ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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13話(挿絵有)

フィールドの自動ドアを抜けると、観客の熱気がふと遠ざかり、モールの空気がひんやりと頬を撫でた。蛍光灯の反射と人混みの熱でまとわりついていた汗が一瞬引くのを感じる。

 

待ち構えていた3人は既に小走りでこちらへ向かってきた。桃香は顔を輝かせ、七海は落ち着いた微笑みを浮かべ、テッペイは例によって両腕を大きく振っている。

 

 

「白夜くん!すっごかった!最後の突撃、鳥肌立ったよ!」

桃香が両手を振り回しながら目を輝かせて叫ぶ。頬が紅潮していて、無邪気な興奮が全身から溢れている。

 

「やっぱり“空の王子”って呼ばれるだけあるわね。冷静さと勇気のバランスが絶妙」

七海は胸の前で手を合せて冷静に言うが、口元に浮かぶ小さな笑みが正直な感想を物語っていた。クールな顔つきのななみが手を合わせている姿は、どこか可愛らしく見える。

 

「いやぁーっ!痺れた!!俺、横で応援してただけなのに心臓バクバクしたわ!」

テッペイはまだ試合の余韻で震えているように両手を胸に当てている。作業着姿の時とは別人のテンションだ。

 

みんな口々に褒めちぎるので、内心は居心地が悪いが、嬉しくてしかたない。苦笑いを浮かべつつ、僕は額の汗を袖で拭った。

「いやー、なんか大変だったよ。本当に」

言葉を絞り出すと、テッペイが思い出したように訊く。現実的で素早いツッコミ、さすが我がルームメイト。

 

「そんでよ、結局いくら入ったんだ?BP」

 

あ、そうか。ナイスジャッジマンの派手なパフォーマンスで一瞬忘れていた。慌てて生徒手帳を開くと、画面に新着通知が光っている。

 

【ファイトマネー+30000BP】

 

一瞬、文字が目の前で跳ねるように見えた。胸の奥がじん、と高鳴る。

「――3万、だって」声に出して確認すると、三人の反応がシンクロする。

 

「「「3万っ?!」」」

三人の声がぴったり揃って高く弾け、通行人が思わず振り返るほどのハーモニーになる。さっきまでの緊張感が、にわかに笑いと興奮へと変わった。

 

テッペイが肩を掴んで嬉しそうに揺さぶる。

「お前それ、1日バイトするよりいいじゃねぇか!? 最高じゃん!」

 

桃香は目をキラッとさせてこちらを見る。

「すごいね!頑張ってたもんね!」

 

七海は片眉を上げて思案顔。

「上級生相手だったのが影響してるのかしら……?」

 

「ななちゃん鋭いね!」桃香が拍手。

「ただの推測。あってるか分からないよ」と七海は苦笑して肩をすくめる。

 

「俺だと絶対勝てないだろうなー」とテッペイ。まだ肩に残る敗戦の香りを自虐で飛ばす。

「うん、私たちもよ」七海が頷く。二人の表情が素直で微笑ましい。

 

桃香がぽんと手を打つように言う。

「やっぱり凄いねぇ、白夜くん」その声には甘い響きがある。

 

 

僕は照れ隠しに両手を広げる。

「そんなに褒めないでよ。折角だからこのポイントでご飯でも食べよっか?」

 

 

その言葉に桃香が文字通り跳び上がった。

「やったー!」と手を上げ、七海も珍しくほほえんで小さくハイタッチで返す。

桃香が白夜君もいぇーい!というので僕も片手を上げハイタッチに加わる。

3人でいぇーい!とハイタッチをしていると、テッペイが「お前ら仲良すぎ!俺もいれろー!」と割り込むと、自然発生的に4人で盛大なハイタッチ大会になった。掌が重なり合うたびに笑い声が弾ける。

 

 

 

「よーし!じゃあ王子の財布を空にするまで食ってやろうぜ!」

「加減はしろよ」肩をすくめて答える。

 

 

 

 

「じゃあ、どこに行こっか?」七海が周囲を見回すと、エイドモール特有の看板群が視界に入る。パーツショップ、カフェ、フードコート、そしてガジェット雑貨の屋台まで、多彩な店が並んでいる。

 

「ここは一応フードコートの“ギアダイナー”が無難かな。安くて回転早いし、色々つまめる」テッペイは昨日から商業区を調べてたみたいで提案する。

 

「ケーキ屋さんも気になる!」桃香が目を輝かせて叫ぶ。

ケーキみたいな嗜好品はなかなか手が出せないBPだから、余計に気になってるんだろう。

「甘いものは魅力的よね」と七海も軽く同意する。

 

「俺、王道バーガーで行くよ。肉々しくて熱量がほしい」テッペイが胸を叩く。

 

 

僕は肩をすくめながら言った。

「じゃあギアダイナーにしよう。天ぷら蕎麦の気分だけど、今日は皆でシェアしやすいものにするか」

 

