ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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5話(挿絵有)

入学前日の夜。

 荷物の最終確認を終え、階段を降りる。リビングのテーブルには、母さんの手料理がずらり。煮込みハンバーグにポテサラ、そして味噌汁は出汁強め。わかってるな、うちの料理長。

 

「白夜ちゃん、明日から本当に行ってしまうの?」

 母さんは目を潤ませながら言う。泣きぼくろが仕事しすぎている。

 

「もちろん。ずっと楽しみにしてたから」

(にしても、おっさんメンタルにこの“ヒロイン顔”は効く。親に対して語彙が「かわいい」で止まるの、だいぶ末期)

 

 なんでこんな茶番——じゃなかった、しんみりムードになっているかといえば、行き先が全寮制だからだ。

 

 国立エイドロン実践工業高校。通称エイコー。

 プロのリーグ選手、パーツ開発の技術者、ソウルコア研究の第一線——そういう肩書きが卒業生名簿にゴロゴロしている。要するに“本気の場所”。

 

「ほら、学校案内。今のうちに目を通しておけ」

 父さんが薄い冊子を差し出す。表紙には『新入生ハンドブック』。ページを開けば、語るより早い。

 

全寮制。一年目は原則二人部屋。

 

校内リーグはほぼ毎日。勝敗で学内ランクが変動。

 

ランクに応じて寮の部屋格(広さ・設備)と、校内通貨BP(バトルポイント)の支給額が変わる。

 

BPはパーツの売買、実習素材、食堂の“ランク飯”に、学園内のものならなんでも使える。

 

安全規定:武装は競技準拠、違法改造は問答無用で退学コース。

 

(うん、わかりやすい。働いた分だけ待遇が上がる。社会と同じ。違うのは、評価会議が毎日あることぐらい。)

 

もちろん僕は、めっちゃ勉強して一般試験で受かった。

 

この学校の特徴はなんといっても、校内リーグ戦がほぼ毎日あり常に順位が付けられているところ。もちろんそれによって部屋のランクが変わったり、校内で使えるお金バトルポイント通称BP支給されたりいろいろ特典がつくのだそう。

 

こんな学校あったら目指さないわけないよな!ってことで無事入学の前日。

母さんが全寮制なんて嫌!離れ離れになるなんて嫌!とダダをこねている。

イマココ

 

 

「……でも、寮かぁ……」

 母さんはため息まじりに、白夜仕様のお皿へハンバーグを二枚乗せてきた。増量。逃れられない母の愛。

 

「会えなくなるわけじゃないだろう?」

 父さんが肩を抱いて宥める。低音ボイス+包容力。プロの所作。

(この人は本当にイケオジの教科書みたいな動きをする。無駄がない。ずるい)

 

 

 

寝る前、窓の外は春の夜風。

 腕輪の中には《ハクロ》。白黒ツートンに塗り直され、内部は二週間でだいぶ“戦える”仕様になった。

(さあ、次は学園だ。無理せずやれるとこまで、でも勝つ。)

 

 ベッドに潜り込み、意識が落ちる直前に思う。

(彼女? ……まあ、縁があれば。十代の恋は“実地研修”に近い。慌てない、焦らない。楽しくやれたらそれで良し。さぁ寝よっと)

 

 

翌日、快晴。

 校門には「祝 入学式」。制服は新しい布の匂い。左腕には腕輪、胸ポケットには母の羽根守り。

 

 敷地に入ると、まず巨大な実技棟が目に入る。

 ガラス越しに見えるのは、縦に広い多層フィールドとパーツ試験用のクレーンレール。整備ベイの赤い警告灯が、ぽつぽつ点いては消えている。

 

(表の顔は“学校”。裏の顔は“工場と競技場”。エイコー=学びながら回す現場、というわけだ)

 

 受付を済ませて入学式が行われる体育館に足を運ぶ。

 新入生たちは皆、腕輪型やタブレット型のデバイスを手に浮き足立っている。

「俺のエイドロンまだ組めてないんだよなぁー」「私は、ホワイトプリムのセット買ったよ?」

 声が飛ぶたび、こちらの十代メンタルも少しだけ温まる。

 

 体育館。

 壇上では校長が要点だけ話し、だらだら長くはしない。良い文化だ。

 入学式の最後に告げられたのは、一枚のスライド。

 

