まるで漫才みたいなやり取りをしていると、テッペイは机の上の工具を片づけて、ベッドにごろんと寝転がった。

 

「でもさぁ白夜、お前やっぱ人気出るよな。顔はいいし、新型機体で空飛んでんだろ?掲示板だって見たけど“空の王子”って呼ばれてんじゃん。俺なんて“キャリアーで逃げ回る男”だぞ?」

「いや、それも十分印象残してるんじゃない?」

「残していい印象じゃねぇんだよなぁ……」

 

ベッドに顔をうずめながら、ぼやき声がくぐもって聞こえてくる。

 

僕は笑いながらも、生徒手帳に届いた佐倉桃香からのメッセージを返していく。

 

to佐倉 桃香【びっくりしたけど気にしなくていいよ。】シュッ。

 

返すと、すぐに矢継ぎ早にメッセージが飛んでくる。

 

佐倉 桃香【よかったぁー】ポンッ

佐倉 桃香【白銀君明日ってなにしてるの?】ポンッ

佐倉 桃香【友達と商業区回ろう!って話してたんだけど】ポンッ

佐倉 桃香【白銀君もいっしょにどうかな?友達と一緒でもいいし!】ポンッ

 

 

光の点滅が止まらない。

 

背後からはテッペイのにやけ声。

「白夜ー人気だなーうらやましいなー俺なんてなー工具が彼女だもんなー」

背後からテッペイの悲しいオーラが漂っている。

 

「しょうがないなぁ、テッペイ」

ため息をつきながら最後のメッセージを見せてやると、テッペイは画面を凝視した。

 

【白銀君もいっしょにどうかな?友達と一緒でもいいし!】

 

 

「……白夜様、これから神とお呼びしても宜しいか」

 

「よくないわ」と笑って答える。

「んで、テッペイはどうする?」すぐにニヤリと笑い、肘で脇腹をつつく。

 

「いきます!たとえこの身が朽ち果てようとも!ぜったいいきます!」

 

「朽ち果てたらいけないだろ」と苦笑い

 

「……じゃあ、あした行くか?」

 

to佐倉 桃香【明日いけるよ。ルームメイトと2人でいいかな】シュッ。

 

送信完了。

「よし来た!やっふうううう!!」ベッドの上で跳ね回るテッペイ。

 

 

うるさいやつだ……。でも、桃香さんの積極性には驚かされた。僕の隣にいる影野この江や黄土貴志との距離感をどう整えるか考えると、キューピッド役ばかり押し付けられている気分になる。(恋愛ドラマの当事者じゃなくて、調整役ってポジションは大人だからこそなのか?)

 

テッペイはそんな僕の葛藤なんて知る由もなく、机に戻って「よし、俺やる気出てきた。眉毛剃ってくる!」と宣言し、洗面台に突撃していった。

 

「剃るんじゃなくて整えるだろ」と背中に声を投げる。

 

僕は再び生徒手帳を開いた。桃香の名前の横で光る通知は、妙に鮮やかに見える。

(……恋愛かぁ。駆け引きとか面倒で、前世じゃサクッと結婚したんだよな)

 

 

まぁ、なるようになるか。

「白夜ー!このパック使っていいかー?」洗面台から聞こえてくるテッペイの声。

「明日の朝しろよ」と返すと、部屋は再び静かになった。

 

 

 

 

翌朝。

珍しく僕より早くテッペイが起きていた。

 

「おはよー」声をかけると、

「おう!おはよう!」と、やたら元気な声が返ってくる。

 

その声の主は、顔面にまだパックを貼ったまま、洗面所から満面の笑みで飛び出してきたテッペイだった。

 

「……朝から笑わせるなよ」

「もう朝シャンも終わってるぜ!完璧だろ!」

「聞いてないし。いや、誰も求めてない」

 

パック越しでもわかるドヤ顔に、思わず二度目の苦笑い。

 

僕も洗顔や髪を整えて洗面所を出ると、そこには神妙な顔のテッペイが――なぜか土下座して待っていた。

 

 

「……おい、次は何だよ」

「俺は……俺は情けない」

 

「急に何キャラだよ」眉をひそめる僕に、テッペイは声を震わせて告白する。

 

「外出用の服が……ジャージしかないんだ!」

 

「…………え?」

 

「だから!俺、ジャージしかないんだよ!!」

「いや、知らねぇよ!!」即座にツッコミが飛び出した。

 

テッペイは土下座のまま叫ぶ。

「白夜、頼む!服を貸してくれぇ!」

 

こいつ……命を懸ける場面を完全に間違えてる。

 

 

とはいえ、高1男子なんてまだ成長途中、身長170cm超で体格も近いし、着られなくもない。

僕はロッカーを開け、普段着のストックを確認する。

 

中にはデニムとスラックス、それから色違いのロンTやシャツ。両親の影響で身だしなみにはそれなりに気を使ってきたから、派手じゃないけど無難にまとまっている。

 

「テッペイ、別にオシャレってほどの服はないけどな」

「ジャージ以外なら何でもいい!いや、むしろ神だ!救世主だ!」

 

勢いがすごいな……。仕方なく、太めのデニムと白のオーバーサイズロンTを差し出す。

 

「これでいいか?」

「おおおおっ!心の友よ――!!」

 

テッペイは泣きそうな顔でそれを受け取り、抱きしめる。まるで砂漠で水を見つけた探検家みたいなテンションだ。

 

「ふぅ……これでようやく出発できるな」僕はため息交じりに呟いた。

 

――休日の外出前にこんなドタバタするなんて、先が思いやられる。

 

 

 




機体名 :アサルトガンマン
型式番号:EID-ASM01
コア   :

部位  :
頭(高性能センサーアイ)
/右(アサルトライフルユニット)
/左(アサルトライフルユニット)
/脚(ハイスピードレッグ・MkⅡ)
/背(マイクロミサイルポッド)

主要数値:全高 195cm/重量 720kg/稼働 40分/COOL 8s/HEAT 60%

コアスキル :

備考  :量産型射撃特化エイドロン。中距離戦を得意とし、弾幕と追尾弾で相手を削り取る設計。装甲は軽めで近接戦は不得手だが、対初心者や回避重視機には極めて有効。



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