ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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51話(挿絵有)

 午後のリーグ戦は、週末のあの熱気を思えば少し拍子抜けだった。

 相手はどれも実力が中途半端で、いわば“経験を積むための練習試合”みたいな空気。

 フィールドも静かで、歓声もない。ただ、各機体のモーター音だけが響いていた。

 

(まぁ、こういうのも悪くはないけどな)

 淡々と戦って勝利を重ねながら、僕は心のどこかで貴志の顔を思い浮かべていた。

 彼みたいに節約してでも機体の強化に回すやり方――地味だけど、結果的には一番効率がいい。

 結局、エイドロンってのは“見栄え”じゃなくて、“積み重ね”がものを言うんだ。

 

 ただ、そういう思い切りの良さを持ってる人をは少ない。

 半分くらいは遊びに金を使って、高校生活に慣れるとこから入る。

 まぁ、それも青春のうちか。

 思い切りの良さってのは悪くないしな。

(とはいえ、生活費まで削るのはさすがにやりすぎだけど)

 

 そんなふうに過ごしているうちに、月曜から金曜があっという間に過ぎていった。

 僕は少しずつ、週末の“本戦”――決勝トーナメントの緊張感へと変わっていく。

 

 

 そんな中一気に緊張が奔った出来事があった。

 水曜日の授業が終わった頃に決勝トーナメント表が発表された。

 

 手帳で試合アプリを開いて確認する。

 

 

 ――初戦から、貴志と礼人がぶつかる。

 

「……マジかよ」

 僕はその表を見上げながら、思わず声を漏らした。

 

 横にいた早川は、口の端を上げて小さく笑う。

「ラッキーマンかぁ、なんとかなるだろ」

「……おいおい、最近リーグ戦でも調子いいみたいだから油断してると負けるぞ」

 

「白夜は逆のブロックか?」

「そう。僕は上級生相手みたいだね」

 

「俺はラッキーマン相手に楽させて貰うよ」

 そう言って軽くウインクしてくる早川。

 本気とも冗談ともつかない笑み。だけど、目だけは鋭い。

 

「ま、僕は貴志の応援かな?」

 僕がそう言うと、早川は肩をすくめて歩き出した。

「まぁいいよ。野郎の応援より女の子に応援されたいしね」

「一理ある」

 

 ほんとに、こいつは余裕の化け物だ。

 

(うーん……まさか初戦でぶつかるとはな)

 貴志は運を味方につけるタイプだ。

 だけど、今回は相手が悪い。

 腹黒の天才・早川礼人。冷静で、計算高くて、勝ち筋を外さない。

 

 

 *

 

 

 

 その日のリーグ戦が終わったあと、自習室で勉強していたら、貴志が勢いよく飛び込んできた。

 

「白夜っ!! 見たか!? 俺、初戦が礼人だぞ!!」

 

「……知ってる。あと、ここ自習室だから声下げろ」

「やばいよな!? 勝てる気しない!!」

「いや、聞けよ」

 

 まるでテンションが上がりすぎた子供みたいに、貴志は喋り続ける。

 僕が苦笑していると、ようやく自分の声の大きさに気づいたのか、「あ、ごめん」と言って椅子に腰を下ろした。

 

「……まぁ、相性は悪いな」

「だよな! 早川って強いんだよな? 俺、あんまり対戦してるとこ見たことなくてさ!」

 貴志はどこか不安げに、何かに縋るように僕を見つめてくる。

 

 

「僕もあんまり見てなかったけど、奇襲が得意なタイプじゃないかな?」

「どういうことだってばよ!!勝たなきゃマズイんだよ!」

 

 僕は小さく笑って、手にしていたペンを置いた。

「あんまり助言しすぎるのもフェアじゃないだろ。……それに、静かにしろよ」

 

 その瞬間、貴志の動きがぴたりと止まった。

 そして、顔がみるみる赤くなる。

 

「い、いや! でもさ……この江との仲、応援してくれるって言ったじゃんか!」

 

「は?」

 一瞬、何を言っているのか理解できなかった。

 

(この江との仲? 礼人と関係あるのか?)

