ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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36話

 シミュレーションルームを出て、御門先輩の背中を追う。

 戦いを終えたばかりの余韻と、先ほどの会話の緊張がまだ胸に残っている。

(これから……もしかして、ラボの仲間たちと顔合わせ? それとも、いきなり藤堂室長と会うのか?)

 心臓が高鳴る。足取りが自然と早まるのに、口の中は乾いていた。

 

 だが、御門先輩はいつもと変わらない落ち着いた様子で、迷いなく歩き続ける。

 

 緊張で胸が鳴る。足取りは軽くないが、不思議と心は熱を帯びていた。

 だが――その期待は、建物を出た瞬間にあっけなく裏切られる。

 

「……あのー、御門先輩。今からどこに行くんですか?」

 思わず声をかけると、御門先輩は振り向かずに短く答えた。

 

「もう十一時を回る。昼食を取りに行くぞ」

 

(……え、昼飯!?)

 肩透かしというより、拍子抜けだった。けど、気づけば腹も鳴りそうなくらい空いている。

 二時間以上の戦闘シミュレーションを続けたのだから、そりゃそうか。

 

「……はい!」

 返事をして歩幅を合わせる。

 

 御門先輩は一定のペースで歩きながら、淡々と話しかけてくる。

「白銀、体調管理は習慣だ。戦いは一瞬でも、準備は日常で決まる。

 食事、睡眠、ストレス。どれか一つでも欠けると、反応が鈍る」

 

「はい……気をつけます」

 

「栄養管理も大切だ。プロを目指すなら、体は資本だ。

 あと、休むときはしっかり休め。メリハリをつけろ」

 

「はいっ!」

 

「……あと余裕ができたら、BPを貯めて寮の部屋を広げろ。

 狭い空間で疲れを取るのは効率が悪い。リラックスできる環境を整えるのも一流の条件だ」

 

「なるほど……!」

 どれも実践的な助言で、ただの精神論ではない。

“強さ”を支える生活の部分まで、先輩は本気で考えているんだ。

 

 そんな話をしながら歩くうちに、気づけば校区を抜け、商業区の通りまで出ていた。

 生徒や一般客で賑わう昼前の街。食堂、カフェ、屋台が立ち並び、香ばしい匂いが風に乗って流れてくる。

 

 御門先輩は迷いのない足取りで進み、ふいに立ち止まった。

「……ここだ」

 

 指さした先にあったのは、木製の暖簾がかかる古風な店。

 香ばしい湯気とスープの匂いが、外まで漂ってくる。

 

「え、ラーメン屋……ですか?」

 

「そうだ。ここの醤油ラーメンは絶品だ」

 御門先輩はそう言って、まるで戦場へ赴くような真顔で暖簾をくぐった。

 

「……まさか御門先輩の口から“ラーメンは絶品だ”なんて言葉が聞けるとは……」

「何か言ったか?」

「い、いえ! なんでも!」

(……え、御門先輩ってもっと栄養管理完璧な“サラダと鶏胸肉の人”みたいなタイプかと思ってたのに!?)

 

 

 けれど、その背中にはどこか柔らかい雰囲気があった。

 いつもの冷静で完璧な姿勢のまま、後輩の僕を自然に昼飯へ連れていく――。

 その気遣いが、なんだか妙に嬉しかった。

 

(……ほんと、この人はどこまでも先輩なんだな)

 

 

 暖簾をくぐると、湯気とスープの香ばしい匂いが一気に鼻を突いた。

 カウンターの奥で大鍋がぐつぐつと音を立て、出汁と醤油の香りが混ざり合っている。

 昼前の店内はほどよく混んでいて、学生服の姿もちらほら見える。

 

「いらっしゃいませー!」

 威勢のいい店主の声に軽く会釈し、御門先輩は空いていたカウンター席に腰を下ろした。

 僕も隣に座る。

 

「ここ、よく来るんですか?」

 思わず聞くと、御門先輩は湯気越しに軽く笑った。

 

「そうだな。週に一度は必ず来る。バトル後の補給にも丁度いいし、味が濃すぎない。脂も少ない。……理想的だ」

(理由が真面目すぎる……)

 

 

 僕も隣に座り、手元のメニューを開く。

「醤油、味噌、塩……って、けっこう種類ありますね」

 

「最初は醤油だ」

 間髪入れずに返ってくる答え。

「バトルもそうだが、最初に基礎を押さえないと味もわからん」

 

「なるほど、ここでも基礎なんですね……」

 思わず笑ってしまう。御門先輩は、戦いでも食事でも軸がぶれない。

 

 店主が「毎度ー」と声をかけ、手際よく麺を湯切りしている。

 

 

「白銀」

 名前を呼ばれて、思わず姿勢を正す。

「は、はい!」

 

「戦いにおいても、日常においても同じだ。

 食事も、睡眠も、呼吸も、全部“整えること”が大事だ。

 整っていない心身で勝てるほど、甘い世界じゃない」

 

 湯気の向こうで、彼の瞳は静かに光っていた。

「……だから俺は、こうして食べるときも自分を律する」

 

