ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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43話(挿絵有)

 観客席の熱気が、まるで嵐のように渦を巻いていた。

 アナウンスが途切れるや否や――

 

 ツナアタッカーの二体が、水柱を割って突進してきた。

 轟音。水の壁が割れ、筋肉の塊が水上を滑る。

 波がうねり、足場ステージがきしむほどの衝撃。

 

 

「ウェイブ・スプラッシュチャージィィィ!!」

「アアアアタァァァック!!」

 

 巨体が二つ、轟音とともに跳ね上がる。

 水飛沫が陽光を反射し、観客席にまで降り注ぐ。

 

「……くるっ!」

 七海の瞳が光る。

 

《アリエル》が両腕を広げ、水面を軽く踏みつけた。

 その瞬間――低く響く音波が放たれた。

 

「スクリーム!」

 

 透明な衝撃波が走る。

 一瞬、空気がねじれ、水面が弾ける。

 

「ぐおっ!?」

 先行して突進していたツナアタッカーが、水中で体勢を崩した。

 モニターには“制御信号異常”の赤い文字。

 

 観客席がどよめく。

「出たっ、セイレーンのスクリーム!」「制御系が混線してる!」

 

「桃香!」

「任せてっ!」

 

《ベル》が両腕を広げる。

 ピンク色の光弾が散り、虹のような弧を描いた。

 

「シャイニング・レイ!」

 

 スキルの光が一直線に走る。

 先頭のツナアタッカーの胸部に命中し、爆炎が水柱を巻き上げた。

 

「おおおおーっ!」「一撃で落としたぞ!」

 観客が立ち上がる。

 

 だがその直後――

「マッスルセカンド、行くぞぉぉぉ!!」

「パワーイズウェイブ!!!」

 

 もう一体のツナアタッカーが、怒号とともに跳躍。

 水柱を蹴り上げ、渦巻くように回転しながら突っ込んでくる。

 水面が爆ぜ、アリーナ全体が振動するほどの突進。

 

 

「強引に来るわね……でも――」

 七海が冷たく息を吐く。

「同じ手は、もう見せない」

 

《アリエル》の声が再び響く。

「スクリーム・モードツー――出力、最大!」

 

 歌声が一段階高くなる。

 まるでオーケストラの高音のような澄んだ響き。

 空気そのものが震え、水面が細かく波打つ。

 

「制御、狂った!?」「機体がスピンしてる!」

 

 ツナアタッカーの巨体が急に制御を失い、突進軌道が逸れる。

 筋肉の塊が無様に水上を滑り、泡の尾を引きながら崩れ落ちた。

 

 その瞬間――

「桃香、今!」

「まっかせてななちゃん!」

 

《ベル》がホバーで跳ね、空中で両手の砲口をクロスさせる。

 砲口から迸った連続光弾が、まるで流星の雨のように水面を照らした。

 無数の反射光が乱舞し、アリーナがピンク色に染まる。

 ツナアタッカーの装甲が砕け、筋肉のシルエットごと光の粒へと変わっていった。

 

 爆音が止み、残響だけが静かに空気を揺らす。

 

「……終了ッ!!」

 審判の声が響く。

 

 アリーナが爆発的な歓声に包まれた。

「すごい! 一撃ずつで沈めた!」「あの二人、息ぴったりだ!」

 

 観客席からはピンクと青のペンライトが振られ、

《ピーチマリン》の名を呼ぶ声が波のように広がっていく。

 

 

 僕は思わず立ち上がって、手すりを掴んだ。

(……完璧すぎだろ。音で狂わせ、光で貫く――すごい連携だし、二人とも強い!)

 

 

 ステージ上で、七海と桃香が目を合わせる。

 互いに笑って、軽くハイタッチを交わした。

 

「勝利チーム、《ピーチマリン》!」

 

 アリーナのスピーカーが高らかに告げる。

 水面の光が二人を包み、

 ステージの上では、二人が笑い合いながら観客に手を振っている。

 初戦の幕は、華やかに降りた。

 

 

 

 *

 

 

 観客席の喧騒が、まだ水面の上に名残を落としていた。

 波がゆるやかに揺れ、光が反射してアリーナ全体をきらめかせる。

 拍手の余韻、スピーカーから流れるBGM、そしてどこか誇らしげなざわめき。

 まるで《ピーチマリン》の勝利を、施設全体が祝っているようだった。

 

 

 僕は胸ポケットからスマホを取り出し、画面を開く。

 試合速報アプリのトップに、鮮やかな文字が踊っていた。

〈初戦突破:チーム《ピーチマリン》〉

 

 思わず、ふっと息が漏れる。

(……やるな、二人とも)

 まるでプロみたいだった。七海の冷静な判断と、桃香の瞬発力。

 あの息の合い方は、ただの仲良しペアじゃできない。

 

 気づけば、指が勝手に動いていた。

【さっき見てた。初戦突破おめでとう】

 送信ボタンを押すと、胸の奥がほんのり熱くなる。

 くすぐったいような、誇らしいような、そんな感情だった。

 

 

 

