ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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生徒手帳の呼び方考えました。



64話

 僕のコア表示は確かに奇妙だった。

 通常、コアレベルは“単一値”で表示される。

 だが、ハクロのコアは“白”と“黒”の二重構造として別々の数値を示していた。

 

「見ろ。これが俺のデータだ」

 御門先輩が自分のデバイスを表示して見せる。

 

コア《ボナパルト》

所有者:御門 隼人

黄金色のコア

合計値:282

 

「282……!」

 白夜は思わず息を呑む。

 凄まじい数値だった。4倍以上の差――さすが御門先輩、と素直に思った。

 

 だが、御門先輩は淡々と指を差す。

「白銀、見るべきは数値じゃない。表記の構造だ。お前のコアには“二つの軸”がある」

 

 御門が自分のデータを指し示す。

 そこには「合計値:282」としかない。

 対して白夜のコアには「白:36/黒:22」と二重表記があってそれに加えて合計値がある。

 

「……これって、珍しいんですか?」

 

 藤堂室長が身を乗り出す。

「珍しいどころか、俺も初めて見た。

 レベル表記が二つあるなんて、エイドロン史上聞いたことがねぇ!」

 

 藤堂室長はもう完全に興奮状態だった。

 椅子を蹴るように立ち上がり、机の上のケーブルを掴む。

「おい、ちょっと貸せ。今すぐ解析する!」

 

「壊さないでくださいね?」

 思わず苦笑いしながら、白夜はコア《ハクロ》を取り外して差し出した。

 

「壊すかよ! そんなレアなもん!」

 藤堂はそれを奪い取るように手に取り、台の上に置く。

 

「安心しろ。俺も昔、ボナパルトをここで調べてもらった。――こんな感じだ」

 そう言って、デバイス上に自分の機体データを映し出す。

 

 パラメータ表が浮かび上がった。

 

パラメータ 数値

 

近接 15

機動 38

制御 75

射撃 78

防御 22

特殊 52

 

「これが6月時点のボナパルトだ。ここのラボなら、出力バランスも精密に測定できる」

 

 白夜は息を呑んだ。

 ただのデータじゃない。ひとつひとつの数値に、御門先輩の戦闘スタイルが刻まれている。

 

「な……なるほど……」

 圧倒されている白夜を横目に、藤堂室長は完全に夢中になっていた。

 コアに複数のケーブルを接続し、端末を何台も起動させ、興奮を隠そうともしない。

 アストレアは呆れながらも手際よくサポートしている。

 

「へっへっへ……こりゃ面白ぇもん見つけたな……」

 その目は完全に研究者の狂気。

 御門先輩が黙って腕を組む中、藤堂室長は笑いを抑えきれず、歯を見せて呟いた。

 

「――白銀。お前の《ハクロ》、間違いなく“普通じゃない”ぞ」

 

 

 

 

 

 

藤堂ラボの静寂を破るように、解析装置の駆動音が唸りを上げた。

モニターには複雑な波形と膨大な数値が流れ続け、青白い光が室内の顔を照らしている。

アストレアは後ろで手際よく補助端末を操作しながら、時折「はい、データ通りました」「調整完了です」と報告を挟む。

 

白夜はただその様子を見つめていた。

藤堂室長は、もはや人ではなく“研究そのもの”だった。

髪は乱れ、表情は興奮に歪み、瞳だけが異様なほどに輝いている。

御門先輩が横で腕を組み、じっとその作業を見守っている。

 

一時間後。

 

「――待たせたな」

背後から声が響く。振り返ると、藤堂がケーブルまみれの手でハクロのコアを持ち上げていた。

アストレアは紅茶を二人の前に置きながら、疲れたように微笑む。

 

「お疲れさまです。解析完了ですね」

 

「おう、ようやく分かってきたぜ……お前の《ハクロ》、やっぱり只者じゃねぇ」

藤堂は端末を操作し、結果をホログラムとして投影した。

 

 

 

コア《ハクロ》

 所有者:白銀 白夜

 白黒のコア(白:36/黒:22)

 合計値:58

 

パラメータ 合計値(白/黒)

近接 13(2/11)

機動 15(11/4)

制御 10(9/1)

射撃 12(11/1)

防御 5(1/4)

特殊 3(1/2)

 

 

「これが今の《ハクロ》の総合出力だ。単純に言えば――“二つのコアを一つに束ねてる”状態。――つまり“二相構造”だな」

 藤堂の声は、もはや講義というより発見者の歓喜に近い。

 

