ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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23話

 食事を終え、午後のリーグ戦の1戦も無事勝利で納める。これで19戦全勝。

 

 シャワーを浴びたばかりでまだ少し火照った体をベッドに預け、生徒手帳の画面をスクロールしていく。

 カップ戦の一覧には、想像以上に多彩な大会が並んでいた。

 

 学園主催の公式カップから、学生有志が開く小規模トーナメントまで。

 優勝商品もさまざまで、最新型の補助スラスターや高性能の照準デバイス、あるいはレアなデカールや限定カラー装甲など、パーツ好きなら誰もが目を輝かせそうな品揃えだ。

(なるほど……ただのBP稼ぎじゃなくて、こういう副賞もあるのか。そりゃ人気出るわけだ)

 

 そんなふうに悩んでいると、隣の机から声が飛んできた。

 

「なに悩んでんだ?もしかして明日も桃香とデートか?!」

 ペンを置いてストレッチをしていたテッペイが、にやにやしながらこちらを覗いてくる。

 

「違うって。それに前のもデートじゃねぇし」

 すぐさま否定するが、テッペイのニヤけ顔は止まらない。

 

「じゃあなんで生徒手帳見て唸ってんだ?……まさかバイト探しか?」

「いや、カップ戦に出てみようかなって」

 

「ほーん」テッペイが顎に手を当てる。

「まぁ確かに、白夜じゃ1年リーグはぬるすぎるかもな」

 

「退屈ってほどじゃないけどな。けど、もう少し上のレベルを体感しておきたいとは思ってた」

 

「だろ? じゃあ技術科のカップとか良くね? パーツも副賞で付くし、ポイントもある。お得だぞ」

 テッペイの言葉に画面を見直す。そこには《第二技術科・高崎ラボ主催カップ》と表示されていた。

 

(……確かに、ちょうどいいかもしれないな)

 

「よし、じゃあ試しにエントリーしてみるか」

 そう呟いて申請を送ると、数秒後には承認の通知が届いた。空き枠があったらしい。

 

「おー、やったじゃん! 白夜、頑張れよ!」

 軽く親指を立ててから、テッペイは再び机に向かい、参考書を開いた。

 

 僕もタブレットを閉じ、深呼吸をする。

 明日は公式のリーグ戦じゃない。けれど――だからこそ、実力を試すにはちょうどいい舞台だ。

 

 ベッドから立ち上がり、机に向かって問題集を開く。

 今日までの知識を、もう一度頭に叩き込む。

 

(油断せずに、やれることを全部やろう)

 

 そう心に刻みながら、寮の夜は静かに更けていった。

 

 

 *

 

 

 当日、午前十時。

 僕はカップ戦の会場となるアリーナの前に立っていた。

 

 公式リーグで使われる巨大アリーナと比べると、この会場は小規模。だが観客席は四方を囲み、スクリーンも複数設置されている。臨場感を味わうには十分すぎる造りだった。入口近くには「高崎ラボ主催カップ」と大きく書かれたバナーが掲げられ、すでに多くの生徒たちが集まっている。

 

「高崎ラボ主催カップの受付こちらでーす!」

 先輩と思しき男子生徒が声を張り上げ、参加者たちを誘導していた。制服の袖をまくり、首にタオルを掛けたその姿から、イベントスタッフの慌ただしさが伝わってくる。

 

 僕も列に加わる。前後に並ぶのは、当然ながら見覚えのない顔ばかり。上級生独特の落ち着きと自信に満ちた雰囲気に、ほんの少しだけ肩がこわばった。

(まぁ、当然だよな。参加者の大半は二、三年生だろうし。俺みたいな一年がここにいる方が珍しい)

 

 

 受付が進み、ついに僕の番が来る。

「おっ、君一年か?!おーおー、チャレンジ精神あるなぁ!いいねぇ!」

 快活な声と共に、先輩がにやりと笑ってタブレットを操作する。数秒後、参加証とトーナメント表を手渡してきた。

 

「はい、受付完了!これがトーナメント表ね。今日は二試合、明日も二試合――もちろん勝ち進めば、だけどな。時間厳守で頼むよ」

 

「ありがとうございます」

 軽く頭を下げて列を抜け、渡された紙に目を落とす。

 

 表には、参加者16名の名前がずらりと並び、シンプルなトーナメント形式でマッチングが描かれていた。

 初戦の相手は、二年生の「三原」――名前だけではどんな相手か分からないが、こういう場に出てくる以上、相応の実力者なのだろう。

 

(今日は二試合。勝ち進めれば明日も二試合。つまり優勝まで計四戦……シンプルだけど、消耗も激しい)

 

