ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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49話(挿絵有)

 控室へと続く通路を、僕と早川は並んで歩く。

 

「そういえばさ、莉音たちも応援来てたぞ」

「ふーん、みゆと?」

 早川は気のない調子で返す。

 

「いや、最近はこの江も一緒みたいだな。三人で仲良く観戦してるっぽい」

 

「そっか。じゃあ、後で合流するか」

 彼はポケットに手を突っ込んだまま、軽く笑う。歩く姿勢もまるでモデルみたいに自然だ。こうしてると普通に爽やかイケメンなんだけどなぁ。

 

「僕は先にハクロを整備に出してくるよ」

 

 戦いを終えた直後の機体は、外見が無傷でも内部に負荷が蓄積している。

 こういうときこそ、テッペイたち“螺子川ラボ”の面々に見てもらうのが一番安心だ。

 

「じゃ、俺は先に行っておくよ」

 早川は手を軽く振りながら、爽やかに笑う。

「王子様がいい感じに囮やってくれたおかげで、俺は無傷だったしね」

 

「おい、それ絶対わざとだろ!」

 思わず笑いながらツッコむ。

 早川は片目を細めて、口角をわずかに上げた。

「さあ、どうだろ?」

 

こういうとこなんだよな。腹黒っていうか意地悪というか。

 

軽い足取りで、彼は控室を出ていった。

 残された僕は苦笑いしながら、整備実習棟へと歩き出す。

 

 

整備区画へと続く通路を歩くと、空気がひんやりと変わった。

 アリーナ特有の人工的な光から一転、実習棟の中はやや暗く、鉄と油の匂いが混じっている。

 耳を澄ませば、遠くで工具の金属音が鳴っていた。

 

 “螺子川ラボ”の看板が見えてくる。

 開閉扉の前に立ち止まり、深呼吸をひとつ。

 

 ガチャ、とドアを開けると――

「おーっ! 二回戦突破おめでとーっ!」

 テッペイの声が響いた。

 案の定、腕まくりをして油まみれの布を握りしめている。

 

「ありがと、ハクロのメンテ頼むよ」

「おう、任せとけ。今日もばっちり整備しておくぜ!」

 自信満々に胸を張るその姿に、思わず笑ってしまう。

 

 螺子川ラボの奥では、他の上級生たちが溶接作業の最中らしく、火花が暗い空間に散っていた。

 僕はハクロの格納デバイスをテッペイに渡し、

「じゃ、あとは頼んだ」

と言い残して再びアリーナへ向かう。

 

 背中でテッペイの声が響いた。

「おう、任せとけ!!」

 

 その言葉に、小さく笑ってうなずいた。

 アリーナへ向かう足取りが、少しだけ軽く感じた。

 

 

 

 

 午後のアリーナは、朝よりもさらに熱気に包まれていた。

 観客のざわめきと実況の声が混ざり合い、会場全体がひとつの巨大な鼓動みたいに響いている。

 

 僕は客席の階段を上りながら、ざっと視線を走らせた。

「……いた」

 金髪が光を反射して、すぐに見つかる。

 ――莉音だ。

 

 観客席の真ん中あたりで、ストローを咥えたままジュース片手にスクリーンを見上げている。

 その隣にはみゆ、その向こうにこの江。さらにその横には早川の姿まであった。

 どうやらもう合流できたらしい。

 

(ほんと、どこにいても目立つな……)

 

 苦笑しながら列を抜け、4人の後ろに立つ。

「おーい、皆さん。今どんな感じ?」

 

 莉音が振り返り、ぱっと笑顔を見せた。

「はくたーん! お疲れ様ー!」

 

 みゆも身を乗り出して、「見た見たー! 白夜めっちゃカッコよかった! 実況で“空の王子”って呼ばれてたよ!」と元気に言う。

 

「いや、言い過ぎなんだよなぁ……」

 肩をすくめながら苦笑いする。すると、莉音がストローをくわえたままニヤリと笑った。

「でもさ、白夜ファンクラブできるんじゃない? “王子様を応援する会”とか」

 

「え、それりおちが会長でしょ?」とみゆが即ツッコミ。

 

「え〜、あーしは、はくたんのハニーがいいなー」

 そう言いながら当然のように僕の腕に絡んでくる。柔らかい感触。……くっ、意識するな!意識が持っていかれる!!