 スタンドの熱気がまだ冷めない中、会場の外に出ると、

 照り返す水面の光が眩しいほどだった。

 波の音と人の声が入り混じる通路を抜け、休憩エリアへ向かう。

 カップルや学生たちがジュースを手に歓談している。

 

 

(あの二人、今ごろ控室で休憩してるかな)

 

(七海と桃香、今ごろ控室かな)

 そう思いながら、自販機の缶コーヒーを開ける。

 ひと口飲んだところで――

 

 

「――白夜くんっ!」

 

 

 声に振り向くと、向こうから駆けてくる影が二つ。

 桃香と七海だった。

 

 さっきの試合の名残か、制服のジャケットは脱いでいて、

 白いシャツが少し濡れて身体に張り付いている。

 夕陽のオレンジ色がシャツ越しに透け、汗の粒がきらりと光った。

 

「おう、二人ともお疲れ様!」

「試合、見てたのね」

 

 

 七海は息を整えながらも、落ち着いた微笑を浮かべる。

 その隣で、桃香は満面の笑みで両手を広げた。

 

「ねっ、ねっ! どうだった? 見てくれたよね!?」

「うん、ちゃんと見てたよ。完璧だったね」

 

 

 その言葉に、桃香が嬉しそうに跳ねた。

「でしょー!? 二人で何回も練習したんだよ! でもななちゃんが途中で“音波もう一段上げる”とか言い出すからびっくりしたんだよ!」

 

「即興じゃなくて、あれは予定通りよ。……半分くらいはね」

 七海が髪を耳にかけ、少しだけ照れくさそうに笑う。

 

「半分!?」

 桃香が肩を落としながら笑い、二人の笑い声が弾けた。

 さっきまで激しい戦いをしていたとは思えないほど、和やかな空気。

 だけどその笑顔の奥には、確かに戦い抜いた者だけが持つ“自信”が見えた。

 

 

 ふと、七海の視線が僕のスマホに向く。

 画面にはまだ、送信済みのメッセージが光っていた。

 

「ちゃんと見てたのね。……メッセージ、届いたわ」

「……あ、うん。あれ、送ってすぐだったけど」

 

 その一言に、七海の目尻が柔らかく緩む。

「ふふっ。ありがとう」

 

 試合中の鋭さとは違う、穏やかな微笑み。

 普段のクールさに柔らかさが混じって――心臓が少しだけ跳ねた。

 

「白夜くんは、来週大会なんでしょ?」

 桃香が一歩近づき、両手を後ろに組んで顔を上げる。

「そのときはあたしたちが応援する番だね!」

 

「お、それは心強いな」

 笑って返すと、桃香が勢いよく親指を立てた。

 

 

「次も勝って、決勝で会おうよ!」

「いや、大会が違うだろ……」

「いいの!言ってみたかっただけ!」

 

 明るい笑い声が響き、三人の間を涼しい潮風が抜けていく。

 

 

 アリーナの水面が夕陽にきらめき、

 さっきのバトルの光が、まだ空に反射しているようだった。

 

 七海が、ふと真面目な声を出した。

「……ありがとね、白夜。見ててくれて」

 

 その言葉に、僕は自然に答えていた。

「約束したしね」

 

 七海は小さく頷いて、風に揺れる髪を押さえた。

 その横で桃香が元気よく手を振る。

「次も応援してね! 勝ったら明日も試合なんだ!」

 

「お、連戦か」

「うん! 次はもっと強いペアが出てくるけど、ななちゃんと一緒ならいける!」

 

 その横で七海も静かに頷く。

「この後の二回戦。……手強い相手になると思うけど、やれるだけやってみる」

 

 

「きっと大丈夫だよ。さっきの試合見てたらそう思う」

 僕は素直にそう言った。

 それはただの励ましじゃなく、見ていたからこその確信でもあった。

 

 二人の呼吸は、音と光みたいに自然に噛み合っていた。

 

 

「ありがと!」

 桃香が明るく笑って、勢いよく両手を伸ばす。

 濡れたシャツの袖口がひらりと揺れて、水滴が陽に光った。

 桃香の笑顔はまるでその光を集めたようで、周囲の喧騒が一瞬遠のいた気がした。

 

「……風、気持ちいいね」

 七海が小さく呟く。

 アリーナの外では潮の香りを含んだ風が通り抜け、

 遠くでまだ観客たちの笑い声や、売店の呼び込みが響いていた。

 

「ななちゃん、せっかくだから写真撮ろ!」

 桃香がスマホを取り出して白夜に向ける。

「白夜くんも入って! 三人で撮ろ!」

 

「え、僕も?」

「当たり前じゃん!応援団長でしょ?」

 

 仕方なく桃香の横に立つと、桃香がぴったりと腕を組んでくる。

(や、やわらか……)

 その瞬間、シャッター音。

 

「はいっ、いい感じ!」

「桃香、少し近すぎ」

 七海が呆れたように言うが、笑っていた。

 写真の中の三人は、どこか自然で、どこか眩しい。

 

 

「……この写真、送ってもいい?」

「もちろん」

「じゃあ“初戦突破記念”ってことで!」

 

