ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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11話(挿絵有)

 

 朝の空気はまだ少しひんやりしていて、寮の前には休日特有の緩やかな時間が流れていた。

 僕とテッペイは、なんだか落ち着かない気分で寮の扉を眺めて立っている。

 

「なぁ白夜……ほんとに来るよな?」

「その質問何回目だよ」

「いやそうなんだけどさぁ、女子と出かけるなんて中学の修学旅行以来でさぁ……」

 テッペイは額に手をやり、無駄に緊張している様子。

 僕は修学旅行も女子と出かけるにカウントするのかと訝しむ。

 

 

 しばらくして、正門から女子が二人並んで出てくる。

 

 ひとりは言うまでもなく佐倉 桃香。初めて見た時の儚げな印象の線の細さとは違い、元気いっぱいに手を振りながらパタパタ駆け寄ってくる。暗めのワンピースを軽やかに着こなし、色白な肌が映えてどこか華やかさすら漂わせている。

 要するにかわいい!!

 

 もう一人は、濃い青のポニーテールを揺らす少女。引き締まった脚をのぞかせるショートパンツに、へそがちらりと覗く白いTシャツ、そして淡いスプリングコート。カタログのモデルのようにスタイリッシュで、歩くたびに視線をさらっていきそうな存在感だった。

 

 

 

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「おまたせー!」

 佐倉さんが軽く息を整えながら笑顔で声をかける。

 

「いや、俺たちも今来たところ」

 なんてテンプレ台詞を自然に言ってしまった僕に、隣のテッペイがニヤニヤと肘で小突いてくる。

 

 僕はごまかすように「僕は白銀白夜。白夜でいいよ。こっちはルームメイトのテッペイ」と紹介する。

 

「おう!工藤 鉄平!えー、本日はお日柄もよくー」

「運動会じゃないんだぞ」

 すかさずツッコミを入れると、女子二人はふふっと笑った。いい意味で緊張がほぐれる。

 

「仲いいんだね」佐倉さんがくすくす笑う。

 テッペイは耳まで赤くして「ま、まぁな!」と答える。

 

 

 佐倉さんがじゃぁ私たちもと自己紹介を始める。

「私は、佐倉 桃香--」

「昨日の夜からワクワクして寝坊しかけた美少女です」

 横からさらっと割り込んできたのは隣の少女。

「そうそう、って違うよ!」佐倉さんが即座にツッコミを入れ、二人のやり取りに僕も思わず笑ってしまう。

 

「私は海月 七海。桃香のルームメイトよ」

 海月さんは落ち着いた声で自己紹介を済ませ、口元にわずかに笑みを浮かべる。その横で佐倉さんは「もぉー」と頬をふくらませていた。

 

 ――ベタだけどかわいいやん。そう思った瞬間、思考が口から漏れてしまった。

「かわいいね」

 

 僕の言葉に、佐倉さんの頬が一気に赤くなる。恥ずかしさをごまかすように髪をくるくると指で弄び、えへへと照れている。

 海月さんはそんな佐倉さんを横目で見て「言われ慣れてる桃香も、意外と照れるんだ」と茶化す。

 

 その時、隣のテッペイはというと海月さんの自己紹介辺りから、いや海月さんをちゃんと視界で捉えたあたりからか。

「おへそ」とつぶやいて海月さんから目が離せなくなっていることは黙っておこう。

 

 

「……じゃあ、とりあえず出発しよっか」

 場を切り替えるように声をかけ、テッペイを小突いて歩き出す。

 

 

 

 *

 

 

 

 道すがらの会話は思ったよりも弾んでいた。

 休日の商業区へ向かう道には人通りも多く、同じように寮から出てきた生徒たちがちらほらと見える。

 

 

「へぇー、テッペイ君は技術系のほうなんだ?」

 桃香が興味深そうに首を傾げて尋ねる。

 

「そうそう、私たち技術系の知り合いいなかったから伝手ができてよかったわ」

 七海が感心したように小さく頷きながら言う。

 

「俺でよかったら、いつでも言ってくれよ!そういうのは得意だから!」

 胸を張って答えるテッペイ。その姿に、得意げというよりは“ここで株を上げたい”気持ちがにじみ出ていた。

 

「実際、寮に帰ってからもずっと機材いじってるもんな」

 僕が補足すると、桃香が「へぇー」と目を丸くしてこちらを見た。

 

「意外にテッペイ君、真面目君なんだー?」

 冗談っぽく桃香が言う。

 

「意外って!見た目通り真面目だろ?!」

 慌てて声を上げるテッペイ。

 

 僕は苦笑しながら「いやいや、見た目はそうでもないだろ」とさらりと突っ込む。

「ひどっ!白夜、お前味方だろ!」と抗議してくるテッペイに、僕は肩をすくめて返す。

 

「うちのななちゃんは、見た目通り真面目だよ!」

 なぜか誇らしげに桃香が自慢する。

 

「なんで桃香が自慢げなのよ」

 当の七海は苦笑いしながら呆れたように答える。その表情もまたクールで絵になっていた。

 