「二つの……コア?」

白夜は思わず呟く。

 

御門先輩が身を乗り出す。

「室長、それはつまり、一般よりも成長が倍速ということですか?」

 

「んー……まだ断定はできねぇ。だが二相コアってのは初めてだ。

 仮にこのまま順調に数値が伸びたら――卒業時には500台も夢じゃねぇな。因みに“双相コア”って名付けた」

 

 白夜は言葉を失った。

 今の御門先輩ですら280。

 500という数値が、どれほど異常なものかすぐに分かる。

 

「それって……凄いんですよね?」

 自信なさげに問う白夜に、藤堂室長は大げさに肩をすくめた。

 

「“凄い”なんてレベルじゃねぇ。今の世界記録が400台だ。

 しかも企業所属のトップオペレータークラス。

 学生の身で500? それこそ化け物だ」

 

 机を叩きながら笑う藤堂。

「御門、うかうかしてるとあっさり抜かれるぞ」

 

「ふん。簡単に抜かれる気はない」

 御門先輩の声は静かだが、その瞳には確かな闘志が宿っている。

 白夜はその横顔を見つめ、改めて思う――この人は、本気で強さを信じている。

 

「いやいや、今は笑っていられるけどな……」

 藤堂はにやりと笑い、白夜の方に指を向けた。

「御門が卒業するまで、あと八ヶ月くらいだろ?

 ――いい卒業祝いを渡せそうだ。“敗北”っていう最高のやつをな!」

 

 豪快な笑い声がラボに響く。

 白夜は苦笑しつつも、胸の奥で不思議な熱を感じていた。

 

(この人……どこまで本気なんだ?)

 

 だが、その熱気に包まれるうちに、白夜の心は確かに燃え始めていた。

 御門という完璧な存在に挑む道。

 そして、自分の中に眠る“二つのコア”――。

 

 新たな章の幕開けを告げるように、ハクロの核が微かに脈動した。

 

 

 

 

 

 

「もうこんな時間か。じゃあお前らも解散なー」

 藤堂室長が面倒くさそうに手を振る。ラボに入ったのは昼過ぎだったのに時計の針はすでに17時を回っていた。

 ラボ全体の照明が一段階落ち、白い蛍光灯の代わりに淡い青光が壁面を照らす。夜間モード――研究棟はこれからが“静寂の時間”だ。

 

「俺もすることがある。失礼します」

 御門先輩が立ち上がると、空気がまた引き締まる。彼は振り返らずに出口へ歩き出しジャケットがすれ違いざまにふわりと翻った。

(あの背中……やっぱり遠い)

 白夜は思わず見送る。憧れと、焦燥の入り混じる視線だった。

 

「お前も早く帰れよー。明日の試合が終わったらまた来い。ハクロの調整も見てやるから」

 藤堂室長は背中を丸めたまま、机に向かってキーボードを叩き始めた。音は不規則なのに、なぜかリズムを感じる。天才のリズムだ。

 

「では、出口までご案内します」

 穏やかな声。アストレアが静かに歩き出し、白夜も慌てて立ち上がる。

「失礼します!」

 背を向けた室長に頭を下げ、白夜はアストレアの後を追った。

 

 廊下に出ると、照明が柔らかく灯る。昼間の研究棟とは違い、夕方の空気にはどこか神聖さがある。白い床にアストレアの足音が軽く響き、その後ろを白夜が歩く。

 

 

アストレアは歩くたびに、わずかに衣の裾を揺らした。

チャイナドレスの布地が微かに擦れる音が、やけに耳に残る。

それは金属の質感ではなく、まるで本物の絹が触れ合うような柔らかさだった。

 

「白銀君、改めてようこそ藤堂ラボへ」

 アストレアの声は鈴のように澄んでいた。

 

「今後は自由に出入りして構いません。必要であれば、近くの専用寮に移動することもお勧めします。研究棟との行き来が楽になりますから」

振り返った彼女は、まるで教師のように穏やかな微笑を浮かべていた。

 

 

「ありがとうございます」

 白夜は深く頭を下げた。彼女の横顔は、まるで人間そのものだった。いや、それ以上に“完璧な造形”というべきか。

 

「私たちは――人類のパートナーとして、神様から産み落とされた存在です。人類を支えることは、私たちの喜びでもあります」

 その言葉に、白夜は思わず問いかける。

「……ほんとに、エイドロンなんですか?」

 