 自然と胸が高鳴る。公式戦とは違う空気。観客の規模は小さくても、この場に集う全員が「勝ち」を求めている。

 僕は呼吸を整え、ゆっくりと拳を握り込んだ。

 

「よし……頑張っていこうか」

 

 小さく呟いたその言葉は、自分への宣言でもあった。

 緊張と期待が入り混じる中、僕は初戦のコートへと歩き出した。

 

 

 

 *

 

 

 

 アリーナのロビーは、平日の試合会場とはまた違う熱気に包まれていた。

 壁にはスポンサー企業や技術科のロゴが並び、ホログラム看板には《第二技術科 高崎ラボ主催カップ》の文字が浮かんでいる。

 

 先輩たちのざわめきが響く中、僕は受け取ったトーナメント表を広げた。

 

(16人トーナメント……初戦が勝負だな。ここで負ければそこで終わり)

 

 表を目で追うと、対戦相手の欄に見慣れない名前が並んでいた。

「二年、三原智哉……」

(知らない名前だ。でも、上級生ってだけで油断はできない)

 

 周囲を見回せば、各々が付き添いや仲間と戦略を話し合っている。

 僕はひとりだが、不思議と心細さはなかった。

 むしろ胸の奥で、熱いものが静かに膨らんでいく。

 

「おい、あれ一年じゃないか?」

「ほんとだ……チャレンジャーだな」

 

 通りすがりの先輩たちが小声で話しているのが耳に入る。

 その視線には好奇心も、少しの冷やかしも混ざっていた。

 けれど、気にしている余裕はない。

 

(ここに来たのは自分で決めたんだ。なら――やるだけだ)

 

 表を折り畳んでポケットにしまい、深く息を吐く。

 アリーナの照明がきらめき、フィールドへと続く扉が開かれる音がした。

 

 

「それでは第一試合の選手、準備をお願いします!」

 

 

 アナウンスが響くたびに、場内のざわめきが大きくなっていく。

 僕の出番は第三試合。

 まだ少し時間はあるが、今のうちに集中を高めておこう。

 

(勝ち進めば今日二試合。まずは次まで残れるかどうかが第一の壁……)

 

 ベンチシートに腰を下ろし、軽く目を閉じる。

 聞こえてくる歓声やアナウンスをすべて飲み込みながら、

 僕は静かに、戦いのイメージを組み立てていった。

 

 ――1年生、白銀白夜。

 アリーナの片隅に、確かに異質な存在としてその名が刻まれようとしていた。

 

 

 

 *

 

 入場のアナウンスが流れ、コートへ向かう前にふと観客席を見渡した。

 そこに――見覚えのある金髪が目に入る。

 

 黒崎莉音。

 普段と変わらず元気そうにしているが、その隣には二年か三年と思しき上級生の男子が座っていた。

 体格のがっしりした、派手なエイドロンジャケットを羽織った先輩だ。莉音は肩を寄せるようにして笑い、時折その腕に軽く触れては楽しげに話している。

 

(……莉音? なんで上級生と一緒に?)

 

 彼氏いたんだったっけ?いや、今は関係ないな。

 試合だ。余計なことを考えている場合じゃない。

 

 観客席からは次々とざわめきと声援が飛んでくる。

 その中で――莉音と上級生の笑い声だけが、不思議と耳に残っていた。

 

 

 

「選手、入場!」

 再び響いたアナウンスが、現実に引き戻した。

 

 

 僕は顔を上げ、観客席を背にしてコートへと歩み出した。

 ライトの下に出た瞬間、視線は完全に前へと向く。

 

 

 敵は――初戦の相手《三原》。

 余計な影を振り払うように、僕は拳を固く握りしめた。

 

 

 ハクロ頼んだよ。デバイスを操作してハクロを召喚する。

 

「おっと1年が相手か、悪いな、手加減しねぇぞ」

 

 観客の視線が一斉に集まる中、僕は目の前に現れた相手のエイドロンを見据える。

 

(……でかいな。しかも禍々しいフォルムだ)

 

 砂地を歩くような四脚――脚部は分厚い装甲で覆われ、節ごとに油圧シリンダーがむき出しになっている。まるで生き物の筋肉を模したかのような動きで、低く構えながらも獲物を狙うサソリそのものだ。

 

 頭部は扇形に広がったセンサー群。わずかに赤く点滅し、広角でこちらを捕捉しているのがわかる。

(死角が少ない……こっちの高速機動は見抜かれるかもしれないな)

 

 右腕には巨大なクロー。表面が熱を帯びてわずかに赤黒く光る

 

 左腕は細長い砲口が突き出している。針型の弾丸を射出するスティングガン。

(連射性能は低そうだけど、一発がでかそうだ)

 

 

 そして、背中から伸びたサソリを象徴するかのようなメカニカルスティンガー。鋭い金属の針が先端でわずかに震えている。

 