「でも確かに、佐倉さんと海月さんは仲いいよね?」

 僕がそう声をかけると、桃香はぱっと笑顔になって「うん!すっごく仲いいよ!」と即答した。

 

「白夜君たちも、桃香とななちゃんでいいよ!」

 桃香が楽しそうに言うと、七海は小さくため息をつきながら「普通に“ななみ”にしてよ」と返す。

 

 そんなやり取りの間にも笑いが絶えず、緊張していた空気はすっかり和らいでいた。

 

 

 

 *

 

 

 

 そうこうしているうちに、正面に大きなアーチ状の入口が見えてくる。

 巨大なガラス張りの施設、その奥に広がるのは活気ある商業区――通称「エイドモール」だ。

 

 

 パーツショップや最新型のエイドロン関連ショップ、服屋、雑貨屋、洒落たカフェにレストラン。

 見えるだけでも数十店舗が並んでいて、休日とあって人の波が絶えない。

 学校の敷地内とは思えないほど賑やかで、テーマパークにでも来たかのような高揚感に胸が躍る。

 

「わぁー……なんでも揃ってるんだね!」

 桃香が目を輝かせながらキョロキョロと見渡す。

 

「すごいなー。ここまで規模が大きいとは思わなかった」

 七海も思わず感嘆の声をもらす。

 

 テッペイはといえば「おおっ!このパーツショップ、レアな冷却材置いてるかも……!」とすでに目を爛々とさせていた。

 

「落ち着け、今日は遊びに来たんだろ」

 僕が肩を掴んで制止すると「わ、分かってるって!」と苦笑いしながら答える。

 

 そんな賑やかさの中、突然。

 その時、場違いな大声が響き渡った。

 

「我ら――リア充撲滅委員会である!」

 

 高らかに響き渡る声と同時に、道の真ん中に飛び出してきた二人組。

 全身黒ずくめでマントまで羽織り、顔には無骨なマスクをつけている。

 

 通りの人々が「また出たか……」とでも言いたげに苦笑いしながら距離をとる。どうやらこの界隈では有名らしい。

 

 僕たちの視線も自然と彼らに釘付けになった。

 ふむ……いったいなんだこれは?

 

 

 隣でテッペイが慌ただしく生徒手帳を操作し、解説を始める。

「えっと……リア充撲滅委員会。公式には学園公認のクラブ活動のひとつらしい。土日に出歩くカップルに野良バトルを仕掛けて、勝ったらファイトマネーを渡して去る……んだと」

 

「じゃあ負けたら?」と桃香が目を丸くする。

「女の子は解放される……らしい」

「じゃあ男は?」僕が念を押すと、テッペイの顔色がさっと青ざめる。

「そ、その日一日……強制勉強会……」

 

「地味に地獄だな」僕がぼやくと、覆面のひとりが胸を張り、声を張り上げた。

 

「そうだ!我らは学園の健全な学習環境を守るため、善意で活動している!」

「その通り!妬みや嫉妬からではない!我らに負けるようでは、遊ぶのはまだ早いのだー!」

 

 妙に声量がデカい。気迫だけは一人前。

 ――なんて気迫だ!!

 

 

 佐倉さん達もビビって、、、いや引いてるだけだなあれは。

 

「えっと……困るんですけど」

 七海が冷え切った声でそう言い放った。

 

 

 その一言で覆面のひとりが一気に動揺し、早口でまくし立てる。

「あ、あのっ……困惑の意味って、知ってますか?困惑というのはですね……」

 もう片方もオロオロしながら「の、喉渇きませんか!?じゅ、ジュース買ってきましょうか!」としどろもどろ。

 

 温度差がひどい。

 

「男女の温度差っっ!」テッペイが即座にツッコむ。

 

 

 僕も理解した。――こいつら、ただ女子とまともに喋れないから、こんなクラブで活動してるんだ。

 なるほど、リア充撲滅委員会である。

 

 

「うるせぇ。男は黙ってろよ!」

「こっちが女子と喋ってるでしょーが!」

 逆ギレする覆面たち。

 

 

「え、これ会話になってた?」桃香がきょとんと首をかしげる。

「いや、どう見てもなってないだろ」僕も苦笑する。

「末期ね」七海は即答。切れ味鋭い一言だった。

 

 その瞬間、覆面のひとりが絶望したように肩を落とし「こ、これが……BSS……?」とつぶやく。

 

「BSS?」七海が眉をひそめる。

 

 テッペイが真剣な顔で答える。

「“僕が 先に 好きだったのに”の頭文字だ!」

 

 全員:『違うだろ!!』

 

 僕たち、女子二人、さらに通りがかりの人まで一斉にツッコんでいた。

 

 その直後、桃香が「ごめんなさい、お付き合いするとかはちょっと……」と天然気味に断りを入れてしまう。

 覆面のひとりは「ぐはぁぁああ」と崩れ落ちた。

 

(告白すらしてないのに断られるとか……なんかもう、可哀想だな)