 桃香がそう言ってメッセージを送ると、

 白夜のスマホにすぐ通知が届いた。

 画面には、さっきの写真と一緒に――

【次も見ててね!】の文字。

 

 

「……ほんと元気だな」

「ふふ。元気じゃなきゃ、勝てないもの」

 七海が微笑む。

 その笑みの奥には、静かな自信と、桃香への信頼があった。

 

 桃香が腕を伸ばして七海の肩を引き寄せる。

「行こっ、ななちゃん! 作戦会議しなきゃ!」

「はいはい……白夜くん、またね」

 

 二人が並んで歩き出す。

 背中越しに、笑い声が重なって聞こえた。

 

 僕は少し離れたところからその背中を見送る。

(……ほんと、強くなったな)

 

 手に残った生徒手帳の画面には、

“ピーチマリン初戦突破”のニュースと、

 桃香からの写真付きの短いメッセージ。

 

 ――【次も見ててね】

 

 その眩しさの中で、僕は小さく息を吐いた。

「……ああ、ちゃんと見てるよ。最後まで」

 

 アリーナの喧騒が遠ざかる中、

 潮風だけが静かに頬を撫でていった。

 

 

 

 *

 

 

 

「ななちゃん、白夜くん応援してくれてたね」

 少し上気した頬のまま、桃香がぽつりと呟いた。

 

「うん、よかったね。一緒に写真も撮れたし」

 七海はふふっと笑って続ける。

「……それにしても桃香、腕まで組んじゃって」

 

「え!? わ、わたしそんなことしてた!?」

 桃香の声が裏返る。顔がさらに真っ赤になり、目を泳がせている。

 

 七海は小さく肩をすくめ、悪戯っぽく微笑んだ。

「してたよ。ほら、証拠」

 生徒手帳を取り出し、画面を見せる。

 

 そこには、三人並んだ記念写真。

 七海はクールな笑みを浮かべ、白夜は少し気まずそうに目線を逸らしている。

 そして――桃香は、がっつり白夜の腕を抱きかかえるように組んでいた。

 

「う、うそ……!」

 見る間に桃香の顔が真っ赤に染まる。

 そして次の瞬間、耳まで真っ赤になり、両手で顔を覆った。

「ち、違うの! その、自然にそうなっただけでっ!」

 

 七海はふふっと小さく笑った。

 その目は、手のかかる妹を見るように優しい。

「自然に、ね?」

「わ、笑わないでよぉ〜!」

 桃香が抗議するように腕をばたつかせる。

 その仕草があまりに必死で、七海はさらに笑ってしまう。

 

 やがて笑いを落ち着けながら、七海は優しく言った。

「ふふ、ごめん。でも……嬉しかったんじゃないの?」

 

「えっ……?」

「白夜が応援してくれて。あんなに真剣に見てたんだもの」

 

 桃香は一瞬言葉を失い、手を下ろす。

 頬を染めたまま、俯いて小さな声で呟いた。

「……うん。うれしかった。すごく、嬉しかった」

 その言葉には嘘がなく、まっすぐだった。

 

 七海はふっと微笑み、タオルを首にかけながら言う。

「今日のこの後の試合に勝てば、明日も白夜は応援に来てくれるんだから」

 その言葉に、桃香がはっと顔を上げる。

 

「……そうだね! うん、頑張らなきゃ!」

 両手を胸元で握りしめ、「がんばります!」と表情いっぱいに宣言する桃香。

 

 七海はその姿に少し目を細めて、静かに言った。

「頼りにしてるわよ、パートナー」

 

「任せてよ、ななちゃん!」

 

 そう言って二人は控室へ向かう。

 水面を渡る風が背中を押すように吹き抜けた。

 

 七海はその横顔を見ながら、心の中でそっと呟く。

(……恋も、頑張れ。桃香)

 

 明るい声と笑いが、アリーナの奥へと消えていった。

 





機体名 : ハイドロスライダー(HYDRO SLIDER)
型式番号: EID-HDS-02
製造社 : セイブル・マリンテック社(アクア戦闘支援部門)


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部位  :
頭 (スプラッシュヘッド:水圧耐性強化+前方波動センサー搭載)
/右 (ツインウェーブガン:水圧弾&ショックパルス射出ユニット)
/左 (ハイドロスピア:流体推進型ランスユニット)
/脚 (ハイドロジェットボード:可変水中滑走ユニット)
/背 (スプレーウィング:水流安定翼&速度制御用マイクロフィン)


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主要数値:
全高  :205 cm
重量  :210 kg(超軽量水上フレーム)
稼働  :52 分(出力変動により稼働時間調整可能)
COOL  :5.8 s(連続推進でも安定した冷却)
HEAT  :41 %(高回転時にのみ急上昇)


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カラー:ライトシアン × ネイビーブルー × シルバーライン

頭部:イルカのような流線型センサー。ゴーグルバイザー装備。

背部:可変フィンが波の形を模して展開。

脚部:ボードと一体化した水中ジェット。走行時は白波を上げる。

全体:まるで“水のスプリンター”。どの角度から見ても動いているような躍動感。



【挿絵表示】


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