 

 僕はため息をついて立ち上がった。

 

「場所変えるか」

 

 

 

 夜の風が少し冷たい。

 校舎裏のベンチに腰を下ろすと、貴志は落ち着きなく足を揺らしていた。

 

「で、“この江との仲”ってどういう話? 礼人となにかあったのか?」

 

「……さっきさ、早川とこの江が2人で話してて。たまたま通りかかったんだけど」

 

「うん、それで?」

(まぁ、最近は僕ら6人で行動することが多いし、珍しくもないけど)

 

「早川が、“初戦勝ったら今度遊び行かない?”って誘っててさ……」

 

「……なるほど」

(礼人のやつ……やっぱりこの江狙いか)

 

「それで、この江も“いいよ”って言ってて。俺、てっきり両想いだと思ってたのに……なんか違う気がしてさ」

(うん、それは勘違いだ。少なくとも今のこの江は、貴志のこと“友達”としてしか見てない)

 

 

「俺、女子と喋んの苦手だし……なんか、もう自信なくしてきた」

 うつむく貴志の声は、さっきの勢いが嘘みたいに小さい。

 

「この江が何考えてるか、全然わかんねぇよ……」

「まぁ、女子ってのはそういうもんだ」

「白夜はわかってるくせに言うなよ!」

「わかってねぇよ。俺だって観察してるだけだ」

 

 沈黙が流れる。風が木の葉を揺らし、遠くで工房の換気音が鳴った。

 

「……なぁ、白夜。俺、どうしたらいい?」

 

 貴志の声には、焦りよりも“迷い”があった。

 僕は少し考えて、まっすぐ彼を見た。

 

「簡単だよ」

「え?」

「礼人に勝て」

 

 貴志が驚いたように目を見開く。

 

「結果出してみせろ。言葉より、行動で見せろよ」

 

 沈黙のあと、貴志がぎゅっと拳を握りしめた。

「……ああ。やってやるよ」

 

 その横顔は、いつになく真剣で――

 少しだけ頼もしく見えた。

 

(そうそう、その顔だよ。自信は、努力のあとについてくる)

 

 僕は立ち上がり、空を見上げた。

 夜雲の向こうで、月がうっすらと光っている。

 

「……同じ1年生なんだ。上級生よりずっと可能性はあるだろ」

「任せろ、“ラッキーマン”の名は伊達じゃねぇ!」

 

 貴志の声が、夜の校舎に響く。

 

 

 *

 

 ――そして週末。

 決勝トーナメント初日。

 運命の“初戦”が、いままさに始まろうとしていた。

 

 アリーナを見下ろす観客席は、まるで熱を帯びた海のようだった。

 光と歓声が渦を巻き、金属の床が震えるほどの熱気が立ちこめる。

 僕は莉音、元気、みゆ、そしてこの江と並んで座り、視線をフィールドへと落とした。

 

「うわ、観客多っ!」

 みゆが驚いた声を上げる。

「決勝トーナメントだもんね。負けたら終わりの舞台だよ」

 僕は苦笑しながら答えた。

 

 巨大スクリーンが一斉に明るく光り、実況の声が会場を震わせる。

 

『さぁ皆さんお待たせしましたぁぁ!! ついに始まります、学院戦技大会――決勝トーナメント第1回戦ッッ!!』

 

 観客の歓声が爆発する。

 光の粒が舞い、ホログラムの演出がステージを彩った。

 

『赤コーナーに立つのは、クールスマイルの策略家ぁぁぁ!! ――早川礼人ぉぉぉ!!』

 

 スポットライトが礼人を照らす。

 彼はいつも通りの爽やかな笑みを浮かべ、会場の声援に軽く手を振って応えた。

 その所作ひとつが絵になっていて、女子席から小さな歓声が上がる。

 

『対する青コーナーは――! 奇跡に奇跡を重ね、ここまで勝ち上がった1年生の星!! “ラッキーマン”の名をほしいままにする男!! 黄土貴志ぃぃぃ!!』

 

 名前が呼ばれた瞬間、貴志の肩がびくりと揺れた。

 スクリーンに映る顔は、緊張で若干引きつっている。

 それでも、歯を食いしばって拳を握るその姿に――僕は胸が熱くなる。

 

 

(……対照的だな。落ち着けよ、貴志)

 

