ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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12話(挿絵有)

観客席からざわめきと歓声が渦を巻き、期待の熱気でフィールド全体が包まれる。

 

《スズナ》が四肢をしなやかに伸ばし、地面を蹴った瞬間、残像が走る。

「は、速い……!」

これまで同級生相手に余裕で戦ってきた僕でさえ、思わず息を呑む。

 

猫科特有のしなやかさを極限まで機械で再現したフレームは、まるで壁すらも足場にして舞うようだ。

 

「エレクトロ・ブレス!」

覆面の叫びと同時に、スズナの口から蒼白い電磁波が奔流のように放たれる。

バリバリッッッ――!

空気が焼けるように震え、観客の髪がふわりと逆立つ。フィールドの照明まで一瞬暗転し、青白い閃光が視界を切り裂いた。

 

「ッ……!」

僕は即座に指をスワイプし、ハクロのシステムに命令を飛ばす。

「スラスター逆噴射! 回避!」

 

白い残光を残して《ハクロ》が旋回する。だが、完全には逃げきれない。

 

警告音が鳴り響き、機体操作しているバングルに赤文字が走った。

【警告:右腕部センサー 一時機能停止】

 

(やっぱり……厄介だな!)

 

観客から「おおっ!」と驚きの声が上がる。

これまで圧倒的に勝ち続けてきた“空の王子様”が、初めてダメージを負った瞬間だった。

 

「どうした空の王子!空を飛んでビーム撃つだけが取り柄か!?」覆面の声が響く。

《スズナ》が着地の反動を利用し、鋭い爪を構えて跳びかかってくる。

 

「まだまだ――!」

僕は腕を振り下ろし、指令を送る。

「ハクロ、斜め下! 迎撃射撃!」

 

ビームガンの砲口が火を吹く。白光の弾丸が雨のように降り注ぎ、《スズナ》の爪を弾き飛ばした。だが次の瞬間、尾の電磁スパークが爆ぜ、ビームが空気中で拡散する。

 

「嘘だろ……!?」

(クソッ、あれじゃ実質ビームシールドだ!)

 

観客席からは「おもしれぇ!」と歓声が飛び交う。

どうやらこの覆面、ただの色物ではなく、上級生の熟練者らしい。

 

桃香がハラハラした様子で手を握りしめ、七海は冷静に「……さすが上級生ね。経験の機体も違う」と呟く。

 

 

 

僕は舌打ちを飲み込み、距離を取るよう命じる。

「ハクロ、上昇! 間合いを維持しろ!」

 

再び空へと舞い上がる《ハクロ》。だが追撃の《スズナ》は、壁を蹴りステップを繰り返しながら垂直に迫り上がってくる。爪が閃き、白銀の装甲を掠めた。

 

【警告:左脚部装甲 小破】

 

(速い……!地上機体のくせに、ここまで食いついてくるのか!)

 

覆面が笑う。

「猫を舐めるなよ! 空だろうと掴み取ってやる!」

 

「撃て――ビーム2連射!」

《ハクロ》が照準を定め、ビームを連射。

しかし《スズナ》は驚異的な跳躍力で壁を蹴り、爪でビームを逸らすように動いた。

光と火花が乱れ飛び、観客席から悲鳴混じりの歓声が上がる。

 

(……完全に翻弄されてる!?)

 

視界が揺れ、バングルに走るノイズが遅延を生む。

その一瞬の遅れを狙い澄ましたように、《スズナ》の爪が迫る。

「クソッ――!」

ぎりぎりで背部ジェットを噴射し、急上昇で逃れる。

 

覆面は得意げに吠える。

「俺のスズナは訓練済みだ!ただのペットだと思ったか!?」

 

だがその軌跡を読んでいたかのように、エレキャットは壁を蹴って真上へ追いすがる。

 

爪が迫る。ギリギリで回避し、背部ジェットを噴射――急上昇で距離を取る。

だがその軌跡を読んでいたかのように《スズナ》が壁を蹴り、電磁波を撒き散らしながら真上へ追いすがる。

 

「だったら――!」

僕も負けじと声を張る。

「ハクロ、急降下! 旋回からのブーストラッシュ!」

 

白と黒の翼がたたまれ、一気に急降下する《ハクロ》。

スラスターの爆音が轟き、観客席のシャツを揺らす。

 

「そこだぁっ!!」

覆面が叫ぶ。《スズナ》の口から再び電磁波が奔り、すれ違いざまに《ハクロ》をかすめる。

システムにエラーが走り、モニターの一部が砂嵐になる。

 

 

【警告:冷却ライン過負荷/コア温度上昇】

汗が額を伝う。

(まずい……このままじゃ押し切られる!)