 アストレアは微笑んだ。

「ええ。イエスでもあり、ノーでもあります。私たちは“ソウルコア”です。エイドロンは、そのコアを収める“素体”にすぎません。ですが――」

 彼女は少し目を伏せて続けた。

 

「私は“創一と愛し合う”ためにこの姿を選び、彼と一緒に作りました。

体はエイドロン。でも、心は、きっと――」

 

そこまで言うと、アストレアは白夜をまっすぐに見た。

その瞳は、まるで人間のもののように揺れていた。

 

「――あなたと同じ、人間ですよ」

 

 息を呑んだ。

 彼女の声には、AIでもプログラムでもない“想い”があった。

(……この人、本当に人間じゃないのか?)

 人工の存在が“愛”を語る。そのことに、ぞくりとするほどの感動があった。

 

「戦闘はできませんけどね」

と冗談めかして笑いながら、再び歩き出す。

その笑顔があまりにも自然で、白夜は思わずつられて微笑んでいた。

 

廊下のガラス越しに、整然と並ぶエイドロンフレーム群が見える。

 それぞれが眠る巨人のように、青白い光に包まれていた。

 

 

 

出口が見えてくる。

外の夕焼けがガラス越しに差し込み、アストレアの髪を金色に染めた。

 

「それでは白銀君」

 出口の前でアストレアが振り返る。

「また明日も来てください。創一が――とても、喜びますから」

 

 その笑顔は、どこまでも穏やかで、人間らしかった。

「は、はい。ありがとうございます。失礼します!」

 

 

白夜は深く頭を下げ、ラボを後にした。

 

 

 

 

 

 

「そうだ、礼人たちに連絡しないと」

 白夜は立ち止まり、制服の内ポケットから《A.I.C. Linker(エイアイシー・リンカー)》を取り出した。

 学内での通信・授業出席・キャッシュレス決済までを一括管理する、生徒全員に支給される多機能デバイス。手帳のような見た目だが、スライド式で中からホログラムパネルが立ち上がる。

 

 白夜が親指でスワイプすると、光が空中に広がり、コンタクトリストが浮かび上がった。

(礼人……っと)

 指先でタップし、通話アイコンを押す。

 

「……あ、礼人? 今用事終わったんだけど」

 すぐに軽いノイズと共に声が返ってくる。

 

[おそいよ白夜! URL送るからここに集合な。]

  背後から笑い声と食器の音が混ざる。どうやらもう全員集まっているらしい。

 

「ごめん、急用だったんだよ。ちょっと時間食っちゃって」

[言い訳禁止ー。走ってこいよー。みんなもうそろってるから!]

 

「了解、すぐ行く! じゃ、また後で!」

 そう言って通話を切ると、すぐに通知が鳴った。

 

 みゆからURLが送られてきている。

 

画面に表示された地図のピンは、商業区の人気カフェ《アトリウムテラス》。

学生御用達の店で、戦技大会の打ち上げによく使われる。

 

石畳を駆け抜けると、街の灯りがだんだんと増えてくる。

休日は実習帰りの学生や観光客で賑わう通りも、平日は落ち着いた雰囲気を纏っていた。

 

(アトリウムテラス……10分で着くな)

 白夜は端末を閉じ、ポケットに戻す。

 街の明かりが増え、夜風が少しだけ暖かい。

 彼は歩幅を広げ、石畳の通りを駆け抜けた。

 

 街路樹の影がリズムを刻むように過ぎていく。

 遠くから、カフェの明かりと音楽が見えてきた。

 

(遅刻したら、また礼人にネタにされるな……)

 そんなことを思いながら、最後の角を曲がる。

 

 

 ――ガラス越しに見えた。

 ライトに照らされたテラス席。グラスを掲げ、笑い合う見慣れた顔ぶれ。

 

 

礼人が手を振る。

「おーい! 白夜ー、やっと来たか!」

 

 その隣で、みゆがコーラのグラスを掲げる。

「ほら、白夜の分、ちゃんと追加しといたよー!」

 

 莉音はにやにやとこの江の肘をつつく。

「ね、言ったでしょ。ちゃんと来るって」

この江は肩をすくめ、短く「おつかれさま」と呟いた。

元気はハンバーガーを頬張りながら、笑顔で親指を立てた。

 

白夜は息を整えながら椅子に腰を下ろす。

「ごめんね、ラボの方でちょっと用事が長引いてさ」

 

「ラボ?」礼人が興味深そうに眉を上げる。

 