 観客がざわめく中、アナウンスが響く。

『初戦の舞台はコロッセオ・フィールド!!』

 

 スクリーンに映し出されたのは、円形の戦場――中世の闘技場を模したステージ。

 石柱が並び、壁面には砕けた跡。

 遮蔽物はほとんどなく、戦う場所を選べない正面衝突型のフィールドだった。

 

(……平地。ナイトアイの火力と装甲なら悪くない)

 

 ほどなくして、礼人と貴志がそれぞれのオペレーターデバイスを装着し、視界同期のゴーグルをかける。

 転送ゲートが起動し、アリーナ中央に二つの光が弾けた。

 

  転送ゲートが点灯し、二機のエイドロンがフィールド上に召喚される。

 礼人の《シノビエッジ》が紫の煙をまとって姿を現し、

 貴志の《ナイトアイ》が眩いオレンジの光とともに現れた。

 

「どっちも……頑張れよ」

 小さくつぶやく僕の声は、歓声にかき消された。

 

 隣で莉音が「あーしは礼人応援するー」と元気に叫ぶ。

 すかさず元気も乗る。「俺もだなー!黄土とは喋ったことねぇし」

 みゆは「じゃあバランスとって私が貴志くん!」と笑い、僕もそれに合わせて「僕も貴志を応援しとくよ」と返す。

 

 そのとき、この江がぽつりと呟いた。

「……私は、どっちも頑張ってほしいな」

 

 その柔らかい声に、莉音が「このちー、ずるいよー」と口を尖らせる。

「じゃああーしも2人応援する!」

 みゆもすかさず「じゃあ私もー」と笑って、四人の笑い声が響いた。

 

 みんなが笑い合う中、僕は少しだけ視線を落とした。

 ――水曜日に貴志が話してくれたあのこと。

 礼人とこの江の間に流れる空気。

 結局、僕はどちらにも何も聞かなかった。

 あれはもう、僕が口を出す話じゃないと思ったからだ。

 

 ステージ上の照明が落ち、観客席のざわめきが静まり返る。

 決勝トーナメント第一試合――まもなく開始。

 

(……どっちが勝っても、もう元には戻れない気がする)

 

 アナウンスが響いた。

『戦技大会、決勝トーナメント第1試合――開始ィィィィ!!』

 

 

 *

 

 開始の合図と同時に――

 

「焔丸、突っ込めッ!」

 貴志の声がオペレーターマイクを通じて響く。

 轟音とともに、貴志の《ナイトアイ・焔丸(ほむらまる)》が砂煙を蹴り上げて疾走する。

 重厚な脚部が石畳を踏み砕き、エンジン音が低く唸った。

 そのオレンジの光が一直線に礼人の《シャドウエッジ・オボロ》へと向かう。

 

『おっとぉ!! 試合開始直後から黄土選手のナイトアイが突貫だぁ!! 大胆すぎる初手ッ!!』

 実況の声が響く。観客席のどよめきが重なり、まるで地鳴りのようだった。

 

「オボロ、スモークミラー」

 

 礼人の低い声が通信に拾われる。

 シャドウエッジ――《オボロ》の背中の噴出口から大量の煙が噴き出した。

 濃密な紫煙がフィールド中央を覆い尽くす。

 まるで夜が落ちたように、視界が一瞬で奪われた。

 

 

 煙幕は瞬く間に広がり、フィールド中央が紫の靄で包まれる。

 照明が反射し、幻想的な霧の中で、オボロの輪郭が消えていった。

 

「視界が……!」

 みゆが思わず声を上げる。

「なにあれ……見えないじゃん!」

 莉音がスクリーンを見つめながら呟いた。

 

 貴志のナイトアイ《焔丸》は、両目のセンサーをフル稼働させる。

 視界には紫色のノイズが走り、赤外線も反応が取れない。

 完全な遮断――オボロの“存在抑制”の力だ。

 

「焔丸、警戒しろ!」

 貴志の指示に応じ、焔丸は前傾姿勢を取り、

 左肩の棘付きショルダーシールドを前方に構える。

 金属が軋む音が、戦場の静寂に重なった。

 

 ――ヒュッ。

 

 空を裂くような音。

 次の瞬間、煙の中から閃く影。

 光を反射して飛来する黒い刃――苦無だ。

 

『おおっと!!煙の中からクナイが飛んでくる! ナイトアイがしっかりとブロックゥ!』

 

 ガンッ!!