 

 

 

――観客席のざわめきは、もはや悲鳴に近い熱狂へと変わっていた。

 

「空の王子、やばいって!」「押されてるぞ……!」

「まぁ結局は1年だったてことか、」

その不安と期待の入り混じった声が、さらにプレッシャーとなって胸にのしかかる。

 

だが、逃げるつもりはなかった。

 

僕は奥歯を噛みしめ、指先で腕輪をスワイプする。

画面に走る赤い警告が視界を埋め尽くしていたが、それでも僕は躊躇わなかった。

 

「――まだ温存しときたかったんだけどな。《ハクロ》……オーバークール!」

 

〈オーバークール開始〉

低い電子音と共に、機体の外装から白煙が立ち昇る。過熱した冷却ラインを強制的にリセットし、システムが一斉に再起動。赤文字のアラートが次々に消えていき、白銀の機体が再び羽ばたく。

 

 

「な、なんだとっ!?」

覆面が驚愕の声を上げ、観客席もどよめく。

「回復した!?」「そんなスキルあったのかよ!」

 

僕は唇の端をわずかに吊り上げた。

「悪いけど――昨日から“今日を楽しみにして寝坊しかけた子”がいるんだよ。ここで負けるわけにはいかないんだよ!」

 

 

腕輪をさらに操作し、二つ目のコアスキルを解放する。

「《ハクロ》――スプレッドレイン!」

 

白光を帯びた機体が旋回し、翼を大きく広げた。

その軌跡から放たれるのは、細かく分散しながらも威力を失わない無数のビーム。まるで光の豪雨が戦場を覆い尽くすかのようだった。

 

観客席が総立ちになった。

「やべぇ!広範囲攻撃!?」「フィールド全体が光に包まれてる!」

「王子の新スキルだ――!!」

 

「くそ、スズナ! 尾で受けろ、拡散しろ!」

覆面の叫びに応じ、エレキャットがスパークを纏った尾を振り回す。

だが――今回は防ぎ切れなかった。

 

「避けろっ! 避けろってばあああ!!」

悲鳴にも似た声を上げるが、尾がついに限界を迎え、火花を散らしながら煙を噴き出す。

《スズナ》の動きが鈍り、膝をついた瞬間――。

 

「今だ、《ハクロ》! 突き刺せ!」

 

急降下。白銀の軌跡が一直線に走り、右手のエストックが閃光を描いた。

ガギィンッッ――!

《スズナ》の頭部装甲を正確に貫き、その巨体をフィールドに叩きつける。

 

轟音と共に砂煙が舞い上がる。観客席からは一拍の沈黙――そして爆発のような歓声。

 

「勝者――白銀 白夜!」

 

審判の声が響き渡った瞬間、観客席が大きく揺れるほどの熱狂に包まれた。

「うおおおお! 王子やっぱり強ぇ!」「ギリギリだったけど最高だ!」

「空の王子サイコー!!」

 

立ち上がって叫ぶ生徒、生徒手帳を構えて撮影する者、口笛を鳴らす者。熱気と歓声がフィールドを揺らす。

 

僕は大きく息を吐き、バングルを操作して《ハクロ》を収納した。

心臓はドクドクとうるさく鳴り、全身がまだ戦場の熱に包まれている。

 

フィールドの隅では、覆面が膝をつきながら小さく呟いていた。

「立花さん……僕のほうが……」

そのまま仲間に肩を抱えられ、よろよろと退場していく。

 

僕は頭を掻きながら小声でぼやいた。

(……いや、誰だよ。立花さん)

 

だがその胸の奥は、不思議な高揚感で燃え続けていた。

 

 