 僕は深く息を吸い込み、拳を握った。

「こちらも全力で行きます。――よろしくお願いします」

 

 

 対面の三原先輩がにやりと笑い、低く呟く。

「かかってこいよ、1年坊主。サソリに刺されても泣くなよ?」

 

 

 四脚で砂を蹴りながら構える《スコルピオン》は、まるで獲物を待ち構える捕食者。

 その尾のメカニカルスティンガーが不気味に蠢き、ライトを反射してぎらりと光る。

 

 

(……なるほど、完全に地形特化。瓦礫や砂地での安定性は抜群か。機動で翻弄するだけじゃ通じないかもしれない)

 

 ハクロが並び立つ。背中のスラスターが低く唸りを上げ、白と黒の機体が僕の心とシンクロする。

(よし――こいつを突破して、次に進む!)

 

 

 

「――試合開始ッ!」

 アナウンスの声と同時に、空気が張り裂ける。

 

 スコルピオンの四脚が砂を蹴るように地面を叩き、鉄骨めいた駆動音がアリーナに響き渡った。

 その巨体が低く構えたまま一気に跳ね、鋭い《ヴェノムクロー》を突き出してくる。

 

「ハクロ、右へ!スラスター最大!」

 僕の指示に応じ、ハクロが背中のスラスターを爆ぜるように噴射。

 白と黒の残光を描きながら、刃先を紙一重で回避した。

 

 だが――油断する暇もない。

「スティングガン!」三原先輩の鋭い声。

 左腕から細長い銃口が閃光を走らせた。

 

 ドンッッ!!

 轟音と共に、巨大な金属針が地面に突き刺さる。

 砂煙が巻き上がり、床材がひび割れる。

(うるっさ!やば……あれ一発でももらったら即終了だ……!)

 背筋を冷たい汗が伝う。

 

「ハクロ、上昇!牽制ビームだ!」

 僕は指を滑らせ、ビームガンを連射させる。

 光線が連なり、スコルピオンの装甲に火花を散らす。

 

 三原先輩が顔を上げて笑った。

「お前が噂の“王子”かよ!なるほど、速ぇな!」

 挑発的な声が観客席にまで届き、ざわめきが走る。

 

「まだ珍しいだけの1年ですよ!」

 僕は短く返し、さらに指示を飛ばす。

「ハクロ、頭上を取れ!」

 まずは頭上を取る!! それだけで左腕に注意を払うだけで良くなる!

 

 

 白と黒の翼を思わせるスラスターが咆哮し、ハクロは宙へ舞う。

 高所から撃ち下ろすビームが連続で直撃し、火花が弾ける。

 

 だがスコルピオンはびくともしない。

 黒光りする装甲が衝撃を受け止め、まるで嘲笑うかのようにその場に踏みとどまる。

 

「ははっ!そんな豆鉄砲じゃ痛くもねぇ!こっちは硬さが売りなんだよ!」

 三原先輩の声が重なるように、再び左腕が持ち上がる。

 

「スティングガン、もう一発だ!」

 

「くっ!」

 僕はすぐさまデバイスを操作し、回避行動を入力。

 

 再びドンッッ!と爆裂音が轟く。

 鋭い針が岩山を抉り、破片が飛び散る。観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。

 

(装甲は分厚い……豆鉄砲って言い切るのも頷ける硬さだ。だが隙がないわけじゃない。必ず突破口はある……!)

 

「ハクロ、焦るな。旋回しながら死角を狙え!」

 僕は冷静さを保とうと深く息を吸い、ハクロの光条を操る。

 

 白と黒の残光がアリーナを駆け抜ける。

 対するスコルピオンは巨大な鉤爪を振り回し、毒針を打ち込みながら獲物を狩る動きを見せる。

 

 観客席からは「やれスコルピオン!」「負けるな王子!」と入り混じった声援が飛び交い、熱気は一層高まっていく。

 

 

 

 

 




機体名 :スコルピオン
 頭 (スコルヘッド:広角センサー+)

 右 (ヴェノムクロー:高圧ピンチ&メルトダウン用ヒート液)

 左 (スティングガン:針型射出砲)

 脚 (デューンサンドウォーカー:四脚可変駆動、砂地・瓦礫地形に特化)

 背 (テールユニット:高伸縮式のメカニカルスティンガー)

 主要数値:

 全高 :185 cm

 重量 :365 kg

 稼働 :42 分

 COOL :6.5 s

 HEAT :37 %

 コアスキル:
《デッドリースティング》
 テールユニットから伸縮する「針」をコア直撃狙いで放つ必殺。命中すれば一定時間、相手機体の冷却性能を低下させ、オーバーヒート率を強制上昇させる。


【挿絵表示】


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