ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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22話

 霧島先生がでは朝のホームルームは終わる残りは自習だと教室を出ていこうとする。

 しかし副担任の田島先生が「ちょっ、ちょっと!霧島先生、いろいろ説明が抜けてますよー!」と慌てて呼び止めた。

 

 霧島先生は嫌そうな顔をして、「では田島先生お願いします」とだけ言い残し、颯爽と教室を出ていく。

 

(……いや、教師としてどうなんだ霧島女史。投げっぱなしすぎるだろ)

 思わず心の中でツッコミを入れる。

 

 

 頭を掻きながら、田島先生が笑った。

「いやー霧島先生は相変わらずせっかちだなー。あはは!」

 その親しみやすいおじさんっぽい雰囲気に、教室が一気に和む。

 

 僕は数学が得意なこともあり割と一番好きな先生かもしれない。あ、一番はネジかわよ先生だったわ。あの人の授業は熱が出ても絶対に行く。これから暑くなるし。夏場もツナギなのかな?

 

 おっと話がずれてしまった。

 

 

 

「はい、じゃあ“BPの配点”をわかりやすく説明するよ」

 田島先生がタブレットを操作すると、スクリーンに映し出されたのは――猫の画像だった。

 

「先生!猫とBP関係あるんですかー!」

「うちの猫? かわいー!」

 クラスメイトから一斉にツッコミと笑いが飛ぶ。

 

「あははー、急だったから間違えちゃったよー」

 掴みはバッチリだよ!!田島先生、さすがだな。

 

 

 こっちこっちと見せたかった画面を映す。

 映し直された画面には、BP配点の表が並んでいた。

 

 

「まず座学だね。300位は一律10,000BP。ここが最低点」

 

 1) 座学BP(学年順位で決まる)

 

 300位は 10,000BP

 

 100〜299位は、300位から順位が1つ上がるごとに +500BP

 例)250位 = 10,000 + (300−250)×500 = 35,000BP

  120位 = 10,000 + (300−120)×500 = 100,000BP

  100位 = 10,000 + (300−100)×500 = 110,000BP

 

 99位以上は、100位から順位が1つ上がるごとに +1,000BP

 例)99位 = 110,000 + (100−99)×1,000 = 111,000BP

  88位 = 110,000 + (100−88)×1,000 = 122,000BP

  3位 = 110,000 + (100−3)×1,000 = 207,000BP

  1位 = 110,000 + 99,000 = 209,000BP

 

 科目首位ボーナス:各科目の1位ごとに +3,000BP

 例)数学1位なら +3,000BP(複数科目1位ならそのぶん加算)

 

 

「要は“300位=1万”を起点に、100位までは500ずつ刻み、99位からは1,000ずつ刻みで上がってく仕組みね」

 

 教室がどよめいた。

「に、20万!?」「装甲一枚買えるじゃん!」

 

 僕も思わず息をのむ。なるほど、上位の価値は数字で証明されるわけだ。

 

 

「次にリーグ戦BP」

 田島先生がスライドを送る。

 

 2) リーグ戦BP(試合の結果で決まる)

 

 勝利:10,000BP 引き分け:5,000BP 敗北:1,000BP

 

 試合数分を合計するだけ

 

 18勝0分0敗 → 18×10,000 = 180,000BP

 

 16勝0分2敗 → 16×10,000 + 2×1,000 = 162,000BP

 

 12勝2分4敗 → 12×10,000 + 2×5,000 + 4×1,000

  = 120,000 + 10,000 + 4,000 = 134,000BP

 

 

「うわ、勝率でこんなに変わるのか……」

「そりゃ上位は化け物だわ」

 

 僕は心の中で計算する。(18戦無敗で18万……よし、ここは完璧だ)

 

 

「こんな感じだね。来月からは最低でも20戦はあるから全部負けても2万BPだよ。そして」と言って3枚目のスライドを映す。

 

 3) 最終支給BP

 

 座学BP(+科目首位ボーナス)に、リーグ戦BPを足す

 例)総合3位 & 数学首位、リーグ18勝なら

 座学:207,000 + 3,000 = 210,000BP

 リーグ:180,000BP

 合計:390,000BP

(※うちのクラスの某“空の王子”のイメージね)

 

「……って、これ完全に白銀くんのことじゃん!」

「うちの空の王子だ~!」

 

「僕の情報!!」思わず叫んでしまった。

 

「どうせすぐバレると思って、ごめんね、白銀くん」

 田島先生がにやっと笑い、教室が爆笑に包まれる。

 

「いや、いいですけど……」許すしかないじゃないですか!!