 

> 『校内リーグ・プレシーズン、明日から開幕』

・各クラス総当たり戦(安全規定準拠)

・上位は実技棟の上層フィールドを優先使用

・BPは成績に応じて支給。

 

 

(ふーん、モチベの設計。設備、待遇の差別化。合理的かつ露骨。嫌いじゃない)

 

 式が締まり、ざわめきが広がる。

 俺は腕輪を軽く叩いた。

「行こうか、ハクロ。まずは寮だ」

 

 返事はいつも通り、静かで頼もしい。

 

(さて——“原作があるならここから主役くんの光るターンだ。

 僕は脇でうまく立ち回る。必要ならサポートもする。あと、勝つときは勝つ。

 大人の立ち振る舞いって、だいたいそれで正解だ)

 

 白黒の羽根守りが、ポケットの中で小さく揺れた。

 

 

 

 

1年生寮へ向かって団体で向かう。

 

 一年生寮へ向かって団体で歩き出す。

 敷地が広いなんてもんじゃない。建物群はほぼ街だ。校舎から寮までちょっとしたハイキングコース。

(なるほど、今日は入学式だけにして正解だ。オリエンテーションまで入れたら荷物の整理なんてしてる時間はないな)

 

 

 周囲では何人か、知り合い同士で談笑している。中学からのつながりか、同じ地元組か。

 

先導の職員が要点だけ告げる。

「各自、まずは入寮手続きをして各自荷解きをしてください。明日から忙しくなリますよ。準備を万端に」

 

 受付の列が徐々に短くなるのを眺めつつ、“主役顔”を探す。

 

 ——だが、どうもそれらしい人間が見当たらない。

 髪色がやたら派手な奴はいる。緑、黄色、メッシュが入っていたり、出てきそうなのは居る。

 けれど「この子が主人公です!」ってオーラは感じられない。

(僕の勘違いか? いや、この手の物語なら必ず居るはずなんだが……もしかしてそういうのじゃない?)

 

 シルバーグレーのセンター分け、鏡を見れば自分が一番“王子様キャラ”に見える始末。

(……おかしい。どう見ても僕のほうが目立っている)

 

 そんな疑問を胸に、寮の受付列を終えてカードキーを受け取る。

 部屋は七階。エレベーターへ向かう。

 

 

 ちょうど乗り込もうとしたとき、てててっと駆け足の足音。

 僕は開くボタンを押して待った。

 

「あ、ありがとうございます……」

 息を整えながら飛び込んできたのは、白とピンクが混じる髪をした、儚げな美少女。

 

「良いですよ。何階ですか?」

 平静を装って尋ねる。

 

(……ちょっと待て。この子、間違いなくヒロイン顔じゃないか? 

 というか、この寮、男女混合で同じエレベーター使うのか。健全な十代が青春のど真ん中で共同生活……リスク管理的にどうなのそれ。いや健全だからこそ成立してるのか?)

 

「な、七階お願いします」

 恐る恐る答える。

 

「僕も同じ階だ。ちょうど良かったよ」

 不審に思われない程度の柔らかい声で返す。こういう場面、顔見知り程度の関係は持っておいたほうがいい。イベントが起きるのは決まって隣人だからだ。

 

「同じ一年生だよね? クラス分けはまだだけど、よろしく。僕は白銀 白夜」

 両親譲りの端正な顔と、社会人経験で磨いた“対人スキル全開スマイル”を添える。

 

「……佐倉 桃香です! よろしくお願いします!」

 少し驚いたように目を見開いた後、桃香ははっきりと返してきた。

 

(よし、会話成立。これで顔と名前は覚えてもらえたかな。

 にしても、この反応……想像以上に初々しいな。ああ、十代のリアクションだ。懐かしい)

 

 

 

“ピン”。7階に到着。

 フロア案内を見ると、男子はEウイング/女子はWウイングで分かれていた。

 桃香は手を振ってW側へ。僕はE側へ。

 

 

 

 角を曲がって7E-12。カードキーを翳すとカチャと開錠。

 部屋は二人部屋。ベッド二つ、机二つ、ロッカー二つ。それぞれの壁際には簡易整備台。

 

(なるほど、エイドロンの為の学校だね)

 