 僕は思わず心の中で黙祷を捧げる。

 

 

 生き残ったほうの覆面(※倒れているほうも死んではいない)が「く、くそぅ!女子を使うなんて卑怯だ!」とわけのわからないことを叫び、倒れた仲間を肩にかつぐような仕草をしていた。

 

「今どういう状況?」テッペイが困惑顔。

 七海は「知らないわ。……疲れたからカフェに行かない?」と完全に無視。

 

 だが覆面(生きてる)はなおもこちらを指差し、「こうなったら!バトルだ!」と宣言した。

 

「僕?……だよね?」

 僕が苦笑いで後ろの三人を見ると、桃香は「頑張って!白夜君!」と何故かノリノリ。

 テッペイと七海は「さっさと済ませて」という顔をしている。

 

 釈然としないながらも、僕は肩をすくめて「分かりました。じゃあやりましょうか」と答えた。

 

 覆面は相棒をその場に投げ捨て「ぐふぅぅ」と呻き声を残しつつ、前を向いて歩き出す。

 僕たちは倒れた覆面を一瞥し、先導するもう一人についていった。

 

 モールの奥には、野良バトル用の小型フィールドがいくつも並んでいる。

 ――どうやら、ここで決着をつけるらしい。

 

 

 *

 

 ――野良フィールドに緊張感が走った。

 通りすがりの買い物客や、カフェの席にいた生徒たちまでざわつき観客席に移動するものまでいる。

 

 

 覆面の男が高らかに叫ぶ。

「ルールは校内リーグと同じだ!一対一での真剣勝負!準備はいいな!」

 そう言うと、バングルを操作しエイドロンを呼び出す。

 

「こい!《スズナ》!」

 

 光の粒子が集まり、フィールドの中央に顕現したのは女性型エレキャット。

 猫耳、しなやかな肢体、そして顔の造形は妙にリアル。金色の瞳がぎらりと光り、尻尾の先から電流がパチパチとほとばしった。

 

(……うわぁ、原形はあるけどすごい作りこんでるな。実物は初めて見る)

 エレキャット――口から放つ電磁波と尻尾の先から出る電流で敵機をショートさせ、熱暴走やパーツ不良を引き起こしたところを鋭い爪で切り刻むコンセプト。

 まともに喰らったら《ハクロ》でも一時的に操作が効かなくなる。要注意だ。

 

 

 僕も静かに右腕のバングルを操作する。

「ハクロ、出番だ」

 

 白銀の羽根がきらめき、ジェット音と共に機体が浮かび上がる。

 観客席のほうからざわめきが走る。

「あれ……空戦型じゃない?」「まさかあの“空の王子様”?」とすぐに話題が広がった。

 

 覆面は顔こそ見えないが、全身で驚きを表していた。

「く……まさかお前、空戦のやつか?!立花さんの噂してた……くそぉ、改めてボコボコにしてやる!!」

 誰にも聞こえないほど小さく、「立花さん、見ててくれ……これに勝ったら王子様なんて呼ばせない……!」と呟いていた。

 

 ――余談だが、この覆面男は同じクラスの立花さんに恋をしている。

 だが肝心の立花さんは最近「空の王子様かっこいい」と騒いでおり、彼のフラストレーションは限界点に達していた。

 余談です。

 

 そんな裏事情など露知らず、知らぬ間に審判が立っていて、

「エイドロンバトル――レディー……ファイッッ!!」と開始された。

 

 ブザーと共に空気が震える。

 

「僕のほうが先に好きだったのにーーーッ!!」

 覆面が叫び、エレキャット《スズナ》が疾走する。爪先から火花を散らし、鋭い軌跡を描いて一直線に迫ってくる。

 

「訳のわからないことを……」

 僕は小さく呟き、片手を掲げる。

「ハクロ、飛ぶぞ!」

 

 背部ジェットが咆哮し、《ハクロ》は一気に上昇。舞い散る砂埃を吹き飛ばしながら、蒼穹を切り裂くように高度を稼いでいく。

 

 

 

 こうして、僕にとって初めての野良バトルが幕を開けた。

 

 




 機体名 :ELECT-CAT
 型式番号:EID-ECT01
 コア   :
 部位  :
 頭(エレキャット・ヘッド/電磁波放出ユニット)
 /右(エレクロウ:高周波爪ユニット)
 /左(エレクロウ:高周波爪ユニット)
 /脚(キャットランナー:高速跳躍脚部)
 /背(エレクトテイル:電磁波放出ユニット)

 主要数値:全高185cm/重量220kg/稼働45分/COOL30s/HEAT75%

 コアスキル :

 備考  :
 猫娘モチーフを徹底的に機体デザインに落とし込み、頭部の造形は耳や瞳までリアルに再現されている。
 爪による物理的な切り裂きと、背部ユニットから発する電磁波干渉によるコンボが得意。特に空戦型のようなセンサー依存の機体には強烈なカウンターとなる。
 ただし稼働時間は短く、連続使用で自壊のリスクがあるため熟練者向け。



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