 

 

 田島先生は最後にタブレットを閉じて、にかっと笑った。

「――以上!“勉強でもバトルでも稼げる”仕組み。つまりどっちも手を抜けないってことだな!期末まで走り抜けよう、がんばってこー!」

 

「おーっ!」

 自然と教室から声が上がった。

 

(……いや、こういう説明を最初からやってくれる先生、好きだわ。ネジかわよ先生の次くらいに。推し教師ランキング2位確定だな)

 

 

 *

 

 

 ホームルームが終わると、当然のようにBPの話題一色になった。

 僕は「はくやー!」と呼ばれ、クラスでも陽キャが揃うグループに引っ張られる。羨ましがりの視線があちこちから突き刺さる。

 

 

「俺、合わせて20万くらいだわ」

「俺も!」

「え、うそ?!じゃあ私こん中で一番下?!」

 

「はくやー!おごってくれー!」

「僕もパーツ買いたいのあるから無理だって」

 

「くぅぅー!俺のジェットパック計画が……第二の空の王子様になりたかったのに!」

「いや、あんたじゃ無理」

「王子様って顔じゃないだろ」

 

 わいわい騒がしく話していると――

 

 

「あー、はくやの彼女に立候補しておけばよかったわー」

 と声を上げたのは、僕の中で“ギャル子”と呼んでいる黒崎莉音だ。

 

(ほんとは「りおちって呼んで」って言われてるけど、恥ずかしすぎて普通に莉音って呼んでる)

 

「りおちと王子って、解釈違いすぎてダメー!」

 横からツッコミを入れるのは高城。

 

「確かにギャルと王子は違うわ!」

 大きな声で笑うのはクラスのムードメーカー、大崎だ。

 

「えー、ぴったりじゃん、うちら」

 莉音が気怠げに僕の肩へ腕を回してきた。

(ちょっと待て、急にくっつかれるとドキドキしちゃうんですけど!?)

 

 

「はくやはあーしのこと好きだもんね」

 耳元で囁かれて、思わず心臓が跳ねる。

 

「ええい、莉音やめろ!びっくりするだろ」

 慌てて肩を外して脱出する。

 危ない、もう少しで好きになりそうだったじゃないか……!

 

 

「あーん、ふられたー!」

 莉音は大げさに崩れ落ちると、そのまま高城に抱きついた。

 

「……はくや、おっぱい触ったか?」

 ゲスなことを小声で訊いてきたのは、見た目だけは爽やかな好青年・早川。

 

「触ってないよ、あほ」

 小声で即ツッコむ。

 

「いやー、俺の見立てでは結構ある方だと思うんだよね」

「いや、聞いてないから」

 

 そんなくだらないやり取りをしていると、チャイムが鳴った。

 テストが終わったばっかりだというのに、もう次の授業が始まる。

 

「じゃ、また後で!」と口々に言いながら、それぞれが席に戻っていく。

 いつもの日常が戻ってきたようだ。

 

 

 *

 

 

 午後の物理の授業も、テスト明けだというのに手加減なしの速度で進んでいった。

(……また復習しないとついていけなくなるな)

 そんなことを考えながらノートを取っていると、午前の授業が終わる。

 

 昼飯に行こうかと考えていたところで、隣のこの江がおずおずと声をかけてきた。

 

「白夜君、すごいね」

 憧れの混じる瞳は、真っすぐに僕を見つめている。

 

(うん、この江はやっぱりいい子だな! 娘にしたいくらいだ!)

 

「ありがと、この江。この江はどうだったんだ?」

 

「わ、わたしも……12位で」

 はにかみながら答える声に、ほんの少しの自信と誇らしさが混じっていた。

 

「おお、すごいじゃん。頑張ってたもんな」

 

「……白夜君と一緒に勉強できたからかも」

 少し頬を染め、声を小さくして告げる。

 

「いや、それはこの江が努力した結果だよ。また頑張っていこう」

 僕が笑いかけると、

 

「うん!」

 ぱっと弾むような笑顔が咲いた。

 

 その瞬間――

「はくやー! 飯いこうぜー!」

 大崎が後ろから元気いっぱいに声を張り上げた。

 

「おう」軽く返事をして、「またね」とこの江と貴志に声をかけてから、陽キャグループへ合流する。

 

 大崎元気、早川礼人、高城みゆ、黒崎莉音。

 この4人は、僕が貴志やこの江以外でよく話すメンバーだ。

 クラスでも目立つ存在で、周囲からは自然と“中心グループ”だと認識されている。

 

 前世だったら絶対に縁がなかったタイプだけど――今はエイドロンという共通の話題がある。

 陰キャだった過去なんて、関係なくなるものだ。

 

「りおち何位だった?」と高城が訊く。

 

「あーしは100位ぴったり! みゆは?」

 

「勝ったー! あたし98位!」

 得意げにVサインを作る高城。

 

「え?!おまえら頭良いの?!」

 大崎が大げさにのけぞる。

 

 

「ここ難関校だからね。バカは少ないよ。見た目がどうであれ」

 早川がさらっと余計な一言を足す。

 

「見た目がどうであれってどういうことだー!」

 莉音が冗談めかして抗議する。

 

「どういうことだー!」

 高城も真似して頬をふくらませる。

 

「だって、なぁ白夜?」

 早川がニヤリとこちらへ話を振ってきた。

 

(おい、なんで俺にキラーパス投げるんだよ!!)