観客席の最前列では、桃香が「やったぁ!」と声を上げ、七海と勢いよくハイタッチを交わしていた。

桃香の頬は興奮で紅潮し、七海は珍しく表情を崩して笑っている。

横でテッペイが「うおお、しびれたぁ!」と叫び、両手を天に突き上げていた。

 

僕は照れくさく片手を挙げて応える。

心の奥がじんわりと熱くなる。

勝利の余韻と、仲間たちの声援が、胸いっぱいに広がっていた。

(……悪くないな。これが、本当のバトルか)

 

 

 

 

 

喧騒がまだ収まらないフィールド。拍手や歓声が続くなか、審判のダンディーなおじさんが近づいてきた。

 

「ナイスエイドロンファイト!」

白い歯を光らせながらグッとサムズアップ。腕まくりしたスーツの袖口から覗く分厚い前腕、やけに似合う髭。どこからどう見てもバトルより筋トレが本職に見える。

 

「ありがとうございます」僕が会釈すると、「生徒手帳を出したまえ」と促される。

 

言われるがまま端末を差し出すと、審判が自分の端末を重ね――。

 

テレテッテッテー♪

 

……どこかで聞いたことある妙に間抜けなレベルアップ音が鳴った。

 

「ん?」僕が訝しげに眉をひそめると、審判はハッとした表情を浮かべた。

「おや!君、もしかして野良バトルは初めてかい?」

 

「はい」素直に答える。

 

すると、審判はぐっと胸を張り――。

「説明しようッッ!!」

ズバァーン!と大げさにポーズを決めた。観客席から「出たー!ナイスジャッジマンだ!」と笑い混じりの声が飛ぶ。どうやらこの人、常連の名物らしい。

 

「野良バトルに勝つとBPが手に入る! ただし、必ず公認フィールド内で行うこと! 校舎裏や道端でやるのは絶対禁止だッ!」

 

「さらに!野良バトルの戦績は生徒手帳に自動的に記録され、成績に反映される! 実力が認められれば特別オファーが舞い込むこともあるぞ!」

 

「最後に! さきほど君の生徒手帳から鳴ったその音こそ――ファイトマネーとしてBPが振り込まれた合図!

勝者の証であり、努力が実った瞬間の祝福のファンファーレなのだ!」

 

クルリと一回転して片膝をつき、ドヤ顔で決めポーズ。

 

会場が拍手と笑い声でどよめく。桃香は手を口に当てて「なんか……すごい人だね」と目を丸くし、七海は腕を組んで「……うるさい」と冷静に切り捨てていた。テッペイだけが「ナイスジャッジマン!最高ッス!」と大興奮で親指を立てている。

 

僕は苦笑しつつ、「なるほど、ありがとうございます」と頭を下げた。

 

審判は満足げに頷き、「気にすることはないさ、少年! またいいバトルを見せてくれ! これからも――ナイスジャッジマンとの約束だッ!」と叫ぶと、最後は「とぉお!」と飛び跳ねながらどこかへ走り去っていった。

 

「ナイスジャッジマン……うん、すごいな」

遠ざかっていく背中を見送りながら、僕は思わず深い溜息をついた。

 

 

 




機体名 :シャイニング
型式番号:EID-SHN-07


部位  :
頭(閃光弾射出ユニット“フラッシュバンアイ”)
/右(ビームガン“シャインブラスターR”)
/左(ビームガン“シャインブラスターL”)
/脚(ホバー推進ユニット“グライドレッグ”)
/背(羽根型冷却ファン“ウィングラジエーター”)

主要数値:
全高  :188cm
重量  :165kg
稼働  :40分(高負荷時は15分前後)
COOL  :18s(ビームガン使用時の強制冷却時間)
HEAT  :上限120%(超過でシステムダウンの危険あり)

コアスキル :〈シャイニング・オーバードライブ〉
ホバー脚と冷却ファンを同時稼働させ、急加速と連射性能を引き出す。短時間だけ圧倒的な火力を実現するが、使用後は強制的にCOOLが入り長時間の再稼働が困難。

備考  :
両手ビームガンとホバー脚による「地上高速制圧型」として人気を博した機体。だが空戦型の台頭により市場価値は下落。今では学園の中古機市場で見かけることが多い。
ただし設計精度の高さから今もコアパーツの需要は根強く、《ハクロ》の左腕も本機からの流用品である。



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