(ラーメンを律して食うって、どういう次元だよ……)

 心の中で突っ込みながらも、どこか尊敬の念が芽生える。

 

 

 やがて、湯気を立ててラーメンが運ばれてくる。

 澄んだ琥珀色のスープの表面に油が光り、焦がしネギの香ばしさと、濃い醤油の香りが立ち上がる。

 箸を入れ、麺をすくい上げると、湯気の奥から湧き上がる香りに自然と喉が鳴った。

 

「……いただきます」

 御門先輩は箸を整えて、音も立てずに麺をすすった。

 まるで儀式のように丁寧で、無駄のない動き。

 

 僕も真似して一口啜る。

「いただきます」

 一口すすった瞬間、熱と塩気、醤油の深みが舌に広がる。

 疲れた身体に染み渡るような優しい味だ。

 

「……うまい」

 思わず漏らした僕の言葉に、御門先輩は口角を上げる。

「だろう。戦った後の一杯は格別だ」

 

「御門先輩でも、ラーメン食べるときはそんな顔するんですね」

「俺だって人間だ。理屈抜きにうまいものはうまい」

 短くそう言って、彼は麺をすする音を立てた。

 

 数分間、二人の間には言葉のいらない沈黙があった。

 だが、その沈黙は心地よく、戦闘中の緊張とはまるで違っていた。

 

 

「それに賑やかな食堂より、落ち着いて味わえる方が集中できる。」

 

 なるほど、と頷く。

 気づけば僕も、疲労で空っぽだった体にスープを流し込むようにして食べ進めていた。

 塩気が、戦いの余韻を溶かしていく。

 

 

「……白銀」

 食事を終え、箸を置いた御門先輩がふと真面目な声を出す。

「この後、俺の部屋についてこい。この学園では最上級の部屋だ。目指すものを見ておけ。お前の成長につながる」

 

「はい……分かりました」

 

 御門先輩は立ち上がり、僕の分の会計もまとめて済ませると外へ出た。

 昼の陽射しがまぶしい。

 

「御門先輩、ごちそうさまでした」

 呼び止めると、彼は足を止めて振り返った。

 

 

 御門先輩はゆっくりと頷いた。

「……先輩だからな。気にするな」

 

 その言葉を残し、御門先輩は背を向けて歩き出す。

 真夏の陽光を背に、その姿はどこまでも凛としていた。

 

 ――あの背中を、いつか並んで見られるように。

 僕は拳を握りしめ、強く心に誓った。

 

「どうした、いくぞ白銀」

 

「はい!」

 

 

 

 *

 

 

 

 ラーメン屋を出ると、昼下がりの陽射しが街のアスファルトを金色に照らしていた。

 通りの喧騒が少しずつ遠のき、代わりに風に揺れる木々の音が耳に届く。

 御門先輩は無言のまま歩き出し、僕は少し距離を置いてその背中を追った。

 

 商業区のきらびやかな看板が遠ざかり、やがて建物の様相が変わっていく。

 店やカフェが並ぶ通りを抜けると、空気が一段階落ち着いた気がした。

 御門先輩が向かっていたのは、学園都市の北側にある上級生専用の宿舎エリア――通称「ハイ・レジデンス区画」。

 

 ここはただの寮ではない。

 一定以上の成績や功績を残した者、もしくは研究・開発面で学園に貢献した者だけが入居できる特別区域だ。

 白い外壁と植え込みに囲まれた整然とした街並みは、もはや“学園施設”というより“高級住宅街”に近い。

 

 僕は周囲を見回しながら思わず息を呑む。

 建ち並ぶ建物の一つひとつが個性的で、それぞれが居住者のステータスを物語っている。

 ガラス張りのモダンな塔、木造と石造りを融合した静謐な邸宅、どれも一般学生寮とは次元が違った。

 

 御門先輩はそんな街並みを指で示しながら、淡々と説明する。

「リーグ戦で上位に残る者、研究班で結果を出した者、あるいは企業案件に関わった学生の多くはこの区画だ。

 洋風志向なら《ヴァルキリーガーデン》。中華様式なら《崑崙舎》。和風を好むなら《天翔館》。

 俺は――天翔館だ」

 

 

 指し示された先にそびえていたのは、堂々たる六階建ての建物だった。

 白壁に黒瓦、そして玄関前には小さな庭園と池があり、まるで高級旅館のような趣がある。

 風が吹くたびに水面がきらめき、静けさと品格が調和した空間だった。

 

 

「……ここが、先輩の家……なんですね」

 思わず見上げたまま呟く。

 

「そうだ。俺は最上階だ」

 御門先輩はICカードを翳し、自動扉を開けて中へと入る。

 

 中に足を踏み入れた瞬間、涼やかな空気と静寂が肌を包んだ。

 香木の香りがほんのり漂い、エントランスには専属のコンシェルジュが立っていた。

 

「ようこそ天翔館へ。お帰りなさいませ、御門様」

 丁寧な一礼に僕は思わず背筋を伸ばす。

 

「す、すごい……」

 口から出た声は情けないほど小さかった。

 