 荷物を置いたところで、ドアが再びピッと鳴った。

 入ってきたのは、短髪で背の高い男子。グレーのスウェットに工具ポーチ。

 

「おっと……あ、同室か。俺、工藤 鉄平。よろしくな」

「白銀 白夜だ。よろしく」

 握手。

 

「白夜な!よろしく頼むぜ、早速なんだけどさ、エイドロン組み上がってる?」

(距離の詰め方、早っ。いや高校生ってこんなにフランクだっけ? オジサン目線だとだいぶ近いぞ)

 

「千成航空機エンジン社の新型をメインに組んでる。腕は別シリーズだけどね。工藤くんは?」

 

「テッペイでいいぜ。ルームメイトなんだしさ!俺のエイドロンは《キャリア》。パーツ開発とか整備系を目指して入ったんだ」

 

 EID-CAR《キャリア》。整備と運搬に特化したモデルだったな。

 

 

「白夜の新型、ちょっと見せてくれない? この前発表されたやつだろ?」

 テッペイはベッド脇に工具ロールを広げ、慣れた手つきで荷解きをしながらこちらを見る。

(うん、完全に“機械いじりが楽しくて仕方ないタイプ”だ)

 

 

「良いよ」

 僕は腕輪をタップ。レーザー柱が整備台の上に短く走り、整備台にハクロが現れる。

 

「おお……白と黒!カッコいいじゃん、白夜!」

「リペイントもしてもらったからね」

「くうぅ、こだわり出てるな!最高だな!」

 

 

壁のスピーカーが鳴った。

『新入生各位、17時から寮食堂でオリエンテーションを行います。学生証とBPカードを持参してください』

 

「荷物片付けたら行くか?」

「そうだね。テッペイはもう終わってる?」

「バッチリ!その間、白夜のエイドロン見させてもらうわ。触らないから安心しろ!」

 

僕は苦笑してうなずき、荷物を片付ける。

 テッペイは真剣な顔で、時々ペンを走らせながらハクロを観察していた。

 

(……うん。良いルームメイトに当たったかもな)

 

 

 

 

 食堂は、いわゆる“学生カフェ”とのハイブリッド。

 もうけっこうな人数が集まっていて、わいわいと賑やかだ。時刻はそろそろ17時。

 

 数人の職員が壇上に上がり、僕らを座るように促す。。

 

「これから、学内で使える学生手帳を配布します。この手帳には初期支給として5万BPが振り込まれています。以降は月ごとに成績で変動するので、使い方には注意するように」

 

(なるほど。完全に実力主義ってやつだな)

 

職員はさらに続ける。

「BPは、1BP=1円と考えてくれていい。

 たとえば3年の上位者には、月100万BP以上支給される例もある。——新入生諸君も、切磋琢磨してくれることを願う」

 

(数字を出してやる気を煽る戦法か。まぁ、高校生なら単純に燃えるだろうな)

 

 「100万もあれば、あのパーツもこっちのも……全部いけるぞ!」

 

 彼の脳内にはすでに改造図が浮かんでいるらしい。

 おいおい、まだ開幕前だぞ。

 

 

「この生徒手帳では、明日から始まる校内リーグの対戦表や個人ランキングも確認できる。毎日しっかりチェックするように」

 そう言いながら、職員たちは順に生徒たちへ手帳を配っていく。

 

「受け取った者から、自分の名前とエイドロンのコア名を登録するように。

 コアレベルも表示され、ランキングに反映される。努力を怠らぬように」

 

 手帳を受け取り、僕はそのまま「白銀 白夜」と「ハクロ」と入力する。

(UIも見た目も、ちょっといいスマホって感じだ)

 

 

 

「説明は以上だ。質問のある者は?」

 

 前の方で、黄色い髪の少年が控えめに手を挙げた。

 

「質問です。まだエイドロンが完成していない場合は……どうすれば?」

 

 声にちょっと不安が混じってる。

(まあ、フル構成の戦闘機体をゼロから揃えるとなると、普通に50万BP超え。そりゃ足りない)

 

 

「安心していい。工業実習棟には、リサイクルパーツが多数揃っている。格安で購入できるはずだ。

 それに、商業棟では学生製のパーツもBPで手に入る。

 基本フレームがない者も、学生課に申請すればE-フレームが支給される」

 