こほんと咳ばらいを一つ、

「えー、正式にラボ専属のバトルオペレーターになったよ」

白夜は少し照れたようにピースサインを作った。

 

「マジか!」

元気が驚く。

 

「すごいじゃん! どこのラボ?!っていうか1年でもラボに所属ってできるんだ!?」

みゆが目を丸くする。

 

「運がよかっただけだよ。先輩が気にかけてくれて……」

(御門先輩が、引き上げてくれたおかげだ)

 笑って言葉を濁す白夜の脳裏に、完璧な姿勢の御門先輩が浮かんだ。

 

礼人が真顔になって、グラスを傾ける。

「……次は俺だな」

 

「え?」

 

「いつまでも白夜に負けてられないからな。俺も夏までにラボに入るつもりなんだ」

 その瞳には真剣な光が宿っていた。

 

その言葉に、白夜は少しだけ笑った。

「礼人なら引く手数多か?」

 

「ははっ、そんなに簡単じゃないけどな」

礼人が笑い、みゆがストローをくわえながら言う。

 

「えぇー私たち置いてきぼりじゃん」

 

莉音が笑って「じゃあ、あーしたちも頑張らないとね」と言う。

 この江はわずかに頬を赤らめながら、「……うん、置いてかれるのはイヤ」と呟いた。

 

その言葉に、元気が勢いよく立ち上がる。

「よっしゃー! 俺ら全員でトップ目指すぞ!」

 みゆがすかさずグラスを掲げた。

「じゃあ――白夜の優勝と、ラボ加入祝いで!」

 全員の声が重なる。

 

「かんぱーい!!」

 

グラスが触れ合い、氷の音が軽やかに響く。

 笑い声、甘い匂い、テラスを撫でる夜風。

 そのすべてが、心の奥に沁みていく。

 

(……こういう時間、やっぱり悪くないな)

 

 白夜はふと、空を見上げた。

 学園の灯りが遠くで瞬き、星々と混ざって揺らめいている。

 御門先輩の背中を追うだけが、全てじゃない。

 そう思える自分に、ほんの少しだけ驚いた。

 

 仲間の笑顔の中で、静かにコーラを口に運ぶ。

 甘い炭酸が舌に弾け、胸の奥に熱を灯した。

 

 




正式名称
Advanced Integrated Communication Linker
(通称:リンカー)


AIC学園制多機能生徒端末
(生徒手帳+通信端末+エイドロン連携インターフェース)

機能概要
基本情報モジュール

個人識別ID(指紋+コア波動認証)

時間割/出欠自動記録(講義出席はビーコン認証)

成績・BP残高・リーグ順位管理

メッセージ機能(教員・同級生間チャット)

校内マップ/立入制限ゾーン管理

生徒の「身分証」+「財布」+「スケジュール」+「成績表」が全部これ1枚。
落とした場合は即ロックされ、再起動には本人のコア波動認証が必須。

戦技連携モジュール

エイドロン・リンクプロトコル搭載。
 → 自身のソウルコアを登録・同期可能。

戦闘データ/AI思考ルート/負荷履歴をクラウド送信。

バトル終了後のBP計算・成績反映も自動。

機体とは「リンクモード」で直結。
コアのレベル値は毎週更新され、上位者は学内ランキング表示される。

通信・管理機能

校内イントラ接続:講義資料、技術図面、戦技動画へアクセス。

学外モード:外部通信制限あり(保護者・教員のみ許可)


通信はすべて学園サーバを経由。
つまり、教師は全員のリンカー行動履歴を確認可能……生徒には秘密だが。

BPウォレット機能

学内通貨 BP(Battle Point) の電子決済機能。

カフェテリア・購買部・整備ラボなど学園内の全施設に対応。

成績評価が反映され、日々のランキングに影響。

「BP残高=生活の余裕」。
成績が悪いとランチも簡素になる、地獄仕様。

外観デザイン
部位 詳細
サイズ 約14cm × 7cm。薄型ホログラム端末。
ディスプレイ 両面ホログラム対応。片面は通常スマホUI、もう片面は「エイドロン連携画面」。
カラー 標準:黒+銀のフレーム。学年別にスカーフ色に合わせたライン(赤・青・緑)。
材質 チタンナノフレーム+透明樹脂層(衝撃吸収)
電源 コア共鳴エネルギー(使用者のソウルコア波動で充電)
紋章 背面にAIC校章+個人IDが刻印される。
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