 

 

 一方、この江は少し遅れて視線を上げ、恥ずかしそうに笑った。

「でも……本当にすごかったよ、白夜君。囲まれてても落ち着いてて、ちゃんと勝ってたし」

 

「ありがとな。早川がもう少し遅れてたら危なかったけどな」

 

「俺もナイスタイミングだったでしょ?」

 この江の横から、早川が軽く手を挙げてくる。

 

「だよね! クラスのイツメンが協力して上級生倒すって激アツ!!」

 みゆが勢いよく身を乗り出してくる。

 

 この江も「早川君、強くてびっくりした」と小さく頷く。

 早川は爽やかな笑みを浮かべながら、「いやぁ、王子が派手に囮やってくれたおかげでね」と悪びれもせず言った。

 

「腹黒いなぁ……」

「褒め言葉だよ」

 

 莉音がストローをくわえ直しながら、「そういえば大崎は? 出てないの?」と聞く。

「昨日見たけど、一回戦で負けてた。今日はバイトで修理代稼ぎだってさ」と早川。

 

「え〜残念。じゃあ一年で残ってるの白夜と礼人だけ?」とみゆ。

 

この江が「まだ貴志君が試合してないよ?」とおずおずと言う

 

「そういえば貴志まだなんだ? 何試合目?」

 

 早川がカップ戦の表を見て答える。

「今日の四試合目。Bアリーナだな」

 

「Bアリーナかー……どうする?」と莉音。

 まだ莉音の腕は、僕の腕にがっちり絡まっている。いや、くう、なんで違和感なくなってるんだ俺。

 

「まぁ同じクラスメイトだし、見に行こうよ!」

 みゆのその一言で、全員が立ち上がる。

 

「俺、あんまり貴志と話したことないけど」

「あーしもー」

「でも応援してあげたいじゃん?」とみゆ。

 

 

「僕とこの江はよく話すからね」と言うと、

「うん。席が近いから」とこの江が小さく微笑む。

 その笑顔は控えめなのに、――きっと貴志がこの笑顔を見たら、きっと顔を真っ赤にするだろうなと思った。

 

 僕は、貴志がこの江のことを好きなことを知っている。

 だからこそ、貴志を応援したい。

 けど、横で早川がさりげなくこの江をエスコートして、歩幅まで合わせてるのを見ると――少しだけ複雑な気持ちになる。

 

(……おいおい、貴志、先越されてんじゃないか?)

 いや、早川はただの癖だ。女の子に慣れてるだけ。そう思いたい。

 でも、あの爽やかな笑顔と自然な仕草、あれにやられない女子はいないだろ。

 ほんと、油断ならない奴だ。

 

 僕は頭を掻きながらため息をつく。

 この江は娘みたいで放っておけないし、貴志は恋に不器用だし、早川は腹黒のリア充代表だし……。

 

「……あー、ややこしいなぁ」

 独り言のように呟いて、髪をかきあげる。

 

 照明に照らされた通路の床が、午後の陽射しを反射してきらりと光った。

 歩きながら、隣で莉音のジュースの氷がカランと鳴る音がやけに耳に残る。

 

 うーん、と頭を悩ませながら歩いていると――

「――あっ! 白夜! りおち! いつまで腕組んでるのー!」

 みゆの元気なツッコミが飛んできた。

 

 遅いよみゆ。僕はもう、違和感がなくなっていたよ。

 莉音がケラケラと笑いながら、腕を離す。

「やーん、バレちゃった♡」

 その笑い声が、金色の髪と一緒に光を弾いていた。

 

(次の試合が終わったら――貴志にも、この江に少しでも近づくチャンスがあるといいな)

 

 

 

 

 

 Bアリーナの入り口前に立つと、熱気がぶわっと押し寄せてきた。

 照明の反射で白く光る床。ホログラム広告が壁面を流れ、スポンサー企業のロゴが次々と切り替わる。観客たちの歓声が幾重にも反響し、まるで巨大な獣がうねっているようだった。

 

 午前よりも明らかに人が多い。2回戦の山場を見に来た生徒や取材ドローン、学院誌の記者まで詰めかけていて、階段通路までぎっしり埋まっている。

 

「うわぁ……ここ、人気試合多いのかな」

 みゆが目を丸くして、熱気に押されながら言う。

 

「貴志の試合がバトルロワイヤルの最後だからじゃないか?」

 僕が言うと、莉音が僕の腕に軽く体を預けながら笑う。

「な~ほーね、運で勝ち上がるタイプだから……ワンチャンあるんじゃね?」

 