(つまり、最低限は揃う。性能は……まあ、お察しだろうけど。

 頑張れ、黄色い少年)

 

 職員は一通り確認してから、締めに入る。

 

「以上で終了だ。以後は時間割に従って行動するように」

 そう言い残して、職員たちは食堂を後にした。

 

 

 

「テッペイ、とりあえず飯にしよう」

「おう! 腹が減っては戦も整備もできねぇからな!」

 

 笑って頷き、食券機へ。

 その途中で白とピンクの髪が目に入った。佐倉 桃香。

 向こうも気付いたようで、小さく会釈。僕は微笑んで軽く手を振る。

 

 横でテッペイが声を上げる。

「おいおい白夜、あんな可愛い子ともう知り合いなのか?

 やっぱイケメンだと人生違うなあ!? なあ!」

 

 テンション高めに絡んでくるテッペイ。

「いやいや、そんな感じじゃないよ」と苦笑いで受け流す。

 

 食券機のメニューを眺めながら考える。

(昨日はハンバーグだったし、今日は蕎麦にしよう。

 ある意味“引っ越し”したし——引っ越し蕎麦ってことで)

 

天ぷら蕎麦・700BPを選択。

 外食として見れば安いけど、3食30日+パーツ代と考えると、5万BPなんてすぐに溶けそうだ。

 

 テッペイは500BPのカレーを選んでいた。

 

 横を見ると、ショーケースの中でケーキ:2000BPが煌めいている。

 それはもう、眩しいくらいに。

 

(……あれはきついな)

 

 

 

 品を受け取り、席へ。食べる前に、テッペイが口を開く。

 

「白夜、明日のプレシーズンって何戦目?」

 

「午後の一本目。昼食終わったらすぐだね」

 

「うわ、マジか。俺は午後の三本目。

 午前で授業終わって助かった〜と思ったら、初日からバトルってハードすぎる!」

 

「戦闘系じゃないと特にきついかもな。技術職系は別試験あるんだろ?」

 

「そうそう! 俺はそっちで稼がねーと!」

 

「じゃあ、お互い頑張ろう」

 

「おう!」

 

 拳を軽くぶつけ合う。

(……うん、これは、紛れもなく青春ってやつだ)

 

 

 

 

 

 食器を返し、寮に戻る。風呂、ストレッチ。

 ベッドの上で生徒手帳を開き、明日の予定をチェック。

 

 テッペイはデバイスでルールブックを倍速再生中。真面目だ。

 

(それにしても、“主役くん”探しは不発だったな。

 もしかして、今年はいない……いや、まだ覚醒してないだけかも。

 どっちにしても——僕は僕のやるべきことをやるだけ)

 

 ベッドサイドのランプを落とし、

 ロッカーの取っ手に羽根守りをそっと結びつける。

 

 腕輪に軽く触れて、

 

「おやすみ、テッペイ」

 

 手を挙げる彼を横目に、ベッドに潜る。

 

(初戦は勝つ。確実に。

 ——だって僕は、大人だからね)

 




機体名 :キャリア
型式番号:EID-CAR-01
製造社 :東邦メカトロニクス

コア  :

部位  :
頭(作業用センサーヘッド:周囲環境の分析と重量計測が可能)
/右(マニピュレーターアーム:精密作業対応の多機能ハンド)
/左(リフトアーム:小型フォークリフト機能付き。重量物を支える設計)
/脚(強化安定脚部:重量物運搬時にバランスを保つ。最高速度は遅い)
/背(カーゴラック:荷物やパーツを固定して運搬可能)

主要数値:
全高  :195cm
重量  :260kg
稼働  :70分(作業用ゆえ長時間稼働設計)
COOL  :8s(低出力機構なので冷却は早い)
HEAT  :上限90%(戦闘行動には耐えにくい)

コアスキル:


備考  :

東邦メカトロニクス製の整備・運搬支援型エイドロン。

戦闘には不向きだが、工業実習や後方支援では欠かせない存在。

強度・安定性に優れ、重量パーツや資材の輸送に特化している。

テッペイはこのキャリアをベースに、パーツ開発や改造の実習を目指している。

工業系の学生には特に人気のモデル。


「戦場の裏方こそ、勝利の影の立役者!
整備も輸送も任せろ、万能ワーカー《キャリア》!」


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