意外にも桃香が「うんうん!天ぷら蕎麦いいね!」と目を輝かせ、

七海が真顔で「蕎麦の後にケーキはどうなの?」と訊く。

そのやり取りに全員が顔を見合わせて笑った。

 

 

店先のディスプレイにはロボ部品のミニチュアが並んでいる。モールの天井に吊るされた広告パネルには「エイドロンパーツ・セール」「週末カップ戦エントリー受付中」などの文字が流れ、活気が満ちていた。

 

ギアダイナーの前に着くと、カウンター担当の学生バイトがにこやかに注文を受け付けている。カフェスペースは程よく埋まっているが、四人が座れるテーブルが一つだけ空いているのをテッペイが即座に確保した。

 

「よっしゃ、座ったぞ」テッペイが胸を張る。注文は分担して決めようと自然に役割分担になる。桃香はスイーツ担当、七海はドリンクとサラダ、テッペイは肉系、僕は主食系でバランスを取ることにした。

 

オーダーを済ませてしばらくすると、料理が次々とトレーに並んでくる。熱々のハンバーガー、香ばしい天ぷら蕎麦、サラダボウルに鮮やかなジュース、そして小ぶりのチーズケーキが一皿――桃香の目がハートになっている。

「ほんとに蕎麦にしたのね」七海が呟く。

「そばの口だったんだよ」僕は苦笑で返す。

 

 

「いただきます!」四人で声を合わせ、一斉に食べ始める。食べ物が運ぶ幸福感で会話は弾む。

テッペイが思い出し笑いをしながら「白夜の連続ビーム、マジでヤバかったよ」と滔々と語る。桃香は目を輝かせながら「白夜くん、どうやってあれ思いついたの?」と純粋に訊いてくる。

 

「コアスキルだよ。コアのレベルが上がるとスキルが生まれるって話、聞いただろ?」

「やっぱりそうなのね。パーツ性能じゃ説明できない威力だった」と七海が腕を組んで考えるように言う。

桃香は「私もいつか出来るのかな?」と期待混じりに呟く。

 

 

「コア次第じゃないのかな?コアと機体の方向性が合っててコアのレベルが上がっていけばスキルが生まれるって父さんがいってたよ」と答える。

 

「まぁそうだよなー、俺がビームの雨打ててもしょうがないしな」とテッペイが笑って答える。

 

「技術系は技術系のスキルがうまれるんだろ?」

「多分な!」

 

桃香は頬を膨らませて「でもかっこよかったんだもん」と言いながら、待ちきれないとばかりにケーキをパクリ。途端に「んーーーっ!」と身をくねらせるほど幸せそうな声を上げた。

 

その瞬間、七海が涼しい顔で爆弾を投げる。

「桃香はケーキより白夜君のバトル中の言葉にうっとりしてたみたいだけど?」

 

「あ?なんか白夜いってたっけ?」とテッペイがポカンと聞き返す。

 

七海はわざとらしいキメ顔を作って答える。

「昨日から“今日を楽しみにして寝坊しかけた子”がいるんだ!ここで負けるわけにはいかないんだよ!って」

 

「あれは……勢いというか!」僕が慌てて反論しようと桃香を見ると、

桃香が白い肌を真っ赤に染めて俯いている。耳まで赤く染まり、指でフォークをくるくる回している。

 

僕は「うん」と短く答える。それだけで充分だった。桃香がそっと顔を上げ、目が合った瞬間、周りの喧騒が遠のいた気がした。周りにも人がいるのになぜか今だけは二人だけの時間が流れているように感じたんだ。

 

 

 

ふと隣の視線に気づくテッペイのニヤニヤした表情が目に入る。テッペイがニヤニヤしながら肘で僕を小突き、「俺たちもいるんだけど?」と囁く。

向かいの七海も腕を組み、じっと桃香をからかうように見ている。

 

僕と桃香は声にならない音を同時に発して否定しようとするが言葉が続かない。

まぁなんというか図星だったからだ。

 

 

 

 

 

 

モールの賑わいの中、僕と桃香の否定が空回りして余韻を残したまま、昼食後の会話は自然と「この後どうする?」に移った。

 

七海が天井に吊るされた広告パネルを指差す。「エイドロンパーツ・セール」――煌びやかな文字が光を反射し、人波の上に踊っている。

 

「やっぱり、せっかくだし見ていかない?」

七海の提案に、桃香が大きく頷いた。「行きたい!私も新しいパーツに触ってみたいな」

テッペイもすぐさま「おうよ!」と胸を張る。技術者気質の彼は、むしろ待ち望んでいた流れだろう。

 

僕は頷きながら、歩き出す三人に合わせた。

 

 

 

歩きながら機体の話題になる。

「そういえば、二人はどんな機体を使ってるの?」僕が尋ねると、桃香が少し恥ずかしそうに口を開いた。

 

「私は“シャイニングシリーズ”だよ。入学祝いで買ってもらったの」

僕は思わず目を見張った。「ああ、僕のハクロの左腕と同じ系統か。……だからさっきスキルのこと気にしてたんだね?」

桃香は「うん!」と嬉しそうに頷き、両手を胸の前で合わせた。

 