 焔丸のシールドがそれを弾いた。

 火花が散り、刃が床に跳ねる。

 

「見えた! あそこか!」

 貴志がデバイスを操作し、反撃に転じる。

 左手のマシンガンが連射音を響かせ、

 煙の中へと無数の弾丸を撃ち込む。

 

 だが――命中音がない。

 撃ち抜かれたはずの影が、煙の中で滲んで消えた。

 

「ハズレか!?」

 焦りの声がマイクを通じて響く。

 

 それでも貴志は止まらなかった。

 焔丸は右手のブロードソードを振り上げ、

 大きく一閃――風圧で煙を切り裂く。

 

 舞い上がる砂と煙が流れ、

 スクリーン越しに映し出されたのは――

 

 二体の《シャドウエッジ》。

 まるで鏡写しのように同じ動きをしている。

 

「二体いるよっ!?」

 みゆが思わず立ち上がった。

 莉音も目を丸くしてスクリーンを指さす。

「やっば……本物どっち!?」

 

『なにが起きているんだぁぁ! シャドウエッジの分身だぁぁ!! 本体はどっちだ――!?』

 実況の声が響く中、2体のオボロが同時に動いた。

 

 片方のオボロは右側を疾走し、もう片方は左から回り込む。

 その残像がゆらめき、地面に影が三つ見えた。

 どれが実体か、見極めることすら難しい。

 

「煙と分身……本体と影を完全にシンクロさせるタイプか?」

 

 礼人の戦い方――いつもながら、冷静で計算されている。

 相手の動揺を誘い、先に攻撃させる。それが“彼らしい”。

 

 焔丸はブースターを噴かし、距離を詰める。

 だが、弾丸を撃ち込んでも影はすり抜ける。

 逆に、煙の中から伸びた影が斬撃を放ち、焔丸の肩装甲をかすめた。

 

「くっそっ、どっちが本物なんだよっ!」

 貴志が舌打ちしながらデバイスを握りしめる。

 焦りが声ににじんでいる様子がスクリーンに映る。

 

「落ち着け、貴志。礼人は焦らせるタイプだ」

 ――“焦り”こそが、早川礼人の餌だ。

 

 煙の中で、刃が交錯する閃光が二度、三度。

 音の残響が途切れ、観客席の緊張が一気に高まる。

 

 次の瞬間――紫煙を割って、

 焔丸の腕をかすめた黒い影が閃いた。

 

 礼人の声が再び響く。

「オボロ――《サイレントエッジ》」

 

 静寂を裂く、無音の斬撃。

 音も風もなく、ただ金属が切り裂かれる瞬間だけが映った。

 

 スクリーンに映るその一閃は、

 観客の息を止めるほど美しく――そして、恐ろしかった。




機体名 : ナイトアイ(KNIGHT EYE)改修型
コア  : 焔丸

---

部位  :
頭(NGT-HEAD-KNIGHT:角飾り付きバイザー型)
/右(NGT-RARM-BLD:ブロードソードユニット)
/左(NGT-LARM-SHD:マシンガンユニット)
/脚(NGT-LEG-STD:重装歩行型レッグ)
/背(NGT-BACK-CLOAK:マシンガン弾薬、手投弾ボックス)

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主要数値:
全高:195 cm
重量:380 kg
稼働:28 分
COOL:12 s
HEAT:65 %

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デザイン

カラー:オレンジ × レッド× ゴールドライン

頭部:ナイトバイザー(騎士のバイザーヘルメット)

背部:リュック背負った様な見た目。ランドセルとも言われる。

腕部:左手にはマシンガン、右は鋼鉄のブロードソード。左肩には棘付きのショルダーシールドがついている。

脚部:安定性重視の重装脚。歩行時に金属質の低い共鳴音を鳴らす。

視覚演出:一見中世の騎士をモチーフにした機体だが。リサイクル品から寄せ集めて作られた機体のため少しちぐはぐな印象を受ける。
ただマシンガンを持つことで遠距離の対応手段が増えた。

「勇気」「王道」「成長」


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