 御門先輩は軽く頷き、「こちらだ」と案内する。

 通されたエレベーターは静音設計で、上昇中もまるで空を滑っているような感覚だった。

 

「寮とは言っても、ここでは完全な生活支援が受けられる。

 食事の配膳、買い出し、雑務の代行……全部専門スタッフがやってくれる」

 御門先輩の説明に、思わず「お手伝いさん付きの生活みたいですね」と口に出す。

「そんな感じだな。俺はエイドロンの整備と分析に集中できる。だからこそ、家賃は高い」

 彼は苦笑しながら続ける。

「月三十万BPだ。だが、それだけの価値はある」

 

 

 エレベーターで最上階に上がると、そこに広がっていたのは一面ガラス張りのリビング。

 二十畳を優に超える広さで、外の景色が一望できる。

 壁際には戦闘データの分析機器、奥にはエイドロン専用のドックまで設置されていた。

 

 

「ここが俺の拠点だ」

 御門先輩は静かに言う。

「朝は走る。昼は戦う。夜はここで戦闘データを見直す。それ以外は、任せられることは全部任せている。

 努力に集中するための環境を、自分で整えた。それが、俺のやり方だ」

 

 

 僕は苦笑しながらも、その空間に圧倒されていた。

 それは単なる贅沢ではない。努力のための環境。

 彼がどれほど日々を積み重ねてきたのか――部屋そのものが語っていた。

 

 

「俺は天才じゃない」

 御門先輩は静かに言う。

「だが、積み上げることだけは誰にも負けない。

 才能に頼るやつはいずれ限界にぶつかる。だが、努力で築いた者は崩れない。俺はそう信じてる」

 

 御門先輩は湯呑を手に取りながら、ふと真っ直ぐ僕を見た。

 

「白銀。お前もいつかここに来い」

「……え?」

「俺の後を追うって意味じゃない。お前自身の力で、こういう場所に辿り着け。

 努力の先にある“自分の形”を掴め。もっと広い世界を見せてやる」

 

 僕は無意識に拳を握りしめる。

 胸の奥に、またひとつ火が灯る感覚がした。

 

「――でも、そのためには」

 御門先輩は少しだけ笑って続ける。

 

「もっと強く、ですね」

 僕が言うと、先輩はわずかに笑みを浮かべた。

 

「理解が早い。だが焦るな。強さは焦りの中からは生まれない。

 積み上げた時間の先にしかない。今日、お前が倒れずに最後まで戦い抜いたようにな」

 

 その声は静かだったが、どこまでもまっすぐに響いた。

 

 僕は深く息を吸い、まっすぐ彼を見る。

「……はい。必ず追いついてみせます」

 

 御門先輩は一瞬だけ微笑み、ゆっくりと頷いた。

「言葉より、行動で示せ。それでいい」

 

 彼はカップを置き、立ち上がる。

「今日はここまでにしておけ。身体を休めろ。また連絡する。」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

 玄関を出ると、涼しい風が頬を撫でた。

 外の空気は静まり返っており、建物の前に設けられた滝の音だけが響いていた。

 

 滝の水面が夕日に照らされ、光の粒がゆらゆらと舞っている。

(……ここで暮らしてると、毎日この音を聞くのか)

 努力を積み上げた者だけが手に入れる静寂。

 御門先輩の言葉とその景色が、静かに胸に刻まれていった。

 

 まぁ滝はいらないかなと思いながら。

 




コア設定まとめ

■ 名称

ソウルコア(Soul Core)
神によって授けられる「魂の記録装置」。
個体ごとに異なる波長を持ち、1人につき1つだけ存在する。基本的には単一色。

■ 基本構造

可視部分:卵形のエネルギー結晶(マーブル模様など)

内部構造:6つの“位相領域”を持つ演算・共鳴体。

マスクデータ
近接(STR系):格闘能力
機動(AGI系):移動・回避能力
制御(TEC系):操作精度・複合システム連携
射撃(DEX系):照準精度・出力安定
防御(END系):耐久・障壁展開
特殊(SPC系):コアスキルや適性スキル

■ 成長と数値感

一般人:総合10〜100

学生/訓練生:150〜250(卒業時)

プロ/競技選手:300〜350

(経験値=実戦や訓練・シミュレーション・共鳴などで増加)


■ コアスキル(Core Skill)

各コアに固有の“異能アルゴリズム”が刻まれており、
各項目のレベルが上がることによって覚える。
使用者の精神・性格・経験により発現内容が異なる。


例:
スカイレギオン搭載コア《ボナパルト》

所有者:御門 隼人(3年/Aクラス)
黄金色のコア
合計値:280

パラメータ 数値 備考

近接 15 ほぼ非依存。格闘は不得意。
機動 38 機体補正でカバー。空間制御優先。
制御 75 超一流。ドローンやスラスターを自在に指揮。
射撃 78 中距離~長距離射撃精度が高い。
防御 22 機体の回避と盾展開で補うバランス型。
特殊 52 コアスキル《ボナパルト・オーダー》発動補正。
合計 280 学生最高峰クラス。



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