「運任せにしないであげて……」

 僕は苦笑しながら答える。

 

 早川が肩越しに視線をやり、少し目を細めた。

「それにしても、こうして見るとアリーナごとに雰囲気違うな。Aアリーナは“森林”、Bは“砂漠”って感じ」

 

「わかる! なんか熱量が濃いっていうか……汗の匂いまで混ざってる気がする!」

「それはみゆ、気のせいじゃない?」

「いや、ほんとに匂うの!」

 そんな軽口が飛び交い、笑いがこぼれる。

 

 僕たちは少し遅れて入場ゲートをくぐり、観客席へと向かう。

 四方のスクリーンには、選手たちのプロフィールと機体データが順番に映し出されていた。

 

「お、貴志君だ!」

 みゆが身を乗り出して叫ぶ。

 莉音もジュースを掲げ、「がんばれー!」と大声を上げる。

 

 僕の視線は自然とフィールド中央に吸い寄せられた。

 転送ゲートの光が弾け、4機のエイドロンが次々と出現していく。

 その中の一体――見覚えのあるシルエット。

 オレンジに輝く《ナイトアイ》改修機。

 

 関節部のギシギシ音はもうしない。

 右手にはブロードソード、左手にはマシンガン。肩には新しいシールドユニットまで装備されている。

 以前とは比べものにならないほど、堂々とした立ち姿だった。

 

(……やるじゃん、貴志)

 たぶん誰かに相談して改修したんだろう。

 動きも硬さが抜けて、まるで別の機体みたいだ。

 

 機体が正面を向いた瞬間、スクリーンに貴志の顔が映る。

 緊張はしている。けれど、その目はまっすぐ前を見据えていた。

 観客席から見ても、今の彼が本気だってわかる。

 

「……頑張れよ、貴志」

 僕は心の中でそう呟く。

 

 隣で、この江も小さく手を胸に当てて「頑張れ……」と呟いた。

 その声は、歓声の波の中でも確かに届くような気がした。

 

 早川がその様子をちらりと見て、眉を少しだけ上げる。

 僕と目が合った瞬間、あいつは口角を上げて――わずかに、挑むような笑みを返してきた。

(……あー、やっぱり早川ってこの江狙いなのか?)

 

 僕は苦笑しながら、視線をスクリーンへ戻した。

 

 砂嵐が舞い、熱波が揺らめく砂漠ステージの中。

 貴志のナイトアイが、ゆっくりと剣を構える。

 

 アナウンスが響く。

『選手の準備が整いました! Bアリーナ第4試合――開始!』

 

 途端に照明が落ち、中央ステージが金色に染まる。

 観客席から大歓声が爆発し、千の声が重なり合ってうねりとなった。

 

電子音が鳴り、4体のエイドロンが転送ゲートから一斉に走り出す。

 視界いっぱいに広がるのは、黄金色の砂丘と、古代遺跡を模した瓦礫群。

 太陽を模した照明が上空から降り注ぎ、舞い上がる砂粒を照らしてきらめかせる。

 

「うわ……なんか、ここだけ世界違くない?」

 莉音が目を細めてスクリーンを見上げる。

 

「すごい熱気……。貴志君、頑張って……!」

 この江が胸の前で手を組み、祈るように呟く。

 

「まるでカイロだな」

 早川が呟き、白夜は苦笑を返した。

(じゃあ、あそこはゴビ砂漠か……いや、地獄の熱波ステージって感じかも)

 

 

 貴志の《ナイトアイ改修機》は、砂地でも沈まないように脚部関節が補強され、両手のブロードソードとマシンガンを構える。

 機体の塗装はオレンジと黄土色。以前よりもずっと凛々しい。

 

「関節、ちゃんと動いてるね」

 みゆが息をのむ。

 

『おっとぉ! 序盤から仕掛けていくのはクラストブレイカー! 重装の水圧機体だが……この砂漠マップでどう戦う!?』

 実況がテンション高く叫ぶ。

 

 スクリーンには、赤い装甲を輝かせたザリガニ型《クラストブレイカー》が、両腕のハサミを広げて進む姿。

 砂を巻き上げながら、重い足音が響く。

 