七海も横で歩きながら、落ち着いた声で告げる。

「私は“セイレーンシリーズ”。音波とスプレッドガンで広範囲を制圧するタイプ。桃香と同じで、わたしも入学祝いね」

彼女の声は凛としていたが、その背筋の伸び方や、誇らしげな眼差しにほんのり温かみが宿っていた。

 

(なるほど……。どちらも中間モデルか。最新モデルよりは性能が落ちるけど、将来的に換装すれば化ける機体だな)

 

 

やがて店に着くと、ガラス張りのショーケース越しにずらりと並ぶ最新パーツに、僕らは一斉に息を呑んだ。

制服姿の学生たちがあちこちでパーツを抱え、あるいはカタログを手に議論している。

陳列台には、整然と並ぶパーツ達。煌々としたライトに照らされ、まるで宝石のように輝いている。

 

「すご……!」桃香の瞳はキラキラと輝き、七海も思わず立ち止まって目を細める。

僕の視線はすぐに一角に釘付けになった。

一方テッペイはセール品コーナーに突進しており、工具片手に「これ流用できんじゃね?」とブツブツ夢中だ。

 

 

「あっ、千成航空機エンジン社の《ファルケン》まである……」

思わず声が漏れる。エイドロン界隈で初の空戦モデルの父さんの会社のだ。

 

「やっぱり“エイコー”は違うな。最新機体をここまで揃えるなんて……」僕が呟くと、背後で桃香が声を上げた。

「ねぇねぇ!これって白夜くんが使ってるジェットパックじゃない?」

 

ショーケースの上に鎮座するのは、僕の《ハクロ》にも搭載されている高性能スラスタージェットパック。

 

「そうだよ。でも値段は……」表示された数字を見て肩を竦める。

「――200000BP。とてもじゃないけど、今の一年生じゃ手が出ない」

 

七海が腕を組み、冷静に頷く。「そうね。二、三年生でBPに余裕がある人なら既に持っててもおかしくないけど」

「空の王子様が増えちゃうよ!白夜君!」桃香がどうしようという雰囲気で言う。

 

僕は苦笑いを浮かべた。

「王子様とかはどうでもいいよ。ただ……空中制御は難しいんだ。慣れてないと逆に墜落する」

 

七海も「それもそうかも、空中での制御なんて想像できないわね」と感心しつつ、桃香の方に視線を向ける。

「そういえば、バトル中の白夜くんって……すごく指を動かしてたわよね」

 

「ああ、あれ?条件入力だよ。瞬間的に軌道を計算してコマンド打ち込むから、いつも指攣りそうなんだ」笑いながら答えると、桃香は尊敬の眼差しを向けてきた

 

 

七海がクスクスと笑いながら言う。

「つまり、桃香はその指さばきをずっと見てたってことね」

 

「も、もちろんだよ!」桃香は一瞬喜びを見せるも、すぐに「はっ!」と気づき、耳まで真っ赤になった。

「ち、違うの!見惚れてたとか、そんなんじゃなくて!」

 

七海は「かわいいわね」と囁きながら、桃香の肩に軽くもたれる。桃香はさらに赤くなって「やめてよー!」と抗議するが、笑顔が隠しきれていない。

 

その光景に僕は思わず見とれてしまい――七海の視線が僕に流れた。

「白夜くんも、こっちに寄ってみる?」わざとからかうように誘ってくる。

「桃香、柔らかいわよ?」

 

僕は慌てて肩を竦める。「いやいや、そこに飛び込む勇気はないかな」

 

 

「残念だったわね、桃香」七海がさらりと告げる。

「もーっ!」桃香は両頬をぷくっと膨らませ、まるで子猫みたいに抗議した。

 

僕と七海は同時に目を合わせて笑った。

 

七海がふと真顔に戻り、軽く顎に手を当てて僕を見据える。

「……やっぱり白夜くんって、女の子慣れしてるよね」

 

「父さんの影響かも。父さん、すごくスマートだったんだ。小さい頃から母さん相手に仕草を真似してたから」

 

「なるほど……」七海は納得したように頷き、意味ありげに笑う。

「やっぱり、あの噂も本当みたいね」

 

僕は瞬きをした。

(……噂?)

 

横で桃香が素早く問いかける。

「噂って、何のこと?」

 

七海の微笑みが、ほんの少しだけ深まった。

 

 




機体名 :セイレーン
型式番号:EID-SRN03
コア   :

部位  :
頭(ソニックヘッド/高感度音波センサー)
/右(スプレッドガンユニット)
/左(サウンドブレード)
/脚(アクアスラスターレッグ/水陸両用ブースト)
/背(レゾナンスウィング/広域ジャマー兼推進補助)

主要数値:全高 192cm/重量 310kg/稼働 72分/COOL 9s/HEAT 62%

コアスキル :

備考  :音波・幻惑を主体とした広域制圧型。直接火力は低めだが乱戦や複数戦で真価を発揮する。七海の冷静沈着な操縦スタイルと好相性。


【挿絵表示】


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