 

 2人の視線が突き刺さる。

 

「え、えーと……莉音は黒ギャルで、高城は白ギャル?」

 

「ちょっと! あたしはギャルじゃないから!」

 高城がテーブルを叩く勢いで抗議する。

 

「え、違うの?!」思わず驚きの声が漏れる。

 

「まー、あーしは黒ギャルだけどね」

 莉音は肩をすくめて笑いながら認める。

 

「どっちでもいいだろ。混む前に食堂いくぞー!」

 大崎が会話を切り上げるように前へ進み出す。

 

 わいわい言い合いながら、僕らはぞろぞろと食堂へ向かっていった。

 

 

 

 *

 

 

 

 昼の食堂は、今日も相変わらずの喧噪に包まれていた。

 トレーにカツカレーを載せて席につくと、自然と仲間たちの話題はBPの使い道やこれからの戦い方に移っていく。

 

「で、白夜はどうすんの?ポイントめっちゃ稼いだんだろ」

 大崎が口いっぱいに唐揚げを頬張りながら訊いてきた。

 

「うん。とりあえず……土日のカップ戦のどれかに出ようかと思ってる」

 スプーンを置いて答えると、テーブルが一瞬静まり返る。

 

「え!?カップ戦って……相手は2、3年の上級生ばっかりだろ?」

 

 

「やばくない?だってリーグの比じゃないよ!」

 高城が目を丸くする。

 

「確かに。俺も1年で出てるやつ他に聞いたことないな」

 早川も額に手を当てて首を振る。

 

 けれど僕は肩を竦めて言った。

「負けてもいいんだよ。大事なのは“自分に何が足りないか”を知ることだから。強化の方針を見つけられるなら十分だと思ってさ」

 

「……そっか」

 莉音がポテトをつまみながら、感心したように小さく頷く。

「はくやって、王子とか言われてるわりに意外と泥くさい考え方するんだね」

 

「まぁ、かっこつけてるだけじゃ勝てないしな」苦笑して返す。

 

「おっしゃ、あたしらもがんばんないとなー!」

 高城が拳を握って勢いよく叫ぶ。

 

「だな!学年3位で全勝の“空の王子”に置いてかれないようにしねーと!」

 大崎が声を張り上げると、周りの何人かが「おー!」と便乗した。

 

「まっ俺たちも白夜みたいにモテたいしね!な、大崎」

 早川が茶化すように言うと、

 

「そうだな!やっぱバトルで強いってのはアドだろ?」

 

 

 

「BPもいっぱいあって、奢ってくれるなら最高じゃん?」

 高城が冗談ぽく口を尖らせ、

「ほら、りおちだってそう思うでしょ?」と振る。

 

「まぁ……はくやがあーしに貢いでくれるなら悪くないかも?」

 莉音が頬杖をつき、挑発するような笑みを浮かべる。

 

「ねーよ!」即座にツッコむと、周囲はどっと笑いに包まれた。

 

 

 

気がつけば、テーブル全体がちょっとした作戦会議のような熱気に満ちていた。

 食堂のざわめきの中で、笑い声と「次はこうしよう」「俺も挑戦してみるか」なんて前向きな声が混ざり合う。

 

 そのとき――。

 食堂の入り口を通り過ぎる影が、ふとこちらを振り返った。

 

(……この江?)

 

 トレーを抱えたまま足を止めかけた彼女の視線が、一瞬だけ僕に重なる。

 けれどすぐに目を逸らし、俯いたまま早足で別の席へ向かっていった。

 

「はくやー、聞いてんのか?」

 大崎の声に呼ばれ、慌ててそちらへ顔を戻す。

 

「お、おう。悪い、考えごと」

 苦笑いでごまかすと、またすぐに会話の輪へ引き戻される。

 

(……この江、さっきのは気のせいか?)

 胸の奥に微かなひっかかりを残しつつも、賑やかな空気に流されるように、僕はスプーンを握り直した。

 

 

 

 テストが終わった今――次の舞台は、カップ戦だ。

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