『対するは丸いフォルムが特徴のビーム機《シャイニング》! ホバー移動でフィールド中央を確保、早くも照射を開始!』

 純白の機体が、光線を撒き散らしながらホバーで滑る。

 砂粒がビームに照らされ、会場中が金色に染まった。

 

「まぶしっ!」

「うわ、これ観客席まで反射してるよ……」

 

『さらに上空では空戦機《ファルコン》が旋回! 高度五〇メートルからの奇襲を狙う構え!』

 

 スカイブルーの機体が弧を描き、翼の残光が空を裂く。

 その瞬間、観客が一斉に歓声を上げた。

 

 ――そして最後に、貴志の《ナイトアイ》が遅れて動き出した。

 遺跡の影を縫うように前進し、マシンガンを構える。

 

『さて、注目はノービスリーグから唯一残った1年生ラッキーマン! 黄土 貴志選手です! 果たしてラッキーは続くのか!?』

 

 

「やっぱ“ラッキー”扱いされてるじゃん」

「まぁ……間違ってないけどね」

 白夜が苦笑し、莉音が肩をすくめた。

 

 

 会場のモニターに、貴志の機体が映る。

 その動きは慎重だ。以前のように空回りはしていない。

 砂に沈まないよう、重心を調整しながら前進する姿は――

 少しだけ、頼もしく見えた。

 

 

 『っと! クラストブレイカー、早くも仕掛けたぁぁ!』

 

 赤い装甲が閃光を放つ。

 両腕のショットクローが開き、内部の砲口から散弾を連射。

 砂が爆ぜ、白い閃光が遺跡の壁を焼いた。

 

 

『おおっと! ここでシャイニングが応戦! ビーム照射で弾幕を張った!』

 

 二機の攻撃が交錯し、砂煙が立ち込める。

 その上空――ファルコンが急降下した。

 

『出たっ! ソニックダイブ! まるで流星だぁぁ!!』

 

 観客席が一斉に立ち上がる。

 青い残光が砂丘を裂き、クラストブレイカーめがけて一直線。

 

「うおっ、速ぇ!」

「かっこいい……けど、危なくない!?」

 みゆが身を乗り出し、莉音がストローから口を外す。

 

 

 だがその瞬間――

 クラストブレイカーの脚部が地中へ潜り込み、砂を巻き上げた。

 

『おっとぉ!? ハイドロチャージ発動!! 砂中の水分を圧縮して――カウンターォォォ!』

 

 地面が爆ぜ、青い水柱が弾ける。

 ファルコンが衝撃を受け、バランスを崩して横転。

 機体の片翼が砂に突き刺さる。

 

 

「落ちた!?」

 この江が息をのむ。

 

『まさかの空戦機、早くも墜落! だがまだ戦闘続行だ!』

 

 会場の熱が一気に上がる。

 砂煙の中――静かに、ナイトアイが前へ進み出た。

 

 

 




機体名 : クラストブレイカー(CLUST BREAKER)
型式番号: EID-CLB-03


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部位  :
頭(アクアスコープ・センサー)
/右(ショットクローMk-II)
/左(ショットクローMk-II)
/脚(ハイドロドライブ脚部)
/背(水圧タンク・ジェットパック)


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主要数値:
全高:207 cm
重量:360 kg
稼働:19 分
COOL:28 s
HEAT:62 %


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コアスキル:例

《ショットクロー・ブレイク》
 両腕のハサミが開き、内部のショットガン砲を発射。
 近距離での拡散弾が強力。打撃と射撃の連携が可能。

《ハイドロチャージ》
 脚部から水を吸引・圧縮。攻撃スキルの威力を一定時間+30%。
 水中フィールドでは発動時間短縮。

《クラッシュグリップ》
 敵をハサミで掴み、圧壊→近距離爆発射撃に連携可能な掴み技。
 観客が一番沸く“豪快フィニッシュ技”。

《ハイドロスラッシュ》
 圧縮水流を刃状に噴射。中距離対応の水刃攻撃。
 発動時、周囲に水しぶき演出+反動で滑走回避可。


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デザイン

カラー:レッドメタリック × ブラック × ネイビーブルー差し

頭部:カメラアイ+水滴状レンズ(両目風)

両腕:ハサミの内側にショットガン砲口+排熱フィン

背部:小型タンク+高圧パイプが脚や腕に繋がる

全身:ザリガニ装甲を思わせる曲面構造+反射光

発射時、ハサミが「ガチン!」と閉じる音が特徴的。



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